「あきこの部屋」第21回 未来の仕事の世界は障がい者を完全に包摂するものに

12月の別名は「師走」です。いくつかの言われのうち、一般的なのは、12月は仏事で坊主が慌ただしく駆け回ることのようです。日本の会計年度は4月から翌年3月なのですが、やはり12月には多くの人があくせく動いています。政府は毎年12月下旬に、来年度予算案を決定し、年明けの通常国会に提出します。今年は12月22日の閣議で平成30年度の予算案を決定し、一般会計の総額は今年度の当初予算を2581億円上回り、過去最大の97兆7128億円となりました。ILOへの分担金もこの中に含まれています。

ILO駐日事務所は12月7日に、国連大学本部ビルエリザベス・ローズ会議場で、ILO本部の児童労働の専門家であるフランチェスコ・ドヴィーディオ氏を迎えて、「児童労働のいまとSDGs達成に向けて~私たちにできるアクション~」と題するセミナーを開催し、100名を超える方々にご参加いただきました。登壇者、参加者の皆様にこの紙面を借りてお礼を申し上げます。

さて、12月3日の国際障がい者デーに、ガイ・ライダーILO事務局長もメッセージを出しているので、今月は障がい者雇用をとりあげます。世界人口の7人に1人が何らかの障害を持ち、その大半が生産年齢にあるものの、ほとんどが働く権利を享受できていません。また、障害者が労働市場から排除されていることによって、最大で国内総生産(GDP)の7%の損失がある可能性があります。

創設時からILOは常に、構成する政労使三者、国連諸機関、障害者団体その他の利害関係者と連携して労働市場における障害者のより平等な待遇と機会を促進する方向に導く役割を負っていました。

今日、現在及び将来の労働市場の重要な資産の一つである障害者の技能と才能、そして生産的な雇用とディーセント・ワークへの権利が障害者一人ひとりに実現されるためにはまだ何が必要かに重点を置かなくてはなりません。このニーズは十分に認められており、そのための枠組みが存在します。国連の「障害者の権利に関する条約」(1) 及び国際労働基準 (2) は障害者のディーセント・ワークへの機会を阻む障害を打ち破ることを求め、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」は障害者が包摂されて初めて、持続可能な開発とディーセント・ワークが現実のものとなる未来を指し示しています。

障害者が仕事の世界、広く社会に対して貢献できることは、広く認識されるようになってきました。世界中で各国政府、労働組合、使用者その他が行動を求める呼びかけに応えています。 ILOの「ビジネスと障害グローバル・ネットワーク 」への参加企業が増え、世界の労働者団体がその障害者包摂に向けた実際活動を支援しています。今年の国際障害者デーに際し、ILOは障害者の包摂に向けた労働組合の活動を支える新刊書を発表しました。

障害についての配慮はまだ不十分で、非差別政策や労働市場統治の促進から科学技術のアクセシビリティー(利用しやすさ)に至るまで、さらに配慮が必要です。
既に多くのことが達成されていますが、仕事の世界を障害者が真に平等に包摂された世界とするためには、すべての人が努力を重ねる必要があります。

さて、来年は戌年です。ネコ派としては、否応もなく目に入る干支の戌を全部ネコに置き換えたいところです。皆様、ブログあきこのへや、ILO駐日事務所公式ツイッターILOインターンによるツイッター 、ご愛読ありがとうございました。良いお年をお迎えください。

(1) 日本は2014年1月に批准
(2) 1983年の職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約(第159号)、日本は1992年6月批准