年次総会

第104回ILO総会

総会議場写真

 ILO加盟国中169カ国から160人の大臣を含む4,500人近い政府、使用者、労働者の代表が出席し、2週間にわたって開かれた今年の年次総会は、インフォーマル(非公式)経済で働く多数の労働者や経済単位のフォーマル(公式)経済への移行を支援する国際的な枠組みとなることが期待される「インフォーマルからフォーマル経済への移行に関する勧告(第204号)」や予算総額7億9,700万ドルの2016/17年度事業計画などを採択しました。6月12日にはクック諸島の加盟が承認され、ILOの加盟国は186カ国となりました。

 ガイ・ライダーILO事務局長が今年の総会に提出した、創立100周年記念事業の一つである「仕事の未来イニシアチブ」の詳細案は政労使三者の強い支持を受けました。アラブ被占領地の労働者の状況に関する事務局長報告付録は、パレスチナにおける前年比25%超の失業者数増加などの深刻な状況を報告しており、多くの総会出席者が演説でこの苦境に言及しました。人間らしく働きがいのある生産的な雇用の創出と中小企業に関する一般討議では、人間らしく働きがいのある生産的な雇用の達成において中小企業は決定的に重要との合意が大枠で達成されました。社会的保護の分野の内で労働者保護について初めて行われた反復討議では、ILO加盟国で労働者保護における前進が見られたことについては合意が達成されたものの、依然としてあまりにも多くの労働者が法の適用対象から除外されているか、法が実際には適用されていないか、保護水準が不十分であるといった理由からそのような進歩の恩恵を受けていないことが指摘され、仕事の世界で現在進行中の変化と歩調を合わせて労働者の保護を司るような法、規制、制度の必要性が強調されました。

 基準適用委員会では24の個別案件についてコンセンサスで結論が採択され、モーリタニアの強制労働条約(第29号)、カザフスタンとスワジランドの結社の自由及び団結権保護条約(第87号)の適用状況に総会の注意が特に喚起されました。委員会はまた、農業の結社権と農業従事者団体をテーマに、結社権(農業)条約(第11号)農業従事者団体条約(第141号)及び同勧告(第149号)を対象に実施された総合調査報告を検討し、農村経済のあらゆる労働者及び使用者に法及び実際上も結社の自由を確保する公約を再確認しました。

 6月11日に開かれた仕事の世界サミットは「気候変動と仕事の世界」をテーマとし、政労使ハイレベル・パネル討議に加え、2014年のノーベル平和賞の共同受賞者である「児童労働に反対するグローバルマーチ」のカイラシュ・サティアルティ代表フランスのフランソワ・オランド大統領パナマのフアン・カルロス・バレーラ・ロドリゲス大統領の特別演説が行われました。他に特別サイドイベントとして、6月5日には「より良く保護された移民労働者と労働力移動のより良い統治」をテーマとする移住に関するハイレベルイベント、12日の児童労働反対世界デーには2015年のテーマである「児童労働に反対、良質の教育に賛成」をテーマに児童労働に関するハイレベル・パネル討議が開かれました。12日にはまた、現代の奴隷制の終焉を目指し、昨年の総会で採択された1930年の強制労働条約(第29号)の2014年の議定書について2018年までに50カ国が批准を達成することを目標に掲げる批准奨励キャンペーン「自由のための50カ国(50 for Freedom)」が公式に開始されました。

 第104回総会の議長にはラトビアのイエバ・ヤウンゼメ厚生事務次官、副議長には、タンザニアの政府代表、米国の使用者代表、フランスの労働者代表が選出されました。6月5日には、「1930年の強制労働条約の2014年の議定書」の最初の批准国となったニジェールの批准記念式典が開かれました。


第104回総会議題

1.理事会議長及び事務局長の報告
2.2016/17年度事業計画・予算案その他の問題
3.条約・勧告の適用に関する情報と報告
4.人間らしく働きがいのある生産的な雇用の創出と中小企業(一般討議)
5.インフォーマル経済からフォーマル経済への移行の円滑化(2回討議による基準設定の第2次討議)
6.社会的保護(労働者保護)の戦略目標に関する反復討議(2008年に採択された「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」のフォローアップ手続きに基づく討議)

 総会のウェブサイト(英語)では採択された文書、投票結果、討議議事録、討議資料、記者発表などを入手できます。本会議の模様は動画でご覧になることもできます。

関連情報(英語)

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