金融サービス・専門職業部門

情報通信技術及び金融サービス部門におけるテレワーキングの労使にとっての課題と機会グローバル対話フォーラム

 テレワークについては統一した定義は存在しませんが、情報通信技術(ICT)を用いて職場以外で働く就労形態と大ざっぱに規定することができます。1970年代の石油危機の時代に、高騰する通勤用燃費と職場の冷暖房費を抑える手段として考案されたテレワークですが、情報通信技術の絶え間ない進歩を受けて、ますます成長の兆しを見せています。統一した定義がないためにその規模を推計するのは困難なものの、米国では2014年に被用者の2.8%に相当する370万人がテレワーカーに分類され、英国では2009年に労働力の12.8%に当たる370万人近くが主として自宅で働いており、2005年に欧州連合(EU)27カ国を対象に行われた調査によれば、少なくとも労働時間の4分の1以上をテレワークで過ごすとする回答者が全体の7%を占めました。日本でも政府のIT戦略本部が2003年に行った調査によれば、少なくとも週8時間テレワークを行う日本のテレワーキング人口は2002年に労働者全体の6.1%を占めたとされ、これより新しい数値は得られないものの、2006年に出されたある予測では、日本のテレワーキング人口は世界で最も早く成長し、2011年には労働力の8割に達すると予想されていました。

 このような場所に縛られない働き方の急成長は、労使双方に新たな課題と機会を提示します。働く場所ではなく生産物が重視されることによって、旧来の管理・監督手法を再考して労働者の時間や作業プロセスの直接管理よりもむしろ提出物に重点を置く必要が生じます。

 ジュネーブのILO本部において標記の日程で開かれたグローバル・フォーラムにおいては、テレワーク普及の潜在力が高い情報通信技術サービスと金融サービスの両部門に焦点を当て、労使代表各8人と関心のあるすべての加盟国政府が出席し、テレワークの(a)普及度合い、(b)経済的・社会的なリスクと便益、(c)非自発的にテレワークに従事している人々を含むテレワーカーの権利及び保護と関連した雇用関係、作業組織、専門職業能力開発慣行とそれらが与える影響に関する理解を深め、その前途に関する合意を育むことを目指して経験の共有が図られました。討議の結果、情報通信技術サービスと金融サービス部門におけるテレワークの利点と課題、これらの部門における仕事の未来に対する可能な影響、これらの部門におけるテレワークの利点を最大化し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の観点から見た課題に対処することができる政策と実務慣行、ILOと加盟国政労使に提案される将来の行動を内容とする13項目の合意ポイントが採択されました。

 討議のたたき台として作成された論点文書は、テレワークの定義の問題を取り上げた上で、日本など幾つかの国におけるテレワークの普及状況及び上記2産業部門における現状を概説し、社会対話の状況と関連する国際文書を紹介しています。


詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
情報通信技術及び金融サービス部門におけるテレワーキングの労使にとっての課題と機会グローバル対話フォーラム