ILO創立100周年
第一次世界大戦を終結させたベルサイユ平和条約によって1919年に国際連盟と共に誕生したILOは2019年に創立100周年を迎えます。「社会正義を前進させ、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進する」というILOの中核的な使命を思い起こさせるキャッチフレーズの下、2019年は世界中で様々なイベントが開かれ、記念出版物などが発表されます。公式の100周年開幕式典が開かれる1月22日には仕事の未来世界委員会の報告書も発表されました。2月1日には日本でも報告書をテーマにシンポジウムが開かれました。
100周年記念特別ウェブサイト「私たちの物語、あなたの物語」(英語)では、ILOの歴史や活動を、当時の映像や画像、音声ファイル、歴史的な文書なども駆使してご紹介します。このサイトは9章に分かれており、2019年3月13日までかけて、ほぼ毎週1章ずつのペースで順次オープンしていきます。1月9日にオープンした第1章は「政労使三者構成原則と社会対話」と題し、ILOの根幹をなすこの原則を切り口にILO誕生時の世界情勢から始まる物語をご覧になれます。1月16日にオープンした「権利と労働基準」と題する第2章では、ILOの重要な活動である政府、使用者、労働者の三者による国際労働基準の設定と適用の仕組みを説明しています。結社の自由と団体交渉権、強制労働廃絶、児童労働撤廃、就労に係わる差別の撤廃といった、すべてのILO加盟国が尊重と促進を約している中核的な権利・原則に関連した条約・議定書の批准状況も掲載されています。1月30日にオープンした「平等と差別禁止」と題する第3章では、先住民、障害者、移民、高齢者、女性、LGBTIと総称される性的少数者、HIV(エイズウイルス)感染者、家事労働者といった人々から差別経験の証言を得た上で、差別が社会にもたらす影響を説明し、ILOの取り組みを紹介しています。差別は基本的人権の侵害であり、失われた経済成長の点で世界に与える損失は4,000億ドルを超えると見られます。差別をなくすことはILOが提唱する「全ての人にディーセント・ワーク」を目指す取り組みの必要不可欠な一部です。差別のない世界は可能ですが、それを達成するには私たち皆に担うべき役割があります。
2月6日にオープンした第4章「雇用」は、「どんな仕事でもいいわけではない」を標題に掲げ、平和、社会正義、社会的包摂、経済開発、個人の充足の基本であるところのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の達成に向けた取り組みを紹介しています。2月13日にオープンした第5章は、病気になった時、障害を得た時、妊娠した時、失業した時、高齢で働けなくなった時といったリスクに対して人々を守り、貧困に陥るのを防いでくれる社会的保護(社会保障)を取り上げています。社会保障への権利は世界人権宣言にも掲げられている人権ですが、十分な社会的保護が適用されているのは世界人口の29%に過ぎず、今日でも世界全体で40億人が保護を受けていません。社会的保護なしには貧困の撤廃、不平等の縮小、男女平等といった複数の持続可能な開発目標の達成が不可能です。ILOは全ての人に社会的保護が提供される普遍的社会的保護に向けて各国を支援しています。
世界各地で開かれるイベントの多くは、同時にまたは後日、オンライン中継されることになっています。