専門家会議

非標準的雇用形態専門家会議

 2013年の第102回ILO総会に提出した報告書でガイ・ライダーILO事務局長は、「非典型的」と思われるものが典型的になり、「標準」が例外となってきた、として雇用と生産の性格の変化を論じ、激しい意見の対立が存在するこの現象に関して何らかの前進を見るには、その特徴や背景、影響について分析する必要性を指摘しました。前年の第101回ILO総会で行われた就労に係わる基本的な原則と権利に関する反復討議の結論で求められた「非標準的な雇用形態が就労に係わる基本的な原則及び権利に与える可能性があるプラス及びマイナスの影響に関し、とりわけ専門家会議の開催、調査研究の実施、国別研究の支援を行い、その規制に関する最善の慣行を特定し、共有すること」という要請に応えるものとして開かれたこの専門家会議には、日本の勝田智明・厚生労働省職業安定局次長及び松井博志日本経済団体連合会(経団連)国際協力本部参事(ILO理事)も含む8カ国の政府、労使各側8人の専門家が出席し、この分野におけるILOの活動に対する手引きを示すことを最終目的に、非標準的な雇用形態の動向、就労に係わる基本的な原則及び権利との関わり、このような雇用形態の労働者の保護に向けた規制について幅広く情報交換を行いました。

 非標準的な雇用形態について公式の定義は存在せず、標準的な雇用形態(いわゆる正社員)の枠外で提供される仕事を網羅するものとされています。今回の会議では、1)アルバイトや有期雇用などの臨時雇用、2)派遣労働その他複数の当事者が関与する契約取り決めの下で提供される労働形態、3)従属的自営業などの曖昧な雇用形態、4)パートタイム雇用の四つの雇用形態を対象としました。

 準備された討議資料は、非標準的な雇用形態の趨勢、この雇用形態が労働者、企業、労働市場の情勢に与えている影響、規制について世界の状況をまとめています。

 会議は世界の複数の場所でこの雇用形態が高いディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)欠如の状態を発生させていることを認め、政労使に対するこの雇用形態に従事する労働者の保護及びそのディーセント・ワークの維持に向けた措置並びに今後のILOの活動に関する提案を含む結論を採択しました。

 会議では、◇非標準的な雇用形態を巡る動向やその推進力、労働者、企業、労働市場に対するその影響、◇非標準的な雇用形態に関連した潜在的脆弱性に対する規制対応などの各国の取り組み経験、◇非標準的な雇用形態の労働者が就労に係わる基本的な原則や権利、その他の権利を実現する上での課題、◇非標準的な雇用形態やこの分野に存在する可能性があるギャップに対処するために現在ある国際労働基準をより良く活用する方法、◇ILOの活動優先事項などのテーマが取り上げられ、非標準的な雇用形態は労使の正当なニーズを満たすべきであり、労働者の権利やディーセント・ワークを損なうような形で用いられるべきでないとする結論文書が採択されました。結論は非標準的な雇用形態の労働者がディーセント・ワークの欠如に直面するリスクのある分野として、(1)就労機会と労働市場におけるディーセント・ワークへの移行、(2)賃金格差、(3)社会保障適用機会、(4)労働条件、(5)訓練・キャリア開発、(6)労働安全衛生、(7)結社の自由と団体交渉の7分野を特定し、(a)人間らしく働きがいのある仕事と労働条件、(b)労働市場における移行支援、(c)平等と差別禁止の促進、(d)すべての人に社会保障が適宜適用されることの確保、(e)安全で健康的な職場の促進、(f)結社の自由と団体交渉の機会の確保、(g)労働監督に対する戦略的な取り組みの採用、(h)特に不安定な雇用形態と就労に係わる基本的な権利への取り組みなどの分野で、契約取り決めと無関係に全ての労働者に保護が確保されるための措置を講じることを提案しています。ILOの活動としては、データ収集の改善や関連する国際労働基準の批准促進、結社の自由と団体交渉を阻む可能性の吟味など、長期的な取り組みのための幅広い活動が提案されました。

 会議の結論は、今年6月に開かれる第104回ILO総会で行われる労働者保護に関する反復討議の準備作業にも寄与することが期待されています。


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非標準的雇用形態専門家会議