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ILOジャーナル1999年11・12月号目次

  ILOジャーナル1999年11・12月号目次

ソマビアILO事務局長来日講演−日本ILO協会創立50周年記念講演会(東京・11月24日)
世界銀行/ILO/労働省/日本労働研究機構共催東・東南アジアの経済危機、雇用、労働市場セミナー(東京・10月13〜15日)
グローバル化→経済成長・社会的不平等、JR不採用問題で結社の自由委員会中間報告提出−第276回ILO理事会(ジュネーブ・11月4〜19日)
国際労働基準短信−5条約新規発効
ILO事務局長出席−世界貿易機関(WTO)閣僚会議(シアトル・11月30日〜12月3日)
世界社会開発サミット・フォローアップ国際協議会(ジュネーブ・11月5〜6日)
ILOの現勢(1999年10月4日現在)
バンコク便り「王様」(ILOアジア太平洋総局ILO/日本マルチバイ技術協力連絡調整官平嶋壮州寄稿)
2000年1・2月の会議日程
ILO関係者往来(10〜11月)
論文概要紹介:国際社会の社会的良心?行動規範、社会的ラベリング、投資家イニシアチブの労働的側面(International Labour Review 1999, Vol.2より)
新刊紹介:職業教育と訓練に関する評価の役割他広告
ILO図書邦訳版・関連出版物刊行案内

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ILOジャーナル1999年11・12月号

ILO事務局長講演会写真

日本ILO協会創立50周年記念講演会
ソマビアILO事務局長講演

 去る11月23〜27日に、日本政府の招待を受け、就任後初来日したフアン・ソマビアILO事務局長は、11月24日、都内ホテルで開かれた(財)日本ILO協会の創立50周年記念講演会において、「21世紀のILO」と題する要旨以下の通りの講演を行った。


 事務局長は同協会の活動、ILOに対する日本の財政的・人的協力に感謝の意を表し、日本を範として、各国でILO協会の設立を推進していきたいとの希望を述べた後、ILOが直面する課題とそれに適切に対処していくために、ILOに何が必要かについて次のように語った。

□ 市場経済と民主国家

 この分野で私が特に重視するのは、冷戦後の世界に登場した、経済と政治の両面における開放性という基礎的条件に関する注目すべき合意です。開放経済を良いものとする見解、そして人権と民主的制度の価値を尊重する風潮の広まりです。ILOの原則の中核にある、自由に選択できる生産的な労働の原則は市場経済でうまく機能し、民主的な制度の尊重は、結社の自由原則の中核に位置します。このように、この種の開放性はILOの古くからの価値とうまくフィットします。しかし、開放性をベースに生まれつつある世界経済の利益が一部の人にしか行き渡らない状況が改善されない限り、開放経済と開放社会の意味が問い直されることになるでしょう。

 開発を経済的側面だけで測ってはなりません。アジア金融危機は、開発の利益を長持ちさせ、尊厳を求める人間の願いが満足されるためには、経済と社会の二つの政策を統合的な形で共に推進する必要があることを明らかにしました。社会的な制度を整備し、人に対する投資における長い歴史、産労懇に代表される社会的な対話とコンセンサス形成の仕組みをもつ日本は、社会的な投資がどれだけ経済的な利益を生むかを示す好例です。

□ 相互依存

 二つ目のトレンドは、世界経済の発生に伴う経済的な相互依存の事実です。相互依存が国と労働者と企業の関係を変化させている現在、社会的な制度の整備は非常に重要な意味を持ちます。相互依存の力は、企業を社会変化の中心的な機構、主要な雇用の源に変え、中小企業を中心に、企業の成長と育成を最大限支援していく必要性が生まれました。

 グローバル化が進む世の中においては、加えて、社会的な団結が求められます。ILOのメッセージをさらに広め、グローバル化が労働の世界に与える影響に対処するために求められる社会的な団結を効果的に推進する助けとして、私たちは、価値と目的を共有する、市民社会内におけるILO問題関係者という幅広い層に手を差し伸べていく必要があります。既に80年にわたり、政労使三者構成の仕組みを備え、社会の重要なアクターの大きな声を代弁する唯一の国連機関として、ILOには、社会的な団結の技術面で比較優位があるのです。ILOは今後、ブレトンウッズ諸機関を含む国際機関自体との連携を含み、価値の推進に向けたパートナーシップの形成に務め、労働に関わるあらゆる事項のフォーカル・ポイントとしての役割を強化していくことをめざすわけです。

 ILO創設の原動力の一つに、相互依存の世界において、劣悪な労働条件をもとにした不公正な競争を阻止するために国際的な基準が必要であるという考えがあります。ILO加盟国は、昨年6月に、「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」を採択することによって、普遍的で交渉する余地のないいくつかの価値、誰もが一致してその推進と実施に同意する世界経済の社会的な最低限の基準というものの推進に向けた公約を再確認したわけです。「開発は社会的な側面と道義的、道徳的な基礎を備える必要がある」、これが世界が求める目標、発信するメッセージなのです。私はこの目標を強力かつ明確に表明する宣言の実施を、国際システム全体の共通目標とすべきだと考え、これを達成するため、あらゆる機関と協力していくつもりです。

□ 不平等と困窮

 今世紀は相当の経済発展が見られましたが、不平等を解消することはできませんでした。国内でも国家間でも格差はますます広がり、貧困人口は世界で13億人に達します。原因は複数考えられますが、2点だけあげると、まず、相互依存は成長の源であると同時に、格差を拡大する原因ともなるということ、2点目は、事務局長就任以来、最優先事項に掲げ、ILO内でもその解消に向けて努力してきていることですが、ジェンダー間、男女間の不平等です。男女間の不平等が存在する限り、社会開発の目標を完全な形で実現することはできません。さまざまな経済研究が、労働市場における差別は、生産性の低下、国内総生産(GDP)成長率の低下を招くことを示します。労働における人権の無視はマクロ経済的なコストを伴うのです。

□ 課題に対するILOの取り組み

 ILOは変化の力に適応していく必要があります。ILO創立時の使命がもつ意味は依然失われていませんが、今日の世界の中でこの使命を果たしていくためには制度的に適応していく必要があります。私は、ILOの有効性を最大限に高めるため、その使命をもう一度見直し、焦点を定めた上でその使命を実行するために必要なことを進めていくのが良いと考えました。

 事務局長選挙の運動の過程で、人々がILOに抱くイメージが人によって大きく異なり、ILOに将来求めるものについても共通項が少なく、この機関が今後取るべき方向性がはっきりしていないことが明らかになりました。共通の目的、ILO構成メンバーの集合的な利益を高めていくため、私は就任後まず、基本的で中心的な目標に焦点を定めることに取り組みました。そして、労働における権利、雇用、社会的保護、社会対話という四つの戦略目標を掲げ、この上にILOの将来に向けた中心的な目標として、ディーセント・ワーク、適正な労働というものを築き上げることを提案したのです。これはILOの使命の本質です。ILOの今日の目標の第一は、男女がともに、自由、平等、安全、人間としての尊厳といった条件の下で、ディーセントで生産的な仕事に就く機会を促進していくことです。このメッセージには、労働は基本であるということ、そして、労働は単なる経済活動ではないという意味が含まれます。ディーセント・ワークは、社会の現実に基礎を置いています。そこで、開発の目的をディーセント・ワークの推進とするならば、開発は社会的な進歩を統合したものと理解される必要 が生じます。つまり、経済発展の中におけるディーセントであることの実現と良い暮らしの促進の両者は引き離すことができないものなのです。

 ILOを人々と関連づけるための道のり、人々に向けてメッセージを発信する方法を確定する努力の過程で、世界の人々が、今、最も望んでいるものは、基本的人権に次いで、ディーセントな仕事ではないかという結論に到達しました。これは、子どもに教育を受けさせ、家族を扶養することができ、30〜35年ぐらい働いたら、老後の生活を営めるだけの年金などがもらえるような労働のことです。経済システム、統治体制、私たちが推進する政策の中で、何がこのシンプルな目標の達成を困難にしているのか、これが現在、ILOが探求している主な目標です。この問いにすべての回答を提供できるとはいいませんが、探求の方向性、政策の方向性は指摘していきたいと思います。つまり、まず、問題を把握し、その後で人々の目を通じて解決方法を考えるということです。国際機関は、この答えを出す責任があるにも関わらず、十分な機能を果たしていません。グローバルな問題に、細分化された縦割り部門別の機関で対処しようとする試みは限界に達しているのです。国際機関が協力して、このグローバル経済の機能に関し、各国政府にその知見を提供していく方法を共に考えていないといった点で私た ちは現在、過ちを犯していると思うわけです。

 以上が、私が今ILOを引っ張っていこうとしている方向ですが、これは1機関だけでできるものではありません。人々とディーセント・ワークを結びつけようとする限り、加盟国とのつながりが非常に大切になります。国際社会、国際機関のトップは、人々とリンクすること、そして人、家族、あるいはコミュニティがこの問題の中でどう生きているかを理解することによって、私たちが推進しなくてはならない政策や機能を理解するという基本的な責任があると思います。この点で三者構成のILOには非常に大きな利点があります。現存する組織の中では、その活動が社会の現実、生産システムの現実といった、グローバル経済で進んでいることのカギになるものの現実と一番近く結びついている機関なのです。

 今ILOが必要としているのは、そのような機関になるためのチャンス、自己を見つめ直す機会です。私たちは世界の出来事を理解する並外れた能力、焦点を定めていける能力、そして、政労使のみならず、世界のために、国際社会の本質的な側面を人々に教えていくという方向で貢献していける能力を備えているのです。

 (財)日本ILO協会は、第2次世界大戦中、ILOを脱退した日本の再加盟を促進するために、1949年11月24日に設立された。以後、50年にわたりILO協力民間団体として、ILO精神の普及と健全な労使関係の発展、海外労働事情の紹介等活発な活動を進めてきた。創立50周年を祝うこの他の記念事業として、次の3点の出版物が発行された。@講座ILO(国際労働機関)−社会正義の実現をめざしてA国際労働組合のプロフィールB日本ILO協会50年の歩み。

 また、同協会の工藤幸男常務理事が氏とILOの関わりを振り返った回顧録も出版された。記念講演会後に開かれたレセプションでは、50年にわたり、ILOのために活動してきた工藤常務理事に対し、ソマビアILO事務局長より、その功績をたたえる表彰状が贈られた。


世界銀行/ILO/労働省/JIL
東・東南アジアの経済危機、雇用、労働市場セミナー
(東京・10月13〜15日)

 労働省と日本労働研究機構(JIL)の協力を得て、世界銀行とILOが初めて共催したアジア危機に関する標記の会議には、共催各機関代表、学識者に加え、危機当事国である韓国、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピンから政労使三者構成の代表団が出席した。モンゴルからもILOフェローが出席し、会議を傍聴した。セミナーの目的は、各国労働市場の金融危機に対する対応を検討し、将来の政策選択肢と各国政労使の役割を吟味することであった。

 セミナーでは、参加5カ国の国別報告、日本の経験に関するJILの報告、経済協力開発機構(OECD)による途上国就労者に対する所得保障の提供に関する報告、トロント大学教授らによる弱者対象政策に関する報告、世界銀行による積極的労働市場計画をめぐる政策問題に関する報告、ILOによる危機に対処する代替調整メカニズムとしての社会対話に関する報告の発表、それぞれをめぐる討議が行われ、最後に政策円卓会議として、3日間の話し合いの成果がまとめられた。

 ILOからは、本部よりS・ラドワン雇用総局長政策顧問、R・イスラム復興・再建局長、アジア太平洋総局より堀内光子アジア太平洋総局長、平嶋壮州ILO/日本マルチバイ技術協力連絡調整官、東アジア・マルチディシプリナリー・アドバイザリー・チーム(MDT)よりD・キャンベル労使関係上級専門家、高木君代労働者活動上級専門家、南アジアMDTよりM・マームード労働市場政策専門家、東京支局より早坂信弘支局長が出席し、インドネシア(イスラム局長)、タイ(マームード専門家)の国別報告、ILO報告(キャンベル専門家)の発表に加え、OECD報告討議の議長(堀内総局長)、世界銀行報告討議の議長(ラドワン顧問)などを務めた。堀内地域総局長は、開会挨拶で、危機はプラスの影響も与えたとし、雇用を中心においた開発、国民の参加を求める声の高まり、基本的人権を基盤とした開発の3本の柱を基礎とした開発に関する新たな合意が形成されつつあると指摘した。

 セミナーは世界銀行とILOの間では多くの事項で意見の同調が見られるが、特に社会対話の推進並びに社会的保護の強調においてILOには独特の役割があることを示す好機となった。最終日に採択された議長総括は、アジア5カ国における全体的なマクロ経済状況及び労働市場情勢の回復を認めた上で、危機は同時に社会対話を中心とする民主制度の強化の機会を提供したとし、効果的な三者構成の枠組みの形成が重要とした。提案される労働市場政策は国によって異なるとしながらも、強い労働市場政策の枠組みとして、人材開発を含む積極的労働市場政策、労働者のための社会的安全網、適切な労働法・労働基準の整備といった要素をうまくバランスし、統合する必要性を唱えた。

 世界銀行とILOの将来にわたるこの種の協力活動を期待する合意も見られ、@積極的労働市場政策の評価とアジアにとっての適切性及びA失業保険を中心とした所得保障制度の将来性評価、特に財政とインフォーマル・セクターを中心としたより多くの労働者への保護の拡大の問題の二分野における会議開催が提案された。



第276回ILO理事会(ジュネーブ・11月4〜19日)
グローバル化→経済成長・社会的不平等
JR不採用問題で結社の自由委中間報告

 第276回ILO理事会の主な決定事項は次の通り。

□ グローバル化の社会的影響

 貿易自由化の社会的側面作業部会では、バングラデシュ、チリ、モーリシャス、ポーランド、韓国、南アフリカ、スイスの7カ国で実施された「グローバル化の社会的側面に関する調査研究」の総括報告が提出され、これをもとに討議が行われた。報告書は、グローバル化は世界経済にとっては有用であるが、労働者には厳しい影響を与えると指摘し、教育訓練の改善、社会的安全網の整備、経済的適応性と弱者保護を組み合わせた労働法規の採用、中核的労働基準の遵守を通じたグローバル化の「社会的支柱」の強化がグローバル化の成功と社会的存続に大いに寄与するとし、保護主義的な解決策を否定する。作業部会の活動見直しも行われたが、当面活動は継続するものとし、2000年3月の理事会で具体的な使命と名称を改めて検討することとなった。

□ 宣言をフォローアップする専門家グループ任命

 昨年採択された「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」のフォローアップの一環として、基本的条約未批准国はILOに年次報告を提出することとなっている。事務局がまとめるこの情報を審査し、理事会にコメントを提供することを任務とする「ILO宣言専門家諮問団」として、A・エルボライ・カイロ大学法学部長(エジプト)、J=J・オクスラン元国際使用者連盟(IOE)運営委員会委員長(フランス)、M・A・ロルダン=コンフェソル人材開発・国際労働問題大統領顧問(フィリピン)、R・ホワイト元カナダ労組会議会長(カナダ)等、7名の専門家が選出された。諮問団による初の報告書は2000年3月の理事会に提出される。

□ 結社の自由委員会

 結社の自由の侵害に関する33件の申立が審議された。この中にはJR不採用問題を巡り、国労と全動労が昨年10月と12月に相次いで行った組合差別行為に関する申立が含まれる。委員会は中間報告として、最終決定に向け、政府に追加情報等を求める次のような勧告を出した。@JRが国労及び全動労組合員を採用しなかった理由に関する追加情報の請求、A当事者が満足し、関係する労働者が適正な補償を受けることを確保する解決策の速やかな達成に向け、JRと申立人間の交渉を積極的に推進し、関連する進展情報を提供すること、B委員会は国労及び全動労組合員の解雇に関する裁判所の決定が団結権・団体交渉権条約(第98号)に沿ったものとなることを信じるものであり、裁判結果の情報を継続的に提供すること、C新しい民事訴訟法関係規定の抜粋提出を求めると共に、第98号条約に違反する組合差別事件の真に効果的な救済措置の確保に向けて素早い審査を保障する上で、これに沿った手続きが効果的かつ迅速であることを強く期待し、この点に関する新しい展開の通知を求める。

 労組活動家の殺害や行方不明事件など、暴力の広がりが見られるコロンビアに関しては、直接接触ミッションの派遣が決定された。ミッションの報告書提出期限は来年5月15日までとし、これを来年6月の理事会の結社の自由委員会で審議した上で、審査委員会設置の有無を決定する。強制労働の存在が問題になっているミャンマーについては、事務局長による審査委員会勧告の実施状況追加報告書を来年3月に提出するよう求め、それを見た上で、来年の総会議題とするかどうか3月の理事会で最終決定することとなった。



国際労働基準短信

 上院議会の全会一致の承認を得て、クリントン米大統領は、12月2日、シアトルにおいて、今年採択された最悪の形態の児童労働条約(第182号)の批准書に署名した。同条約は、既にセーシェルとマラウイが批准しているため、2カ国目が批准した1年後の2000年11月19日に発効する。

 また、フィンランドとアイルランドの批准により、1996年採択の在宅形態の労働条約(第177号)、労働監督(船員)条約(第178号)、船員の募集及び職業紹介条約(第179号)がそれぞれ2000年4月22日に、エチオピアとモロッコの批准により、民間職業仲介事業所条約(第181号)が2000年5月10日に発効する。



ILO事務局長WTO閣僚会議出席

 去る11月30日〜12月3日にシアトルで開催された第3回世界貿易機関(WTO)閣僚会議に出席したフアン・ソマビアILO事務局長は、12月1日、国際的な経済・社会政策を扱うすべての機関が政策を同調させて、グローバル化の社会的影響に取り組む新しい国際イニシアチブを求める声明文書を会議に提出した。声明は、グローバル化による途上国・先進国間の格差拡大を指摘し、@労働における基本的原則と権利、A雇用創出、B社会的保護の整備、C社会対話の推進といったILOの四つの戦略目標を統合した概念であるディーセント・ワークは、世界経済の社会的基盤を提供し得ると唱える。そして、複数機関間での知識の共有と共同研究の実施等、多段階におけるより統合したアプローチの開発に向けた国際的な努力にILOは参加していく用意があるとする。


世界社会開発サミット・フォローアップ国際協議会
(ジュネーブ・99年11月5〜6日)

 1995年3月にコペンハーゲンで開かれた世界社会開発サミットでは、完全雇用の実現等の目標を謳った宣言と行動計画が採択された。2000年6月にジュネーブで開催される国連総会の特別セッションでは、サミットの成果について、総合的な評価を行い、新たな目標が採択される。サミット以降、その宣言や行動計画、公約に基づいてILOが行ってきた活動(労働における基本的原則及び権利に関する宣言の採択とそのフォローアップ活動、「世界雇用報告」や「主要労働市場指標」等の出版物の発行、14カ国で実施した各国の雇用政策の検討・評価等)を評価し、国連特別セッションに備えるため、ILOは、まず各地域ごとに協議会を開催し(バンコク、ブダペスト、アビジャン、ジュネーブ、ベイルート)、その結果を統括する標記の国際会議を実施した。日本からは、矢野弘典日経連国際部長、田中光雄連合国際政策局長が出席し、政府はオブザーバーとして参加した。

 討議資料として提出された「ILOと完全雇用、生産的な雇用及び自由に選択できる職業の推進」と題する報告書は、1998年半ばで全世界の失業者数は1億5千万人、不完全就業者数は7,500万人にも達し、米国や西欧の一部を除き世界のほとんどの国でサミット以降の雇用状況は悪化していると指摘し、この問題を克服するためのILOの努力を紹介する。

 協議会は、宣言と行動計画の設定した雇用目標を達成するための基本政策をより効果的に実施するための政治的意思とさらなる努力を求める結論を採択した。これには、GNPの0.7%をODAに充てるという目標の早期達成に補足された貧困緩和国内戦略の統合等が含まれる。結論は、仕事の質、国際金融市場の安定化政策等の重要性を再確認し、ILOに対し、包括的な雇用戦略の立案・実施、知的経済・社会に対処する新政策・計画の立案等を内容とするイニシアチブを政労使、国連諸機関と協力して開発するよう求める。


ILOの現勢
(1999年10月4日現在)

加盟国数・・・・・・・・・・・・・・・・ 174
条約の数・・・・・・・・・・・・・・・・ 182
勧告の数・・・・・・・・・・・・・・・・ 190
加盟国の平均批准数・・・・・・・ 38
OECD諸国の平均批准数・・・ 65
日本の批准条約数・・・・・・・・・ 43


バ ン コ ク 便 り

王    様


 バンコクに来て早1年半。この12月5日は王様の誕生日で、王様は今年72歳になる。日本と同じく12支を使っているタイでは大変おめでたい年になり、町中に王様の肖像画が溢れ、通勤途中にあるビルは全体が王様の看板で覆われているものもある。この半年、念入りに試運転を繰り返してきたモノレールは誕生日を期して開通。

 朝の8時と夕方の6時には国王賛歌が国の機関のスピーカー、テレビやラジオの電波を通して流れ、音が聞こえるところでは道行く人が立ち止まっていたりする。夕方、ゴルフの練習場で一生懸命ボールを打っていると、6時をまたいでしまったらしく、気がつくと打っているのは自分だけだったこともある。

 バンコクの町は都市高速がどんどん延長されているおかげで渋滞が減っている気がするが、オフィスからの帰り道、時々ぴたりと止まって20分位全く動かないことがある。王様が外出するときで、この時は王様がたとえ一般道を通っていても頭上を通ることは無礼にあたるため、高速道路も封鎖されてしまう。王様に謁見するときはみな床を這いずり回るようにしている。

 なぜ、これほど王様は大事にされるのか?タイ人によると、人間的にも立派で尊敬できるということだが、それだけではないように思える。この国に来て思ったのは、金持ちは本当に金持ちで、貧乏人は本当に貧乏であるということだが、その格差をものともしないほどの高みに王様が座ることによって、人々の心が安定するということではなかろうか?車や不動産をいくつも持っている人がたくさんいる一方で、1日100バーツちょっと(日本の感覚で2,000円位)しか稼ぎがない人がたくさんいる。

 天皇をそれなりの距離で愛している日本はいい国だなと思える。

ILOアジア太平洋総局
ILO/日本マルチバイ技術協力連絡調整官
平嶋 壮州

ILO今後の会議

 近い将来、開催が予定されている会議は次の通り(開催地は特記ない限り、ジュネーブ)。

▼断熱用ウールの安全使用専門家会議(1月17〜26日) 日本、ドイツ、メキシコ等7カ国政府及び労使各側7名の専門家が集い、合成ガラス繊維断熱用ウール(グラスウール、ロックウール、スラグウール)の安全使用に関する実施規準案を検討し、規準採択を目指す。

▼報道・娯楽産業の雇用、労働条件、労使関係に対する情報技術の影響シンポジウム(2月28日〜3月3日) 日本、タイ等21カ国、労使各21名が集い、当該分野に関するILOの将来の活動を導く結論の採択を目指す。


ILO関係者往来

▼ILO北京行動綱領フォローアップ・アジア地域協議会−労働の世界におけるジェンダーと女性問題に関する進展と将来の課題(マニラ・10月6〜8日)に村木厚子労働省女性局女性政策課長、西嶋美那子日経連労務法制部次長、渡邉ひな子連合国際局次長、講師として大澤眞理東大社会科学研究所教授が出席。

▼第5回国連アジア太平洋統計研修所理事会(東京・10月6〜8日)にILO東アジア・マルチディシプリナリー・アドバイザリー・チーム(MDT)よりB・ペンバー上級労働統計専門家が出席。

▼ILO/日本マルチバイ「労働及び雇用政策行政の長期フェローシップ・プロジェクト」97年度事業の一環として、中国、インドネシア、マレーシア、ネパール、フィリピン、タイより各1名計6名の農村雇用創出視察団が来日(10月6〜16日)。労働省、農林水産省、農村地域工業導入促進センター、大分県庁、大分県農水産物加工総合指導センター、一村一品運動発祥の地である同県大山町、別府竹の博物館等を訪問。

 同プロジェクト97年度事業の一環として、モンゴルより3名が来日(10月9〜16日)。ILO/世界銀行/労働省/日本労働研究機構共催東・東南アジアの経済危機、雇用、労働市場三者構成セミナー(東京・10月13〜15日)傍聴に加え、連合、日経連、新宿公共職業安定所を訪問。

 同プロジェクト98年度事業の一環として、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムより各1名計7名の女性労働者の権利と経済的エンパワメント視察団が来日(10月20〜28日)。労働省、日経連、21世紀職業財団、アビリティガーデン、両立支援ハローワーク、連合、総理府男女共同参画室、東京女性少年室を訪問。

▼第6回連合大会(東京・10月13〜15日)にILO本部よりM・セバスチャン労働者活動局次長、アジア太平洋総局より堀内光子地域総局長が出席。

▼平成11年度全国産業安全衛生大会(仙台・10月20〜22日)にILO本部労働安全衛生部の町田静治専門職員が招待され、「21世紀に向けた安全衛生の課題と方向−ILOの視点−」をテーマに国際分科会で講演。

▼第19回産業医科大学・第3回産業生態科学研究所国際シンポジウム(北九州・10月25〜27日)にILO本部労働安全衛生部のシェンリー・ニウ職員が出席、ILOが作成した労働者の健康サーベイランスのための技術・倫理ガイドラインについて基調講演。

▼ILO商業のグローバル化と再構築の人的資源に対する影響三者構成会議(ジュネーブ・10月25〜29日)に大賀康幸商業労連総合福祉局長が出席。

▼ILO/トリノセンター/APSDEP(アジア太平洋技能開発計画)/日本共催新訓練技法訓練コース(千葉・10月25日〜11月5日)にAPSDEP加盟国の中国、インド、ネパールより各2名、フィジー、インドネシア、イラン、マレーシア、パキスタン、フィリピン、スリランカ、タイより各1名、ILOトリノセンターより講師としてC・マルタン職員、コーディネーターとしてE・フロレス・アジア大平洋担当上席企画官が出席。

▼第2回企業フォーラム(ジュネーブ・11月5〜6日)に日経連より立石信雄副会長、鈴木俊男ILO使用者側理事、矢野弘典国際部長、アジア生産性機構より田島高志事務局長、伊藤祐禎ILO労働者側理事ほか7名が出席。立石日経連副会長は全体会議で「オムロンにおける企業市民の精神」のテーマで講演。

▼ILOアジア太平洋総局主催の賃金研修プログラムの一環として、国際労働財団受け入れで、中華全国総工会より朱新華四川省総工会副主席ほか7名が来日(11月10〜13日)。社会経済生産性本部、山武労働組合を訪問。

▼インドネシアより公共職業紹介制度視察のため、S・ムアリフ労働力省労働力開発・職業紹介総局総務課長ほか4名の政労使三者構成視察団が来日(11月16〜20日)。アビリティガーデン、労働市場情報センター、川崎公共職業安定所、民営人材紹介事業協議会、リクルート・エイブリック社を訪問。

▼日本政府の招聘で、ILO本部よりJ・ソマビア事務局長、C・マッケーナ官房次長、アジア太平洋総局より堀内光子地域総局長が来日(11月23〜27日)。(財)日本ILO協会創立50周年記念講演会で講演の他、総理大臣、外務大臣、労働大臣、ILO活動推進議員連盟、国連社会開発推進議員連盟、日経連会長、連合事務局長、衆議院労働委員長、運輸総括政務次官、大蔵総括政務次官等と懇談。

▼平成11年度国立婦人教育会館国際フォーラム(埼玉・11月25〜27日)にILO南アジアMDTよりJ・トゥラダール上級ジェンダー専門家が出席。「政治、職業、教育における女性と人権」のシンポジウム、全体会のパネリストを務めたほか、「女性と職業」の分科会で発表。

▼第15回ボイラ圧力容器安全セミナー及びILOボイラ圧力容器安全三者構成セミナー(香港・11月30日〜12月1日)に野原石松(社)日本ボイラ協会会長がILOコンサルタントとして出席。



論 文 概 要 紹 介
国際市場の社会的良心?
行動規範、社会的ラベリング、
投資家イニシアチブの労働的側面
 ILOの季刊誌「インターナショナル・レイバー・レビュー」誌99年2号に、ILOのJ・ディラー法務局職員が左記の論文を寄稿している。以下はその概要である。


□ はじめに

 過去10年の間に、企業による社会的責任の達成を目的とする、新たな種類の自発的活動が生まれている。こうした活動は誕生した当初は、良き市民であろうとする大企業を中心とするものであったが、現在は国や地域を超えて、そして企業の業務提携関係にまで、一般的に受け入れられる原則として広がりを見せている。その活動は合弁事業、ライセンス・供給契約等、商品・サービスの調達からマーケティングに至る連鎖全体に及んでいる。また、企業のみならず、産業団体、労働組合、非政府組織(NGO)等、多様な関係者も加わった連携関係も生じている。

 本論文は、多国籍企業における民間イニシアチブと総称されるこれらの活動のうち、労働関係を扱うものを概観し、その効力を吟味する。

□ イニシアチブの種類

 民間イニシアチブの目的は、企業の社会的態度についてメッセージを発信することである。代表的な手段としては以下のものがある。

 @行動規範:企業がある行動を遵守することを、文書により明示したもの。対外的には広告、年次報告書、監査報告書等を通じて公表される。自社に適用するのみならず、国際的な業務提携関係にある他企業にも影響を及ぼすことを目的とする。

 A社会的ラベル:製品、サービスの生産・提供の社会的条件を示すラベル(ロゴ、商標等)を貼付し、商品の差別化を図る。独立的なラベル・プログラムの運営には、NGOや労働者組織、企業連合が関係する場合が多い。

 B投資家イニシアチブ:先進国において投資家、株主による「社会的責任のある投資(SRI)」を目的とする活動で、経済的な見返りと同時に投資決断を通じて企業行動に影響を及ぼそうとする意図を持つ。

□ 民間イニシアチブの労働面

 各イニシアチブがどのような労働基準を推進しているかに関する十分な研究は存在しない。公共政策の観点からは、民間イニシアチブは公的規制を補足するという利点があるが、それもイニシアチブの内容によりけりである。これらイニシアチブの成果についても、明確な結論を出した研究は少ない。

 ILOが215近い行動規範と12のラベル・プログラムについて予備調査を行った結果によると、規範・ラベル相互、そして公的規制と民間イニシアチブの間には、内容についてかなりのばらつきと選択性が見られた。調査は、ILOの基本原則と権利(結社の自由、団体交渉権、強制労働、児童労働、雇用と職業における差別)、及び賃金水準と労働安全衛生についてなされた。

 規範では、労働安全衛生(全体の75%)、採用・雇用条件における差別禁止(同3分の2)、児童労働の廃止ないし児童を使う企業との取引停止(45%)、賃金水準(40%)、強制労働(25%)の順に扱われる頻度が多い。ラベルでは、大多数が児童労働を扱っていた(12プログラム中11)ほか、半数が賃金水準について述べていた。

 このような選択性が存在する理由としては、規範の策定が閉鎖的な場で関係者による交渉で決められること、産業によって特定の労働問題への関心度合いが異なること等が挙げられる。同様にラベルについては、市民社会の関心が反映されること、比較的裕福な購買層に向けた輸出品を対象とすること等が理由とされる。

 内容については、草案者の「自己定義」によるものが最も多く、次いで国内法、産業慣行、国際基準の順に引用されていた。国際基準に言及するものは全体の3分の1に満たなかった。「自己定義」の中には国際労働基準に合致せず、相反するものさえ見受けられた。

 投資家イニシアチブでは、株主決議の中で国際的な労働問題に言及したものはあまり多くない。また、規範やラベルに比較して投資家が適用する選別基準は、具体的でないことが特徴である。

□ 社会政策への意味

 民間イニシアチブには、市場メカニズムを通じて企業と消費者の社会的関心を呼び起こし、公的規制を補足する、という利点がある。しかし、産業部門と労働面でのばらつき、客観的かつ信頼できる実施が困難であるという問題を緩和するためには、市場に大きく依存する現在の方法には限界があると考えざるを得ない。安定した効果を獲得するためには、内容、実施手段につき、公共と民間との間で調整が必要であると、多くの場で討議されている。

 そうした方法の一つとして、例えばILOの多国籍企業と社会政策に関する三者宣言や、経済協力開発機構(OECD)の多国籍企業指針にある原則と、政府レベルでの自発的な遵守規定を組み合わせ、実質的内容と手続きの統一性を確保する方法も考えられる。企業に技術的支援を行うことで、効果的かつ保護主義的でないイニシアチブの形成を支援する。このような能力育成への取り組みと実施方法の調和により、民間イニシアチブを国際貿易の自由化の中で社会正義を追求する手段に高めることが可能になるだろう。


ILO新刊書

The Roles of Evaluation for Vocational Education and Training

職業教育と訓練に関する
評価の役割


英文・195ページ 3,000円

  先進国、途上国、移行国にかかわらず、多くの国が、教育・訓練を改善したいと切望している。しかし、本書は教育・訓練が改善すれば、生産的で高度の熟練技術を持った、競争力強化に貢献する労働力が約束されるということは、素晴らしい壮大な夢であるとする。

 教育・訓練を通じての成功の夢について理解することは単純ではなく、教育・訓練について各国内の議論においては、率直な話が必要であると述べている。即ち、どんなときに教育・訓練が機能し、または機能しないかについての注意深い理解とこれらの夢の実現のために何が必要かという正直な議論が必要とされる。以下、章別内容を略述する。

 第1章では、各種の職業教育訓練(VET)の概念の概略を述べる。VETの異なる形態・VETの異なる提供者が、異なる評価の問題を生み出すので、評価の型を決める前に対象となる訓練についての理解が不可欠である。

 本章では、因果関係メカニズムを強調し、評価の最も重要な点として、何故、訓練プログラムが機能するか、しないかを理解することであるとする。

 第2章では、評価は多くの目的に使われるが、異なる目的は、異なる評価の型を必要とする。従って、評価の型の決定の前に、目的を明確化すること、多目的の場合には、多くのアプローチによる評価が必要であることを述べている。

 第3章では、多くの評価方法を述べるが、中には、通常それほど頻繁に用いられない方法も含む。

 第4章では、先進国のVETの評価から得られた成果を提供する。特に次の3分野−失業者への向上訓練、徒弟訓練を含む民間訓練及び個人による訓練−に集中する。

 第5章では、評価計画そのものの評価を行い、評価方法そのものについて率直な話を提供する。

 第6章では、評価の証拠がいかに政治プロセスにおいて使われるかという問題を扱う。ここで使われる経験は、第4、5章と同様、ドイツ、アメリカ、イギリスの事例が多い。

 第7章では、先進国、移行国、途上国等多くの国に共通な、評価についての展開を扱う。

 最終章である第8章では、これまでの章を総括し、九つの提案を示す。これらの提案は、評価はVETプログラムについての新しい、より良い情報をもたらし、プログラムがいかに運営され、何を達成できるかについての理解を深めるために使われるべきであるとする。


新刊表紙
★Social security for the excluded majority: Case studies of developing countries
「排除された多数のための社会保障: 開発途上国の事例研究」


インド、中国、タンザニア等の途上国では、社会保障制度の適用を受けていない労働者が大多数である。各国で異なる社会保障制度を詳しく分析し、国と地方の行政レベルで社会保障の対象範囲を広げるための方策を探る。また、インフォーマル部門のニーズに応えるNGOや協同組合などの取り組みも研究する。

W. van Ginneken編 1999年刊 198pp. 3,000円

★Sexual Harrassment: ILO Survey of Company Practice
「セクシャル・ハラスメント: 欧米企業はどう対応しているか」


職場でのセクシャル・ハラスメントに有効な対策をたてることは、企業にとって、そのイメージに関わり、従業員の士気と生産性にも影響する重要な課題である。世界の主要企業がどのような対策をとっているか、実例を示す貴重な情報ブックレット。人事担当者必携。

A. Reinhart著 1999年刊 39pp. 1,200円

★Freedom of association: A user's guide
「結社の自由ガイドブック」


結社の自由に関するILO条約の内容とその実効手続きについてわかりやすく解説した初めてのガイドブック。

D. Tajgman, K. Curtis共著 2000年刊 83pp. 2,500円

★Freedom of association: An annotated bibliography
「結社の自由: 参考文献」


結社の自由に関するILO、国連、EU、アフリカ統一機構、米州機構等の国際条約とその監視機構に関する文献を簡略な解説付きで紹介する。

1999年刊 162pp. 2,500円


書籍ご注文はILO東京支局まで(пF03-5467-2701、FAX:03-5467-2700、電子メール:tokyo@ilotyo.or.jp




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最終更新日:2000年9月25日 作成者:EU 責任者:NH