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農業における労働監督に関する条約(第129号)
(日本は未批准、仮訳)

 国際労働機関の総会は、
 理事会によりジュネーヴに招集されて、千九百六十九年六月四日にその第五十三回会期として会合し、
 工業及び商業に適用される千九百四十七年の労働監督条約並びに限られた種類の農業的企業に適用される千九百五十八年の農園条約のような労働監督に関する現行の国際労働条約の条項に留意し、
 農業全般における労働監督について規定する国際基準が望ましいことを考慮し、
 この会期の議事日程の第四議題である農業における労働監督に関する提案の採択を決定し、この提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定したので、
 次の条約(引用に際しては、千九百六十九年の労働監督(農業)条約と称することができる。)を千九百六十九年六月二十五日に採択する。

第 一 条


1 この条約において「農業的企業」とは、耕作、畜産(家畜の増殖及び飼育を含む。)、林業、園芸、保有地の運営者による農業生産物の第一次加工又は他の形式の農業活動に従事する企業又はその一部をいう。
2 権限のある機関は、必要な場合には、関係のある最も代表的な使用者団体及び労働者団体が存在するときはそれらの団体と協議の上、全国的な労働監督の制度からいかなる農業的企業をも除外しないような方法で工業及び商業から農業を区別する線を定める。
3 企業又はその一部がこの条約の適用を受けるものであるかどうかが疑わしい場合には、その問題については、権限のある機関が決定する。

第 二 条


 この条約において「法規」とは、法令のほか、法的効力を有しかつ労働監督官が実施を確保する仲裁裁定及び労働協約を含む。

第 三 条


 この条約の適用を受ける国際労働機関の各加盟国は、農業における労働監督の制度を保持する。

第 四 条


 農業における労働監督の制度は、被用者又は徒弟訓練生が就業する(報酬の方式及び契約の種類、形式又は期間のいかんを問わない。)農業的企業に適用される。

第 五 条


1 この条約を批准する加盟国は、批准の際に行なう宣言において、農業的企業に就業する次の一又は二以上の種類の者についても農業における労働監督の制度を適用することを約束することができる。
 (a) 第三者の助力を利用しない小作農、分益農その他類似の種類の農業従事者
 (b) 協同組合員等の共同経済企業の参加者
 (c) 企業の運営者の家族の構成員であつて国内法令で定めるもの
2 この条約を批准した加盟国は、その後、1に掲げる一又は二以上の種類の者で従前の宣言に含まれなかつたものにつき農業における労働監督の制度を適用することを約束する旨の宣言を国際労働事務局長に通告することができる。
3 この条約を批准した各加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条の規定に基づいて提出する報告において、1に掲げる種類の者で宣言に含まれなかつたものにつきこの条約がどの程度に実施されているか又は実施されようとしているかを示すものとする。

第 六 条


1 農業における労働監督の制度の機能は、次のとおりとする。
 (a) 労働条件及び作業中の労働者の保護に関する法規、たとえば、労働時間、賃金、週休及び休日、安全、健康及び福祉、婦人、児童及び年少者の雇用その他の関係事項に関する規定の実施を労働監督官の権限の範囲内で確保すること。
 (b) 法規を遵守する最も実効的な方法に関し、使用者及び労働者に専門的な情報及び助言を与えること。
 (c) 現行の法規に明示的規定のない欠陥又は弊害につき権限のある機関の注意を喚起し、及び法令の改善に関する提案をその機関に提出すること。
2 国内法令は、労働者及びその家族の生活状態に関する法規の適用についての助言又は監督の機能を農業労働監督官に与えることができる。
3 農業労働監督官に与えられるその他の任務は、農業労働監督官の本来の任務の実効的な遂行を妨げるものであつてはならず、また、監督官が使用者及び労働者との関係において必要とする権威及び公正をなんら害するものであつてはならない。

第 七 条


1 農業における労働監督は、加盟国の行政上の慣行と両立する限り、中央機関の監督及び管理の下に置かれる。
2 連邦については、「中央機関」とは、連邦の段階又は連邦の構成単位の段階における中央機関をいう。
3 農業における労働監督は、たとえば次の方法によつて実施することができる。
 (a) 経済活動のすべての部門について責任を負う単一の労働監督部局
 (b) 農業における職務を行なう監督官を適切に訓練することにより内部的に職務上の専門化を行なつた単一の労働監督部局
 (c) 農業における職務を行なう職員から成る技術的な資格を有する部門を創設することにより内部的に制度上の専門化を行なつた単一の労働監督部局
 (d) 工業、運輸業、商業等の農業以外の分野における労働監督についても同様の権限を与えられた中央機関によつて業務が監督される専門の農業監督機関

第 八 条


1 農業労働監督職員は、分限及び勤務条件について、身分の安定を保障され、かつ、政府の更迭及び不当な外部からの影響と無関係である公務員で構成する。
2 国内法令及び国内慣行と両立する限り、加盟国は、農業における労働監督の制度に、職業団体であつてその活動が公の監督職員の活動を補うものの役員又は代表者を含めることができる。それらの者は、身分の安定を保障されるものとし、また、不当な外部からの影響と無関係でなければならない。

第 九 条


1 農業労働監督官は、国内法令で定める公務員の採用に関する条件に従い、その任務の遂行に必要な資格のみを考慮して採用する。
2 1の資格を認定する方法は、権限のある機関が決定する。
3 農業労働監督官は、その任務の遂行のため適当な訓練を受けるものとし、また、雇用期間中に適切な追加訓練を農業労働監督官に与えるための措置がとられる。

第 十 条


 男子及び女子のいずれも、農業労働監督職員に任命される資格を有する。必要な場合には、男子監督官及び女子監督官に対しそれぞれ特別の任務を与えることができる。

第 十 一 条


 各加盟国は、技術的知識を必要とする問題の解決を助けることができる正当な資格を有する技術者及び専門家が国内事情の下で最も適当と認められる方法によつて農業労働監督業務に協力することを確保するため、必要な措置をとる。

第 十 二 条


1 権限のある機関は、農業労働監督機関とこれと類似の活動に従事する政府機関及び公の又は承認された施設との間の有効な協力を促進するため、適当な措置をとる。
2 権限のある機関は、必要な場合には、適当な政府機関若しくは公の施設に対し、地域的又は地方的段階における一定の監督職務を補助的に委託し、又はその監督職務の遂行に当該政府機関若しくは施設を関与させることができる。ただし、この条約の原則の適用を妨げないことを条件とする。

第 十 三 条


 権限のある機関は、農業労働監督機関の職員と使用者及び労働者又は、使用者団体及び労働者団体が存在する場合には、それらの団体との間の協力を促進するため、適当な措置をとる。

第 十 四 条


 農業労働監督官の数が、監督機関の任務の実効的な遂行を確保するために十分であり、かつ、次のことを考慮して決定されるように措置をとる。
(a) 監督官が遂行すべき任務の重要性、特に、
 (i)  監督を受ける農業的企業の数、性質、規模及び位置
 (ii)  それらの企業における従業者の数及び種類
 (iii) 実施を確保すべき法規の数及び複雑性
(b) 監督官が使用することのできる物的手段
(c) 監督を実効的なものにするために臨検を必要とする実情

第 十 五 条


1 権限のある機関は、農業労働監督官に次のものを供与するため必要な措置をとる。
 (a) 農業的企業の立地条件及び通信手段を考慮して選定された場所に設置する地方の事務所であつて、業務の必要に応じて適当な設備を有し、かつ、できる限り関係者にとつて利用しやすいもの
 (b) 適当な公共の運輸施設が存在しない場合には、農業労働監督官の任務の遂行に必要な交通の便益
2 権限のある機関は、農業労働監督官に対しその任務の遂行に必要な旅費及び雑費を支弁するため必要な措置をとる。

第 十 六 条


1 正当な証明書を所持する農業労働監督官は、次の権限を有する。
 (a) 監督を受ける事業場に昼夜いつでも自由にかつ予告なしに立ち入ること。
 (b) 監督を受けるべきであると認めるに足りる相当の理由がある場所に昼間立ち入ること。
 (c) 法規が厳格に遵守されていることを確認するため必要と認める調査、検査又は尋問を行なうこと、特に、
  (i)  法規の適用に関するいかなる事項についても、余人をまじえずに又は証人の立合いの下に、使用者、企業の職員その他企業内にある者と面接すること。
  (ii)  生活状態及び労働条件に関する国内法令で備え付けることとなつている帳簿、台帳その他の書類が法規に適合していることを確かめ、及びそれらの書類の写しをとり又は抜すいを作るため、国内法令で定める方法によりそれらの書類の提出を要求すること。
  (iii) 使用され又は取り扱われる生産物、原料及び材料を分析のために収去すること。ただし、このような目的のために生産物、原料又は材料を収去することを使用者又はその代表者に通告するものとする。
2 労働監督官は、企業の経営者の同意を得た場合又は権限のある機関が発する特別の許可を得た場合を除くほか、1(a)又は(b)の規定によつて企業の経営者の私宅内に立ち入ることができない。
3 監督官は、臨検をする場合には、その来訪を使用者又はその代表者及び労働者又はその代表者に通告する。ただし、その通告により監督官の任務の遂行が妨げられるおそれがあると認める場合は、この限りでない。

第 十 七 条


 農業労働監督機関は、権限のある機関が決定する場合につき、その決定する条件で、健康又は安全を脅かすおそれがあると思われる新しい設備、新しい原料又は材料及び生産物の新しい取扱い又は加工の方法の予防的規制に参加する。

第 十 八 条


1 農業労働監督官は、農業的企業における設備、配置又は作業方法について認めた欠陥(危険な原料又は材料の使用を含む。)で健康又は安全を脅かすと認めるに足りる相当の理由があるものに対するきよう正措置をとる権限を与えられる。
2 監督官は、1の措置をとるため、次のことを要求する命令を出し又は出させる権限を与えられる。ただし、法令で定める司法機関又は行政機関に訴える権利は、留保される。
 (a) 健康又は安全に関する法規の遵守を確保するために必要な装置、設備、建物、道具、備品又は機械の変更を一定の期間内に行なうこと。
 (b) 健康又は安全に対する急迫した危険がある場合には、作業の停止を含む即時の措置をとること。
3 2の手続が加盟国の行政上又は司法上の慣行に反する場合には、監督官は、権限のある機関に対し命令の発出又は即時の措置の開始を申請する権限を有する。
4 監督官が企業の臨検中に認めた欠陥及び監督官が2の規定に基づいて出し若しくは出させる命令又は3の規定に基づいて申請しようとしている命令は、使用者及び労働者の代表者に遅滞なく知らせるものとする。

第 十 九 条


1 農業部門において生ずる労働災害及び職業病に関しては、国内法令で定める場合につき、その定める方法で農業労働監督機関に通告するものとする。
2 監督官は、重大な労働災害又は職業病、特に、多数の労働者に影響を及ぼし若しくは致死的結果をもたらす労働災害又は職業病の原因の現場調査にできる限り参加する。

第 二 十 条


 農業労働監督官は、国内法令で定める例外を除くほか、
(a) その監督の下にある企業に対し直接又は間接の利害関係をもつことを禁止される。
(b) 職務上知り得た製造上若しくは商業上の秘密又は作業工程をその職を退いた後も漏らしてはならず、これに違反した場合には、相当の刑罰又は懲戒処分を受ける。
(c) 設備等の欠陥、作業工程における危険又は法規の違反に関して監督官の注意を喚起する苦情については、その出所を極秘として取り扱うものとし、また、そのような苦情を受理した結果として臨検を行なつたことを使用者又はその代表者に知らせてはならない。

第 二 十 一 条


 農業的企業に対し、関係法規の実効的な適用の確保に必要な範囲内でひんぱんかつ完全に監督を実施するものとする。

第 二 十 二 条


1 農業労働監督官によつて実施が確保される法規に違反し又はそれを遵守することを怠る者は、事前の警告なしにすみやかに司法上又は行政上の手続に付される。もつとも、きよう正措置又は予防措置をとるべき旨の予告を必要とする場合につき国内法令で例外を設けることができる。
2 労働監督官は、その裁量により、1の手続を開始し又は勧告する代わりに警告及び助言を与えることができる。

第 二 十 三 条


 農業労働監督官は、自ら前条1の手続を開始する権限を有しない場合には、それらの手続を開始する権限を有する機関に対し法規の違反に関する報告を直接に付託する権限を与えられる。

第 二 十 四 条


 農業労働監督官によつて実施が確保される法規の違反及び労働監督官の任務の遂行の妨害については、相当な刑罰を国内法令で規定しかつ実効的に実施するものとする。

第 二 十 五 条


1 労働監督官又は地方の監督事務所は、農業におけるその活動の結果に関する定期報告を中央監督機関に提出するものとする。
2 1の定期報告は、中央監督機関が随時定める様式によつて作成し、かつ、その随時定める事項を取り扱う。それらの定期報告は、少なくとも中央監督機関が定める回数だけ(いかなる場合にも年一回以上)提出するものとする。

第 二 十 六 条


1 中央監督機関は、農業監督機関の業務に関する年次報告を別個の報告書として又はその一般年次報告の一部として公表する。
2 1の年次報告は、当該年度の終了後適当な期間内に、いかなる場合にも十二箇月以内に公表する。
3 年次報告の写しは、公表後三箇月以内に国際労働事務局長に送付する。

第 二 十 七 条


 中央監督機関が公表する年次報告は、特に、次の事項で中央監督機関の管理の下にあるものを取り扱う。
(a) 農業労働監督の業務に関係のある法令
(b) 農業労働監督機関の職員
(c) 監督を受ける農業的企業に関する統計及びそれらの企業における従業者の数
(d) 臨検に関する統計
(e) 違反及び処罰に関する統計
(f) 労働災害(原因を含む。)に関する統計
(g) 職業病(原因を含む。)に関する統計

第 二 十 八 条


 この条約の正式の批准は、登録のため国際労働事務局長に通知する。


第 二 十 九 条


1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准が事務局長に登録されたもののみを拘束する。
2 この条約は、二の加盟国の批准が事務局長に登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、いずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。


第 三 十 条


1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年を経過した後は、登録のため国際労働事務局長に送付する文書によつてこの条約を廃棄することができる。その廃棄は、登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で、1に定める十年の期間が満了した後一年以内にこの条に規定する廃棄の権利を行使しないものは、更に十年間拘束を受けるものとし、その後は、十年の期間が満了するごとに、この条に定める条件に従つてこの条約を廃棄することができる。


第 三 十 一 条


1 国際労働事務局長は、国際労働機関の加盟国から通知を受けたすべての批准及び廃棄の登録をすべての加盟国に通告する。
2 事務局長は、通知を受けた二番目の批准の登録を国際労働機関の加盟国に通告する際に、この条約が効力を生ずる日につき加盟国の注意を喚起する。


第 三 十 ニ 条


 国際労働事務局長は、国際連合憲章第百二条の規定による登録のため、前諸条の規定に従つて登録されたすべての批准及び廃棄の完全な明細を国際連合事務総長に通知する。


第 三 十 三 条


 国際労働機関の理事会は、必要と認めるときは、この条約の運用に関する報告を総会に提出するものとし、また、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を検討する。


第 三 十 四 条


1 総会がこの条約の全部又は一部を改正する条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
 (a) 加盟国によるその改正条約の批准は、その改正条約の効力発生を条件として、第三十条の規定にかかわらず、当然にこの条約の即時の廃棄を伴う。
 (b) 加盟国による批准のためのこの条約の開放は、その改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で1の改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。


第 三 十 五 条


 この条約の英文及びフランス文は、ひとしく正文とする。

最終更新日:2005年6月30日 作成者:HW/NT 責任者:MH