グローバル・サプライチェーン

グローバル・サプライチェーンにおけるディーセント・ワーク労働者シンポジウム

シンポジウム模様

 2016年5~6月に開かれる第105回ILO総会ではグローバル・サプライチェーン(世界的供給網)の問題が取り上げられ、現在、世界の就労者のほぼ5人に1人が関連した仕事に就いているグローバル・サプライチェーンにおけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に関する一般討議が行われます。討議に向けた準備作業として労使グループは12月にそれぞれにシンポジウムを開催しました。

 国際労働組合総連合(ITUC)のシャラン・バロウ書記長をはじめ、世界各地から100人余りの労働組合代表、専門家が出席した労働者シンポジウムでは、グローバル・サプライチェーンにおいてディーセント・ワークをもっともうまく促進していく方法について話し合いが行われました。第105回総会に向けた準備に加え、シンポジウムでは、1)グローバル・サプライチェーンを巡る最近の動向及び発展状況の検討、2)ディーセント・ワークの達成にグローバル・サプライチェーンが与える影響の分析、3)グローバル・サプライチェーンの効果的な統治のための戦略の策定などを目的として開かれました。

 シンポジウムは、1)グローバル・サプライチェーンの到達水準、2)グローバル・サプライチェーンは開発に貢献しているか、3)ディーセント・ワークに対するグローバル・サプライチェーンの影響、4)各国レベルでのグローバル・サプライチェーンの統治(ガバナンス)、5)グローバル・サプライチェーンの統治:グローバル・レベルでのギャップの評価と労働組合及び多国籍企業の役割、6)グローバル・サプライチェーンの統治:既存の国際的な仕組みの批判的評価、7)輸出加工区とグローバル・サプライチェーン:動向と課題、8)グローバル・サプライチェーンのディーセント・ワーク:ILOと加盟国政労使の将来的役割の八つのパネル討議を経て、「国際労働基準、とりわけILOの中核的条約、そして所得保障やより良い労働条件、安定した雇用関係の確保を目指した基準の批准と実行」を「グローバル・サプライチェーンに関する信頼のおける政策のカギを握る要素」と結論づけ、国内法や法的制度を通じたこれらの基準の効果的な実行を「グローバル・サプライチェーンにおける労働条件推進の前提条件」に位置づけました。さらに、多国籍企業には自社のみならず、グローバル・サプライチェーンの全体を通じて国際労働基準を尊重する責任があることに注意を喚起しました。また、多国籍企業及びそのサプライチェーンにおける労働者を組織するために、労働組合の能力と団体交渉の強化に向けて国境を越えた労働関係を育むことの重要性が指摘されました。

 サプライチェーンの統治に関しては、さらに、国内レベルではグローバル・サプライチェーンにおけるディーセント・ワークに関するギャップに取り組むILOの政策枠組みの実施などが、国際レベルではILOの「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」を通じたサプライチェーンのグローバル・ガバナンスなどが提案されました。また、デュー・ディリジェンス(相当なる注意)は中核的労働基準に置き換わるのではなく、実行を補足するものであることが強調されました。

 多数の多国籍企業が国際産業別労働組合(GUFs)と国際枠組み協約を締結し、子会社も含み国際的に労働者の権利を尊重し、ディーセント・ワークの促進に努めることに同意していますが、ますます多くの協約がグローバル・サプライチェーンへの言及を含むようになってきています。国際枠組み協約に含まれる諸条項の尊重を供給業者や下請け業者との取引関係を確立・継続する判断基準の一つとする多国籍企業も増えてきています。討議のために準備された背景文書『Global framework agreements: Achieving decent work in global supply chains(国際枠組み協約:グローバル・サプライチェーンにおけるディーセント・ワークの達成・英語)』は、イオン株式会社とUNIグローバルユニオン、美津濃株式会社とインダストリオール・グローバルユニオンのものも含み、最近締結された54の国際枠組み協約の分析、協約の実行に関する29本の事例研究の評価を通じて、グローバル・サプライチェーンでディーセント・ワークを促進する効果的な協約好事例の特定を図っています。労働者活動局が発行している定期刊行物『International journal of labour research(国際労働研究ジャーナル・英語)』の2015年第7巻1/2合併号もグローバル・サプライチェーンにおけるディーセント・ワークを特集し、グローバル・サプライチェーンにおける労働者支配に対する労働者の抵抗、効果的な労働者の安全と健康の保護、電子商取引グローバル・サプライチェーンが労働者に提示する機会と課題、ILOの「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」、2006年の海上の労働に関するILO条約などに関する九つの論文を通じて、グローバル・サプライチェーンでディーセント・ワークを達成する方法を探っています。


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グローバル・サプライチェーンにおけるディーセント・ワーク労働者シンポジウム

広報資料

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