「あきこの部屋」第38回 フィラデルフィア宣言採択75周年

5月1日に現天皇陛下が即位され、元号が令和になりました。

政府は5月の月例経済報告で、生産や輸出が弱含んでいることに注目し、景気の総括判断を下方修正しました。「緩やかな回復」との表現は据え置かれましたが、先行きについては懸念があります。しかし、雇用情勢については、人手不足感が高い水準となっています。

今年の100周年記念ILO総会は、6月10~21日の日程でジュネーブで開催されます。仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメントの基準設定(第二次討議)、ILO創立100周年成果文書の採択、仕事の未来に関連したテーマ別フォーラムなどが行われます。

日本では、新条約採択を待たずに、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止を義務付ける関連法が29日の参院本会議で可決、成立しました。パワハラを「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」などと明記し、企業に相談窓口の設置など新たに防止措置を義務付けることになりました。ILO総会での基準採択審議が注目されています。

今年は日本がG20など国際的行事の主催国ですが、5月には若者が主体となるY20、シンクタンクによるT20が開催され、それぞれコミュニケがG20議長を務める安倍内閣総理大臣にわたされました。

今月は獨協大学、中央大学でILOの活動を紹介する機会がありました。31日には上智大学で「外国人労働者のディーセント・ワークと人権をめぐる課題と労使の対応」と題するILO100周年記念 労働CSRセミナーを開催いたします。

さて、今年は1944年5月10日に、米国フィラデルフィアで開かれたILO総会で、ILOの社会的な使命に力強い新たな弾みを与えるフィラデルフィア宣言が全会一致で採択されてから75年になりますので、これを紹介します。

条約、勧告と異なる形式の規範として、ILOは宣言、行動規範、ガイドラインなどを採択しています。これらは、法的拘束力を伴わず、また採択手続きが簡潔で、迅速な対応が可能で、労働分野の重要な変化に対して、時宜を得た指針を与える重要な役割を果たしています。フィラデルフィア宣言のほか、「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」(1998年)、「公正なグローバル化のための社会正義宣言」(2008年)などがよく知られています。今年の総会で採択される予定のILO創立100周年成果文書も宣言の形式をとる予定です。

フィラデルフィア宣言の採択当時、ILOの事務局は欧州の戦禍を逃れて、スイスのジュネーブからカナダのモントリオールに一時的に拠点を移していました。戦争の終結が視野に入ってきたため、創立時の諸原則を再確認し、それを新たな現実とより良い世界を求める願望に適応させる必要性を感じ、この理想を表現するものとして、「国際労働機関の目的に関する宣言」を採択することとしました。

起草の中心になったエドワード・フィーランILO事務局長代行(当時)は、この宣言について、「25年前に憲章を起草した人々に捧げられる栄冠であり、その努力を確認するもの」、そして、「各国及び国際的な機関が、たとえどんな経済的な嵐が来ようとも、人類共通の福祉という到達しなくてはならない目的地に向けて、より確実に進路の舵を取れるための北極星を定めるもの」と評しています。

この宣言は、全ての人にとっての人権が中心とされるべきと断言することによってILOの活動の幅を広げ、これを国家及び国際のあらゆる政策の中心目的とすべきと説き、ILOは「この根本目的に照らして経済的及び財政的の国際の政策及び措置をすべて」検討し且つ審議する必要があることを承認しています。フィラデルフィア宣言は、第2次世界大戦後の世界秩序の形成に寄与し、その秩序の枠内で各国の経済・財政面のあらゆる政策及び措置を導く原則を定めた先見の明のある文書の一つと見ることができます。宣言は1946年にILO憲章に付属した文書とされ、その後も世界人権宣言など様々な国際文書に影響を与えてきました。有名な以下の根本原則は

(a) 労働は、商品ではない。
(b) 表現及び結社の自由は、不断の進歩のために欠くことができない。
(c) 一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である。
(d) 欠乏に対する戦は、各国内における不屈の勇気をもって、且つ、労働者及び使用者の代表者が、政府の代表者と同等の地位において、一般の福祉を増進するために自由な討議及び民主的な決定にともに参加する継続的且つ協調的な国際的努力によって、遂行することを要する。

75年後の今も当時と同様に通用するものであり、次の世紀をめざす今のILOに影響を与えています。