ディーセント・ワーク

ディーセント・ワーク - Decent Work - とは


ディーセント・ワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事」のことです。ILOは「全ての人にディーセント・ワーク - Decent Work for All- 」の実現を目指して活動を展開しています。ディーセント・ワークという言葉は、1999年の第87回ILO総会に提出されたファン・ソマビア事務局長の報告において初めて用いられたもので、ディーセント・ワークはILOの活動の主目標と位置づけられました。では、ディーセント・ワークとはどのような概念なのでしょうか。上記の事務局長報告では、次のように記述されています。

「ディーセント・ワークとは、権利が保障され、十分な収入を生み出し、適切な社会的保護が与えられる生産的な仕事を意味します。それはまた、全ての人が収入を得るのに十分な仕事があることです。」言い換えれば、「働きがいのある人間らしい仕事」とは、まず仕事があることが基本ですが、その仕事は、権利、社会保障、社会対話が確保されていて、自由と平等が保障され、働く人々の生活が安定する、すなわち、人間としての尊厳を保てる生産的な仕事のことです。2012年に就任したガイ・ライダー事務局長も、21世紀におけるILOの役割として「ディーセント・ワーク」の推進を掲げています。

『ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)とは?』

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ディーセント・ワークの4つの戦略目標

上記の1999年の第87回ILO総会事務局長報告と2008年の第97回総会において採択された「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」の中で、ディーセント・ワーク実現のための4つの戦略目標が掲げられています。すなわち、ディーセント・ワークの実現に向けた取組みは、次のような4つの戦略目標に基づくものとされています。そして、ジェンダー平等は、横断的目標として、全ての戦略目標に関わっています。
  1. 仕事の創出 -  必要な技能を身につけ、働いて生計が立てられるように、国や企業が仕事を作り出すことを支援
  2. 社会的保護の拡充 - 安全で健康的に働ける職場を確保し、生産性も向上するような環境の整備。社会保障の充実。
  3. 社会対話の推進 - 職場での問題や紛争を平和的に解決できるように、政・労・使の話し合いの促進。
  4. 仕事における権利の保障 - 不利な立場に置かれて働く人々をなくすため、労働者の権利の保障、尊重

ディーセント・ワークの実現に向けて

世界中の人々は、失業、不完全就業、質の低い非生産的な仕事、危険な仕事と不安定な所得、権利が認められていない仕事、男女不平等、移民労働者の搾取、発言権の欠如、病気・障害・高齢に対する不十分な保護などにみられるようなディーセント・ワークの欠如に直面しています。ILOの活動は、このような問題への解決策を見出すことを目標にしています。

ILOは、各国の実情に応じたディーセント・ワーク国別計画に沿って支援を提供しています。この計画は、各国の政労使が連携してまとめられるもので、各国の優先課題と目標を定め、重大なディーセント・ワークの欠如に対して、戦略目標を推進する効率的な事業活動を通して取り組むことを意図しています。こうした取り組みをさらに前進させるには、世界レベルでの行動も必要です。ILOは、多国間システムとグローバル経済における主要な機関や関係者と連携し、専門知識や重要な政策手段の提供なども行い、ディーセント・ワークを重視する社会経済政策へのアプローチに取り組んでいます。

ILOの活動ハイライト

  1. 児童労働

    過去10年間にわたり、ILOの支援のもと、60を超える国々が、自国の法的枠組み(約200の法律)をILOの児童労働条約に合わせて修正しました。ILOの専門家委員会は、第138号および第182号条約の適用に関する定期的な検討において、改善を示すコメントの数が2004年から7倍に増えたと指摘しています。
    国レベルでは、ILOは児童労働への取り組みを目的とする200件を超えるプロジェクトを実施しています。

    成果例:

    • 過去15年間に、世界中の約110か国において100万人近くの子どもたちが、ILOプロジェクトによって児童労働から抜け出したか、児童労働に新たに従事することを免れました。
    • 児童労働に従事している子どもの総数が、2000年の2億4,600万人から、2017年には1億5,200万人と、30%減少しました。

  2. 雇用集約型投資

    雇用集約型投資は、インフラ開発と、雇用創出、貧困削減、および現地の経済的・社会的発展とを結びつけます。

    成果例:

    • 東ティモール:2012年3月から、ILOのR4Dプログラムは就業日数611,000日分の直接短期雇用を創出しました。これにより、地元経済に約400万米ドルの現金がもたらされました。
    • ネパール:2014年3月から、ILOはネパールの人口の半分以上が暮らす33地区で現地インフラ開発を支援しました。2015年4月の地震の後、その対象範囲に新たに3地区が追加されました。
    • ソマリア:ILOが重要な役割を果たしているローカルガバナンスとサービス提供の分散化に関する国連合同事業により、就業日数136,500日分の雇用が創出され、最も弱い立場にある人々が恩恵を得ました。ソマリア難民帰還者を対象としたプロジェクトとユース・フォー・チェンジ(変化を担う若者たち)イニシアチブは、就業日数約43,000日分の雇用を生み出しました。

  1. 社会的保護

    ILOは2つの方法で、各国と協力して社会的保護の拡大に努めています。一つめは、各国の社会的保護の土台(社会的保護基盤)、すなわち必要不可欠なヘルスケアと所得保障への普遍的アクセスを確保する、基本的な社会保障制度の迅速な実施を進めることです。そしてもう一つは、より高い水準の恩恵を漸進的にできるだけ多くの人々に提供するために、既存の社会的保護制度を改善することです。

    成果例:
    過去10年間に、ILOは以下の策定を支援してきました。

    • 136か国の社会的保護の土台
    • 34か国の国家社会的保護戦略
    • 30か国の医療保障制度
    • 21か国の児童手当制度
    • 20か国の出産給付制度
    • 20か国の失業保険制度
    • 31か国の公共雇用計画
    • 43か国の老齢年金制度

  2. ベターワーク(より良い仕事)

    ベターワーク(2009年に始動したILO/国際金融公社(IFC)プログラム)は、60社以上の世界的な衣料品ブランドと1,500の工場との関与のもと、300万人を超える工場労働者の労働条件を改善してきました。

    成果例:

    • ヨルダン:移民労働者の代表が業界全体の団体協約に参加できるようになりました。工場では、労働安全・衛生条件の順守が50%改善され、適正な最低賃金および手当の支払いが100%改善されました。ヨルダンプログラムは23のブランドと小売業者の関与のもと、77工場の65,000人の労働者に裨益しました。
    • カンボジア:550,000人もの労働者が家族に仕送りを行い、受け取った家族がこれを年少の家族の教育や医療費に充てたことにより、プログラムの影響が拡大しました。カンボジアプログラムは49のブランドと小売業者の関与のもと、550工場に裨益しました。
    • レソト:ベターワークに参加した工場のすべてで、HIV/AIDS感染者への差別がなくなりました。
    • ベトナム:ベターワークに参加した工場の65%で総売上が増加し、62%で生産能力が拡大し、60%で雇用者数が増加しました。ベトナムプログラムは57のブランドと小売業者の関与のもと、502工場の691,000人の労働者に裨益しました。