「あきこの部屋」第33回 国際労働力移動世界推計

「あきこの部屋」第33回 国際労働力移動世界推計

2018年12月26日

今年の漢字に「災」が選ばれるなど、国内のみならず、世界的にも災害の多かった2018年も終わろうとしています。お悔やみを申し上げるとともに、被災された方が1日も早く通常の生活に戻られることを祈念します。

日本の会計年度は4月から翌年3月で、政府は毎年12月下旬に、翌年度予算案を決定し、年明けの通常国会に提出します。12月21日の閣議で決定された平成31年度の予算案の一般会計の総額は今年度の当初予算を3兆7437億円上回り、過去最大の101兆4564億円となりました。ILOへの分担金もこの中に含まれています。

12月10日に終了した臨時国会では、少子高齢化による深刻な人手不足に対応するため、新たな在留資格(1)を創設し、外国人労働者の受け入れを進める出入国管理法の改正法案が8日参議院本会議で可決、成立しました。2019年4月から5年で最大約34万人の外国人労働者を受け入れることとなり、政府は、新たな外国人材の受入れ制度について、基本方針及び分野別運用方針を12月25日にとりまとめたところです。

ILO駐日事務所は、6日に社労士制度50周年記念のイベントの一環として、全国社会保険労務士連合会と共催で国際シンポジウムを行い、ILO本部から山端浩専門家が参加し、日本の社労士制度とその国際的な広がりに関して議論を行いました。ILO駐日代表としては、第16回ASEAN日本社会保障ハイレベル会合で、「貧困の削減と子ども・若者のエンパワメントを通じた包摂的社会の促進:貧困削減に向けた中央政府、地方政府、コミュニティの役割」と題する発表や、Hult Prize(2)に関する予選の審査員を務めたり、日本生活協同組合連合会などの機関紙の新年号を飾る座談会に出席させていただきました。

出版物では、先月紹介した「世界賃金報告2018-19年版」エグゼクティブサマリー(概要)及び同一賃金国際連合(EPIC)パンフレットの日本語版を作成しました。

さて、12月18日は国際移住者デーで、今年は「国連移住グローバル・コンパクト」が11日に採択されました。それに先立つ12月5日にILOが国際労働力移動世界推計:結果と方法論を発表したので、これを紹介します。世界全体で現在、移民労働者は1億6,400万人に上り、2013年(3)の1億5,000万人より9%増加しています。

対象期間は2013~17年で、移民労働者は男性58%(9,600万人)、女性42%で、2013年(男性56%、女性44%)より男性比率が増加しています。移民労働者の87%が25~64歳の働き盛りの年齢であり、送出国の中には自国の労働力の最も生産的な部分が国内から失われ、経済成長にマイナスの影響が出ている可能性もあります。

移民労働者の受入国の所得水準別で見ると、1億6,400万人中1億1,120万人が高所得国(67.9%、前回74.9%)、3,050万人が上位中所得国(18.6%)、1,660万人が下位中所得国(10.1%)、560万人が低所得国(3.4%)で暮らしています。対象期間中に高所得国の比率が下がり、上位中所得国の割合が上がったのは、後者の経済発展による可能性があります。移民労働者が各国の労働力全体に占める割合は、高所得国では18.5%に上るのに対し、所得が低くなると1.4~2.2%に低下します。

地域ごとにみると、移民労働者の61%が、北・南・西欧(23.9%)、北米(23%)、アラブ諸国(13.9%)の3地域に集中し、これ以外では、東欧、サハラ以南アフリカ、東南アジア・太平洋、中央・西アジアでそれぞれ5%を超えているのに対し、北アフリカは1%未満です。

報告書は国別、地域別、世界全体の、より包括的な統計データを集めることを重要性し、採択が確実だった「国連移住グローバル・コンパクト」の実施や意思決定に資するよう、国際的な労働力移動に関する世界推計を今後定期的に発表していくことを計画しています。

国際労働力移動の政策優先順位が上がってきており、送出国及び受入国の関心だけでなく、移民労働者の関心にも等しく応えることが求められています。担当局長は、「効果的で国際労働基準に沿った政策となるためには、関連する国際的な移住労働者の数、その特徴、就労形態などを含む証拠に根ざした政策が必要。2018年10月に開かれた第20回国際労働統計家会議で、『国際労働力移動の指針(改定)』が承認されたことは国際推計値の正確性に資する」と述べています。

さて、ILOが100周年を迎え、日本がG20、TICAD(アフリカ開発会議)など重要行事の主催国となる来年は亥年です。2019年1月30日(水)にはILO創設100周年記念 トーク・イベント&キャリア・セミナー、2月1日(金)には同記念シンポジウムが開催されます。皆様、ブログあきこのへや、ILO駐日事務所公式ツイッターILOインターンによるツイッター、ご愛読ありがとうございました。良いお年をお迎えください。

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注1)特定技能1号(相当程度の知識または経験を持つ労働者で最高5年まで在留可能、家族の帯同は認めない)同2号(熟練した技能を持つ労働者で在留期限はなく、家族の帯同を認める)

注2)持続可能な開発目標(SDGs)をテーマに、全世界の学生がビジネスにもなりうる、プロジェクトを提案し、最優秀賞を競う催し

注3)2015年移民労働者及び移民家事労働者のILOによる世界推計『ILO global estimates of migrant workers and migrant domestic workers』今回発表されたのはこの改訂第2版に当たる