技術協力

1.ILOの開発協力

(1) 開発協力とは

ILOの開発協力プログラムは、多くの途上国においてディーセント・ワークを実現するために不可欠な手段です。

ILOの経験
世界中の開発協力において60年以上に及ぶ経験を持つILOは、おおよそ100の国・地域で、世界のおよそ115の開発パートナーと協力して、約600の開発協力プロジェクトを実施しています(2017年)。これらのプロジェクトは、被援助国、援助国政府、労働者・使用者団体、開発パートナー、そして世界中に事務所を持つILOとの緊密な協力によって実施されています。

ILOの開発協力活動の例
  • 起業を目指す女性を対象とした小企業経営に関する訓練
  • 労働者への健康保険の提供
  • 不利な条件下にある若者への雇用サービスの提供
  • 社会対話の構築
  • 使用者団体や労働組合による労働安全衛生における取り組みの支援
  • 農村部での協同組合の設立支援
  • 労働法改正のための政府との協力

ILOの強みを活かした開発支援

開発課題の取り組みでは、短期的な解決策だけでは、多くの場合、根本的原因の解決にはなりません。そこでILOは経済・社会開発に持続可能なアプローチで取り組んでいます。ILOには、職場、労働者、ビジネスへのアクセスにおいて他の機関にはない強みがあります。働く人々の権利に裏打ちされたILOの開発協力活動は以下のような分野で強みを発揮します。

1. 各国の能力強化、技能と知識の向上、所得確保の改善、社会保障制度の提供
2. 生産性向上、雇用アクセスの改善、脆弱性の軽減を目的とした政策策定
3. 児童労働や強制労働などの搾取的な雇用形態によって生じる人権侵害の根絶

これらの分野におけるILOの活動は、世界中の職場やコミュニティで多くの人々に影響を与えてきました。プロジェクトを通じて、ILOは多くの強制労働者や児童労働を強要されている子どもたちの解放に貢献し、100万人を超える労働者に職場でのHIV/エイズ対処法について技術支援しました。また企業開発による雇用創出、競争力を維持する形で労働者にさらなる保護を提供する労働法改正、政府・使用者・労働者間の対話を促進することで労使紛争を回避するための機関の設立なども支援します。

(2). パートナーシップと現地支援


パートナーシップ・現地支援局(PARDEV)は、資金調達、開発協力活動や官民パートナーシップの運営・管理を行うとともに、ILO事務所を支援し、他の国際・地域機関との日常業務上の関係を保ち、国連システム内の調整、南南・三角協力、および市民社会のほか、国会議員、NGO、宗教団体、学術機関やその他のパートナーとの連携活動を担っています。

PARDEVの具体的な活動は次の通りです。
  •  国際・地域機関、援助国、およびその他の外部開発パートナーとの関係の構築・強化
  •  国際機関間の協調や国連改革プロセスへの積極的貢献
  • 通常予算による活動を強化するため、開発協力予算と通常予算補足勘定(RBSA)の資金調達
  •  ILO開発協力の指針を策定し、任意拠出による開発協力活動を調整・支援・管理
  •  ILO開発協力プログラムとその資金調達、および渉外活動に関する詳細で適切な情報サービスの提供


(3) ドナーと資金調達(任意拠出)

一部の支援国政府は予算の緊縮にともなってODAを削減していますが、従来の規模を維持している国もあります。一般的に援助予算に対する監視の目は厳しくなっていて、拠出決定の上でコストパフォーマンスは重要要素です。新たな資金源として期待できるのは、民間企業による拠出、新興援助国、および南南協力です。


すべての人々にディーセント・ワークを達成するため、ILOは任意拠出金を用いて、政労使の推進するディーセント・ワーク国別プログラムの達成を支援しています。ILOは、プログラム策定過程で必要な情報を提供することで、各国政府や労使の主体性を高めています。ILOの資金基盤は互いに補完しあう3つの要素で構成されます。加盟国分担金による通常予算(RB)、そして開発協力予算(XBTC)と、通常予算補足勘定(RBSA)で構成される任意拠出です。近年は、多年度の包括的な枠組み合意などにより、使途の定められていない柔軟で予測可能な拠出であるRBSAによる拠出が奨励されています。


(4) 通常予算補足勘定 (RBSA)


RBSAを介すことで、ドナーは使途をあらかじめ決めないコア資金の形で任意拠出でき、ILOは活動実施能力を強化できます。つまりRBSAによりILOは資金をタイミングよく一番必要な場所に柔軟、迅速かつ補完的に割り当てられます。RBSAはILOの資金構成において不可欠な要素です。

RBSA資金はODA適格国のみに配分され、その実施および報告では、通常予算と同じ管理方法が適用されます

今後の展望:ILO最重要活動分野(ACIs)

現在進行中のILO事務局長と理事会とのILO最重要活動分野(ACIs)をめぐる議論によって、今後のRBSAの戦略的な使い方が決まります。ILO最重要活動分野は、次の通りです。

1. 包摂的な成長のためのより多くのより良い仕事の促進
2. 若者のための仕事と技能
3. 社会的保護の土台の確立と拡大
4. 中小企業の生産性と労働条件
5. 農村経済におけるディーセント・ワーク
6. インフォーマル経済のフォーマル化
7. 労働監督を通じた職場の基準遵守の強化
8. 許容できない労働形態からの労働者の保護

(5) 官民連携 (PPP)

ディーセント・ワーク実現のための民間部門との連携

企業や財団は、世界各地の社会経済発展を促進する上で中心的な役割を果たしており、国連システムと提携することで、開発政策に関与し社会貢献するとともに自らの認知度を上げることの利点を理解しています。

ILOは、個々の企業や財団、その他パートナーなどと協力し、次の様な活動をしています。
  • グローバル労働市場の重要課題への取り組み
  • 持続可能な企業や起業家の支援
  • サプライチェーン(供給連鎖)の価値の向上
  • 社会保障の促進
  • 労働問題全般の解決


(6) 南南・三角協力

多様化するパートナーシップの形

ILOは南南・三角協力を推進します。

1960年代以降、二国間・多国間関係による様々な形の技術協力が行われてきました。国連システムにおいては、「水平協力」という概念が開発援助に新たな扉を開き、開発の社会に与える影響が拡大しました。

一部の被援助国は、これまで受けた国際協力を通じて修得した知識・技術を今度は他の途上国に伝えることで、開発援助に貢献しています。これがいわゆる南南協力です。

現在、国連システムやILOの援助国となっている国の多くは、かつての恩恵を受けていた国です。日本もかつてはそうでした。その一例であるブラジルは、このような従来型の協力、特に多国間枠組に基づく協力から多くのことを学び、現在では近隣諸国や従来型協力の援助国からあまり支援を受けていない国々を援助しようとしています。ブラジルは過去数年間にわたり、アフリカのポルトガル語圏諸国やハイチで水平協力を推進していて、児童労働の撲滅活動で培った経験と専門知識を共有しています。

2012-2013年、ILOは中国やメキシコなど16の新興国および途上国と南南協力合意書を締結しました。