ILOの活動分野

新型コロナウイルス(COVID-19)と仕事の世界:世界的影響と政策提案

 ILOは新型コロナウイルスが世界の経済と労働市場に与えている影響を評価し、定期的に更新しています。また、影響を軽減し、人間を中心に据えた包摂的かつ持続可能で強靱な回復を支える政策提案を行っています。このページは英語ページの簡易版です。最新情報は英語ページをご覧ください。

影響分析とデータ

 ILOは新型コロナウイルスが仕事の世界に与えている影響を評価するモニタリング資料『ILO monitor: COVID-19 and the world of work』をこれまでに8回発表しています。2021年10月27日に発表した第8版では、2019年第4四半期比で見た2021年第3四半期の総実労働時間が、高所得国では3.6%減に留まるのに対し、低所得国では5.7%減、下位中所得国では7.3%減に上るといったように、主としてワクチン接種率と包括的財政刺激策における違いを理由とした先進国・途上国間の大きな差異の存在を指摘し、財政面及び技術面での具体的な支援がない場合、雇用回復傾向における格差が長く続く危険性を警告しています。

 モニタリング資料に掲載されている統計データは、ILO統計局のデータベースILOSTATで入手できます。

世界的な政策対応

 2021年6月に開かれた第109回ILO総会に出席した政府、労働者、使用者の代表は、すべての人に働きがいのある人間らしい仕事を創出することを優先事項とし、危機が引き起こした不平等に取り組む、人間を中心に据えた新型コロナウイルス危機からの回復に向けた行動に対するグローバルな呼びかけを全会一致で採択しました。

2021年7月23日発表・英語・2分24秒

 新型コロナウイルスの世界的大流行はウイルス襲来前からこの世界に存在していた不平等を容赦なく露わにしました。コロナ禍はまた、この不平等を拡大し、脆弱な労働者と一部の経済部門に特に打撃を与えました。

 危機はまた、女性と若者にも大きな影響を与えており、男性よりも多くの女性が労働市場からこぼれ落ちています。若者に対するコロナ禍の影響は何年も残る傷跡を残す可能性があります。

 第109回ILO総会に出席した政労使代表は、全ての人に人間らしく働きがいのある仕事を創出することを優先させ、危機が引き起こした不平等に対処する、人間を中心に据えた新型コロナウイルスからの回復に向けた行動を世界に呼びかける文書を採択しました。

 この文書は包括的な行動計画の大筋を記し、経済及び社会の危機からの回復を完全に包摂的かつ持続可能で強靱なものとする義務を各国に課しています。

 そして、次のような行動を世界中の政府及び労使団体に呼びかけています。

  • 全ての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を伴うような、仕事を豊かに生む回復の達成
  • 働く全ての人に十分な保護を提供
  • 社会的保護の機会を全ての人に達成
  • 労働者の権利の強化と社会対話の促進
  • 事業の継続性、生産性の伸び、持続可能な企業の支援

 この文書はまた、各国の「人間を中心に据えた」コロナ禍からの回復戦略を支える国際協力の強化と、新型コロナウイルス・ワクチンの公平性を達成するさらなる国際連帯を求めています。

 「行動に対するグローバルな呼びかけ」は、ILOの「仕事の未来に向けた創設100周年記念宣言」の実施を早める道を提供しています。

 誰も置き去りにしない回復戦略の設計と実施を支える決め手となる指導的役割を果たす義務をILOに課しています。

 それは社会正義を中心に据えた回復、危機からの前向きのより良い立て直しに向けて人々を中心に据えた回復です。

ILOの提案する政策枠組みの4本柱

 新型コロナウイルスは労働市場を未曾有の危機に陥れ、以前から存在していた問題の深刻化を招いています。この危機からのより良い立て直しを図るため、ILOは相互に補い合う4本の柱で構成される政策枠組みを提案しています。さらに、包摂的かつ持続可能で強靱な回復を円滑化するものとして、国際労働基準がこの台座を構成しています。

新型コロナウイルス危機が社会と経済に与えている影響に対処するためにILOが提案している国際労働基準を土台とした政策枠組みの4本柱

◇柱1:経済・雇用の刺激

  • 積極的財政政策
  • 順応型金融政策
  • 保健部門を含む特定産業部門に対する貸出・金融支援

◇柱2:企業、雇用、収入の支援

  • 社会的保護を全ての人に拡大
  • 雇用維持策の実施
  • 企業に対する金融・税務その他の救済の提供

◇柱3:職場における労働者の保護

  • 労働安全衛生措置の強化
  • 例えばテレワークなどを通じた働き方の適応
  • 差別と排除の防止
  • 保健医療を受ける機会を全ての人に提供
  • 有給休暇の機会拡大

◇柱4:社会対話に頼った解決策探求

  • 労使団体の能力と強靱性の強化
  • 政府の能力強化
  • 社会対話、団体交渉、労働関係に関わる制度・機構及び手続きの強化

労働基準

 新型コロナウイルスに関連した国際労働基準の主な規定と条約勧告適用専門家委員会の手引きをまとめました(特記ない限り英語)。

国連の対応

 新型コロナウイルス危機には国連諸機関が総力を結集して取り組んでいます。

労働統計

 ILO統計局は、新型コロナウイルスの労働市場に対する影響が一目で分かるように、労働時間や勤労所得の減少、職場閉鎖がみられる国の就業者数などのデータを集めると共に、データ収集に困難を感じている諸国向けの手引きなどをまとめました。