公正な人材募集・斡旋に関する手引きの策定三者構成専門家会議

公正な募集・斡旋のための一般原則と実務指針とは(英語・3分43秒)

 今日のグローバル化経済の下、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)とより良い生計手段を求めて国外に仕事の機会を探す労働者の数はますます増え、ILOの最新の推計では世界人口の約4%に相当する約2億3,200万人の移民のほぼ3分の2に当たる1億5,000万人が移民労働者であると見られます。職業紹介所は適切な規制の下では労働需給のマッチングにおいて重要な役割を演じ、移民にもたらされる開発効果を相当に高めると同時に雇用政策と移住政策の整合性向上に寄与する可能性があります。しかしながら、法規制の枠外で暗躍する斡旋業者が詐欺行為や人権侵害、違法な賃金控除などの不当な取り扱いをもってとりわけ低技能労働者を食い物にしている現状も指摘されています。ILOは強制労働及び人身取引の被害者は世界全体で2,100万人に上ると推定していますが、この約4割が仕事を求めて国内でまたは国外に移動した人々と見られます。

 このような現状を懸念したILO事務局長は、2014年の第103回ILO総会に提出した事務局長報告で公正な移住に向けた取り組みを提案しました。公正な人材募集・斡旋プロセスの設定はその主な柱の一つです。ILOはまた、2014年から公正人材募集・斡旋事業を開始して、人身取引・強制労働の防止支援、人材募集・斡旋過程における不当な詐欺行為からの労働者の権利保護、労働者の移住コストの削減及び移民労働者とその家族、送出国・受入国にもたらされる開発成果の増大を目指しています。

 不当で詐欺的な人材募集・斡旋行為への取り組みは、労働者の移住コストを引き下げ、移民労働者とその家族にもたらされる開発成果を高めるための重要な要素であることがますます国際社会に認められるようになってきています。経済成長とディーセント・ワークの実現を目指す持続可能な開発目標8には、強制労働及び人身取引の撤廃に向けて即時の効果的な措置を講じることや移民労働者とりわけ女性移民を含むあらゆる労働者の安全で安定した労働環境の促進と労働者の権利保護などの達成目標が含まれています。国内及び国家間の不平等縮小を目指す持続可能な開発目標10に含まれる移住と流動性の達成目標を測定する指標の一つとして、斡旋・募集に係わる費用を移民労働者の受入国における年間給与の一定割合にすることも提案されています。

 2013年11月に開かれた労働力移動に関する三者構成技術会議の提案を受けて開かれたこの会議では、政労使各側8人の専門家が出席し、事務局が準備した討議資料をもとに、公正な人材募集・斡旋に関する指針の採択に向けた話し合いが行われました。会議の成果は、2017年の第106回ILO総会で行われる労働力移動に関する一般討議や就労に係わる基本的な原則及び権利に関する2回目の反復討議の議論にも寄与することが意図されました。

 会議参加者は募集・斡旋のプロセスに関与する様々な行動主体の具体的な責任を詳しく示す実務指針の総合的な枠組みとなる一般原則と一連の定義を採択する必要性について合意に達しました。募集・斡旋プロセスにおける不正行為に体系的に取り組む必要性、最も脆弱な労働者を保護し、そのようなプロセスの透明性と効率性を確保する必要性についても全体的な合意が見られました。実務指針に関しては、政府側から時に責任の範囲に対する懸念が示され、異なる司法管区を横断して執行することに係わる課題が強調されました。労働者側は指針が全ての労働者に適用され、労働者の人権の促進と実効的な保護に関して募集・斡旋サイクルのあらゆる段階における様々な関係者の責任が十分に明確なものであることの重要性を強調しました。使用者側は相当なる注意の行使を通じて労働サプライチェーンの透明性を確保する必要性を指摘しつつ、自らの管理の枠外の不正行為について使用者の説明責任を問うことがないよう注意を喚起しました。

 にもかかわらず、最終的には三者の合意が達成され、「公正な募集・斡旋のための一般原則と実務指針」が採択されました。一般原則はあらゆるレベルにおける実施の方向性を示すことを意図しています。実務指針は募集・斡旋プロセスに関与する様々な行動主体の責任を扱い、可能な介入策や政策ツールを含んでいます。一般原則は、相当なる注意や使用者、企業、労働者のリクルーター、移民労働者、募集・斡旋、募集・斡旋手数料などの定義を示した上で、人材募集・斡旋は国際的に認められた人権を尊重、保護、満足するような形で行われるべきことなどといった13の原則を掲げています。実務指針は政府、企業、公共職業斡旋業務の責任を具体的に示しています。一般原則及び実務指針の主な出典が付録に示されています。

 2016年11月の第328回理事会は、「公正な募集・斡旋のための一般原則と実務指針」の刊行及び普及を事務局長に許可すると共に、9月に開かれた難民と移民に関する国連サミットのフォローアップの中でこの指導原則を活用することを提案しました。


詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
公正な人材募集・斡旋に関する手引きの策定三者構成専門家会議