児童労働反対世界デー

良質の教育で児童労働と闘う

声明 | 2015/06/12

 2015年の児童労働反対世界デー(6月12日)は「児童労働に反対、良質の教育に賛成」をテーマに、教育と児童労働のつながりに光を当てています。世界デーに際して発表した以下の英文声明で、ガイ・ライダーILO事務局長は、紛争や危機の影響にも触れた上で、カイラシュ・サティアルティ氏とマララ・ユスフザイさんが2014年のノーベル平和賞の共同受賞者となった事実は、児童労働から自由な権利とすべての少年少女の教育を受ける権利の密接なつながりを力強く象徴するものであるとして、このつながりの形成は児童労働を生み出す主な要因である貧困の悪循環を打破できる効果的な戦略を策定する鍵になると説いています。

* * *

 今日でも世界中でわずか5歳の子どもを含む数百万人の子どもがなおも生存のため、家族のために働いているという許容できない現実があります。しかし、進歩は達成されており、これは児童労働に終止符を打つための行動を改めて誓う私たち皆の後押しになるに違いありません。この児童労働反対世界デーに当たり、私たちは教育と児童労働のつながりに光を当てるものであります。

 このつながりの形成は、児童労働を生み出す唯一のとは言わないまでも重要な要因である貧困の悪循環を打破できる効果的な戦略を作り出す鍵になります。

 現状のままでは、子どもたち自身そして多くの親の自分の子どもたちのための夢であるまともな教育の願いはかなえられないままでしょう。多くの少年少女に学校に通う機会が与えられていません。学校と仕事を両立させようと試みる者もいますが、あまりにも多くの場合、法定の最低就業年齢に達するはるか以前に学校を中退せざるを得ず、児童労働者と化してしまいます。

 今日の状況をさらに悪化させるものとして、紛争や危機の影響があります。紛争地帯では、生徒、そして時には教師が暴力的な攻撃や誘拐の被害者になっています。学校が破壊されているとの報告は珍しいものではありません。安定と繁栄の基盤構造が損なわれつつあります。様々な状況の下、家族は物理的・経済的な不安から逃れ、より良い生活を期待して国境を越えています。このような人の流れの多くの部分を子どもたちが占め、時には親と離れて独りで旅をしています。このような旅はしばしば、児童労働と搾取に至る道となっています。

 十分な教育を受けていない、かつて児童労働者だった者は、大人になっても賃金が低く不安定な仕事に落ち着くか失業する可能性が他の人より高くなっています。そして、高い確率で貧しい暮らしを送り、その子どもたちも同じ運命をたどることになります。

 男女を問わずすべての子どもに教育、質の高い教育を受ける機会を与えることは集団的な課題、集団的な責任です。二流の教育は二流の市民を永続させるだけです。しっかりとした教育と良い教師は子どもや若者の暮らしと未来に違いをもたらす世界を形成できることは私たちの誰もが知っています。

 カイラシュ・サティアルティ氏とマララ・ユスフザイさんが2014年のノーベル平和賞の共同受賞者となった事実は、児童労働から自由な権利とすべての少年少女の教育を受ける権利の密接なつながりを力強く象徴するものです。2人の勇気、2人の絶えざる努力、そして2人のビジョンは私たち皆が行動を高める刺激となるに違いありません。

 究極的に、児童労働のない未来は、大人のためのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、社会的保護の土台、堅固な教育制度を統合した包摂的な開発政策を要請します。政治的な意思と開発のあらゆる段階における決意を伴えば、優先事項を定め、政策を選択し、総合的な行動を取ることができます。2015年以降の開発課題と地球規模、地域、各国レベルでの行動にとって重要な課題は、相当規模の持続可能な変化を確保することです。

 ILOとその加盟国の政府、使用者、労働者は一世紀近くの間、児童労働との闘いの先頭に立ち続けてきました。子どもの教育への権利、児童労働からの自由、そしてそれに付随するものとして、大人にはディーセント・ワークの尊厳を確保するよう、国内で、国際的に、そして多国間機関と共に取り組みを続けることを私たちは約束します。

* * *

 児童労働反対世界デーには、世界約55カ国で100を超えるイベントが実施されました。例えばジュネーブでは、第104回ILO総会の特別サイドイベントとして、6月12日当日に2014年のノーベル平和賞の共同受賞者であるカイラシュ・サティアルティ氏やパナマのロレナ・カスティージョ・デ・バレーラ大統領夫人などが参加するパネル討議が開かれました。ミャンマーでも当日、同国におけるILO児童労働撤廃計画(MyPEC)が労働・雇用・社会保障省と共に、2014年に続き、ヤンゴンで記念イベントを開催しました。教育省などの政府関係者、国連児童基金(ユニセフ)、ワールド・ビジョンなどの国際機関や国際非政府組織(NGO)、労使団体、各国大使館、国内外の開発パートナー、民間企業、市民団体などから幅広い参加がありました。ILOはまた、モン州とカイン州でもモン国家教育委員会やカレン女性エンパワーメント・グループなどの地元の団体と協力して、芸術と対話を通じた啓発活動を行い、学生や教師、地元市民など多数の参加を得ました。世界デーに際し、政府、労使団体、国際機関、企業、市民社会、若者団体など、ミャンマー国内のすべての関係者に向けて、この国から児童労働を漸進的に撤廃するよう努力を結集し、誓いを新たにすることが呼びかけられました。

ジュネーブのイベント模様(英語字幕付)