世界経済フォーラム

ILO事務局長ブログ投稿記事-全ての人のために機能するグローバル化に向けて:まだ間に合う、第一歩は賃金不平等の是正

声明 | 2017/01/20

 2017年1月17~20日にダボスで開かれた世界経済フォーラム年次会合に向けた1月20日付の英文ブログ投稿記事において、ガイ・ライダーILO事務局長は、要旨以下のように、最近の世界各地の政治の動きをもたらした、グローバル化の恩恵を得ていないと感じている人々の欲求不満や幻滅の多くは仕事に係わる経験から生み出されていると説き、持続可能で仕事を豊かに生む経済成長の必要性を論じています。

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 国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が約束している「誰も置き去りにしない」という公約も、ILOが目指している「全ての人のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」も同じ原則を掲げています。今日の私たちはこれを実現できるか否かという歴史の転換点に立っているのです。

 世界各地で見られる過去数カ月の政治的動向を、私は希望を失った人々、グローバル化の恩恵を得ていないと感じている人々、労働者の反乱と見ています。どんな世代もが持つ、前の世代よりは暮らし向きが良くなるだろうという希望や夢が打ち砕かれた人も多いのですが、その欲求不満や幻滅の多くが、仕事からの排斥や、受け入れがたい条件での労働市場への参加などといった、仕事に係わる経験から生まれている場合が多いように思われます。

 今の私たちの社会はグローバル化や経済プロセスからの利益を極めて不公平に分配しています。これは例えば、世界中多くの国における賃金不平等の拡大などのように、1980年代、90年代から多数の文献に記されている事実であり、「職場における賃金不平等」を副題に2016年末に刊行されたILOの『Global wage report(世界賃金報告)』2016/17年版も、ほとんどの国で、賃金分布の大半において穏やかな上昇を示す賃金上昇率が上位10%、そして1%ではさらに急上昇していることを示しています。例えば、欧州では賃金分布の上位10%が得る賃金が賃金総額に占める割合は下位50%(29.1%)とほぼ等しい、平均25.5%になっています。南アフリカ(49.2%)やインド(42.7%)、ブラジル(35.0%)など、一部新興経済諸国では上位10%の占める割合はさらに高くなっています。時間当たりで見ると、欧州における上位1%の賃金は約90ユーロで、これは中央値の8倍、下位10%平均値の22倍に相当します。世界の賃金上昇率は2012年から全体として減速し、2015年には過去4年で最も低くなっています(2012年2.5%→2015年1.7%。世界で最も賃金上昇率が高かった中国を除くと0.9%)。

 私たちはまた、世界経済・社会危機によって引き起こされた損害を補修しつつ、毎年数千万人に及ぶ新たな労働市場参加者に質の高い仕事を創出するという二重の課題に直面していますが、依然として続く懸念される低経済成長、そして相変わらず高い脆弱な就業者(個人事業主と寄与的家族従業者)の割合と雇用の質における明確な進展の欠如の組み合わせは状況を警戒すべきものとします。私たちは成長の利益が包摂的な形で分かち合われるよう確保する必要があります。

 先般発表されたILOの『World employment and social outlook - Trends(世界の雇用及び社会の見通し-動向編・英語)』2017年版は、2017年の失業者数を世界全体で2億100万人とし、労働力の伸びが雇用創出の速度を上回ることにより、2018年にはさらに270万人増えると予測しています。

 持続可能で仕事を豊かに生む経済成長が必要です。このような成長は強固で妥当な労働市場関連機構・制度を基盤として初めて永続し、公平なものとなり得ます。この点で重要な役割を演じ得るのは最低賃金と団体交渉です。不平等の拡大を懸念した多くの国が近年、最低賃金の整備・強化に走り、メキシコなど数ヵ国が最低賃金額の引き上げに動き、南アフリカなど幾つかの国では全国的な最低賃金の導入が検討されています。ドイツなど幾つかの国から得られる最近の証拠は、適切に設計された最低賃金は雇用にあまり影響を与えずに低賃金層の暮らしに実質的な違いをもたらし得ることを示しています。

 全ての人にディーセント・ワークの機会を開くことは、人々を貧困から抜け出させ、不平等を縮小し、経済成長を推進する最も効果的な方法です。誰も置き去りにされないよう確保するために適切な支援制度を導入する必要もあります。そこで、ILOと世界銀行は、各国が全ての脆弱な貧困層に必要な際の支援と所得保障を確保する措置を広げることを助けるために「普遍的な社会的保護のためのグローバル・パートナーシップ」を立ち上げました。

 ディーセント・ワークと社会正義を政策策定の中核に据えることは単に明白な事実を認めることに過ぎません。他人を包摂せずに、自分自身のためにより良い未来を構築することなどできないのですから。社会正義の基礎的条件の否定が、平和や安定、開発に対する脅威を生み出した事例は枚挙にいとまがなく、今日の新聞の見出しを眺めるだけで目にすることができるでしょう。どんな社会でもあまりにも多くの人々が置き去りにされているように感じた場合、破壊的勢力が成長を損ない、社会や政治の調和を乱す高い可能性があるのです。