現代の奴隷をなくすために立ち上がろう

ある家事労働者の声

現代の奴隷の被害者の中には、雇用主からの虐待を受けている家事労働者らがいます。その一人であるエンリエッタ・シリアディン さんが、14歳の時にフランスに渡ってから、奴隷のような扱いをうけるまでの経緯と現状について話してくれました。


経緯について


エンリエッタ:私がトーゴからフランスに渡ってきたのは14歳の時でした。シモ-ヌという女性と一緒でした。両親は女性を信頼をして私を預け、私は彼女の家で働くため、フランスに渡りました。両親は、私の未来がより良いものとなり、勉強を続けることが出来ると思っていました。しかしそうはならなかったのです。2ヵ月後、私は学校には行っていませんでした。契約書もかわされることなく、結局ほぼ5年間私は彼女の家で働き、子どもたちの残した物を食べ、床に寝かされました。休息や休暇の取得、教育、医師の診察、外出の権利はありませんでした。私は階下に子どもたちを迎えに降り、すべての家事をこなし、ただそれだけをして暮らしてきました。

その後、私はヤスミナという別の女性の家に預けられました。彼女はシモーヌにお金を支払い、私が彼女のために働けるようにしました。私はお金も訓練も与えられませんでした。私は家で彼女に言われる事をすべてしました。馬鹿にされたり、私が価値の無いものであるかのような扱いを受けました。

ある日、私は逃亡を試みました。しかし叔父が私を引き戻し、雇用者が適任者に頼み、契約書をかわす事を約束したと言いました。

その後、私に契約書が届きましたが、ほぼ望みを捨てました。私は彼女が契約書に書いたこと全てをロボットのようにこなしました。何年か経ち、自分の体力や視力が落ち始めました。後になって病院で分かったのですが、私は貧血になっていました。適度な栄養を取っていなかったからです。

ヤスミナが私に言った言葉です。私は誰にも愛されていない、誰もあなたを望んでいない。自分だけが私の世話を喜んで引き受けたのであり、それほど自分は広い心を持っている。だから私は彼女に感謝をし、彼女のためになら何でもしなければならないと。

 

どのようにして、逃げることができたのですか?

HS:ある日、私が住んでいるビルの清掃人と話をした時のことでした。彼女は「あなたはまだ若いのに、なぜ私たちは、あなたが子どもたちを迎えるために階段を下り、子どもたちを連れて上がってくる姿しか見ないのかしら。」私は我慢の限界を感じました。何かしなければ。そうしないと、私は死んでしまう。窓から逃げ出す事だってできる。さもなければ、やせ衰えていくだけなのだ。清掃人は私に言いました。「私はあなたに何もしてあげられないけれど、あなたの人生は信じ難いものよ。だれもあなたの話を信じないでしょう。まずヤスミナの家族のところに戻りなさい。でも彼女が家にいないときは、私のところで一緒にご飯を食べましょう。」私は彼女の言うとおりにしました。彼女は警察に、私が話したことを全て話してくれました。ある日警察がやって来て、私はようやくこの家族から逃げ出すことができたのです。私は本国に送還され、里親の元に落ち着きました。


どうして訴えることを決意したのですか?

HS:私が「現代の奴隷反対委員会」の会合に連れて行かれた時の事です。およそ60人がそこにいました。彼らにも、生きた心地もしないような経験談がありました。若い女性たちは暴力を受け、レイプされていました。そして危険な状況下での妊娠中絶を受けさせられたり、手には傷がありました。逆らうと地下に閉じ込められて縛られていた傷跡です。他にも雇用主に従わなければ、ホットプレートの上に押し付けられて火傷を負った人もいました。

その日、私はひとりではないことに気付きました。そして沈黙を続けることは出来ないと分かったのです。その会合は日曜日に行われましたが、会合が終わると私は、自分にひどい扱いをした人たちを訴えたのです。なぜなら彼らには、私にそのような事をする権利など無く、やめさせなければならないからです。私は委員会からの支援を受けました。そして今も受け続けています。

 

その後について

HS:警察はシモーヌを探しましたが、探し出すことはできませんでした。私は家族のところに戻って分かったことは、家族もまた私と同じように騙されていたのです。家族がシモーヌに、私の居場所や様子を尋ねても、彼女は、私が逃げ出したので、居場所を知らないと言ったのです。ヤスミナについては、彼女と夫に刑務所での10年の拘留と1万ユーロの罰金が言い渡されました。

 

法廷での様子はどうでしたか?

HS:地方裁判所にいくと、すぐに自分の公判が始まりました。私は単に自分が怒って、不正なことをしていると責められるのではないか、と思っていました。しかし私は恐れませんでした。それは私の訴えはすべてが真実だったからです。一方で、訴えられた夫婦は何が起きていたのかを明確に話すことができず、どのように私を扱っていたかについて、認めることができませんでした。その事実に私は勇気付けられました。立場が逆転したのです。私は自分に言い聞かせました。「私は自分自身のために話そう。そして同じような立場にある少女たちのために話そう。彼女たちの声は、誰にも聞いてもらえなかったけれど、どのような状況下にあっても、彼女たちは確かに存在し、生きる尊厳や権利を持っているのだ。」

 

現代の奴隷反対委員会について

この組織は、フランスの家事労働者や強制労働者たちの支援をしています。設立以来、500人以上の人々を支援し、そのほとんどは女性たちです。フランス以外にもヨーロッパや国連でも人身売買の撤廃に取り組んでいます。弁護士らによる支援には、ボランティアの法律家による法廷での弁護や、刑事、行政上、民事訴訟の手続き、欧州人権裁判所への申立てまでを含みます。支援を受けた人は、施設に保護され、医療・心理的治療を受け、社会、教育的サービスを受けることができます。委員会はフランスの行政機関、大使館、国家機関とも連携し、被害者のための支援をしています。

 

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