児童労働

ILOの取り組み

ILOは、条約設定と技術協力プログラムの2つを通じて、児童労働問題に取り組んでいます。
ILO条約については、1919年のILO設立当初から、工業、農業、漁業、鉱山など産業部門別に就業最低年齢を定めた国際基準を設定してきました。1973年には、全産業を対象とする就業最低年齢を定めた第138号条約を採択。1999年には「最悪の形態の児童労働」をなくすための取り組みを直ちに始めることを定めた第182号条約を採択しました。

1992年からは、技術協力プログラム「児童労働撤廃国際計画(IPEC)」を実施。「最悪の形態の児童労働」撤廃に重点を置きながら、最終的には全ての児童労働をなくすことを目標としています。2015年から、持続可能な開発目標(SDGs)ターゲット8.7に沿い、2025年までに児童労働を、2030年までに強制労働を根絶させることを目指しています。

最新の統計

2020年時点の児童労働の現状をまとめた最新の報告書「児童労働:2020年の世界推計、動向、前途 」(2021年発表)から5つのポイントを紹介します。

児童労働の原因

世界中で、多くの子どもたちが児童労働に陥る原因としては、以下のようなものが挙げられます。
  • 貧困
  • 教育機会の欠如(近くに通える学校がない、通学手段がない、制服代・文房具代・昼食代を払えない、不十分なカリキュラム、教員の不足、親が教育を受けていないため子どもを学校に通わせようとしない、など)
  • 児童労働を当然視する地域社会、また無関心
  • 差別
  • 武力紛争や自然災害、HIV/エイズなどによる社会の混乱(子ども兵士、孤児、など)
  • 農村部から都市への移住によるスラム化
  • 不適切な法律の施行、など

最悪の形態の児童労働とは

児童労働の中でも「最悪の形態の児童労働」は、ILOの182号条約(1999年)によって、以下のように定められています。
  • 人身売買、徴兵を含む強制労働、債務労働などの奴隷労働
  • 売春、ポルノ製造、わいせつな演技に使用、斡旋、提供
  • 薬物の生産・取引など不正な活動に使用、斡旋、提供
  • 児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある労働

児童による危険有害労働とは

最悪の形態の児童労働の一つ。第182号条約の第3条(d)項で、「児童の健康、安全もしくは道徳を害するおそれのある性質を有する業務又はそのようなおそれのある状況下で行われる業務」とされています。

児童による危険有害労働は、最悪の形態の児童労働の中で最多数を占めています。
2020年時点で、5歳~17歳で危険有害な児童労働に従事する子どもたちの数は7,900万人(児童労働者全体の約半数)です。

なお、各国政府が、禁止すべき児童による危険有害業務の種類を決定するにあたっては、関係のある使用者団体及び労働者団体と協議した上で、特にILOの第190号勧告(1999年)第3項の規定(以下a ~e)を考慮し、国内法令又は権限のある機関によって決めることとされています。
(a) 肉体的、心理的または性的な虐待
(b) 坑内、水中、危険な高所又は限られた空間
(c) 危険な機械等の使用、重い荷物の運搬
(d) 危険有害な物質、熱、騒音、振動等、不健康な環境
(e) 長時間労働、夜間労働、外出の不当な制限等、困難な条件