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労働者の福祉施設に関する勧告(第102号)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百五十六年六月六日にその第三十九回会期として会合し、
この会期の議事日程の第五議題である労働者の福祉施設に関する提案の採択を決定し、
この提案が勧告の形式をとるべきであることを決定したので、
次の勧告(引用に際しては、千九百五十六年の福祉施設勧告と称することができる。)を千九百五十六年六月二十六日に採択する。
労働者の次の福祉施設、すなわち、
(a) 企業内又はその附近における給食施設
(b) 企業内又はその附近における休憩施設、及びレクリエーション施設(休日施設を除く。)
(c) 通常の公共輸送施設が不十分であるか又はその利用が困難である場合における通勤のための輸送施設
に関してある原則を定め、かつ、ある基準を確立することが望ましいので、
総会は、加盟国が、次の規定を自主的、行政的その他適当な措置により国内事情の許す限り十分にかつすみやかに適用すること、及びこれを実施するために執つた措置について理事会の要請に従つて国際労働事務局に報告することを勧告する。
T 適用範囲
1 この勧告は、農業及び海上運送に従事する労働者を除くほか、公私の企業に使用される筋肉労働者及び非筋肉労働者に適用する。
2 ある企業がこの勧告の適用を受けるものであるかどうか疑わしい場合には、権限のある機関が、関係のある使用者団体及び労働者団体との協議の上で、又は自国の法律若しくは慣行に従つて決定すべきである。
U 実施方法
3 この勧告に掲げる福祉施設は、その種類が多いこと及びその提供に関する国内慣行の種類が多いことを考慮に入れて、公の又は自主的措置により、すなわち、
(a) 法令により、
(b) 権限のある機関が使用者団体及び労働者団体との協議の上で承認する他のいずれかの方法により、又は
(c) 労働協約又は関係のある使用者と労働者との双方が合意した他の措置により
提供することができる。
V 給食施設
A 食堂
4 企業に使用されている労働者の数、食堂に対する要求及びその利用見込み、食事を得るために他の適当な施設を利用することができないこと並びにその他関連のある条件及び環境を考慮に入れて、望ましい場合には、企業内又はその附近に適当な食事を提供する食堂を設置し、かつ、運営すべきである。
5 食堂の設置が国内法令により規定される場合には、権限のある機関は、一定の最低数以上の労働者が使用されているとき、又は権限のある機関が決定する他の理由により望ましいときは、企業内又はその附近に食堂を設置し、かつ、運営するよう要求する権限を与えられるべきである。
6 食堂の設置が国内法令により設けられる工場委員会の責任であるときは、その委員会は、食堂の設置及び運営が望ましい企業にそれを設置すべきである。
7 食堂が労働協約により又は5及び6に示す方法を除く他のいずれかの方法によつて設置される場合には、そのような取極は、関係のある使用者と労働者とが合意するところによつて食堂の設置及び運営が望ましい企業に対して適用すべきである。
8 権限のある機関又は他の適当な機関は、食堂の設置及び運営における技術上の問題に関して個個の企業に情報、助言及び指導を与えるため適当な措置を執るべきである。
9(1) 適当な出版物がまだ存在していない場合には、権限のある機関又は他の適当な機関は、食堂の設置及び運営の方法に関し、当該国の特殊事情に適合した詳細な情報、示唆及び指導を含む資料を作成し、かつ、出版すべきである。
(2) その資料には、次の事項に関する示唆を含むべきである。
(a) 当該企業の各種の建物又は作業部門との関連における食堂の位置
(b) 適当な場合における数個の企業のための共同食堂の設置
(c) 食堂内の設備―面積、照明、暖房、気温及び換気の基準
(d) 食堂の設計―食事室、サーヴィスの場所、調理場、皿洗場、倉庫、事務室並びに食堂の従業員用のロッカー及び洗面所
(e) 食堂の設備、調度及び装飾―食物の準備、調理、冷蔵、貯蔵及び洗浄のための設備、調理のための燃料の種類、食事室のテーブル及びいすの種類並びに塗装及び装飾の方法
(f) 提供される食事の種類―標準献立、選択式標準献立、一品料理、医学的に定められた栄養献立、健康に有害な職業に従事する労働者のための特別献立及び交代労働者のための朝食、昼食その他の食事
(g) 栄養の基準―食物の栄養価、計画的な献立表及び均衡のとれた食事
(h) 食堂におけるサーヴィスの種類―ハッチ式又はカウンター式のサーヴィス、カフェテリア式サーヴィス及びテーブル・サーヴィス並びにサーヴィスの種類ごとに必要とされる従業員
(i) 調理場及び食事室における衛生の基準
(j) 経理上の問題―建築、設備及び調度を要する最初の資金、経常費及び維持費、食料費及び人件費、簿記並びに食事の価格
B 簡易食堂及び手押車
10(1) 適当な食事を提供する食堂を設置することが不可能な企業又はこのような食堂がすでに存在している他の企業において、必要かつ可能な場合には、包装された食事又は簡易食及び茶、コーヒー、牛乳その他の飲料を労働者に販売するため、簡易食堂又は手押車を設けるべきである。ただし、危険な又は有害な工程のために労働者が飲食することが望ましくない作業場には、手押車を入れてはならない。
(2) これらの施設のあるものは、昼食時間又は交代時間に限らず認められた休憩時間及び作業の中断時間にも利用しうるようにすべきである。
C 食事施設及び他の適当な部屋
11(1) 適当な食事を提供する食堂を設置することが不可能な企業又はこのような食堂がすでに存在している他の企業においても必要な場合には、労働者が各自食事を準備し、又は暖め、かつ、とるための食事施設を、可能でありかつ適当である限り、提供すべきである。
(2) このようにして提供される施設は、少くとも次のものを備えるべきである。
(a) 寒気又は暑気による不快を軽減するため気候に適応する設備を有する部屋
(b) 適当な換気装置及び照明装置
(c) 十分な数の適当なテーブル及び座席
(d) 食物及び飲料を暖める適当な器具
(e) 十分な量の衛生的な飲料水
D 移動式売店
12 労働者が広範な作業地域に分散している企業において、可能かつ必要な場合であつて他に満足な施設を利用することができないときは、労働者に適当な食事を販売するための移動式売店を提供することが望ましい。
E その他の施設
13 交代労働者に対して適当な時間に適当な食事及び飲料を得るための施設を提供することについて特別の考慮を払うべきである。
14 適当な食物、飲料及び食事を購入するための施設が不十分な場所においては、労働者に対しそれらの施設を提供する措置を執るべきである。
F 施設の使用
15 労働者は、健康上の理由のため国内法令に定める場合を除くほか、いかなる場合にも、提供される給食施設のいずれかを使用することを強制されるべきではない。
W 休憩施設
A 座席
16(1) 労働者、特に女子労働者及び年少労働者が作業中その作業に支障をきたすことなく適時すわる機会をもつ企業においては、それらの者の使用に当てるため座席を提供し、かつ、維持すべきである。
(2) このようにして提供される座席は、十分な数であり、かつ、関係労働者の作業場所に適当に近接していなければならない。
17(1) 仕事の大部分をすわつたままで正常に行うことができる企業においては、関係労働者のため座席を提供し、かつ、維持すべきである。
(2) その座席は、労働者及び作業に適した設計、構造及び寸法のものとすべきである。また、必要な場合には、足掛け台を備えるべきである。
18 労働者のための座席が国内法令に基いて提供され、かつ、維持されるかどうかに関係なく、各国の権限のある機関は、特に仕事の大部分をすわつたままで正常に行うことができる作業に従事する労働者のために座席が提供される場合には、労働者のための適切な座席の提供及び維持における技術上の問題に関する情報、助言及び指導を与える権限を適当な政府職員に認めるべきである。
B 休憩室
19(1) 労働者が労働時間中に暫時の休憩をとるため他の施設を利用することができない企業においては、作業の性質その他関連のある条件及び環境を考慮に入れて望ましいと認められる場合には、休憩室を設置すべきである。特に、女子労働者、労働時間中に暫時の休憩を必要とする特に困難な又は特殊の作業に従事する労働者又は不規則交代労働者の必要を満たす休憩室を設置すべきである。
(2) 国内法令は、適当な場合には、権限のある機関に対し、その機関が雇用の条件及び環境により休憩室を設置することが望ましいと認める特殊の企業内又はそのような種類の企業内にそれを設置することを要求する権限を与えるべきである。
20 このようにして設置された休憩室は、少くとも次のものを備えるべきである。
(a) 寒気又は暑気による不快を軽減するため気候に適応する設備を有する部屋
(b) 適当な換気装置及び照明装置
(c) 十分な数の適当な座席
X レクリエーション施設
21(1) 特殊機関又は団体によりレクリエーション施設が労働者の利用に供されていない場合及び関係労働者の代表者がこのような施設の実際の必要を示す場合には、労働者が使用されている企業内又はその附近に労働者のレクリエーション施設を設置することを奨励するための適当な措置を執るべきである。
(2) これらの措置は、必要な場合には、国内法令により設けられる工場委員会その他の機関がこの分野において責任を有するときはこれらによつて又は関係のある使用者若しくは労働者が相互に協議した上での自主的な活動によつて、執られるべきである。これらの措置は、まず、団体がレクリエーション施設に対する要求に応ずるよう公共機関による活動を促進しかつ支持するような方法で、執られるべきである。
22 労働者は、レクリエーション施設の提供のために執られる方法のいかんを問わず、いかなる場合にも、提供される施設のいずれかを利用する義務を負わされるべきではない。
Y 給食施設及びレクリエーション施設の管理
23 提供される給食施設及びレクリエーション施設の管理は、当該国若しくは地方の慣習に従つて、又は特別な機関に福祉施設に対する全般的な責任を委任する取極に従つて各種の方法で行うことができるが、権限のある機関、使用者及び労働者は、次の管理形式を考慮すべきである。
(a) 給食施設については、
(i) 給食施設の提供が国内法令により設けられる工場委員会の責任となつている国においては、その工場委員会又は同委員会が設ける小委員会による管理
(ii) その他の国においては、企業内の労働者との協議に関する措置、たとえば、企業内の労働者の代表者からなる食堂委員会を通じて行う措置を執つた上での企業の経営者又は経営者が指名する食事調達請負人による管理
(b) レクリエーション施設については、
(i) レクリエーション施設の提供が国内法令により設けられる工場委員会の責任となつている国においては、その工場委員会又は同委員会が設ける小委員会による管理
(ii) その他の国においては、企業内の労働者が選出し、企業の経営者の代表者が参加し若しくは参加しない中央レクリエーション委員会による管理又はある種類のレクリエーションに関心のある企業内の労働者グループにより自発的に組織される多数のクラブによる管理
24 各国の権限のある機関は、国内法令により設けられる福祉施設の管理方法及び監督に関し労働者団体及び使用者団体と協議するための措置を執るべきである。
Z 給食施設及びレクリエーション施設の経理
25 提供される給食施設及びレクリエーション施設の経理は、当該国若しくは地方の慣習に従つて、又は特別な機関に福祉施設に対する全般的な責任を委任する取極に従つて各種の方法で行うことができるが、権限のある機関、使用者及び労働者は、次の経理形式を考慮すべきである。
(a) 給食施設については、
(i) 必要な設備及び調度を含む給食施設の建造物の建設、賃借その他これらの提供に必要な経費、暖房、照明、清掃、税金及び保険に要する経常費並びに建造物、設備及び調度の維持費の使用者による負担
(ii) 施設を利用する労働者による食事その他の食物に対する支払
(iii) 使用者又は、食事その他の食物に対する支払を通じての労働者による給食施設勤務員の賃金及び保険料に要する経費の負担
(b) レクリエーション施設については、
(i) 必要な耐久性のある設備及び調度を含む室内レクリエーション施設並びに屋外レクリエーション施設の建設、賃借その他これらの提供に必要な経費、暖房、照明、清掃、税金及び保険に要する経常費並びに建造物、敷地、設備及び調度の維持費の使用者による負担
(ii) 会員費、使用料、試合の入場料その他を通じての施設を利用する労働者による消耗備品及び支給物の購入費を含む日常経費の負担
26 経済的に開発程度の低い国においては、福祉施設に関する法律上の義務が存在しない場合には、このような施設に対する融資は、権限のある機関が決定した納付金により維持され、かつ、使用者と労働者とが同数の代表者をもつ委員会により管理される福祉基金を通じて行うことができる。
27(1) 食事その他の食物が使用者により直接労働者に対して提供される場合には、それらの値段は、合理的でなければならず、使用者の利益となるものであつてはならない。販売から生ずる経理上の余剰は、基金又は特別勘定に払い込み、損失を補うため又は労働者に提供する施設を改善するために状況に応じて使用すべきである。
(2) 食事その他の食物が食事調達請負人によつて労働者に提供される場合には、それらの値段は、合理的でなければならず、使用者の利益となるべきものであつてはならない。
(3) 当該施設が労働協約又は企業内の特別の合意によつて提供される場合には、(1)に規定する基金は、合同機関又は労働者のいずれかによつて管理すべきである。
28(1) いかなる場合にも、労働者に対し、その者がみずから使用することを希望しない福祉施設の経費を分担することを要求すべきでない。
(2) 労働者が福祉施設に対して支払を行わなければならない場合には、分割払又は支払の延滞を認めるべきでない。
[ 輸送施設
29 国又は地方の慣習に従つて労働者が通勤のため自己の輸送手段を利用する場合において必要かつ可能なときは、適当な駐車場又は車庫施設を設置すべきである。
30 公共輸送業務の不十分なため又は運転時間表が不適当なために大部分の労働者が通勤に特別の困難を感じている場合には、それらの者が使用されている企業は、当該地方で公共輸送を行つている機関からその業務に必要な調整又は改善を確保するよう努力すべきである。
31 労働者の輸送上の困難が主としてある時間において輸送量が頂点に達するためであつて他の方法によりこのような困難を克服することができない場合には、それらの者を使用する企業は、関係労働者、公共輸送機関、交通当局及び、必要の場合には、当該地方の他の企業と協議した上で企業全体又はそのある作業部門の始業時刻及び終業時刻を調整し、又は食い違わせるよう努力すべきである。
32 労働者のために十分かつ利用可能な輸送施設が必要であるが他の方法で提供することができない場合には、それらの者が使用されている企業は、みずから必要な輸送施設を提供すべきである。
33 公共輸送施設が不十分であるか又はその利用が困難である特殊な国、地域又は産業において、企業は、輸送施設の提供の代りとして当該使用者及び労働者の間の合意により、交通手当を労働者に支払うべきである。
34 企業は、必要なときはいつでも、公共輸送施設が不十分であるか、利用困難であるか又は存在しない昼間及び夜間において交代労働者の必要を満たすため、公共輸送機関その他の輸送施設が十分に利用できるよう取り計らうべきである。
\ 一般規定
35 この勧告において「国内法令」という語を使用する場合には、その語は、連邦については、当該加盟国の憲法制度上適当と認められる連邦及び連邦を構成する邦、州又は県の法令を含む。