ザンビア 児童労働に取組む長い道のり

ザンビアで行われているILOARISEプログラムは、教育と技能訓練を通して児童労働を減らす取組みです。このプログラムは、小規模生産者らが、子どもたちに危険有害な仕事をさせるような社会経済的要因に取組むことで、サプライチェーンでの児童労働をなくすことを目指しています。




ムソレちゃんは、おじと、6歳になる弟と一緒に長い道のりを歩いていますが、学校に向かっているのではありません。おじが23日前に火をつけてから土をかけておいた炭を探して、石炭堀りに向かっているのです。蒸し暑さと埃の中、素足で、地面を掘って炭を拾い袋に詰めます。1日が終わるころには、袋いっぱいの石炭は25キロもの重さになります。おじは、それらを、ひと袋たったの23ドルで、路上で販売するのでしょう。

ザンビア西部にあるカオマ県は、タバコ農園で知られています。収穫の時期が始まるまでの間、子どもたちは空いた時間を石炭づくりや、木から採集した芋虫を調理して、砂の中で乾燥させたものを拾って過ごします。

ほかの子どもたちは、何時間もかけて、水をいれた重たい缶を運び、もうすぐ植えられるタバコの苗に水遣りをしています。

15歳のムビラくんもそのひとりで、この水たまりに一日2回通います。

「ぼくは、苗床に水遣りをするのは、家族を手伝って、食べ物を手に入れるためだよ。働きたいわけではないんだ。収穫時には、学校へは行かず、タバコの葉を刈るのを手伝うんだ。この傷は、荷車からタバコの葉を降ろす時に出来たものなんだ」

ILOが立ち上げたARISEプログラムは、ザンビア全土のタバコ農園での児童労働を減らす国際的な取組みです。官民連携による資金援助の下、ILOは児童労働委員(DCLCs)と呼ばれる委員会を地元に立ち上げました。この地域で最も脆弱なコミュニティーでの問題に、統合的アプローチで取り組むためです。

ARISEのムカティムイ・チャバラ ザンビア担当プログラムマネージャーはこう説明します。「私たちは意識の向上、能力強化、児童労働の危険性のある子どもや、すでになんらかの労働に従事する子どもたちの特定と、直接的な仲介を行っています。私たちは現地の組織と共に活動しています。彼らは監督を続け、継続的なサポートを地元の子どもや家族たちに提供することができるからです」

カオマ県DCLC委員のマインザ氏です。「労働・社会保障省はカオマ県にあり、委員会とは緊密に連携しています。政府は農場や職場を定期的に監督していますが、そこで子どもたちが危険有害な仕事に従事しているケースが見つかったら、調査が行われます。児童労働がなくなったとされる所には、われわれが訪問して、本当にもう子どもたちが働いていないか確かめに行きます」

本プログラムは、地元のコミュニティーが、元児童労働者たちに、レンガ工、大工、畜産、農業、裁縫の訓練を提供する支援をしています。

数多くの子どもたちが、すでに職業訓練を受け、さらに多くが、タバコ農園で働くことは自分たちの健康や成長を脅かすものだということを学びました。

自助グループが立ち上げられ、およそ200家庭が小額融資を受けて、小規模な所得創出の活動をはじめるきっかけになりました。

フェビー・カハリは何年もタバコ農園で働き、学校を卒業することはできませんでした。しかしARISEプログラムのおかげで、カオマにある青少年人材センターで職業訓練を受け、魚の養殖や養鶏場の管理をしています。これらの技能は彼女の人生に新たな意味をもたらしました。「将来は大規模農業をしたい。会社にも入って、両親を手伝いたいの」

ARISEプログラムを通して、ILOは地元の学校で、生徒とその家族たちといっしょに劇や音楽イベントを開きます。そこで、児童労働が子どもの健康に及ぼす危険性を指摘し、教育が子どもたちの将来にとっていかに大切か、ということを啓発しています。

教師のブレンダです。「初めのころは、活動はうまくいきませんでした。子どもたちの親は私たちに対して怒りをぶつけました。しかし今では、理解してくれています。彼らに電話をかけたり、ミーティングを開いたり、子どもたちが学校に行くことは価値があるということを学んでもらっているからです。このプログラムはあなたの子どもたちを支えるためのもので、子どもだけではなく家族にも恩恵が与えられるような、永続的なプログラムなのだと、そう私たちは伝えています」

ザンビアの児童労働撤廃までの道のりは、決して簡単ではありませんが、ILOのプログラムのおかげで、カオマの多くの子どもたちが、農園を離れ、学校に戻り、より良い未来に続く道を見つけていくのです。


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