「貧困撲滅」イニシアチブ

仕事の世界、労働市場、雇用と社会的保護による、世界の貧困撲滅に向けた多面的な取組みの促進を図ります。

 

100周年に向けて掲げられているイニシアチブのひとつ、「貧困撲滅」イニシアチブは、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中でILOの活動を進めていく手段として策定されました。2030アジェンダは世界的に実施されるもので、持続可能な開発のすべての側面を網羅しています。極度の貧困を含むすべての形態と、あらゆる側面の貧困を撲滅することは世界的な課題であり、持続可能な開発に欠かすことができないと認識しています。

 

2030アジェンダは、2015年の国連総会で加盟国によって採択され、社会、経済、環境的側面の持続可能性に関する一貫した、調和のとれた活動を実施するための、世界的な枠組みです。ディーセント・ワークアジェンダは、持続可能な開発(SDGs)にしっかりと組み込まれています。このことで、ほかの国連機関とも連携し、すべての人のためにディーセント・ワークを実現する活動を通して社会正義を追求するという機関の能力は、実質的に強化されます。

 

2030アジェンダは多くの点でILOの1944年の「フィラデルフィア宣言」の中で述べられている内容に同意しています。宣言は「一部の貧困は、全体の繁栄にとって危険である。欠乏に対する戦は、各国内における不屈の勇気をもって、且つ、継続的、協調的な国際的努力によって遂行することを要する。」と謳っています。ILO政労使からの取組みを求める声は、70年前と同様に今日も適切かつ重要です。

 

ILOの取組みを、多国間システムの中で活用する

 

2016年のILO総会で提出された「貧困終焉」に関する事務局長報告書は、2030アジェンダの実施において、 ILOが最大限役割を果たす上での責任、課題、機会について述べています。この中で、二つの関連する活動について述べています。ひとつはパートナーシップと、多国間システムの一貫性の強化、そして2つめには、2030アジェンダと、ディーセント・ワークの内容を国の政策戦略に組み入れることです。

 

ILOは多国間システムの一貫性の強化と達成能力の向上について、2つの卓越した優位点に恵まれて取り組んでいます。まず、ディーセント・ワークは持続可能な開発の手段と目的であると国際社会が理解していることを2030アジェンダが示していること。つまり、ILOが20年間取り組んできたことへの理解を得られている点です。2つ目には、これと同時に、ILOは国際機構に向けて、より機能的で実質的な政策の一貫性をこれまで提唱してきた点です。2008年の公正なグローバル化のための社会正義宣言は、この点についてILOの使命をすべて示しています。

 

政労使の2030年アジェンダ達成に向けたサポート

 

国内の金融枠組みによって支えられている各国の持続可能な開発戦略は、持続可能な開発目標(SDGs実現に向けた取組みの中核を成すでしょう。これらの戦略の中にディセント・ワークの概念を確実に組み入れることが大切です。そのためには、労働・雇用・社会問題を担当する政府機関、労使団体が、プロセスの計画段階から実施にかけて中心的に関与していることが重要です。

 

ILOの「2016年度事業計画・予算」は、2030アジェンダの実施における政労使の役割をILOが支援することの重要性について述べています。政策の成果は、SDGsに沿ったものです。貧困イニシアチブは、2030年アジェンダと、17SDGs―とりわけ、目標8の「すべての人々のための持続的、包括的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する」を支持するILOの取組みについて示しています。  参照:「ILOの活動に関連する目標

 

最近の雇用、社会動向は憂慮すべきものであり、貧困撲滅とSDGsの実現にとって重要な、国際協力関係に対して、悪影響が懸念されるような政治的背景を作り上げています。そのような中で、2030アジェンダは、この重苦しい現状から脱却できる見通しをもたせています。もし貧困からの脱却、格差の全体的な是正が実現すれば、世界的な社会正義に向けて流れを変えることができるでしょう。それによって、社会、経済、環境の持続可能性への道が広がるでしょう。新たなる100年に向けてILOが果たす役割を考えると、まさに貧困撲滅イニシアチブの下で行うILOの活動は、持続可能な開発のための基盤となる社会正義に、世界を確実に向かわせることにつながるのです。

 

英語原文はこちらより