海事労働基準

2006年の海上の労働に関する条約第13条に基づき設置された特別三者委員会第2回会合

 2013年8月20日に発効した「2006年の海上の労働に関する条約」には、この条約の運用を継続的に検討する特別三者委員会の設置が規定されています(第13条)。委員会は条約規範部分(基準と指針)の迅速な改正手続きに関しても中心的な役割を演じることになっています(第15条)。また、代表的な船舶所有者団体または船員団体が存在しない国がこれらの団体との協議に係わる義務を遂行する上でも重要な機能を果たしています(第7条)。

 約2年前に開かれた第1回目の会合に続く今回の会合は、以下の議題を取り上げ、日本の政労使を含む批准国政府並びに船員及び船舶所有者の代表231人の出席を得て、条約の機能に係わる様々な事項に関する意見交換を行い、第4.3規則第5.1規則の改正を決定し、来る5月30日に開幕する第104回ILO総会に承認を求めて提出することを決定しました。

海上の労働に関する条約特別三者委員会第2回会合議題

  1. 2006年の海上の労働に関する条約規範部分(第2.2規則、第4.3規則、第5.1規則)の改正提案の検討
  2. 条約第7条に基づく何らかの協議申請の検討(今回は申請なし)
  3. 条約の実行に係わる情報の交換
  4. その他(委員長の任命提案等)

 船員側から提案されていた、船上における船員の労働環境が労働安全衛生を促進するよう確保することに向けた、健康及び安全の保護並びに災害の防止に関する第4.3規則の改正案については、職業上の災害、負傷及び疾病に関する規定であるB4.3.1指針の健康及び安全への影響を特に考慮すべき分野に「いじめと嫌がらせ」を追加し、調査に関するB4.3.6指針の職業上の災害、負傷及び疾病に関して調査を考慮すべき分野に「いじめと嫌がらせから生ずる問題」を加えることが決定されました。また、健康及び安全の保護並びに災害の防止に向けた法令制定、措置策定に際して考慮に入れるべき基準に、国際海運会議所(ICS)と国際運輸労連(ITF)が共同で発行した『船上における嫌がらせといじめの撤廃に関する手引き』を含むことも決定されました。

 船舶所有者側から提案されていた、海上労働証書更新時の有効期間延長措置の追加に関しては、海上労働証書及び海上労働遵守措置認定書に関するA5.1.3基準の4項を改正して、失効前に検査を受けて遵守状況が確認された船舶に関しては、更新された証書をただちに発行できない事情がある場合には、認定された団体を含む権限のある機関が現行証書の有効期間を最大5カ月延長できるようにしました。これに合わせて、付録A5-IIの海上労働証書モデル様式も改正されました。

 船員側から求められていた、船員が海賊に捕らえられている間の賃金支払いを確保するよう賃金に関するA2.2基準を改正する提案については、この問題をさらに検討する作業部会を設置して特別三者委員会第3回会合にその報告書を提出することを定める決議が採択されました。政府代表、船員代表、船舶所有者代表各4人で構成される作業部会は、条約規範部分改正提案準備プロセスの改善案を提案することにもなっています。

 情報交換に際しては、海上の労働に関する条約批准国から提出された条約適用状況に関する第一次報告の審査から見出された主な事項について条約勧告適用専門家委員より報告があり、船員の金銭的損失を補償するために船員の募集・職業紹介機関が設けるべき保護制度の範囲や行政機関による船舶の検査・規制義務の範囲、海上労働遵守措置認定書電子版の受容性、条約適用上の目的における「船員」と「船舶」の用語の定義などといった事項が取り上げられました。委員会はまた、英国海事沿岸警備庁のジュリー・カールトン船員安全衛生部長を任期3年(2016~19年)の委員長に、そして同じ任期で政府側(フィリピン)、船員側(米国)、船舶所有者側(香港)の3人で構成される副委員長を選出しました。特別三者委員会第3回会合は2018年に開催されます。


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海上の労働に関する条約特別三者委員会第2回会合