持続可能な開発、ディーセント・ワーク、グリーン・ジョブ専門家会議

 2013年の第102回ILO総会では、持続可能な開発、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、グリーン・ジョブに関する一般討議を経て、環境面及び社会的に持続可能な経済に向けてすべての人にとって公正な移行を達成するためのビジョンと指導原則を示す結論が採択されました。これをフォローアップするものとして政労使各側各8人の専門家が出席して開かれたこの会議では、事務局の準備した政策指針案を元に話し合いを行い、「すべての人にとって環境面から見て持続可能な経済と社会に向けた公正な移行のための指針」を全員一致で採択しました。会議はまた、指針の普及と加盟国政労使による実際的な適用を図るため、持続可能な開発のための国内政策を設計・実施する際にこの政策指針を考慮に入れることを政労使に呼びかけ、利用しやすく使い勝手の良い指針の刊行を事務局に求めるなど、一連の提案を行いました。

 指針は、第102回総会で採択された結論に沿って、背景と適用範囲、ビジョン、機会と課題、指導原則を掲げた上で、全ての人のための公正な移行のための制度的取り決めと主要な政策分野として、総会の結論に示された、環境、経済、社会の持続可能性に同時に取り組むために考えられる9政策分野について具体的な手引きを示しています。これには、◆雇用を中心に据えたマクロ経済・成長政策、◆対象を定めた産業や部門における環境規制、◆持続可能でよりグリーンな企業を可能にする環境の形成、◆気候変動、経済再構築、資金・資源の制約が与えるマイナスの影響から労働者を保護し、耐力を高めるための社会的保護政策、◆雇用創出を積極的に追求し、雇用喪失を制限し、グリーン化政策に係わる調整措置の巧みな管理を確保する労働市場政策、◆労働者を職業上の危害やリスクから保護する労働安全衛生政策、◆経済のグリーン化を促進するための、あらゆるレベルにおける十分な技能を確保する技能開発、◆あらゆるレベルにおける政策策定手続きに及ぶ社会対話の仕組みの樹立、◆持続可能な開発の主流化、利害関係者間の対話や政策分野間の調整を確保するための制度的取り決め・政策整合などが含まれています。

 会議で挨拶したガイ・ライダーILO事務局長は、ディーセント・ワークという至上命題に正しく取り組みつつ、持続可能な未来に向けた公正な移行が確実に達成されるよう政労使が力を合わせる必要性を説き、今は「持続可能な開発と雇用は両立し得るという一般的な主張から踏みだし、それを起こす具体的な仕組みへと歩を進める時」と訴えました。

 2015年10月19~23日にボンで開かれた気候変動会議では、「各国の定める優先開発事項に従ったディーセント・ワーク及び良質の仕事の創出並びに労働力にとっての公正な移行」が気候問題に関する活動を行う上での重要な配慮事項であることが認められ、12月にパリで開かれた国連気候変動枠組条約第21回締約国会議で検討される気候問題に関する合意案に盛り込まれました。このILO指針は、パリ協定を、環境を保護するだけでなく、人間らしく働きがいのある仕事を創出し、社会的保護を拡大するような各国の政策に転換するための強力な文書となることが期待されます。


詳しくは会議のウェブサイト(英語)へ---->
持続可能な開発、ディーセント・ワーク、グリーン・ジョブ専門家会議