児童労働反対世界デー2017:紛争や災害の被災地で、子どもたちを児童労働から守る

紛争や災害が児童労働に与える影響とは? 紛争や災害は人々の生活に破壊的な影響を与えます。経済状況が悪化し、両親や兄弟がもたらす所得は、もはや家族を養うためには十分ではありません。子どもたちは、学校をあきらめることしか選択の余地がなく、自分自身や家族の生活を支えるために働きに行きます。 紛争や災害時においては、多くの子どもがとりわけ脆弱な立場にあります。その理由は、彼らが家族から離れていることです。子ども自身も気づかず、世話をする人の見守りもない中で、移動の途中や目的地に到着した後に、簡単に人身取引や児童労働に陥ります。 紛争の最中、子どもたちは兵士にされることがあります。その目的は戦闘員としてだけではなく、スパイ、補助兵、運び屋などさまざまであり、性的搾取や虐待の犠牲になることもあります。戦闘の危険性に加えて、彼らは身体的、精神的な虐待、厳しい任務、罰に苦しむこともあり、頻繁にアルコールの摂取や薬物の使用にさらされます。このことは、子どもたちの心に深い傷を負わせ、紛争後の社会復帰も簡単ではありません。ILOの第182号条約は、このように子どもたちを武力紛争に関わらせて、利用することは、最悪の形態の児童労働であるとみなしています。 紛争や災害は学校の破壊にもつながります。教育機関を失うことは、児童労働に向かわせる大きな要因です。学校を攻撃することは国際法で禁止されており、国連安保理決議1612では、そのような攻撃は、子どもの権利の重大な侵害であると認めています。戦争により、学校が攻撃、損壊、破壊される場合、あるいは軍事的目的に利用される場合、回復不能の損害が教育施設と、学校という聖域の両方を侵害し、子どもたちが、学校は教育のための安全な場所であるという認識を永久に損なわせることにつながります。 紛争や災害によって多くの人が家を追われます。家を追われた子どもたちは、とりわけ児童労働に陥りやすくなります。それは、子どもたちが強制移動によって、両親の保護から離れたり、学校での教育を中断する可能性があるからです。新しい土地での学校へのアクセスという問題にも直面します。たとえ入学ができたとしても、移住先でのカリキュラムや言語に適応する際に大きな困難に直面します。 難民の子どもたちは特に、労働市場へと追い込まれるという問題に直面しています。受入国の政府が課す制限により、大人の難民は労働市場へのアクセスを阻まれたり制限を受けたりしています。多くの国では、完全な社会保障へのアクセスがありません。そのような難しい状況下において、親は子どもが家族の所得を補うよう、子どもたちの労働に頼る可能性があります。親に連れてこられなかった子どもたちは、生きていくために児童労働もいとわなくなることが多く、特に脆弱な立場になります「最低年齢」条約(第138号)「最悪の形態の児童労働」条約(第182号)、ILOの「雇用」(戦時より平時への過渡期)勧告(第71号)子どもの権利条約紛争下の子どもたちの保護の強化を目的とした国連安保理の決議1612号を含む国際法、国連安保理決議、国連の条約を侵害しています。 子どもたちは危険から守られなければなりません。児童労働は子どもの身体的、精神的健全性に深刻な危害を与えます。とりわけ紛争や災害といった状況下で、子どもたちは、彼らの健康、安全、幸福に深刻な危害を与える、危険・有害な児童労働に従事します。戦争で荒廃した地域で、金属や鉱物の採掘、ごみあさりをする子ども、清掃、農村地や路上で働く難民の子どもたちはみな、高いレベルの危険にさらされています。 子どもたちは紛争や災害の影響を受けている間にも保護され、子どもたちの利益が最優先に守られる権利があります。彼らは普通の生活を取り戻し、できるだけ早く学校に戻る権利があります。教育は児童労働撤廃と、社会の繁栄を発展させるために重要です。子どもたちにとって、自分自身や、家族が生き延びるために働かなければならないことは、全く適切なことではありません。すべての子どもたちは、いつの時でも守られなければならないのです。 児童労働は、子どもの人権侵害であり、開発のための持続可能なディーセント・ワークに大きなブレーキをかけることになり、人類の汚点でもあります。児童労働撤廃は世界的に行う、世界で同意された優先的課題です。持続可能な開発目標の目標8.7は、2025年までにすべての形態の児童労働の撤廃に世界が取り組むことが公約されています。この目標は、どんなに困難で課題の多い状況であったとしても、児童労働反対の取組みにおいて、一人の子どもたちも取り残されることがなかった場合にのみ、達成されます。 これまでの取組みについて 近年、紛争や災害の状況下における児童労働の問題に対する注目が高まっています。2010年に、ILOは、以前武力や武装グループに関与していた子どもたちの、経済的な再統合に向けた指針を作成しました。2011年にはSCREAMの児童労働と武力紛争についての特別モジュールを発表。2012年には人道的活動における子どもの保護のための最低基準が採択され、その中には児童労働に関する具体的な基準も含まれました。 人道的活動における子どもの保護のための関係機関の協力に関する児童労働タスクフォースを、ILOとプラン・インターナショナルとの共同で立ち上げ、関係機関のための指針:「緊急時の児童労働者の保護の必要性を支援するツールキット」が2016年に発表されました。これは児童労働から子どもたちを保護することに係わる人道活動家のための指針を提供するものです。2016年のILO理事会によって、難民や、強制的に移動を余儀なくされた人々への労働市場へのアクセスに関する原則が採択されましたが、この原則はILO加盟国政労使に対して、児童労働の廃止、防止のための対策を求めています。

2016年には、児童労働、強制労働、現代の奴隷制、人身取引への取組みをの強化を図ることを示す開発目標8.7同盟が作られました。開発目標8.7同盟の枠組みの下に、ILOでは、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所、国際移住機関、欧州安全保障協力機構、移住政策開発国際センター(ICMPD)といった多機関のパートナーと協働しています。 6機関の活動グループとして、危機の状況において児童労働や強制労働への取組みに力を注いでいます。

ILOは紛争や災害の中で児童労働を余儀なくされた多くの子どもたちへのサポートにおいて、加盟国政労使を支援しています。ハイチやミャンマー、ネパール、コンゴ共和国の子どもたちが、児童労働をやめて、教育に戻りました。以前武装勢力や武装集団に属していた子どもたちを対象に、ILOは労働における基本的原則及び権利に基づく統合的アプローチにより、児童労働を防止し、紛争後の状況下で経済的に回復させるための具体的なツールを開発しました。また、危機や、危機的状況の中での児童労働への取り組みに関する訓練を、政労使、NGOを対象に実施しました。 今後、さらに行うべき取り組みについて 紛争や災害の被災地における児童労働に対して、緊急に取り組む必要性があります。児童労働は、人道的支援の中で、また再建、復興時に、優先的に取り扱われるべき問題です。政労使、人道活動家は、紛争や災害時の児童労働への取組みにおいて、重要で果たすべき役割があります。もし世界が開発目標8.7を達成しようとするなら、われわれは紛争、災害の被災地を含めて、児童労働を終焉するための活動に拍車をかける必要があります。それらは、協調して取り組む必要があります。 世界デーに際し、われわれは次のような目標に向かって協調した取組みを求めます:

  • >人道的支援における、児童労働の統合と早期の対応
  • >教育、社会的保護、生計向上への介入、大人へのディーセント・ワークへのアクセスを通じて、児童労働の根本原因に焦点を絞る
  • >児童労働や人身取引に陥らないよう、難民や、住む場所を失った子どもたちの人権を守る
  • >武力紛争や最悪形態の児童労働への子どもたちの使用を終わらせるため、社会対話を通して、協力した取組み、啓発を強化する
  • >再建や復興プロセスの中で児童労働を防止するためのディーセント・ワークアジェンダ(技能訓練、社会的保護、大人と就労年齢の若者のためのディーセント・ワーク)の促進に、引き続き焦点をあてる。
  • 国内機関、開発機関、人道機関間やプログラム間の調整と協力の強化
  • 紛争や災害の状況下で児童労働問題に取り組む際の、政労使、官民企業の役割の強化
  • 児童労働を防ぐため、世帯の雇用、生計、社会的保護の促進
  • ディーセント・ワークのためのパートナーシップと連携の強化
  • 紛争や災害時において、児童労働を引き起こすものについての知識と、各機関の能力向上
年、児童労働反対世界デーにあなたも参加しましょう! 児童労働反対世界デーは、児童労働に反対するあなたの声を上げる機会です。ILOは、あなた方ひとりひとり、組織が今年の世界デーに参加することを期待しています。 わたしたちと一緒に、児童労働反対の世界的な動きに声をあげましょう。

 
詳細については、
こちらをご覧ください。
または、 fundamentals@ilo.org にお問い合わせください。

英語原文はこちらより、ご覧ください。