あきこの部屋」第16回 ベターワーク

2017年7月31

7月も終わりに近くなり、九州北部など一部の地域に大変な被害をもたらした梅雨シーズンは終わり、本格的な夏を迎えました。7月の始めに行われた東京都議会議員選挙では、小池百合子知事の率いる都民ファーストの会が議会の第一党に躍進し、さらに国政では自民党と連立政権を構成している公明党が都知事を支持したので、都議会で都知事を支持する勢力が過半数を超える圧勝となる一方で、自民党は歴史的敗北を喫する結果になりました。

さて、今月は、ILOの技術協力についての5大主要プログラム1つであるベターワークプログラムを紹介します。このプログラムは、カンボジアで実施されていたベターファクトリーズ・カンボジア・プロジェクトに想を得て、ILOと世銀グループの国際金融公社(IFC)の共同プログラムとして2007年に開始されました。

発展途上国の衣料産業、履き物製造業では約6000万人の労働者が働いていますが、このプログラムは、その労働条件の改善、労働生産性、企業競争力の強化を図ることにより、労働者とその家族を貧困から脱却させ、包摂的な成長を目指すもので、工場レベルの活動、国内活動、国際的な活動が行われています。対象国はバングラデシュ、ベトナム、カンボジア、インドネシア、ヨルダン、ハイチ、ニカラグアの7カ国で、120以上のブランド、1450以上の工場、190万人(80%は女性)以上の労働者と地域社会に対する取組みを直接的に行っています。

工場レベルにおけるベターワークの活動は、5段階で約1年サイクルで行われます。

  •      初期助言
  •      アセスメント(事前通告なしで監査)
  •      継続的な助言及び研修、
  •      講評
  •      改善前・改善後の変化確認

工場に労使委員会を設立させ、それに助言を与えるなどして、工場内での問題点を明確にして取り組むことへの支援を行います。国内法や国際法の遵守の有無について、抜き打ち検査を行い、継続的な向上の支援に向けて、アドバイスや学習サービスの機会を提供しています。

国内では、多数の関係者から構成されるプログラム諮問委員会を設置します。国内政労使と共に、能力育成、労働法の整備、労使関係の強化を支援し、また業績の良い工場に恩恵を与えることにより、競争力を向上させ、民間企業の強化を図っています。

国際的には、労働者と使用者を対象に産業の状況について先駆的な独立した調査、研究を行う、業界のリーダー達との議論を調整する、政策変更に影響を及ぼす、国際的に権威がある組織として行動する、などの活動を行っています。

米国タフツ大学によってこのプログラムの独立影響評価行われ、参加工場における労働条件の劇的な改善、参加企業の生産性・収益性の向上が明らかになっています。たとえば、長時間労働や極度の低賃金、解雇の脅し、試用契約の乱用などにつながる慣行が行われなくなる傾向があり、男女賃金格差の縮小、セクシュアルハラスメント(性的嫌がらせ)の報告件数の減少などもみられました。また、プログラムが実施している監督技能研修が労働条件の改善及び衣料産業における女性のエンパワーメントに非常に効果的な戦略であることもわかりました。