産業別会合:教育部門

全ての人の生涯学習、技能、全ての人のディーセント・ワークの実現を目指す取り組みの文脈における教育部門の仕事の未来技術会合

広報動画-変化する仕事及び教育の世界と教育者(英語・1分40秒)
 教育の世界は教室と黒板が一つしかなかった校舎の時代から変化し、今の教育者は学習者を幅広いデジタル学習の世界に接続することができます。農山漁村部や僻地の学習者にも教育を届け、学習者を人生と仕事の世界に備えさせるために新しい教育方法を用い、新たな知識分野を探究することができます。
 しかし、教育環境の変化は教育の世界で働く人々に課題をもたらしてもいます。新たな技術や学科の習得には資源・資金と訓練が必要であり、富裕層と貧困層のさらなる分断を生む可能性があります。教育者の労働条件や専門職としての状況が劣悪な国もあります。新型コロナウイルスの世界的大流行は再び、教育者の重要性を強調することになりましたが、同時に教育者の仕事量、福祉、専門職としての自律性といった問題にも光を当てています。教育部門の労使は教育関連の仕事の世界における変化に参画する必要があります。
 ガイ・ライダーILO事務局長は、新型コロナウイルス後のより良い社会の立て直しという約束を果たすには、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を伴った、資格と意欲があり、十分な支援を受けた教員が必要不可欠であると説いています。
 世界を確実に仕事の未来に向けて備えたいと思うならば、教育者がより良く指導することができ、学習者をより良く支援し、より良く働き、未来の世代が私たちに共通の地球の未来の課題に対処するのを手助けできるよう、教育者による仕事の遂行をより良く支援する方法を見つけなくてはなりません。
 教育部門の仕事の未来三者構成会合ではこのような話し合いが行われます。

 2019年に採択された「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」でも強調されているように、全ての人が変化する仕事の世界における機会から利益を得るためにも、質の高い教育と実効的な生涯学習の確保を通じた全ての人の能力強化が求められています。これは世界の教育・訓練制度に生涯学習のニーズに応える教員の育成・支援、教育者自身の生涯学習に対する支援という二つの課題を提示しています。

 このような文脈の中で開かれる本会合では、労使代表各8人と関心のある全ての政府代表が参加し、今後の活動提案などを含む結論の採択を目指し、全ての人の生涯学習、技能、全ての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現を目指す取り組みの文脈における教員の労働・職業上の問題が検討されます。議論では、科学技術の影響、労働市場の需要、教育労働に関連した世界的な傾向に特に重点が置かれます。

 本会合は当初2020年にジュネーブのILO本部で開催される予定であったものが、延期になり、バーチャル形式で開かれるものです。

 討議のたたき台として事務局がまとめた報告書は、技術・職業教育訓練を含み、幼児教育から中等教育まで、官民両部門の教職員の活動を中心に、教育部門の活動に関連した現在の慣行、課題、展望をまとめています。高等教育については、2018年に開かれた「高等教育雇用条件グローバル対話フォーラム」、幼児教育については、2012年に開かれた「幼児教育者の状況世界対話フォーラム」と2013年に開かれた「幼児教育従事者のディーセント・ワークの促進に関する政策指針専門家会議」、技術・職業教育訓練教員・指導員の労働条件については、2010年の「職業教育・訓練世界対話フォーラム」で既に多くの側面が議論されていますが、本書でも幾つかの側面に触れています。

 初等前教育から高等教育までを合わせた教員の数は現在、世界全体で約9,400万人に上り、高等教育を除き、女性が過半数を占めています。教育・学習が必要な途上国の若者の急増と先進国の若者人口の減少といった人口動態の変化、人の移動の増加とそれに対応できる教員の不足、学校基盤構造の破損を招く可能性がある異常気象などの気候変動・環境問題、グローバルな労働市場を生き抜く技能が要請されている経済・社会のグローバル化、遠隔学習の可能性を開いた科学技術の急速な発達、質の高い教育の機会が限られている紛争・非常事態下で暮らす子どもの増加、教育の不平等も招いている所得不平等の拡大、多くの変化を加速させた新型コロナウイルスの世界的大流行による休校といった、仕事の世界に変容をもたらしている変化は、教育・訓練や教育者の仕事にも影響を与えています。報告書は第1章「教育に影響を与えている世界的な傾向」でこのような変化の趨勢をまとめた上で、第2章「進化する教育の世界」、第3章「進化する教育者の職業」、第4章「教育部門のディーセント・ワークにとっての機会と課題」、第5章「社会対話」、第6章「教育者と国際基準」の章構成で、教員労働を巡る最近の動きを簡潔に記しています。

 柔軟性、適応性、革新性が重要な要素となる仕事の世界に向けて学習者にいわゆる「21世紀の技能」を習得させる必要性、持続可能な開発や男女平等などといった扱うことを期待されているテーマの増大、伝統的な教科指導と教室運営に加え、学習ファシリテーターやキャリア相談員、職業指導員など教員が担う役割の多様化、教育人材の多様化や支援的役割の専門化、デジタル機器や情報通信技術(ICT)などの新技術を駆使した学習法への対応、万人に通用する多人数教育から一人ひとりの学生・生徒を中心とした学習方法へと向かう教授法の変化など、教育の世界も教育者の状況も変化しています。

 教員の社会的な地位は一般に高く、賃金は一般に同等の専門職労働者より低いものの、公立学校職員の雇用は安定し、高い便益を享受しています。教室の社会的条件などは教員に心理社会的な影響を与え、暴力も重要なストレス要因となっており、2015~19年の期間に世界全体で1万1,000件以上の教育施設への攻撃や教育施設での軍の活動が報告されています。教壇に立って1年以内の新人教員の離職率が高い主な理由の一つとして仕事量が挙げられ、法定労働時間は国によるばらつきが大きいものの、実労働時間はこれを反映しておらず、例えば、日本では、2016年までの10年間で63人の公立学校教員が過労死したと報告されています。新型コロナウイルスの世界的な大流行は多くの場合、教員の仕事量とストレスの増大を招いています。

 公立学校教員の労働組合組織率は一般に高く、結社の自由と団体交渉に関する様々な課題が報告されているものの、座学と実習を組み合わせた職業訓練制度の設立に社会対話が用いられたコスタリカのように教育改革に社会対話が用いられる例も見られます。

 教育分野だけを扱った国際文書としては、1966年のILOと国連教育科学文化機関(UNESCO)の「教員の地位勧告」とUNESCOの「高等教育教職員の地位に関する勧告」が存在し、結社の自由や労働条件から流行性疾患対応まで、様々な事項を扱っています。その内容は現在でも通用し、他の手引き文書のもとになっていますが、ますますその役割が増大している教育補助職員の労働条件や幼児教育従事者に関連した特定の事項など、幾つかの分野でギャップが存在することは明らかです。


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全ての人の生涯学習、技能、全ての人のディーセント・ワークの実現を目指す取り組みの文脈における教育部門の仕事の未来技術会合

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