基準適用監視機構

条約勧告適用専門家委員会

 ILOの条約・勧告の適用状況を審査する委員会の年次定期会合。任期3年の20人の委員は様々な国籍の高名な法律の専門家で構成されています。日本からは現在、立命館大学法学部の吾郷真一教授(前九州大学法学部教授)が2015年から委員を務めています。委員会では、各国政府、労使団体から寄せられた批准条約の適用、総会で採択された条約・勧告の権限ある機関への提出、理事会から要請された未批准条約・勧告、非本土地域への条約適用に関する報告・情報が検討され、その結論は来年のILO総会に報告書として提出されます。下記の委員会のページからは、過去の全ての報告書電子版を閲覧できます。検索機能のついた国際労働基準データベースNORMLEXには過去約30年分の情報が収録されています。

 第107回ILO総会(ジュネーブ・2018年5月28日~6月8日)の第3議題「条約・勧告の適用に関する情報と報告」の討議資料として提出された委員会の報告書は、「一般報告及び特定国に関する見解(A部)」と労働時間をテーマとする「総合調査報告(B部)」の2部構成になっており、基準適用委員会でこれに基づく審議が行われます。

 日本についてA部では、1947年の労働監督条約(第81号)1948年の結社の自由及び団結権保護条約(第87号)1949年の団結権及び団体交渉権条約(第98号)1951年の同一報酬条約(第100号)1960年の放射線からの保護に関する条約(第115号)1964年の雇用政策条約(第122号)1981年の家族的責任を有する労働者条約(第156号)1983年の職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約(第159号)の8条約の適用状況に関連して、消防職員及び刑務所職員の団結権、国家行政に関与しない公務員の団体交渉権、男女同一価値労働同一報酬に関する法制、家族的責任に関連した長時間労働、労働監督官数、雇用動向と積極的労働市場措置、障害者の雇用促進、福島第一原子力発電所における除染・廃炉作業に従事する労働者の問題などに関する見解が記載されています。

 『将来に向けた人間らしく働きがいのある労働時間の確保』と題する総合調査報告は、労働時間分野の9条約、1議定書、6勧告を対象とした調査に対する加盟国からの回答内容を中心にまとめています。11章構成の最初の5章で、労働時間、週休、年次有給休暇、夜間労働、パートタイム労働といった対象基準に係わる国内法制等をそれぞれまとめた後、フレックスタイムなどの労働時間編成(第6章)、ゼロ時間契約などの新たな問題(第7章)、社会対話と団体交渉の役割(第8章)、労働時間に関する国内法規の遵守を確保するために講じられている措置(第9章)、関連基準の潜在力を発揮させる方法(第10章)について、加盟国から寄せられた情報を紹介し、委員会としての結論及び前途に向けた提案(第11章)を示しています。対象となっている基準は次の通りです。1919年の労働時間(工業)条約(第1号)1921年の週休(工業)条約(第14号)1930年の労働時間(商業・事務所)条約(第30号)1935年の40時間制条約(第47号)1948年の夜業(婦人)条約(改正)(第89号)同条約の1990年の議定書1957年の週休(商業及び事務所)条約(第106号)1970年の有給休暇条約(改正)(第132号)1990年の夜業条約(第171号)1994年のパートタイム労働条約(第175号)1921年の婦人夜業(農業)勧告(第13号)1954年の有給休暇勧告(第98号)1957年の週休(商業及び事務所)勧告(第103号)1962年の労働時間短縮勧告(第116号)1990年の夜業勧告(第178号)1994年のパートタイム労働勧告(第182号)

 この分野の条約の批准国数は多くなく、日本も全く批准していません。一部の政府より出された労働時間関連基準の整理統合または改正提案及びILO内で進行中の労働時間分野におけるディーセント・ワークの前進に向けたさらなる手引きの策定に向けた動きを受けて、委員会は、新たな基準を検討する際には、労働者の安全と健康保護や私生活・家庭生活と勤労生活の妥当なバランスの維持を考慮に入れるべきことなどを提案しています。