ILO/日本マルチバイ計画
教育支援による児童労働の削減達成:バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域の農業部門における最悪の形態の児童労働削減計画
ILOと日本政府はILO/日本マルチバイ計画を通じてバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域の農村における最悪の形態の児童労働の削減に向けて手を組みました。当初の対象地域はマギンダナオ州とラナオ・デル・スル州です。
◇背景
フィリピン統計機関が実施した2011年の児童調査によれば、フィリピンの児童労働者は210万人を数えます。割合が最も高いのは北ミンダナオ地方であり、逆にマニラを含む国家首都地方の割合は最も低くなっています。性別で見ると、男子(62.9%)が女子(37.1%)よりも多く、年齢別では、働く子どもの半分以上が15~17歳層(53.2%)であり、続いて10~14歳層(38%)、5~9歳層(8.8%)の順になっています。農場や農園、危険な鉱山、路上、工場、家事労働者として個人宅で働いており、95%ほどが危険有害労働に従事しています。児童労働者が最も多く見られる産業はなおも農業であり、全体の58%が従事しています。
フィリピンは「1973年の最低年齢条約(第138号)」と「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)」のどちらのILO条約も批准しており、児童労働撤廃のための公式の国家計画として「フィリピン反児童労働計画(PPACL)」が採択されています。この計画は労働・雇用省を委員長とする児童労働全国委員会(NCLC)が、政府、民間セクター、労使団体、非政府組織(NGO)、国際開発機関と協働して進めてきた危険有害及び搾取的な形態の児童労働の防止、従事者の保護、引き離し、そして適当な場合には、治療と再統合に向けた努力を結集したものです。ILOは児童労働・強制労働撤廃国際計画(IPEC+)を通じて計画の実施を支援しています。
◇対象
プロジェクトはバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域で政府、社会的パートナーである労使団体、市民団体、地域住民、普及員の継続的な能力構築を目指しています。まずは、小自作農が多く、農業が主たる経済基盤であるマギンダナオ州とラナオ・デル・スル州で実施されます。両州は投資不足、乏しい基盤構造、限られた事業機会、高失業の課題を抱えており、経済機会の乏しさに自然の脅威が加わり、住民の国内避難の動きが見られ、人間の安全保障に対する深刻な影響があり、最も脆弱な集団がさらに貧困と不平等、疎外に陥る事態が引き起こされています。教育は得られず、得られたとしても提供される教育の質は時に劣悪であり、高校中退率の上昇に寄与しており、これは翻って、児童労働に従事する子どもの割合を増やす結果を招いています。さらに重要なこととして、農場内外における労働需要を満たすために、子どもが働くことを促進する文化的慣習や規範が存在します。
プロジェクトは既に学校を中退したかその危険があり、危険有害環境で働くあるいはその他農村コミュニティーに付随してみられる何らかの活動に従事する5~17歳の子どもを対象としています。子どもの家族や保護者に教育必需品の支援が提供され、世帯経済支援の一環として事業・開業資本も支給されます。
◇目的
プロジェクトは、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治政府が政労使利害関係者と非政府組織の関与を得て、社会・経済開発に関する政策、事業計画、予算に児童労働問題を組み込むことによって児童労働をなくす効果的な戦略を立てるための支援を提供します。その成果目標は次の三つです。
- 非公式教育の提供と機会の改善、技能訓練機会の拡充
- 経済的エンパワーメントの機会の提供、児童労働撲滅に向けた農村コミュニティーの動員
- 最悪の形態の児童労働の削減・撤廃に向けた規制枠組み及び制度・機構の整備を通じた児童労働に関する政策対応の改善
この目標の下、フィリピン開発計画(PDP)やバンサモロ統一開発計画(UBDP)、フィリピン・ディーセント・ワーク国別計画(DWCP)に示されている政府の児童労働に対する取り組みの公約を支援します。具体的には、以下の九つの技術分野をもとに、地域及び対象州の二つのレベルで児童労働削減に向けた環境作りとその強化を図ります。
- 農業部門におけるものを中心とした、知識基盤の拡充と政策の策定・実施に向けた主要パートナーの能力強化
- 児童労働に関する政策及び法律の対象範囲の拡大に向けた主要パートナーに対する技術支援及び広報提言
- 児童労働者及び児童労働に陥る危険がある子どもが政府の提供する教育訓練機会を利用できる機会を広げるためにIPEC+計画で開発されたモデルを活用
- 地域社会基盤構造計画や児童労働監視システムを通じた、社会・経済資本形成に向けた地域社会のエンパワーメント
- 広報提言・啓発キャンペーンを通じた児童労働に対する態度変容及び同盟結成
- 児童労働者及び児童労働に陥る危険のある子どもたちの社会開発に資金を配分するよう地元自治体を啓発
- 児童労働の特定、監視、削減に向けた地元の能力開発・知識構築
- 最悪の形態の児童労働にさらされている家族や地域社会の経済的エンパワーメント
- 児童労働防止に向けた教育訓練プログラム
◇主な活動
上向きの介入活動
バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域レベルの介入活動は、以下の分野における政策・法律枠組みの強化を通じて活動を可能にする環境を形成することが期待されます。
- 法規枠組み・政策の強化を通じた政府の児童労働対処力の向上
- 児童労働ユニットや児童労働リソースセンター、各種機関などの政府機関の能力強化
- 地域、州、地区、計画実施範囲、民間セクター、企業、開発パートナーなどのあらゆるレベルで児童労働問題を主流に据え、効果的な調整のための相乗効果を構築
下向きの介入活動
農業部門における最悪の形態のものに重点を置いて児童労働に取り組む直接的な行動と能力構築の両方の介入活動は州レベルで実施されます。
- 働く子どもを公式の教育制度の本流に戻す手続きと共に、健全な学校運営に関わる制度及び構造を可能にする手続きや機構を地元自治体と共同で開発
- 児童労働をなくす機会を家族に提供することを目指し、地域社会を基盤としたサービス提供の場や職業訓練機関において働く子どもと家族の両方に提供される職業技能訓練モデルの開発
- 働く子どもとその家族を対象とした見習い実習制度の設計とその試行
- 児童労働状況の監視及び問題対処、監視システムの開発に向けた力を地域社会に付けるため、地域社会基盤構造計画を通じて社会・経済資本を構築
- ILOのツール、専門知識、手法を用いた農業部門における危険有害労働及び児童労働に関する知識の向上、社会的保護及び労働者団体の結成を通じた非公式(インフォーマル)経済の組織化
- 介入活動のためのデータベースの開発、直接受益者モニタリング・システム(DBMS)、児童労働モニタリングシステムをフォローアップするものとしてあらゆる情報をデータバンクに保存
◇これまでの成果
- 非公式教育の提供・機会の改善が図られ、技能訓練の機会が拡大
- 経済的エンパワーメントの機会が提供され、児童労働撲滅に向けて農村コミュニティーを動員
- 最悪の形態の児童労働の削減・撤廃に向けた規制枠組み及び制度・機構の整備を通じた児童労働政策対応の改善
◇2021年春現在の進捗状況
- プロジェクトの参加型実施を確保するために設置が予定されているプログラム諮問・評価委員会(PARC)の付託事項と構成員が確定
- 地域及び各州レベルで活動する児童労働担当者を特定
- 市民団体や非政府組織などの潜在的パートナーの洗い出し作業中
- 州レベルの介入活動の対象となる町村選定作業中
- 児童労働とフィリピンの法・政策に関する訓練マニュアルを作成中