2014年国際家族デー(5月15日)

ILO事務局長声明:男女ともに実現されたディーセント・ワークは家族のより良い状態を確保

声明 | 2014/05/15

 2014年の国際家族デー(5月15日)に向けた以下の英文声明において、ガイ・ライダーILO事務局長は13日に発表した母性保護に関する新刊書に言及し、出産休暇の延長などこの20年間母性保護の分野で目立った改善が見られることを元気づけられるとしつつも、8億人を超える女性がいまだに十分な保護を受けていないことや良質の保健医療機会がすべての母子に提供されているわけではないこと、妊娠や出産、家族的責任に基づく差別が至るところで見られること、安全性に欠け、不健康な職場がいまだに多いこと、父親の育児休暇取得率が依然として非常に低いことなどといったように進展にはばらつきがあり、スピードアップが必要なことに注意を喚起した上で、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)は家族と開発を結ぶ鎖の重要な輪であり、すべての人々により良い未来が構築される助けを家族が提供できるようにする手段であると説いています。

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 国際家族デーの今年のテーマである「開発目標の達成にとって重要な家族」は、国際的に合意された開発目標の達成における家族の役割、そして家族を支える政策の役割を認識したものです。

 今日の家族は多様で、終身雇用と男性を一家の稼ぎ手とするような伝統的なモデルに背くものとなってきています。今は、しばしば女性が世帯主となる片親世帯や祖父母が世帯主である世帯も多くなっています。様々な人数で構成され、様々な形状を取る家族は開発を推進する積極的な動作主となっています。しかしながら、その貢献(実際の貢献と潜在的な貢献の両方)はしばしば過小評価され、十分に支持されず、多くの家族が深刻な重圧の下にあります。

 ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)は家族と開発を結ぶ鎖の重要な輪の一つです。仕事に関連した政策と慣行は家族を支援する環境の形成において大きな役割を演じ、このような環境は転じて仕事の世界と社会に利益をもたらします。

 ILOにはそのような目標を念頭に置いて設定した一連の基準が存在します。「家族的責任を有する労働者条約(第156号)」は、扶養家族のための責任を果たさなくてはならない労働者を支え、保護する措置に関する手引きを提供しています。決定的に重要なこととして、この条約は家族的責任を分かち合う男女の役割を認め、両方に対する支援措置を呼びかけています。

 このような家族指向型の政策はフォーマル(公式)経済の外にも到達し、貧困削減、子どもにとってのより良い結果、男女平等の向上、仕事と家庭のバランスの改善に寄与できることが実証されています。このような政策は就労の権利と平等の権利を支援し、さらにまた、出産休暇後の女性の職場復帰と技能保全を可能にし、欠勤率の低下及び職場における意欲や業務成績の向上を促進することによって企業の生産性に寄与します。

 母性保護はILOの加盟国政労使が取り上げ、憲章によって付託されたこの機関の任務に含んだ働く女性の労働者としての最初の権利の一つです。ILOの歴史の中で母性関連条約は3本採択されていますが、最初のものはILO創立年の1919年に遡ります。

 ILOがこのたび発行した報告書『Maternity and paternity at work: Law and practice across the world(働く母親及び父親に係わる世界の法及び実際・英語)』は、これらの事項に関し、私たちがこれまでに学んだことと現在の状況についての概観を示しています。報告書は良い点と悪い点が混じり合った状況を示しています。

 報告書から見出された事項として、この3本の母性関連条約は母性保護法制を成立させたほとんどすべての国に幅広い影響を与えたように見えます。過去20年間に出産時の休息期間の長さの点では顕著な改善が見られます。私たちは社会保険もしくは公的基金のみまたは使用者との共同拠出による集団的な仕組みによって出産休暇に現金給付を提供する方向に向かっています。また、開発段階にかかわらずますます多くの国が両親双方の育児責任を支援する措置を実施するようになっています。

 これは元気づけられる状況ですが、進展は均一ではなく、促進する必要があります。

 危機は以前から存在していた格差や不平等をさらに悪化させる影響を与え、これはしばしば家族に破壊的な結果をもたらしました。世界中で8億人を超える女性が依然として出産時の休暇や現金給付といった十分な保護を受けていません。その約8割がアフリカとアジアに暮らしています。

 質の高い母子保健を利用できる実効的な機会はまだすべての人々に提供されるものにはなっていません。妊娠、母性、家族的責任に基づく差別は至る所に蔓延しています。依然としてすべての労働者、とりわけ妊娠している女性や哺育中の女性にとって安全でなく、健康的でない職場もフォーマル、インフォーマル(非公式)を問わず、多数存在しています。父親による育児休暇取得率は非常に低いレベルのままです。

 加えて、子ども、高齢者、障害者または病人にケアを提供するという重要な分野において、「公益」としてそのような仕事(有償、無償の両方)の価値を認め、それを支えるサービスや施設が一般に不足しています。

 ディーセント・ワーク政策は、一方では親としての責任と家族的責任が相互に強め合う関係、そして他方では男女双方に良質で生産的な仕事を確保することを目指しています。

 この過程で、母親や父親としてのニーズ、育児や高齢者介護のニーズなどといった分野の政策の形成において政府、労働者、使用者の三者による社会対話が効果的であることが立証されています。使用者団体は有償の仕事を家族的責任に結びつけることを許す政策を促進することによって指導力を発揮することができます。これは女性労働力がその性と生殖に係わる役割から不利な立場に置かれないことを確保するものです。労働者団体は昔から雇用における平等に向けた努力の中で母性保護を基本的な権利として支持しており、人口及び労働力の再生において重要な役割を演じています。

 関連する国際労働基準に沿って設計され、実効的に実施されている法律は行動のための堅固な基盤を提供します。同時に、不足している部分や進捗状況を測定するために統計情報を改善する必要もあります。

 男女双方にとってのディーセント・ワークは家族により良い状況を確保し、すべての人々にとってのより良い未来の構築を家族が助けることを可能にするのです。