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商船における最低基準に関する条約(第147号)
(千九百八十三年五月三十一日批准登録)
国際労働機関の総会は、
理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百七十六年十月十三日にその第六十二回会期として会合し、
千九百五十八年の船員雇入れ(外国船舶)勧告及び千九百五十八年の社会的条件及び安全(船員)勧告の規定を想起し、
前記の会期の議事日程の第五議題である基準未達船舶、特に便宜上の旗国において登録された基準未達船舶に関する提案の採択を決定し、
その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、
次の条約(引用に際しては、千九百七十六年の商船(最低基準)条約と称することができる。)を千九百七十六年十月二十九日に採択する。
第 一 条
1 この条に別段の定めがある場合を除くほか、この条約は、営利の目的で貨物若しくは旅客の運送に従事し又は他の商業的目的で使用されるすべての海上航行船舶(公有のものであるか私有のものであるかを問わない。)について適用する。
2 この条約の適用上、海上航行船舶に該当する船舶は、国内法令により定める。
3 この条約は、海上を航行する引き船について適用する。
4 この条約は、次の船舶については、適用しない。
(a) 主として帆を用いて推進される船舶(補助推進機関を備えているかいないかを問わない。)
(b) 漁ろう、捕鯨又はこれらに類する業務に従事する船舶
(c) 小型船舶並びに石油掘削船及び掘削用のプラットフォーム等の船舶で航行していないもの。この(c)の規定の適用を受ける船舶については、各国の権限のある機関が、最も代表的な船舶所有者団体及び船員団体との協議の上決定する。
5 この条約のいかなる規定も、附属書に掲げる条約の適用範囲又はこれらの条約の規定の適用範囲を拡大するものとみなしてはならない。
第 二 条
この条約を批准する加盟国は、次のことを約束する。
(a) 自国の領域において登録される船舶に関し次の事項について定めた法令を制定すること及び附属書に掲げる条約を実施する義務を負つていない場合には当該法令が附属書に掲げる条約又は条約の条と実質的に同等であることを確認すること。
(i) 船内における人命の安全を確保するための安全基準(乗組員の能力、労働時間及び配乗に関する基準を含む。)
(ii) 適当な社会保障措置
(iii) 船内における労働条件及び居住施設。ただし、これらの条件及び施設が次のいずれかにより定められていると加盟国の認める場合を除く。
労働協約
権限のある裁判所が関係のある船舶所有者及び船員をひとしく拘束するような方法で行う決定
(b) 次の事項に関し、自国の領域において登録される船舶について管轄権を有効に行使し又は監督を有効に行うこと。
(i) 国内法令の定める安全基準(乗組員の能力、労働時間及び配乗に関する基準を含む。)
(ii) 国内法令の定める社会保障措置
(iii) 国内法令の定める船内における労働条件及び居住施設又は関係のある船舶所有者及び船員をひとしく拘束するような方法で権限のある裁判所の定める船内における労働条件及び居住施設
(c) その他の船内における労働条件及び居住施設について加盟国が有効な管轄権を有しないときは、船舶所有者又は船舶所有者団体と千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約及び千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約の実体規定により設立される船員団体との間で有効な監督のための措置が合意されていることを確認すること。
(d) 次のことを確保すること。
(i) 自国の領域において登録された船舶への船員の雇入れに関する適切な手続及びこのような雇入れに関連して申し立てられた苦情の調査に関する適切な手続が存在すること。ただし、これらの手続については、適当な場合には権限のある機関並びに代表的な船舶所有者団体及び船員団体の三者の間で協議を行つた後、権限のある機関が全面的な監督を行うものとする。
(ii) 外国の領域において登録された船舶への自国民船員の自国の領域における雇入れに関連して申し立てられた苦情(可能な限り、雇入れの時に申し立てるものとする。)の調査に関する適切な手続が存在すること(ただし、この手続については、適当な場合には権限のある機関並びに代表的な船舶所有者団体及び船員団体の三者の間で協議を行つた後、権限のある機関が全面的な監督を行うものとする。)並びに権限のある機関が、当該苦情及び外国の領域において登録された船舶への外国人船員の自国の領域における雇入れに関連して申し立てられた苦情(可能な限り、雇入れの時に申し立てるものとする。)を、その船舶が登録されている国の権限のある機関に速やかに通知し、かつ、その通知の写しを国際労働事務局長に送付すること。
(e) 千九百七十年の職業訓練(船員)勧告に妥当な考慮を払い、自国の領域において登録された船舶に雇い入れられる船員が、その任務を遂行するのに適当な資格を有し又はそのための適切な訓練を受けていることを確保すること。
(f) 自国の領域において登録された船舶が、自国の批准した現行の国際労働条約、(a)に該当する法令及び、国内法に照らし適当と認められる場合には、労働協約に適合していることを検査その他適当な方法によつて確認すること。
(g) 自国の領域において登録された船舶に係る重大な海難、特に負傷又は死亡を伴う重大な海難について公式の調査を行うこと。特別の場合を除き、この調査の最終報告は公表される。
第 三 条
この条約を批准した加盟国は、この条約を批准していない国がこの条約の定める基準と同等の基準を適用していると認められるまでの間、当該批准していない国において登録された船舶への船員の雇入れから生ずるおそれのある問題につき、実行可能な限り自国民に周知させる。この条約を批准した国によつてとられるこのような措置は、関係する両国が締約国である条約に定める労働者の移動の自由の原則に抵触するものであつてはならない。
第 四 条
1 この条約を批准した加盟国は、この条約の効力発生の後、予定の航路に従い又は運航上の理由により自国の港に寄港した船舶がこの条約の基準に適合していないことにつき苦情を受け又は証拠を得たときは、当該船舶の登録されている国の政府に報告書を送付すること及びその写しを国際労働事務局長に送付することができるものとし、また、安全又は健康にとつて明らかに危険な船内における条件を是正するための必要な措置をとることができる。
2 加盟国は、1に規定する措置をとるに当たつては、直ちに船舶の旗国の最寄りの海事当局の又は領事上若しくは外交上の代表者に通告するものとし、可能なときは、当該代表者を立ち会わせる。1に規定する措置をとる加盟国は、当該船舶を不当に抑留し又はその出航を不当に遅延させてはならない。
3 この条の規定の適用上、「苦情」とは、乗組員、職業団体、協会、労働組合その他一般に船舶の安全について利害関係(乗組員の安全又は健康に対する危険についての利害関係を含む。)を有する者から提供された情報をいう。
第 五 条
1 この条約は、次の要件を満たしている加盟国による批准のために開放しておく。
(a) 千九百六十年の海上における人命の安全のための国際条約、千九百七十四年の海上における人命の安全のための国際条約又はこれらの条約の改正条約の締約国であること。
(b) 千九百六十六年の満載喫水線に関する国際条約又は同条約の改正条約の締約国であること。
(c) 千九百六十年の海上における衝突の予防のための国際規則、千九百七十二年の海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約又はこれらの国際文書の改正条約の締約国又は実施国であること。
2 この条約は、また、1に定める批准のための要件をまだ満たしていない加盟国で当該要件を満たすことを批准の際に約束するものによる批准のために開放しておく。
3 この条約の正式な批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。
第 六 条
1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が国際労働事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、十以上の加盟国であつてその商船船腹量の合計が総トン数で世界の商船船腹量の二十五パーセントに相当する商船船腹量以上となるものの批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
第 七 条
1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1の十年の期間が満了した後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、その後更に十年間拘束を受けるものとし、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。
第 八 条
1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通報する。
2 国際労働事務局長は、第六条2に定める条件が満たされたときは、この条約が効力を生ずる日につき国際労働機関の加盟国の注意を喚起する。
第 九 条
国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。
第 十 条
国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。
第 十 一 条
1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
(a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第七条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
(b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。
第 十 二 条
この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。
附 属 書
千九百七十三年の最低年齢条約(第百三十八号)、千九百三十六年の最低年齢(海上)改正条約(第五十八号)又は千九百二十年の最低年齢(海上)条約(第七号)
千九百三十六年の船舶所有者責任(傷病海員)条約(第五十五号)、千九百三十六年の傷病保険(海上)条約(第五十六号)又は千九百六十九年の医療及び傷病給付条約(第百三十号)
千九百四十六年の健康検査(船員)条約(第七十三号)
千九百七十年の災害防止(船員)条約(第百三十四号)(第四条及び第七条)
千九百四十九年の乗組員設備条約(改正)(第九十二号)
千九百四十六年の食料及び司厨(しちゅう)(船舶乗組員)条約(第六十八号)(第五条)
千九百三十六年の職員海技免状条約(第五十三号)(第三条及び第四条)(注)
千九百二十六年の海員の雇入契約条約(第二十二号)
千九百二十六年の海員送還条約(第二十三号)
千九百四十八年の結社の自由及び団結権保護条約(第八十七号)
千九百四十九年の団結権及び団体交渉権条約(第九十八号)
注 千九百三十六年の職員海技免状条約の関係基準を厳格に遵守することが確立された免許制度又は資格証明制度を害することとなる国については、これらの制度に関する当該国の確立された措置と抵触することのないように実質的同等の原則を適用するものとする。