「あきこの部屋」第27回 家事労働者の保護

東京では例年に比べて早く、6月中に梅雨明けしました。今、日本中で、ロシアで行われているワールドカップサッカー大会の話題で持ちきりです。近年大型スポーツイベントは、労働や人権に配慮することが求められるようになり、ILOは次回開催地のカタールに、特に移民労働者の権利と労働条件の向上に向けたプロジェクトを行うための事務所を4月に設置しました。

先月から行われていたILO総会は6月8日に終了し、ILOと日本の第1回年次協議も開催されました。議題の1つであった「仕事の世界における男女に対する暴力とハラスメント」については、来年の総会で条約およびそれを補足する勧告の採択をめざすことになりました。6月12日の児童労働撤廃世界デーは、今年は危険で有害な児童労働に終止符を打つことに光を当て、ノーベル平和賞受賞のカイラッシュ氏を招いて、総会中にサイドイベントが行われました。

ところで、6月21日は日本のILO再加盟日です。日本はILO創設時からの原加盟国ですが、第2次世界大戦中は脱退しており、1951年の第34回ILO総会において圧倒的多数で復帰が承認されました。国連加盟前の日本にとって国際社会復帰の第一歩となった記念すべき日です。
日本国内では国会の7月22日までの延長が決まり、働き方改革関連法案は参議院本会議において、6月29日に賛成多数で可決、成立しました。

続いてILO駐日事務所からのお知らせです。現在インターン募集中です。こちらよりご覧ください。

また定期刊行物:世界の雇用及び社会の見通し2018年版テーマ編 - 仕事でグリーン化(エグゼクティブ・サマリー)の翻訳が完成しました。こちらよりご覧ください。

6月16日が国際家事労働者デーとされているので、今月は家事労働者をとりあげます。

家事労働者は、世界の非公式な(インフォーマル)雇用の労働力の大部分を占め、最も立場が弱い労働者集団のひとつです。世界全体で6,700万人を数え、女性が圧倒的に多く、移民労働者、先住民、児童などが占める割合が多くなっています。さらに、低賃金や長時間労働、虐待や自由の制限などの問題に直面しています。

ILOは2011年に、家事労働者に他の労働者と同じ基本的な権利を保障する初の国際労働基準である家事労働者条約(第189号)と勧告(第201号)を採択し、公正な賃金や妥当な労働時間など、ディーセント・ワークの確保に向けた手引きを示しています。現在のところ、第189号条約はもっとも新しい条約です。

条約は、家事労働者を定義し、安全で健康的な作業環境の権利、一般の労働者と等しい労働時間、最低でも連続24時間の週休、現物払いの制限、雇用条件に関する情報の明示、結社の自由や団体交渉権といった就労に係わる基本的な権利及び原則の尊重・促進・実現などを規定しています。国に、家事労働者があらゆる形態の虐待、嫌がらせ及び暴力に対する実効的な保護を享受することを確保するための措置をとることを義務付けています。

また、住み込み労働者のためにはプライバシーを尊重する人並みの生活条件が享受できるよう確保すること、児童家事労働者については義務教育を受ける機会が奪われないこと、移民労働者に関しては、国境を越える前に雇用契約書などが提供されることなど、追加的なリスクにさらされている可能性がある労働者についての特別保護規定も盛り込まれています。

さらに、民間職業紹介所の不正な慣行から家事労働者を効果的に保護する措置、家事労働の特殊性に十分配慮した労働監督措置の開発なども規定されています。

わが国は家事労働者条約を批准していませんが、批准国は徐々に増加し、ラテンアメリカ諸国、ヨーロッパ諸国を中心に25カ国となっています。アジアではフィリピンが批准しています。