「あきこの部屋」第42回 一つをみんなのために - 100周年記念批准促進キャンペーン

今年の9月は台風の大規模被害が発生し、多くの世帯の方々が長引く停電による不自由な生活を余儀なくされました。皆様が早く通常の生活に戻られることを祈念します。

来年はオリンピック・パラリンピック年ですが、今、ラグビーのワールドカップ開催中です。

国内の動きです。8月末に各省庁は財務省へ所管概算要求を提出します。厚生労働省の要求額は32兆6,234億円(今年度+6,593億円)と過去最大を更新する要求になりました。9月11日に第4次安倍再改造内閣が発足し、厚生労働大臣・働き方改革担当には加藤 勝信氏が1年ぶりに再任命され、外務大臣は茂木 敏充氏が新しく任命されました。

ガイ・ライダーILO事務局長は、9月上旬の愛媛県松山市で開催された主要20カ国・地域(G20)の労働、雇用問題担当大臣会合に参加し、人口構造の変化(高齢労働者の就労と勤労生活の長期化、若者の就労、高齢化社会における新たな雇用機会-介護労働の未来)、男女平等、新たな働き方といったテーマのほぼ全てで、デボラ・グリーンフィールド副事務局長とともに発表しました。また、これらのテーマに関し、人間を中心に据えた仕事の世界に向けた政策優先事項への公約を示す宣言の採択を歓迎しました。
9月下旬にはILO事務局長は、国連本部で開催された国連総会や国連気候行動サミットその他のハイレベルイベントに出席し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の促進や公正な移行の重要性などに焦点をあてた活動を行いました。

続いて駐日事務所の活動です。TICADVII 国際労働機関(ILO)サイドイベント(8/29)、第10回ILO-日本協同組合連携機構(JCA)共催公開セミナー(9/13)及び第3回東京2020-ILO サステナビリティ・フォーラム には多数御参加いただきました。登壇者の方々、御参加の方々に御礼申し上げます。私自身は、グローバル化をテーマとした第14回独日ヤングリーダーズフォーラムでの講演や、スキルの向上と社会対話の重要性に焦点をあてたアセアン地域ILO労使関係セミナーでのご挨拶もさせていただきました。

今月は、「一つをみんなのために(One for All)100周年記念批准促進キャンペーン 」を紹介します。ILOは2019年初めから、創立100周年を記念して加盟国に少なくとも1本の国際労働基準の批准を呼びかけるキャンペーンを展開しています。2018年初めから数えて既にILO加盟国の3分の1に当たる61カ国が条約または議定書を批准しています。内訳は、アフリカ17カ国、米州9カ国、アラブ2カ国、アジア太平洋13カ国、欧州・中央アジア20カ国です。複数批准国もあるため、今年に入ってからの条約または議定書の批准数は50本、昨年批准して今年発効したものは44本に達しています。ILO総会開催中の2019年6月は批准数23本という新記録が達成されました。
条約の中では、「1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号) 」の批准国が186カ国(日本は既批准)となり、全加盟国による批准が目前です。達成されたならば、ILO条約史上初めてのこととなります。また、「1952年の社会保障(最低基準)条約(第102号) 」は、2019年末までに60カ国(日本は既批准)批准を目標に掲げ、目標達成まで2カ国を残すのみとなっています。
 ILOの担当局長は、当たり前のことと思われている1日8時間労働や有給出産休暇、最低賃金も国際労働基準に根源があり、批准の進展は、こういった制度が私たち及び将来世代の暮らしに真の価値を付加するだけでなく、まだ改善の余地があることを推測させるとの感想を述べています。
 国際労働基準 はILOの活動の中心で、1919年の創立時から今日まで、採択された条約は190本、勧告は206本に上ります。取り上げられているテーマは、児童労働や労働時間から船員の権利に至るまで多岐にわたっています。最も新しいものは2019年の「仕事の世界における暴力と嫌がらせ(ハラスメント)の撤廃に関する条約と勧告」です。
 こういった国際労働基準は数百万の人々の勤労生活を改善してきたものの、仕事の世界にはいまだに多くの問題が残されています。技術発展や気候変動、人口動態の変化やグローバル化など、職場に変容を及ぼす新たな要因も存在し、国際労働基準の適切性はかつてないほど高まっています。

さて、少し先になりますが、11月11日に、ILO・大原社会問題研究所創立100周年記念~ 第32回国際労働問題シンポジウムを大阪で開催いたします。皆様の御来場をお待ちしています。