音楽活動を通じた児童労働への取組み
「児童労働に慣れてはいけない」
西アフリカ出身のアーティストらが、スイスのジュネーブで行われたILO総会を訪れ、児童労働は今も存在し、取り組みが必要であることを、出席者らに訴えました。
ジュネーブ- 西アフリカに位置するコートジボワ-ル出身の女優アキシ・デルタさんは、長年、国営テレビ(RTI)の人気コメディーショーに出演したスターのひとりでした。
なぜそんな有名人が、歌で児童労働撤廃を訴えようと結成されたコートジボワールの歌手グループの一員となったのかと思う人もいるでしょう。しかし、このことは彼女にとってごく当然のことでした。彼女自身が元児童労働者であり、今でもその代償を支払い続けているのです。
「読み書きは、私にとってとても難しいこと。仕事の上で大きなハンディーキャップになっているわ。私は一度も学校に行っていないから」
彼女は当時を振り返ります。「2歳から8歳まで、私は祖母と暮らしていて、ほとんどの時間を田畑で過ごし、8歳になったとき、おばが私を連れてアビジャンに行ったの。そこはコートジボワールの経済の中心都市で、私は良くしてもらった。でも、学校に行くことはなかったわ」
「13歳で、これまで教育を受けていなかった私はメイドとして働きました。朝の6時から夜の9時まで休み無く働き続けても、収入はやっと生きられるほどだったのよ」
好転への変化
アキシのようなケースは、多くの開発途上国では例外ではありません。しかし、搾取や、身体的な虐待を受けた後、コートジボワールの有名なミュージシャンに出会い、一緒に仕事をしようと誘われたことをきっかけに、彼女の人生は好転します。彼女はその後女優になり、国営テレビで何年も放映された人気コメディーショー「Ma Famille」(私の家族)や、「Comment ça va」(うまくいってる?)で主役を務める機会に恵まれました。
ある時、児童労働への反対を訴えるため、コートジボワールのアーティストらが歌のレコーディングをするプロジェクトがあることを聞き、彼女は早速グループのリーダーであり、音楽プロデューサー、元ジャーナリストであるGuy Constant Neza(ネサ)に連絡をとり、活動への支援を申し出ました。
ネサは2012年に児童労働の問題に関心を持ったばかりでした。
彼はジュネーブでこう話しました。「当時ジャーナリストとして、ILOが行う児童労働の問題を意識啓発するコースに参加するよう言われました。このコースに関して特別の期待はしていませんでしたが、私は大変ショックを受けました。コートジボワールの人々は児童労働に慣れてしまっています。本当はそうであってはいけないのですが」
彼はこのコースを受けた際に、自分の育った家庭での例を思い出しました。
「いとこの一人、アンジェラは地方の田舎の村に住んでいました。アンジェらと私は同年代の子どもでした。母はアンジェらをアビジャンに連れてきました。私たちは彼女に親切にしました。でも私は学校に行き、彼女は行っていませんでした。今そのことを考えると、とても不公平なことでした。自分が仕事で成功できているとすれば、それは私が学校に行く機会を与えられたからこそなのです」
ILOのコースに参加してから、彼は国民が児童労働に対する見方を変える必要があることに気付きました。それは日常の暮らしの一部ではなく、つまり経済的搾取から保護されるという子どもの権利の侵害である、と認識される必要があるのです。
彼は著名な作曲家であり、『Mon enfant (私の子ども)』の作詞を手がけたSerge Bilé に連絡をとり、コートジボワールでもっとも著名な編曲者David Tayoraultを呼び寄せました。それから、様々な音楽トレンドを代表する歌手仲間、一部を例に挙げればBamba Amy Sarah、Nuella、Odia、Priss K、Sead、Spyrow、Tour 2 gardeなどに参加を呼びかけました。歌をレコーディングし、ミュージックビデオも製作されました。
ネサは、アーティストたちもILOのトレーニングコースに参加して、児童労働撤廃に向けて全力を尽くすよう、強く提案しました。この歌は国営テレビRTIやコートジボワールのラジオ番組でも広く流されました。
しかし、ネサはアビジャンから離れた奥地の人々にも届くよう願いました。そのため彼はスブレ、アベングル、ブアフレの3都市で盛大なコンサートを開きました。スブレだけでも1万人がコンサートに集まりました。
児童労働反対世界デーに際して
コートジボワールから遠く離れた地、国連のジュネーブ事務局パレ・デ・ナシオンで、児童労働反対世界デー(6月12日)を記念して開かれたILOの公式セレモニーに、コートジボワール出身の歌手らが主賓として招かれました。
「地元のコミュニティーが児童労働の現実を理解し、行動し、問題に取り組むことで初めて、児童労働をなくすことができるのです。ILOは彼らの活動を支援します」ILOの労働における基本的原則と権利局のマーク・リード啓発パートナーシップ長は述べました。
ネサは、今回のスイスへの旅をきっかけに、彼らがもっと多くのコンサートをコートジボワールで開催できることを望んでいます。現在のところ、アキシはすでに「Ma Famille」コメディーショーの続編として新たな台本、脚本作りの準備をしています。この番組をコートジボワールや近隣諸国で見る人たちに、児童労働は子どもたちの将来を傷つけるものだということを知ってもらうため、今回は児童労働の話題も紹介しています。
「書くことが困難で、脚本を書く時も、メールを送る時でさえ、本当にいつもサポートが必要なのよ。ただ自分が児童労働者だったために、学校に行っていなかったというだけでね」
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