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主要な鉱業及び製造工業(建築及び建設を含む。)並びに農業における賃金及び労働時間の統計に関する条約(第63号)
(日本は未批准 仮訳)
国際労働機関の総会は、
国際労働事務局の理事会によつてジユネーヴに招集され、且つ千九百三十八年六月二日を以てその第二十四回会議を開催し、
この会議の会議事項の第六項目である主要な鉱業及び製造工業(建築及び建設を含む。)並びに農業における賃金及び労働時間の統計に関する提案の採択を決議し、
この提案は国際条約の形式によるべきものなることを決定し、且つ
国際労働機関のすべての加盟国がこの条約の第二部の要件に適合する平均所得及び実労働時間の統計を作成することが望ましいが、それにも拘わらず右の第二部の要件に適合することができない加盟国をしてこの条約を批准することを得しめるようにすることが適当であると決定したので、
千九百三十八年の賃金労働時間統計条約として引用することができる次の条約を千九百三十八年六月二十日に採択する。
第 一 部 一般規定
第 一 条
この条約を批准する国際労働機関の各加盟国は、次の事項を約する。
(a) この条約に従い賃金及び労働時間の統計を作成すること。
(b) この条約に従い作成した資料をできるだけ速かに公表すること、及び三箇月毎又はそれ以上頻繁に蒐集した資料はこれを次の三箇月以内に、六箇月毎又は十二箇月毎に蒐集した資料はこれを次の六箇月又は十二箇月以内にそれぞれ公表することに努めること。
(c) この条約に従い作成した資料をできるだけ速かに国際労働事務局に提出すること。
第 二 条
1 この条約を批准する加盟国は、その批准に添付する宣言により、次のものをこの条約の受諾から除外することができる。
(a) 第二部、第三部若しくは第四部のうちの一の部
(b) 第二部及び第四部、又は
(c) 第三部及び第四部
2 右の宣言をした加盟国は、その後の宣言により何時でも右の宣言を取消すことができる。
3 本条1により為した宣言を実施するすべての加盟国は、この条約の適用に関するその年次報告において、毎年、その受諾から除外したこの条約の各部の適用の目的を以て進歩の為された程度を指摘しなければならない。
第 三 条
この条約のいかなる規定も、各個の企業又は設備に関する情報の漏洩をもたらすような事項を公表し又は暴露する義務を課するものではない。
第 四 条
1 この条約を批准する各加盟国は、その権限ある統計機関が、或る他の方法で既に情報を集めた場合を除き、この条約に従い作成することを約した統計の目的上必要な情報を集めるため、関係ある賃金労働者の全部又は代表的な一部に関する調査をすることを約する。
2 この条約のいかなる規定も、本条1により要求される方法で調査をした後、強制力を行使しなければ必要な情報を集めることが不可能であると認められた場合において、統計を作成することを加盟国に要求するものとこれを解釈してはならない。
第 二 部 鉱業及び製造工業における平均所得及び実労働時間の統計
第 五 条
1 平均所得及び実労働時間の統計は、各主要な鉱業及び製造工業(建築及び建設を含む。)に使用される賃金労働者についてこれを作成しなければならない。
2 平均所得及び実労働時間の統計は、すべての設備及び賃金労働者に関するか又は設備及び賃金労働者の代表的なものに関する資料に基いてこれを作成しなければならない。
3 平均所得及び実労働時間の統計は、
(a) 主要産業毎に別々の数字を示し、且つ
(b) 右の数字が示す産業又は産業部門の範囲を簡単に記載しなければならない。
第 六 条
平均所得の統計は、次のものを含まなければならない。
(a) 被用者が使用者から受けるすべての現金給与及び「ボーナス」
(b) 社会保険の保険料のように被用者が支払うもので使用者により控除されるもの
(c) 被用者が公の機関に支払う租税であつて使用者により控除されるもの
第 七 条
現物手当、例えば無料若しくは低廉な住宅、食事又は燃料の如き形式によるものが賃金労働者の全報酬の主要な部分を占める国及び産業については、平均所得の統計は、右の手当に関する詳細事項を掲げると共にできるだけその手当を現金価格に評価したものを掲げることにより、これを補足しなければならない。
第 八 条
平均所得の統計は、できるだけ当該統計期間中に使用される被用者一人当りの家族手当の平均額を示すことによりこれを補足しなければならない。
第 九 条
1 平均所得の統計は、一時間、一日、一週又はその他の慣習的期間当りの平均を示すものでなければならない。
2 平均所得の統計が一日、一週又はその他の慣習的期間当りの平均所得を示す場合においては、実労働時間の統計も、これと同一の期間に関するものでなければならない。
第 十 条
1 第九条に掲げられる平均所得及び実労働時間の統計は、一年一回且つできればもつと短い時間毎にこれを作成しなければならない。
2 平均所得の統計及びできるだけ実労働時間の統計は、三年毎に一回且つできれば更に短い期間毎に、性別及び成年未成年別に別個の数字を掲げることによりこれを補足しなければならない。尤も賃金労働者の極めて少数を除いたすべての者が同一の性又は年令集団に属する産業については、これら別個の数字を示す必要がなく、また正規労働時間が性別又は年令別で違つていない産業については、実労働時間を男女別又は成年未成年別に別個の数字で示す必要はない。
第 十 一 条
平均所得及び実労働時間の統計が全国的なものではなくして特定の地方、都市又は産業中心地に関するものであるときは、右の地方、都市又は産業中心地をできるだけ記載しなければならない。
第 十 二 条
1 一時間当りの所得及びできれば一日、一週又はその他の慣習的期間当りの所得の一般的変化を示す指数は、この条約のこの部に従い作成する統計に基き、できるだけ頻繁に且つ定期的にこれを作成しなければならない。
2 右の指数を作成するに当つては、各種産業の相対的重要性を特に考慮に入れなければならない。
3 右の指数を公表するに当つては、その作成方法に関し説明を加えなければならない。
第 三 部 鉱業及び製造工業における時間賃金率及び通常の労働時間の統計
第 十 三 条
賃金労働者の時間賃金率及び通常の労働時間の統計は、主要な鉱業及び製造工業(建築及び建設を含む。)の代表的なものについてこれを作成しなければならない。
第 十 四 条
1 時間賃金率及び通常の労働時間の統計は、次の率及び時間を示すものでなければならない。
(a) 法令若しくは規則、労働協約又は仲裁裁定により又はこれに従い定められたもの
(b) 法令若しくは規則、労働協約又は仲裁裁定により又はこれに従い定められた率及び時間がない場合においては、使用者及び労働者の団体、両者の合同機関又はその他適当な情報の出所から得られたもの
2 時間賃金率及び通常の労働時間の統計は、統計作成の基礎である情報の性質及び出所を示し且つ法令若しくは規則、労働協約又は仲裁裁定により又はこれに従い定められた率若しくは時間に関するものであるか、又は使用者と賃金労働者との間の個別的の取極により定められた率若しくは時間に関するものであるかを示さなければならない。
3 賃金率を最低率(法定最低率を除く。)、標準率、典型率若しくは現行率又は類似の用語を以て記載するときは、その用語を説明しなければならない。
4 「通常の労働時間」とは、法令若しくは規則、労働協約又は仲裁裁定により又はこれに従い定められていないときは、一日、一週又はその他の期間当りの時間数であつて、これを超える労働時間に対しては超過時間率を以て報酬を支払われ、又はかかる超過時間が関係ある当該種類の賃金労働者に関する当該設備の規則若しくは慣習に対する例外を成すものを言う。
第 十 五 条
1 時間賃金率及び通常の労働時間の統計は、
(a) 三年を超えない期間毎に各種産業の広汎且つ代表的なものにつき主要職業別の数字を示し、且つ
(b) 少くとも一年一回且つできれば一層頻繁に、右産業中最も重要なものにつき主要職業別の数字を示さなければならない。
2 時間賃金率と通常の労働時間とに関する資料は、できるだけ同一の職業分類を基礎としてこれを提出しなければならない。
3 統計作成の基礎である情報の出所が率又は時間の適用される職業別を示すものではなくして他の種類の労働者別(例えば熟練労働者、半熟練労働者及び不熟練労働者)に異れる賃金率若しくは労働時間を定めたものか、又は企業若しくは企業部門の種類別に通常の労働時間を定めたものであるときは、右の分類別に従い別個の数字を掲げなければならない。
4 数字の示す労働者の種類が職業別でないときは、統計作成の基礎である情報の出所において必要な詳細が示されている程度において、各種類の範囲を示さなければならない。
第 十 六 条
時間賃金率の統計が一時間当りの率を示さないで、一日、一週又はその他の慣習的期間当りの率を示すものであるときは、
(a) 通常の労働時間の統計は、右と同一の期間に関するものでなければならない。且つ
(b) 加盟国は、時間当りの率を計算するための適当な情報を国際労働事務局に提出しなければならない。
第 十 七 条
統計作成の基礎である情報の出所が性別及び年令別であるときは、時間賃金率及び通常の労働時間の統計は、性別及び成年未成年別に別個の数字を示さなければならない。
第 十 八 条
時間賃金率及び通常の労働時間の統計が全国的なものではなくして特定の地方、都市又は産業中心地に関するものであるときは、右の地方、都市又は産業中心地をできるだけ記載しなければならない。
第 十 九 条
時間賃金率及び通常の労働時間の統計作成の基礎である出所が次の事項を含む場合においては、統計は、三年を超えない期間毎に次の事項を示さなければならない。
(a) 休日に対する給与の割合
(b) 家族手当の割合
(c) 超過時間に対し支払われる通常の率に対する増加の率又は割合
(d) 許容される超過時間数
第 二 十 条
現物手当、例えば無料若しくは低廉な住宅、食事又は燃料の如き形式によるものが賃金労働者の全報酬の主要の部分を占める国及び産業については、時間賃金率の統計は、右の手当に関する詳細事項を掲げると共に、できるだけその手当を現金価格に評価したものを掲げることにより、これを補足しなければならない。
第 二 十 一 条
1 一時間当り又は一週当りの賃金率の一般的変化を示す指数は、この条約のこの部に従い作成する統計に基きこれを作成し、且つ必要の場合には利用し得る他の関係情報(例えば個数労働賃金率の変化に関する事項)によりこれを補足しなければならない。
2 一時間当りの賃金率の指数のみを又は一週当りの賃金率の指数のみを作成する場合においては、右と同一の基礎に基き通常の労働時間の変化を示す指数を作成しなければならない。
3 右の指数を作成するに当つては、各種産業の相対的重要性を特に考慮に入れなければならない。
4 右の指数を公表するに当つては、その作成方法に関し説明を加えなければならない。
第四部 農業における賃金及び労働時間の統計
第 二 十 二 条
1 農業に従事する賃金労働者について賃金の統計を作成しなければならない。
2 農業における賃金の統計は、
(a) 二年を超えない期間毎にこれを作成し、
(b) 各主要地方別に別個の数字を示し、及び
(c) 現金賃金を補充する現物手当(住宅を含む。)が存するときは、その現物手当の性質及びできればその金銭評価額を掲げなければならない。
3 農業における賃金統計は、次のものに関する説明によりこれを補足しなければならない。
(a) 統計に関係ある農業賃金労働者の種類
(b) 統計作成の基礎である情報の性質及び出所
(c) 統計作成の方法、及び
(d) できるだけ関係賃金労働者の通常の労働時間
第 五 部 雑則
第 二 十 三 条
1 加盟国であつてその領域が広い領域を含み必要な行政機関を設けることが困難なこと及び人口の稀薄なこと又は右領域の経済的発達の段階よりしてこの条約の要件に適合する統計を作成することが不可能な場合には、全部的又は一部的にこの条約の適用から右の領域を除外することができる。
2 各加盟国は、国際労働機関憲章第二十二条により提出するこの条約の適用に関するその最初の年次報告において、本条の規定を援用せんとする地域を指摘すべく、且ついかなる加盟国も、その最初の年次報告の日付後は、右の如く指摘した地域を除き、本条の規定を援用することができない。
3 本条の規定を援用した各加盟国は、爾後の年次報告において本条の規定を援用する権利を放棄する地域を指摘しなければならない。
第 二 十 四 条
1 国際労働事務局の理事会は、その適当と認める技術的意見を聴取した上、この条約に従い作成された統計を改善し且つ拡大するための提案又はその比較を促進するための提案を国際労働機関の加盟国に通告しなければならない。
2 この条約を批准する各加盟国は、次のことを約する。
(a) 理事会により通告された右の如き提案を権限ある統計機関の審議に付すること。
(b) この条約の適用に関するその年次報告において右の如き提案を実施した程度を指摘すること。
第 六 部 最終規定
第 二 十 五 条
この条約の正式の批准書は、登録のため国際労働事務局長に送付するものとする。
第 二 十 六 条
1 この条約は、国際労働機関の加盟国でその批准を国際労働事務局長が登録したもののみを拘束する。
2 この条約は、二加盟国の批准が事務局長により登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
3 その後は、この条約は、他のいずれの加盟国についても、その批准が登録された日の後十二箇月で効力を生ずる。
第 二 十 七 条
国際労働事務局長は、国際労働機関の二加盟国の批准が登録されたときは、この旨を直ちに国際労働機関のすべての加盟国に通告しなければならない。同事務局長は、また他の加盟国からその後通告を受けた批准の登録をすべての加盟国に通告しなければならない。
第 二 十 八 条
1 この条約を批准した加盟国は、この条約が最初に効力を生じた日から十年の期間の満了の後は、登録のため国際労働事務局長に通告する文書によつてこの条約を廃棄することができる。廃棄は、その廃棄が登録された日の後一年間は効力を生じない。
2 この条約を批准した加盟国で前項に掲げる十年の期間の満了の後一年以内にこの条に定める廃棄の権利を行使しないものは、さらに十年の期間この条約の拘束を受けるものとし、その後は、この条に定める条件に基いて、十年の期間が経過するごとにこの条約を廃棄することができる。
第 二 十 九 条
国際労働機関の理事会は、この条約が効力を生じた後十年の期間が経過するごとに、この条約の運用に関する報告を総会に提出し、かつ、この条約の全部又は一部の改正に関する問題を総会の議事日程に加えることの可否を審議しなければならない。
第 三 十 条
1 総会がこの条約の全部又は一部を改める改正条約を新たに採択する場合には、その改正条約に別段の規定がない限り、
(a) 加盟国による改正条約の批准は、改正条約の効力発生を条件として、第二十八条の規定にかかわらず、当然この条約の即時の廃棄を伴う。
(b) 加盟国によるこの条約の批准のための開放は、改正条約が効力を生ずる日に終了する。
2 この条約は、これを批准した加盟国で改正条約を批准していないものについては、いかなる場合にも、その現在の形式及び内容で引き続き効力を有する。
第 三 十 一 条
この条約のフランス語及び英語による本文は、ともに正文とする。