「あきこの部屋」第44回 グローバル・サプライチェーンの課題:児童労働と人身取引

2019年11月29日

紅葉の美しい季節になりました。先月の即位の礼に引き続き、今月も延期されていた祝賀パレードそして大嘗祭が実施されました。

安倍晋三内閣総理大臣の通算在任記録が第2次世界大戦前の桂太郎首相を超え、憲政史上最長となりました。さらに連続在任記録も最長となる可能性が高くなっています。

今月はILO創設の1919年にアメリカ合衆国のワシントンDCで開催された第1回ILO総会で採択された6条約6勧告の100周年です。残念ながら、現在でも批准適用促進の対象となっている基準はこの中には一つもありません。

先月インターンによるフェースブック開設をご紹介しましたが、そこに、私のインタビュー記事が掲載されました。→こちらよりご覧ください。また、来年のインターンに多数応募いただき、紙面を借りて感謝します。さらに、現在世界各地のILO専門職・空席募集のご案内を載せておりますので、皆様の応募を期待しております。

11月は当事務所主催・共催の行事として、大阪でのILO・大原社会問題研究所創立100周年記念~ 第32回国際労働問題シンポジウムを始め、EUが拠出し、ILOとOECDが実施機関となっている、「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プロジェクトに関するセミナーを3つ実施しました。さらに、私自身は上智大学のInternational Cooperation Case StudiesでILOの紹介をさせていただき、大阪府主催、近畿労働金庫など が共催した、セミナー「暴力とハラスメントをなくすために~だれもが大切にされる社会とは」で、「仕事の世界における暴力とハラスメント撤廃条約」について基調講演をさせていただきました。どのセミナーも多数御参加いただき、登壇者、参加者にあらためて御礼申し上げます。

今月は「アジアにおける責任あるサプライチェーン」プロジェクトにも関連するグローバル・サプライチェーンに関する新刊書を紹介します。持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット8.7 は、2025年までに児童労働をなくし、2030年までに強制労働、現代の奴隷制、人身取引をなくす効果的な措置を整備することを世界中の政府に呼びかけています。この目標達成をめざす国際的なパートナーシップとして誕生したアライアンス8.7が『グローバル・サプライチェーンにおける児童労働、強制労働、人身取引に終止符を(Ending child labour, forced labour and human trafficking in global supply chains)』と題する報告書を発表しました。

この報告書は、グローバル・サプライチェーンにおける労働者の中核的な権利の侵害の評価を求める主要20カ国・地域(G20)の労働・雇用大臣会合の要請に応えて、アライアンス8.7の事務局を務めるILOが、アライアンス参加組織である経済協力開発機構(OECD)、国際移住機関(IOM)、国連児童基金(UNICEF)と共にまとめたものです。

2部構成で、第1部「グローバル・サプライチェーンに関連した児童労働、強制労働、人身取引の理解:問題の規模とリスク要因に関する証拠の検証」で問題の実情を示した上で、第2部「グローバル・サプライチェーンにおける児童労働、強制労働、人身取引への対応:官民の活動検証」で様々な対応策を紹介しています。

児童労働全体の中でグローバル・サプライチェーンに関係する割合は地域によって異なり、東・東南アジア26%、中南米・カリブ22%、中央・南アジア12%、サハラ以南アフリカ12%、北アフリカ・西アジア9%となっています。強制労働目的の人身取引については、データ入手が困難で推定に限界があり、人権侵害が発生しやすい建設業や家事労働は輸出産業でなく、さらなる分析が必要であるものの、輸出関連の割合は東・東南アジア17%、欧州16%、サハラ以南アフリカ9%、北米9%、北アフリカ・西アジア4%と推定されています。

報告書は、政府、企業、労使の社会的パートナーのさらなる取り組み可能性のある分野を示しています。政府に関しては、制定法やその執行、司法アクセスにおけるギャップに対処し、責任ある企業行動の枠組みを確立する上での国の重要な役割を強調し、政府自身も商品やサービスの調達者、企業オーナー、信用貸付やローンの提供者としてその活動にデュー・ディリジェンスの概念を組み込むことによって模範となる方法も検討しています。

企業に関しては、サプライチェーンを丸ごと対象とした包括的なデュー・ディリジェンスの必要性が強調されています。デュー・ディリジェンスが独特なのは、従来の企業慣行を土台とし、その調整を図るだけでなく、サプライチェーン全体を通じた救済策提供の手続きなど、サプライチェーンではまだ比較的新しい手続きが導入されている点です。重要なこととして、児童労働、強制労働、人身取引に効果的なデュー・ディリジェンスは予防的であり、害悪の可能性や深刻度に応じて比例的に用い、優先順位を付けることができ、企業のリスク管理及び意思決定の一部をなしています。

また、グローバル・サプライチェーンが業務を外注している最下層の、リスクが最大である非公式(インフォーマル)経済で働く家族や子どもの貧困のような根本原因に焦点を当てた、幅広い予防措置も示しています。
 
ガイ・ライダーILO事務局長は、私たちが購入する商品やサービスは、世界中多くの国からの投入財で構成されており、その加工や組立、包装、輸送、消費は複数の国や市場を横断していることを指摘した上で、「報告書はサプライチェーンで発生している労働者の中核的な権利の侵害に効果的に取り組む行動が緊急に必要なことを示しています」と述べています。