ビジネスと障害グローバル・ネットワーク

ILO事務局長挨拶-障害者の包摂は企業を利する

 ジュネーブのILO本部で開かれた「ビジネスと障害グローバル・ネットワーク」の年次会合で開会挨拶を行ったガイ・ライダーILO事務局長は、多様性、ビジネス、人権に関する議論に障害者を含む必要性を訴えました。

声明 | 2018/10/22
ILOビジネスと障害グローバル・ネットワーク2018年年次会合の開会式で挨拶するガイ・ライダーILO事務局長

 2018年10月22日に開かれた「ビジネスと障害グローバル・ネットワーク」の5回目となる年次会合の開会式で挨拶したガイ・ライダーILO事務局長は、障害者を自社労働力に含むことの利益の活用に対する関心が民間企業の間で大幅に高まってきた現状を評価しつつ、まだ多くのことを、よりうまく行う余地が残されていると指摘しました。

 事務局長はますます多くの国でますます多くの企業が、開かれた、より包摂的な企業になろうと努めることによって、障害のある労使が潜在力をフルに発揮できる環境が形成されることへの期待を述べた上で、障害者の包摂は人権、平等、社会正義の問題であると同時に具体的な事業上の利益を生み出すとの論点の組み合わせが、既に人々や社会の考え方、障害者の包摂に対する取り組み方に変化をもたらしていることを指摘しました。

 そして、この1年間に見られた、社会、とりわけ労働市場における障害者の権利促進の重要性を認めた出来事の例として、7月にロンドンで開かれたグローバル障害サミットと9月にアルゼンチンで開かれた主要20カ国・地域(G20)の労働・雇用大臣会合を挙げました。事務局長はサミットを注目すべきイベントと評し、ネットワークで今回議論されていることが一段進んだように見えるとの結論に至らせられたと報告して、障害者の包摂に関する好事例を企業が話し合い、経験交流を図る機会を提供するというネットワークの必要不可欠な機能のさらなる進展に対する期待を表明しました。

 G20会合で採択された「包摂的かつ公正で持続可能な仕事の未来のための機会の醸成」と題するコミュニケは、障害者を労働市場に含むために法律及び政策を改善する方法に関する明確な手引きを提供し、仕事の未来には障害者の雇用情勢を改善する相当の機会が形成される可能性が存在することを明らかにしています。事務局長は、このように公共政策における議論と民間イニシアチブが足並みをそろえて前進しており、多様性と包摂に関するより幅広い議論でも企業と人権に関する議論でも障害者の平等な就労機会の問題が重要性を増している現状を歓迎しつつも、障害者の包摂が議論に十分に組み込まれていない状況を指摘し、多様性に関する議論に障害を含む必要性、ビジネスと人権に関する議論に障害者を含む必要性を訴え、障害者の包摂をこういった幅広い政策課題の一部にするよう努力することを呼びかけました。

 事務局長は最後に、来年がILOの創設100周年に当たることを紹介し、障害者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に関してこの100年間に達成された成果を振り返る格好の機会になろうと結びました。

 今年、ネットワークには新たにフランスのIT企業アトス、フランス電力(EDF)、情報技術分野のDXCテクノロジー社、世界屈指の医薬品会社であるメルク・シャープ・アンド・ドーム社(MSD)、国際石油資本のトタルの5社が加わり、発足時には11社であった参加企業が27社に増えました。さらに、オーストリア、チリ、中国、ドイツから「ビジネスと障害国内ネットワーク」が加わりました。

 23日に開かれる「第2回ビジネスと障害国内ネットワーク・グローバル会合」と合わせて、「グローバルに考え、国別に適応を」を総合テーマとする2018年の年次会合では、世界的な供給網(グローバル・サプライチェーン)と障害者の包摂に関する企業慣行のグローバル化を巡る話し合いが行われます。翌日開かれる国内ネットワークのグローバル会合では、ビジネスと障害国内ネットワークを通じて障害者を民間セクターに包摂するために国内の能力構築を図る方法に関する意見交換が行われます。