「あきこの部屋」第49回 「命を救う可能性がある労働安全衛生」

新型肺炎コロナウイルス(COVID-19)の感染者はますます増え、世界全体で300万を超え、死者も20万人を超えたと言われています。

日本でも最初は一部の都府県を対象とした緊急事態宣言が全国に拡充されました。1人10万円の一律給付を含む、事業規模で117兆円に上る緊急経済対策を実行するための補正予算案が国会で審議されています。

新型コロナウイルス以外のILOの活動をまず紹介します。初代ILO事務局長アルベール・トーマの提案で、1920年3月23日の理事会で合意されたILO協同組合ユニット(当時はSection of Co-operation)設立100周年(ILO COOP 100)を記念するイベントや活動が開始されました。2020年3月23日のライブウェビナーを皮切りに今年一年間、本部をはじめ駐日事務所も含め世界中で催される予定です。

続いてILO アフリカ地域総局に勤務し、ACCEL Africa 児童労働撲滅プロジェクトを統括する小笠原稔ILO児童労働撲滅プロジェクトCTAの活動報告が、国連広報センターの広報誌 Dateline UN Vol.99(2020年4月号)に掲載されましたので、紹介します。

ILOの現在の活動は新型コロナウイルスに関連するものが中心です。ILOは2020年5~6月に予定されていた第109回総会を2021年まで先延ばしすることを決定しました。4月23日に開かれた主要20カ国・地域(G20)の労働雇用大臣バーチャル特別会合で、ILOは、1)経済と雇用への支援、2)企業、職、所得の支援、3)封鎖中もそして経済が再開した時に働く人々の保護、4)社会対話の活用、の4本柱からなる新型コロナウイルスの世界的大流行に対する総合的対応政策を提案しました。

駐日事務所では、新型コロナウイルスに関する各種ILO報告書の日本語版を作成中です。
国際労働機関 (ILO) 緊急報告『COVID-19 と仕事の世界: 影響と対応』(作成済、先月のあきこの部屋で紹介)
国際労働機関 (ILO) 緊急報告第2版『COVID-19 と仕事の世界:推計と分析』(作成済)
・公共救急業務や医療保健、教育、食品小売、自動車産業、旅行・観光業、民間航空、農業、海運・漁業、繊維・被服・皮革・履物産業など複数の社会・経済部門に対する危機の影響を示した一連の概況資料 (作成中)
・FAQ-コロナウイルスと国際労働基準(作成中)

ILOは労働災害や職業病の防止/予防の大切さに注意を喚起するために、4月28日を労働安全衛生世界デーと定め、世界的な啓発キャンペーンを実施していますので、新型コロナウイルスに関する取り組みの中でも、今月は安全衛生に関するものに重点をおきます。まず、2020年のテーマは「世界的流行病(パンデミック)を食い止めよ:命を救う可能性がある労働安全衛生」とされました。

駐日事務所では、「職場での安全と健康のヒント」という本部作成ビデオに日本語の字幕をつけて紹介しています。これは、職場で安全と健康の適切な対策をとることで、感染拡大を食い止め、労働者さらに社会一般を守ることができ、新型コロナウィルス感染症がもたらす危機に立ち向かうために政労使それぞれが役割を果たし、協力し合うことが大切と訴えています。

職場におけるコロナウイルスの予防・影響緩和には、実効性のあるリスク評価とリスク管理の手順が求められます。ILOは、労働者の安全と健康を守る措置を講じるための第一歩として、30項目の簡単なチェックリストを作成しました。これを用いてリスクを評価し、適切な管理方法について皆で話し合うことが期待されています。中央災害防止協会の御協力により、日本語版を作成しました。

さらに、労働安全衛生世界デーに際して発表された新刊書『In the face of a pandemic: Ensuring safety and health at work(世界的流行病に直面して:労働安全衛生の確保) 』は、新型コロナウイルスの拡散がもたらしている労働安全衛生上のリスクに光を当てています。感染リスクや心理社会的リスク、人間工学面その他のこの世界的大流行に関連した労働安全衛生関連リスクを予防・制御する各種方策も取り上げています。これについても日本語版を準備中です。これらの取り組みが皆様のお役に立てることを期待しています。