産業別会議

自動車産業の仕事の未来技術会合

自動車産業:次はどこへ?(英語・1分40秒)
 デジタル革命は自動車の設計、生産、販売、修理、利用の仕方に変化をもたらしています。
 ILO部門別政策局のカスパー・N・エドモンズ採取産業・エネルギー・製造業ユニット長は、過去に多くの危機にさらされながらも、そのたびにより強くなって抜け出てきた自動車産業にとって、混乱は新しい話ではないとしつつも、しかしながら今回は、自動車産業の労働者と使用者の前途が多難であるように見えると述べています。
 組立部品が少なく、より環境に優しい運転ができる電気自動車は、自動車産業の形勢を一気に変えてしまうようなもう一つの革新的な要素です。
 「気候危機と新型コロナウイルス危機は、デジタルで環境に優しい自動車産業へと向かう歩みを加速させました。また、産業のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、そしてますます不確実な未来を渡っていくためにすべての労働者と使用者が必要な技能とに投資する明確な必要性も露わにしました」とエドモンズ・ユニット長は指摘しています。
 「仕事の未来に向けたILO創設100周年記念宣言」をロードマップに用いて、ILOは「自動車産業の仕事の未来に関する技術会合」を初めてバーチャル形式で開催しました。政府、使用者、労働者は、自動車産業に係わるすべての関係者のためになる未来を形作るため、技能開発、訓練、生涯学習に関するものを中心に、力強い結論と勧告の集合を採択しました。

 自動車産業は世界中で成長と発展、そして世界経済に多大に貢献しています。年間総売上高を国家経済と比較すると世界で6番目の大きさになります。日本も世界第3位の生産国です。この産業は資本集約的であり、革新的な取り組みを推進し、数百万人の生計を支える雇用の受け皿となっています。

 自動車の利用は同時に、大気汚染や温室効果ガス排出、自動車事故の主な原因となっており、産業が環境に与えている大きな負荷やサプライチェーン(供給網)の労働条件に関する懸念と合わせ、外部に対する負の影響を減じ、持続可能なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の前進を図るようますます圧力がかけられています。

 自動車産業は今日、岐路に立っており、その未来はますます不確実になってきています。世界貿易の緊張や貿易制限の登場は近い将来の産業の成長をさらに害する恐れがあり、設計や製造方法の改良につながる急速な技術発展、運転システム・デジタル化の進行、消費者の嗜好の変化、持続可能性や気候変動に対する懸念の増大、規制上の圧力や規制措置は自動車産業を下支えする仕組みや構造を変化させ続けています。技術進歩やグローバル化、人口構造の変化や気候変動といった変化の推進要素は近年、産業に大きな変容をもたらし、新たな課題と機会を生み出しています。

 このような背景の下、労使代表各8人と関心のある全ての政府代表が参加して開かれたこの会議では、自動車産業に関わるすべての人々の教育、訓練、生涯学習に投資する緊急の必要性を指摘する結論文書が採択されました。

 討議のたたき台として準備された論点文書は3章構成を取り、第1章で産業構造や車両生産・売上高、国内総生産(GDP)や世界貿易、雇用への貢献といった自動車産業の現況を概観した上で、第2章で技術進歩、グローバル化、人口構造の変化、気候変動に焦点を当てて産業の変容を招くであろう大規模な趨勢と変化の推進要素について取り上げます。第3章では雇用、技能と生涯学習、社会的保護と労働条件、就労に関わる基本的な原則と権利、社会対話の各観点から持続可能なディーセント・ワークに向けた課題と機会を記しています。

論点文書の内容を動画で紹介(英語・9分34秒)

詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
自動車産業の仕事の未来技術会合

エリカ・ガブリエラ・マルティネス・リエバノ議長インタビュー

 本会議のエリカ・ガブリエラ・マルティネス・リエバノ議長は、自動車産業の未来について次のように語っています。

自動車産業の仕事の未来技術会合のエリカ・ガブリエラ・マルティネス・リエバノ議長インタビュー(英語・3分8秒)

 自動車産業は世界の国内総生産(GDP)と貿易に大いに貢献しています。この産業は革新的な取り組み(イノベーション)や投資を牽引し、世界中で数百万人の労働者が関与しています。したがってグローバル経済のキー・プレイヤーであるこの産業の未来とそれに依存する数百万の人々の生活の糧の命運がかかっています。新型コロナウイルスの世界的大流行が始まる前からこの産業は既に転機の課題に直面していました。気候変動や移動態様の新たな潮流、人口構造の変化その他の変化によって引き起こされた奥深い変容が進行しており、これはイノベーションや生産工程、労働力に求められる技能に影響を与えていました。産業がこういった変化や労働力に求められる技能の適応を図ろうとしていた矢先にコロナ禍に襲われました。

 コロナ禍によって車両の生産や輸出は2割減となり、数千の企業と数百万の労働者がこの未曾有の危機と世界的な需要崩壊の激しい打撃を受けました。今の現実は使用者、労働者、政府が非常に不確実な未来に直面している点に光を当てています。この産業が自らの成長を操縦し、より持続可能な労働力に向けてより良い立て直しを図るのを手助けすることは世界中の経済と社会の回復にとって決定的に重要です。自動車産業の人々の能力に投資して持続可能なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の前進を図る緊急の必要があります。これは長期的に、イノベーションの継続、生産性向上、そして経済を守る助けになることでしょう。緊急の行動はまた、自動車産業において誰も置き去りにされないことを確保することにもなるでしょう。

 初のバーチャル形式の産業別会議で議長を務めた経験について、議長は、ILOの活動の継続を促進・確保しようとのこの組織、社会的パートナーである労使、政府の努力に参加できたのは素晴らしい経験だったと語っています。

 自国メキシコにとっても世界経済にとっても、そして世界中数百万人の労働者にとって自動車産業の仕事の未来は非常に重要な問題であるため、社会対話に関してコロナ禍が提示した課題の克服は決定的に重要でした。ILO事務局によるこの会議の準備及び全般的な設営に関わる技術、後方支援、内容面での支援、そしてこのバーチャル方式による会議運営をうまく機能させようとの用意が全参加者にあったことを高く評価したいと思います。もちろんいくつかの失敗はありましたが、参加者全員の課題を克服しようとの意思が、社会対話が首尾よくいくことを許す上で決定的に重要でした。近い将来直接会えるようになることを期待するものですが、この会議は私たちの活動の継続性、コロナ禍によって増大したあらゆる問題に対処し続け、より良い立て直しを開始する上での社会対話の重要性を示すものになったと思います。