国際女性の日:ILO/ギャラップ新刊書

ILO/ギャラップ共同調査報告-ほとんどの女性が働くことを望み、男性も大半が賛同:仕事と家庭のより良い調和の達成と男女平等に関する懸念が世界共通であることを明らかにした画期的新刊書

記者発表 | 2017/03/08

 3月8日の国際女性の日に合わせてILOとギャラップ社から発表された共同報告書『Towards a better future for women and work: Voices of women and men (女性と仕事のより良い未来に向けて:男女の声・英語)』は、多くの場合、女性と仕事についての見方は、男女で非常に似通っていることを示しています。世界の成人人口の99%以上を代表する世界142カ国・地域の約14万9,000人の成人男女を対象に行われた2016年のギャラップ世界世論調査をもとにまとめられた本書は、女性と仕事に関する世界の人々の認識と姿勢を初めて示すものとなっています。

 この報告書は様々な事実を明らかにしています。女性が有償の仕事に就くことについては、合計で女性の70%、男性の66%が望ましいことととらえ、いずれも女性が家に留まることを望ましいとする人々の割合の2倍以上となっています。日本でもこの割合は女性が76%、男性が79%に達しています。世界の女性の29%が、女性が有償の仕事に就くことを望み、41%が仕事と家族の世話の両方ができる状態を望み、家に留まることを望む女性は27%に過ぎません。注目すべきこととして、この70%には、とりわけ、現在労働力に加わっていない女性の大半が含まれています。また、重要なこととして、これはアラブ諸国・地域のような女性の労働力率が伝統的に低い地域を含むほとんど世界共通の結果です。

報告書の内容を1分で紹介(英語)

 報告書では、男女の見方が様々な面で似通っていることも示されています。自分の家族内の女性が有償の仕事に就くことを望む男性は28%で、逆に家に留まることを希望する男性は29%しかおらず、38%はどちらもできることを希望しています。世界的に見ると、ギャラップ社の定義で週30時間超とされるフルタイム雇用で働いている女性は、仕事と家庭を両立できる状況を望む傾向が高くなっています。また、教育水準が高くなればなるほど、女性に仕事と家庭の両立を望む傾向が男女共に高くなっています。家族の女性が有償の仕事に就くことが受け入れられるか否かについては、全く問題ないとする人の割合は男性(77%)よりも女性(83%)の方が少し多くなっています。このような認識が形成される上で家族の役割は重要で、女性が外で働くのを良しとしない世帯で、有償の仕事を望む女性は約3人に1人に過ぎません。世界的に見ると、15歳未満の子供がいる家庭では、女性が外で働くことを認める割合が少し低くなります。

 全世界的に、家族の世話と仕事の両立は働く女性にとって大きな課題であり、ほとんどすべての調査地域において男女共に、有償の仕事に就く女性が直面している最大の問題の一つとして「仕事と家庭の両立(ワーク・ファミリー・バランス)」を挙げています。各地で挙げられているこの他の問題としては、不公平な待遇、虐待や酷使、権利乱用、職場における嫌がらせ(ハラスメント)、報酬の良い仕事の不足、賃金不平等などがあります。例えば、サハラ以南アフリカでは、ワーク・ファミリー・バランス(18%)と同じくらい、職場における不公平な待遇・差別(19%)が指摘され、北・南・西欧では、ワーク・ファミリー・バランスに加えて、同一賃金も重要な課題と見られています。北米では賃金不平等(30%)が第1位で、これにワーク・ファミリー・バランス(16%)、不公平な待遇・差別(15%)が続き、北アフリカ、サハラ以南アフリカ、南アジア、アラブ諸国では、「女性の就労を家族が認めない」が、働く女性が直面する5大障害の一つに挙げられています。働く女性が直面している障害についての女性の見解は年齢と共に変化し、若い女性(15~29歳)では不公平な待遇や虐待・酷使・権利乱用、職場におけるハラスメントを挙げる場合が多いのに対し、30~44歳の年齢層では手頃な料金の保育・介護サービスの不足を挙げる割合が他の年齢層よりも高くなり、また年齢が上がるにつれて、男性と比べて不平等な賃金を指摘する傾向が高くなります。

 世界中の有業女性の大半が、自分の収入は世帯所得の相当部分(30%)または主たる部分(26%)を構成すると考えていますが、主たる稼ぎ手を自認する割合はまだ男性の方が高くなっています(有業男性の48%)。しかしながら、教育水準が高い有業男女間においては、世帯所得への寄与割合に関する認識の差は縮小します。

 世界的に女性の雇用機会に関して男女は意見を共有しています。男性と同様の教育や経験がある場合、女性が自分の住んでいる地域や町で男性と同様の良い仕事を見つけられる機会は等しいと男女共に答える傾向が高く、さらに世界的に女性の25%(日本は22%)、男性の29%(日本は33%)が、女性の方が良い仕事を見つけられる機会がよりあると考えているものの、得られる証拠からは労働市場における男女格差が世界中で存在することが示されています。この認識は地域による違いがあり、女性の教育到達度と労働力率に左右されるところが大きく、例えば、機会平等の認知水準が最も高い地域である北米では、男女の資格が同等であれば、良い仕事を見つけられる機会も等しいと大半の人(55%)が考えています。この認識は、女性(50%)よりも男性(60%)の方が高くなっています。一方で、男女の経験と教育水準が同等であっても女性の方が機会が少ないとの認識が欧州は一番高くなっています。世界的に、男女の資格が同じような場合に女性の方がより良い雇用機会があると見る女性は、教育水準が高くなるにつれて少なくなります。女性の雇用機会に関する男性の見解は教育水準にはあまり左右されません。

 ガイ・ライダーILO事務局長は、この調査が明らかにしたこととして、「世界中ほとんどの男女が、女性は有償の仕事に就くことを好ましいと考えていること」を挙げ、職場における男女平等の達成にとっては、「女性が有償の雇用に留まり、そこで前進できること、そして男性によるケア労働の公平な分担を奨励するような、家族を支える政策」が決定的に重要であると説いています。ギャラップ社のジム・クリフトン会長兼最高執行責任者(CEO)は、「女性のためだけでなく、人類全てのために、世界は男女平等を推進し、働く女性に力を与える必要がある」と訴えています。

 ILOは2019年の創立100周年に向けて展開している特別事業の一つである「働く女性100周年記念イニシアチブ」を通じて、変化する仕事の世界の中で長く続く完全な男女平等を達成することを目指していますが、この報告書はそのための今後のILOの活動を形成する助けになることが期待されます。

 なお、日本でも3月22日(水)に、本書を取りまとめたスーザン・メイバッド上級ジェンダー専門官がジュネーブのILO本部より来日して日本と世界の調査結果を発表するセミナーを開催します。バンコクにあるILO東・東南アジア太平洋ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)のジョニ・シンプソン・ジェンダー・平等・非差別上級専門官やギャラップ社の専門家も交え、国内の研究者などと意見を交換する機会も設けられます。

 報告書の内容を図示するものとして、女性は外で働くべきか、家族の世話をすべきか、それとも両方すべきかといった質問に対する各国の男女別の回答と、実際の女性のフルタイム/パートタイム就業率や求職者比率、非労働力率といった労働市場データを示す図表も作成されています。

日本の任意資金協力を得て実施されているネパールのILO事業を通じて女性が女性の成功を手助け(英語)
 報告書によれば、女性の70%が仕事に就くことを望み、男性も66%がそれに賛同しています。ネパールでも約半分の女性が自らを世帯の主な稼ぎ手であるか世帯収入の相当割合に貢献していると報告しています。ネパール女性起業家連盟(FWEAN)は日本政府の任意資金協力とILOの支援を受けて、女性起業家に必要な技能研修を提供しています。研修を受けた女性起業家は既に350人に及んでいます。起業家としての女性の成功は、事業を興し、雇用を創出するだけに留まりません。女性はこの過程で自信を得、競争の仕方を学び、社会や共同体に関与し、自分自身の発言力を育むことができます、とメイバッド上級ジェンダー専門官は説いています。

◎ILO新刊:高い貢献度にもかかわらず見返りが少ないアジアの女性

 国際女性の日を前に発表された別のILOの新刊書『Transformation of women at work in Asia: An unfinished development agenda(アジアの働く女性の変容:未完の開発課題・英語)』は、変容しつつあるアジア経済における女性の役割を分析し、女性が直面しているこの地域の労働市場における障害に光を当て、どんなに教育水準が高く、どんなに都市化された部門で、子供の数が少なかろうと、アジア全体を通じて女性の労働力率は低下または低迷し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に就く機会が欠如していることを示しています。

 地域全体に加え、バングラデシュ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、スリランカといった国々の比較研究を行った本書は、中等教育以上の学歴に達しない限り、教育水準の高さも女性のより良い仕事を得る機会の拡大にはつながらないことを示しています。ILOが大手出版社SAGE社と共同で出版した本書は、アジアの女性は依然として安定した雇用の確保という点で不利な立場にあり、就業は少数の産業や職業に集中し、男性よりも賃金が低く、自営業や無償の介護労働などの脆弱な就業形態にある可能性が高いことを明らかにしています。

 報告書の共著者であるILO南アジア・ディーセント・ワーク技術支援チーム(DWT)兼インド国別事務所のシェール・シン・ベリック次長は、本書が見出したこととして、アジア全体を通じて、女性はこの大陸の目覚ましい経済成長に相当程度寄与したにもかかわらず、社会規範や経済的な要因から労働市場への参加が制限されている事実を指摘しています。東アジアでは1994年に平均70.8%であった女性の労働力率が2014年には63.3%に低下し、同じ期間に南アジアでも36.4%から30.6%へと低下しています。この二つの小地域を除く他の途上地域では全体的に高い男女間の労働力率格差が縮小を見せてはいるものの、社会規範と代替的な雇用機会の欠如が依然として女性の就職を抑制し続けています。報告書のもう一人の共著者であるスクチ・ダスグプタILO上級経済専門官は、アジアでは、日本やシンガポールなどの世界屈指の裕福な国の幾つかにおいてさえも、様々な要因から女性の労働力率が男性よりはるかに低く抑えられ続けていることを指摘しています。そして、進展はあるものの、教育を受けた女性はなおも社会文化的、そして実際的な制限に直面し、技能の十分な発揮が妨げられており、訓練や労働市場の主な特徴であり続けている職業分離が女性の選択肢を限り、男性よりも賃金も地位も低い仕事に女性を閉じ込めてしまっていると説いています。

 ベリック次長は、雇用の質と量の違いを強調し、労働力率の問題は氷山の一角に過ぎず、例えば、東アジアの先進国では女性の労働力率が世界平均を上回ることから女性労働者の不完全就業の問題が隠蔽されていること、同様に、カンボジアやベトナムなどでは女性の高い労働力率が世帯内の無償の活動に占める女性の割合の不均等な高さや低技能・低生産性・低賃金の仕事への女性の集中といった事態を伴っていることを指摘しています。

 報告書はディーセント・ワークと起業家精神を促進する以下の六つの政策を柱に、女性の労働力率を後押しするような包括的な取り組みを提案しています。

  1. 女性に開かれた、より多くの人間らしく働きがいのある仕事の創出
  2. 質の高い教育・技能・起業家精神育成の機会の改善
  3. 女性の時間的な負担の削減
  4. 交通機関・基盤構造の改善
  5. 法的権利及び保護の強化
  6. 女性の仕事の測定方法の改善

 著者らは、女性労働力の十分な活用には、地域の成長と開発に拍車をかける膨大な潜在力が秘められていることを指摘して、「性に基づくディーセント・ワークに対する障害の削減」を、女性の経済的エンパワーメント促進における基本事項と結論づけています。

◎中南米・カリブで女性の失業率が9.8%に

 中南米・カリブでは2016年に女性の失業率が男性より急速に上昇し、9.8%と、10年ぶりに二桁に迫ろうとしています。国際女性の日を前にした3月6日に国際通信社インター・プレス・サービスに行った投稿記事「失業とインフォーマル経済:中南米の女性にとっての主な課題(西語)」で、ホセ・マヌエル・サラサールILO中南米・カリブ総局長は労働市場におけるさらなる平等に向けた努力の継続を呼びかけました。

 ILOの年次刊行物『Panorama laboral 2016 de América Latina y el Caribe(中南米・カリブの労働概観2016年版・西語)』によれば、2016年に女性の労働力率は上昇を続け、依然として男性(74.6%)よりは非常に低いものの、前年より0.4ポイント上がって49.7%となりました。雇用情勢の悪化は、労働需要を計測する数値である女性の就業率が前年より0.3ポイント減の44.9%となったことによります。働いている女性の半分近くがインフォーマル(非公式)経済に従事し、その上、女性の方が学歴は高いにもかかわらず、賃金は男性100に対して女性は83.9となる格差が存在します。

 サラサール総局長は、低成長そして時には景気後退の影響を受けて、労働市場における女性のデータがより好ましくない状況は、「行動の呼びかけ」と見るべきとして、「ガードを下げるべきではない」と訴えました。さらに、経済、社会、文化の変容を伴うに違いない構造的な課題に直面している現状を指摘して、男女平等の達成を最優先事項とすべきことを政労使に呼びかけました。総局長はとりわけ、積極的雇用政策、ケア基盤構造及びネットワーク並びに介護・保育サービスのための新たな施策、家庭責任の分担を促進する戦略、教育・職業訓練の改善、女性の起業促進、社会保障の適用拡大、女性に対する暴力の防止・撲滅に向けた決然とした行動などを含む政策の組み合わせを検討する必要性を訴えました。そして、雇用における平等は、この地域がより良い仕事の未来を享受するために最も重要な課題の一つであり続けている事実を強調しました。

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 以上は次の3点の英文記者発表の抄訳です。