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ILOジャーナル2001年8月号目次
▼ 第89回ILO総会閉幕
▼ 日本政府ILO憲章改正文書受諾・最悪の形態の児童労働条約批准(2001年6月18日)
▼ 児童労働シンポジウム(東京・9月7日)及び展示会(同・9月4〜13日)開催のお知らせ
▼ ダーテ=バー危機対応・再建国際重点計画部長来日講演(東京・7月2日)
▼ HIV/エイズと労働の世界
▼ 第281回ILO理事会(ジュネーブ・6月22日)新役員選出
▼ 2001年8月の主な会議日程
▼ ILOの現勢(2001年7月1日現在)
▼ ジュネーブ便り:国境を越える毎日(ILO本部財務局 松尾嘉之)
▼ ILO人事ニュース:インターンシップ制度
▼ 論文概要紹介:ジェンダー、女性、その他全て(International
Labour Review 2000 Vol.4より)
▼ 新刊紹介:アジアにおけるディーセント・ワーク他
ILOジャーナル2001年8月号
| 6月5日から21日まで、第89回ILO総会がジュネーブで開催された。今総会では、来2002/03年度予算実質ゼロ成長の総額4億3,404万ドルの決定、第2回グローバル・レポートの審議(強制労働)、ミャンマーへのハイレベル調査団派遣の決定、農業における安全衛生に関する条約・勧告の採択などの成果をあげて閉幕した。 |
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今総会は、159カ国が参加し、委任状委員会に登録された政労使代表・顧問その他の総数は約3,660名であった。日本の代表団は総勢33名、ビジティング・ミニスターとして、渡邊信厚生労働審議官が出席した。ソマビアILO事務局長は、閉会挨拶で、女性の参加率が低下した(本年20.09%、昨年21.5%)と注意を喚起し、男女平等参加の重要性を訴えた。議長には、パトリシア・サント・トーマス・フィリピン労働雇用長官、副議長にはアルトゥール・ジョン・ドナト・ブラジル全国産業連盟副会長(使用者側)、ジャン=クロード・パロ・カナダ労組会議執行副会長(労働者側)、セシリア・バナーマン・ガーナ労働力開発・雇用大臣(政府側)が選出された。
トーマス議長は、グローバル化を「新千年紀のマントラ」と呼び、「新たな参加者がキャッチアップできるよう、グローバル化においてもゴルフのようにハンディキャップを与えるシステムが必要」と訴えた。
6月14日には、アラブ被占領地域における労働者の状態についての特別会合が開催され、人道危機とも呼べる同地域の状況悪化の深刻さが浮き彫りにされた。事務局長が準備した報告書は、イスラエルの経済損失も相当なものであるが、安全面と境界封鎖の影響で数千人ものパレスチナ人が仕事に行くことさえできず、GDPの50%が失われ、西岸住民の半数以上、ガザ地区住民の8割が貧困に苦しんでいるとする。
特別会合では、関係労使に対する技術協力の増加、労働者とその家族の日常生活の改善に向けた実際的な措置に焦点を当てた対話の再開を求める発言が相次いだ。
6月12日の本会議で、最悪の形態の児童労働撤廃目標期限付プログラムに関するハイレベル特別会合がもたれ、タンザニア、ネパール及びエルサルバドルでの同プログラム開始が発表された。このTBPは今後、最悪の形態の児童労働条約(第182号)実施の主要手段として、児童労働撲滅国際計画(IPEC)が行うこととなる。
特別会合に出席したムカパ・タンザニア大統領は、その演説の中で、「児童労働は我々のごくありふれた人間性の否定である」として、貧困による児童労働、経済改革、エイズの耐えがたい影響などを指摘した。ソマビア事務局長は、6月12日を児童労働に反対する世界デーとすることを呼びかけた。
TBP参加国は、プログラムの枠内で、最悪の形態の児童労働を10年またはそれ以内になくすための活動を強化する。参加3カ国は各国毎に、ゴミ拾い、荷物運搬、鉱山、家事労働、債務奴隷、商業的農業、漁業、商業的性搾取、人身売買といった優先分野を定め、そこから子どもを保護するための活動を進める。
ソマビア事務局長の報告「ディーセント・ワーク(価値ある労働)の欠損を減らすこと」、すなわち、ディーセント・ワークの現実化、そのためのアクションについて政労使の意見が表明された。ソマビア事務局長は、ILOの目標である「ディーセント・ワーク」を理念でなく、現実化する必要を力説し、各国の開発戦略に組み込まれるべく、政、労、使の努力を促した。議論は、国内レベルでの政策問題ばかりでなく国際レベルでの開発戦略にも及んだ。知識ベースの構築、社会分野での民間イニシアチブ、国際組織やNGOを含むパートナーシップなどについて活発な意見が表明された。
また、多くの出席者がグローバル化の社会的側面に取り組む必要性を指摘した。なお、この点に関して、総会会期中に開かれたグローバル化の社会的側面に関する理事会作業部会に、同作業部会の活動に関する事務局長からの新提案が提出され、特定の問題をより深く吟味すること、作業部会を常設的な意見交換と対話の場とすること、事務局長の責任でグローバル化の社会的側面に関する権威ある報告書を作成することといった主要ポイントについて概ね合意がみられた。深く掘り下げる最初のテーマとして、貿易自由化と雇用の問題を11月の作業部会で検討することとなった。事務局長報告の作成方法に関しても、事務局案が11月に検討される。
強制労働の廃止に向けて、かなりの規模の技術協力が必要との指摘が多くあり、労働側からは、強制労働廃止の国際プログラム設置が提案された。昨年に引き続き、審議が一方的な意見表明ではなく、対話式の議論によるべきとの指摘が労使双方からなされ、事務局長も来年の審議方法改革につき協議する旨表明した。
第2議題の予算・財政関連では、@2002/03年度予算総額4億3,404万ドル(500万ドル増の実質ゼロ成長)、A分担率の各国比率(日本は今年の20.26%が19.369%へ低下)が、賛成439、反対なし、棄権7(日本は政労使とも賛成)で決定された。今期予算から初めて予算に係る成果目標が明示された。
基準適用委員会では、ミャンマーの強制労働に関する特別会合が開かれ、ハイレベル・ミッションの派遣が決定された。出席者の多くから、ミッションがミャンマーでコンタクトする人々の安全確保、メンバー選定における事務局長の完全な自由裁量の確保、ミッションの行動の自由の確保などが表明された。ミッションの報告は11月の理事会に提出される。
第3議題「条約・勧告の適用に関する情報と報告」の一般討議においては、例年の条約勧告適用専門家委員会の一般報告とあわせ女性の夜間労働に関する総合調査報告について審議された。母性に配慮し、女性を特別に保護する規定を含みながら、夜業における男女双方の保護を定める夜業条約(第171号)の批准促進が求められた。
総会本会議におけるILOの基準適用監視システム近代化のための審議に対する幅広い支持がみられた。更に今年詳細に検討することが昨年の総会で決められていた民間刑務所の作業条件についての一般審議が引き続き行われ、中核的条約のひとつである強制労働条約(第29号)は、民間刑務所労働を禁止するものではないが、それが強制労働とならないことを確保する条件と監視システムを備えるよう求めるものであるとし、この原則があらゆる状況で正しく完全に適用されることが極めて重要と指摘された。
個別審査については、26案件が取り上げられた(審議できたのは政府代表が欠席したアフガニスタンを除く25件)。日本案件も、結社の自由・団結権保護条約(第87号)に関連し、@消防職員の団結権の問題、A医療労働者の争議権問題、B公務員改革に関しての労使協議が取り上げられ、Bに関し、議長集約で労使対話への期待が表明された。
深刻な状況を特記するスペシャル・パラグラフには、第87号条約に関わり、ベラルーシ、コロンビア、エチオピア、ミャンマー、ベネズエラの案件が、第29号条約に関連し、スーダンの案件が記載された。
更に、同一報酬条約(第100号)採択50周年が祝われた。
第4議題では、第2次討議が行われ、農業の安全衛生に関する条約(第184号)と勧告(第192号)が、条約については賛成402、反対2、棄権41、勧告は賛成418、反対なし、棄権33(日本は政労使とも条約・勧告共に賛成)で採択された。条約と勧告は、鉱業及び建設業と並び3大危険産業といわれる農業の安全衛生を扱う初の包括的な国際基準として、国内政策開発の際の全般的な枠組みを定める。
条約は批准国に対し、農作業場の適切な監督システムを導入し、適切な手段で実施するよう求める。使用者による労働者の安全衛生確保義務、農業労働者の安全衛生事項に関する情報と協議を受ける権利も定める。適切なリスク評価とリスク・マネジメントの手段、機械の安全と人間工学に関する予防・防護措置、材料の運搬と取り扱い、化学物質の管理、動物の扱い、農業施設の建造と保全といった内容が取り上げられる。若年者と児童労働、臨時・季節労働者、女性労働者、傷病保険、福祉・居住施設に関する規定も含む。
条約適用に関し、自給自足農業、農業関連産業、林業、そして政府及び労使団体の三者協議で決定される一部の事業体及び特定の種類の労働者の除外が可能であるが、労働者保護は、自営農民も含め全労働者をカバーするという原則については、委員会からの支持が得られた。
条約を補足する勧告は、条約の提供する保護を漸進的に自営農民にも拡張するよう規定する。さらに、農業の安全衛生に関する国内政策を実施する方法のガイドラインとして用いられる具体的な規定を盛り込む。
第5議題では、協同組合の振興に関する新しい国際労働基準の採択に向けた第1次討議が行われ、来年の総会で勧告の採択をめざし、第2次討議が行われることとなった(討議資料の概要)。
世界全体で協同組合の組合員数は8億人、就業者数は1億人に達する。収益性のニーズと地域社会のより広い利益とを調和させることができる点で、経済社会開発の推進において協同組合は重要な役割を演じる。本委員会の作業は、ディーセント・ワークの課題に向けた政策統合の明確な一例であり、議論ではディーセントな仕事の創出及び貧困削減への協同組合の大きなポテンシャルが強調された。本問題の審議は、1966年の協同組合(発展途上国)勧告(第126号)以来であったが、来年の審議へ向けた十分な準備作業が行われたと評価できる。
第6議題「社会保障」では、極めて多くの論点があり、種々の問題を含むものであったため、事前に議論に向けて周到な準備がなされた結果、主要な問題及び優先課題に関して迅速な合意が図られるという好結果を生んだ。特に、@社会保障未適用者への適用拡大を最も優先度の高い政策イニシアチブとすること、A社会保障は生産性を向上させ、経済発展を支持すること、B人口の高齢化から生ずる社会保障負担につき、雇用率上昇を通じた解決を図ること、Cソーシャル・パートナーの力強い役割などで合意が達成された。しかし、将来の労働基準設定に関しての勧告は出されなかった。
ILOの社会保障関連活動については、ILOの基準、ディーセント・ワーク目標及びフィラデルフィア宣言を基礎とすべきことが謳われ、将来の調査対象、技術協力の焦点となる分野が提案され、社会保障拡大キャンペーン及び社会保障をより高い優先分野とするよう政府に働きかけることなどが提唱された。
去る6月18日、日本政府は、1997年に採択された国際労働機関(ILO)憲章の改正に関する文書の受諾書及び1999年に採択された最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第182号)の批准書をジュネーブでソマビアILO事務局長に直接手渡し、正式に受理された。
1997年の憲章改正文書は、ILO条約の廃止手続きを初めて定める。これは、憲章第19条9として、「国際労働機関の総会において採択された条約がその目的を失ったこと又はこの機関の目的の達成に当たりもはや有益な貢献をしていないことが明らかである場合には、総会は、理事会の提案に基づき、出席代表の投票の3分の2の多数によって当該条約を廃止することができる。」との規定を追加するものである。
改正文書は10主要産業国(日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、中国、インド、ブラジル)中の5カ国を含む全加盟国(175カ国)の3分の2(117カ国)によって批准または受諾されることによって効力を発生する。2001年7月1日現在、批准または受諾国は5主要産業国(中国、インド、イタリア、日本、英国)を含む65カ国であり、まだ発効には至っていない。
1999年のILO総会において、全会一致で採択されたこの条約は、18歳未満の子どもが最悪の形態の児童労働に従事しないよう即時に効果的な措置を取ることを定めるものである。
最悪の形態の児童労働とは、
Cの業務の種類は、関係のある労使団体と協議した上で、関連の国際基準、特に同時に採択された最悪の形態の児童労働勧告(第190号)の規定を考慮し、国内法令によってまたは権限のある機関が決定する。権限のある機関は、このようにして決定された種類の業務がどこに存在するかを特定する。決定された業務の種類は、関係のある労使団体と協議の上、定期的に検討し、必要に応じて改正することとする(第4条)。
批准国は、緊急に処理を要する事項として、最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃を確保する即時のかつ効果的な措置をとるものとする(第1条)。これには、労使団体と協議した上で、条約を実施するための規定の実施を監視する適当な仕組みを設置または指定すること(第5条)、関係する政府機関、労使団体と協議の上、適当な場合には他の関係集団の意見を考慮に入れて、最悪の形態の児童労働を優先的に撤廃するための行動計画を作成し、実施すること(第6条)、この条約を実施するための規定の効果的な実施を確保するため、刑罰または適当な場合には他の制裁を定め、適用することを含み、全ての必要な措置をとること(第7条1)、児童労働の撤廃における教育の重要性を考慮に入れて、@子どもが最悪の形態の児童労働に従事することを防止すること、A子どもを最悪の形態の児童労働から引き離し、リハビリ及び社会統合のための必要かつ適当な直接の援助を提供すること、B最悪の形態の児童労働から引き離される全ての子どものため、無償の基礎教育及び可能かつ適当な場合には職業訓練の機会を確保すること、C特別な危険にさらされている子どもを特定し、援助を与えること、D女
の子の特別の事情を考慮することといったことのための効果的な措置を、定められた期限までにとること(第7条2)、この条約を実施するための規定の実施について責任を負う権限のある機関を指定すること(第7条3)、この条約を実施するに当たり、社会的及び経済的な発展、貧困の撲滅計画、普遍的な教育のための支援を含む国際的な協力または援助の強化を通じて、相互に援助を行うための適当な措置をとること(第8条)が含まれる。
第190号勧告は第182号条約を補足し、行動計画の目標、危険な労働を決定する際に考慮すべき事項を含み、条約を実施する際の具体的な指針を示す。
労働の基本的原則・権利に関わる基本条約のひとつに数えられる第182号条約は、ILO史上最も速いペースで批准が進んでおり、日本は83カ国目の批准国となった。この条約の日本における発効は、批准1年後の来年6月18日である。
児童労働問題に対する世界的関心が高まっている中、最悪の形態の児童労働の撤廃に向けた国際的な取り組みを推進するとの見地から、日本は昨年の最低年齢条約(第138号)に続き、この条約を批准することとした。日本が批准するILOの条約はこれで45になった。
児童労働を漸進的になくすためのILOの活動に、IPECという技術協力計画がある。これは児童労働問題に対処する各国の努力を支援し、世界的な運動を形成することを目的とする。1992年にドイツ政府の資金協力で始まったIPECは、現在、日本国政府、連合等26の国・団体から資金協力を得、70を超える国で活動を行っている。
IPECは、児童債務奴隷、危険な労働条件下で働く子ども、危険な業務に従事する子ども、12歳以下の幼い子どもや女の子といった特に弱い子どもを優先的な取り組み対象とし、政労使、NGO、その他関係者と協力し、児童労働の防止、危険な仕事から子どもを引き離し、代案を提供すること、児童労働撲滅の経過措置として労働条件を改善することといった多彩な活動に支援を提供する。
第182号条約実施に向けた大きな一歩として、今年の総会では、まず、タンザニア、ネパール、エルサルバドルの3カ国で、10年またはそれ以内に児童労働を撤廃するプログラムを開始することが発表された。
ILO第182号条約批准記念シンポジウムのお知らせ
ILO東京支局は、外務省と共催で、日本が本年6月18日に「最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約(第182号)」を批准したことを記念して、シンポジウムを開催します。児童労働問題に関するさまざまな取り組みについてNGOを含む関係者からご報告いただくとともに、今後の課題についても話し合います。是非ご来場下さい(入場無料)。 | |||||||||
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プログラム◇第1部:ILO第182号条約について ILO児童労働ビデオ上映/解説:第182号条約/パネルディスカッション「条約の意義と日本の人権意識」 ◇第2部:児童労働をなくすための活動 特別講演「児童労働に反対するグローバルマーチ」/報告「児童労働をなくすためのILOの活動」、「フィリピンの観光産業における児童労働廃止活動」、「タイの山岳民族児童への就学支援活動」、「インドの児童労働者問題への関心と学校内外での組織作り」、「日本国内における啓発活動と開発教育」/メッセージ「第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議にむけて」 ◇第3部:私たちの身近にある最悪の形態の児童労働 パネルディスカッション | ||||||||
| 児童労働に関する展示も開催します(入場自由) 期 間 : 2001年9月4〜13日(土日休) 会 場 : 国連大学本部ビル1・2階UNギャラリー 時 間 : 午前10時〜午後5時30分 | |||||||||
去る7月2日、ILO本部のユージニア・ダーテ=バー危機対応・再建国際重点計画部長(ガーナ出身)が、東京の国連大学にて、武力紛争や自然災害などの危機的状況が雇用に与える影響を軽減し、被害にあった人々・地域の再建と持続的な発展を支援するためにILOが果たすべき役割について講演した。ダーテ=バー部長は、6月27〜29日に京都で開催された紛争予防・紛争後復興支援(CPR)ネットワーク会合に出席する目的で来日していた。講演の内容を紹介する。
今日、世界では武力紛争、自然災害、金融・経済危機あるいは社会・政治的変動の影響により、社会経済システムが大きな打撃を受けた地域が多数ある。これらの地域では、雇用機会や所得が失われ、貧困が拡大し、諸制度、労働市場及び社会的保護システムが弱体化し、ディーセント・ワークが脅かされている。このような危機的状況に際し、ILOが蓄積してきた社会経済分野の専門知識と経験を結集し、影響を受けた人々へ迅速な支援を提供するため、1999年10月、危機対応・再建国際重点計画が創設された。ILOはこの計画を通じ、ILO内部における危機に即応できる柔軟性の促進、国連機関など他の国際機関、地域組織あるいは国内機関との協力体制の強化を図る。活動内容は、@調査研究とマニュアル、ガイドライン等の作成、AILO内部及び加盟国政労使の危機対応能力強化、B啓発活動と資金調達、C労働集約的再建事業や訓練・再訓練、地域経済再生事業を含む国別事業計画の策定と実施など、多岐にわたる。
具体的な活動事例を挙げると、例えばコソボでは、国際移住機関(IOM)その他の機関と協力し、コソボ解放軍(KLA)帰還兵士の社会再統合に向けた支援事業を実施したほか、訓練・再訓練、小企業開発等数多くの事業が計画されている。東ティモールでは国連東ティモール暫定統治機構(UNTAET)の要請を受け、訓練・再訓練、労働集約的再建事業等を含む緊急雇用技能訓練再建促進計画が策定された。洪水の被害をうけたモザンビークでは、雇用に配慮した復興計画が策定・実施されている。モザンビークでの活動はイタリア政府、東ティモールでの活動はポルトガル政府から資金援助を得ている。
ダーテ=バー部長は、紛争や天災などの危機に際し実施されている緊急人道支援に持続的な開発効果をもたせるためには、雇用の視点を復興計画の初期の段階から組み入れることが不可欠であり、ILOが復興計画の策定の当初から加わることの重要性を強調すると共に、援助国の理解と支援が必要と訴えた。
参加者からは、危機に対して迅速に対応するための組織作り、他の援助機関と競合しがちな緊急支援でのILOの役割、NGOとの協力関係等について質問が相次ぎ、活気のある講演会となった。
全世界で3,600万人に及ぶエイズウイルス(HIV)感染者中、15〜49歳の労働力人口は2,300万人以上とILOは推計する。感染者の過半数、約1,750万人がアフリカに住むが、ILOの予測では、成人の1割以上がHIVに感染しているサハラ以南アフリカ8カ国(ボツワナ、ケニア、マラウイ、モザンビーク、ナミビア、南アフリカ、ウガンダ、ジンバブエ)では、2020年にはエイズの影響がなかった場合に比べ労働力人口が1〜2割減少する。
エイズの影響は労働力人口の損失に留まらない。エイズを理由に職場で差別を受ける、稼ぎ手を失い女性や子供の生活が困窮し、働く子供が増加する、エイズを患う家族の介護の負担が女性の境遇を悪化させる、教育・訓練・経験が十分でない若者や子供が早くから働き始めることで労働力の質が低下する、保健医療費、訓練費などのコストが増大し、企業収益が低下するなど、その影響は社会経済全般に及ぶ。
エイズは健康上の問題であるのみならず、国の社会経済の発展にとり破壊的な打撃をもたらすとの認識から、ILOでは「社会的ワクチン」を提供すべく、雇用・労働問題に焦点をあて、政労使の協力のもと、予防及び保護のための活動を行っている。2000年6月のILO総会でHIV/エイズ・ハイレベル特別会合を開き、HIV/エイズへの取り組みに関する決議を採択すると共に、国連エイズ合同計画(UNAIDS)と協力枠組み協定を締結した。そして、同分野での活動を強化するため、社会的保護総局の一部門として、「HIV/エイズと労働の世界計画」を設けた。
同計画は次の3つの目標に取り組んでいる。@エイズ問題を抱える男女の職場における基本的権利の保護、Aエイズ差別等に対処する法的枠組みの整備に向けた支援、B企業・使用者団体及び労働者団体を通じたエイズに関する情報・教育の提供と意識向上、予防の促進。
今年5月には、政労使を代表する専門家がジュネーブで9日間にわたる討議を重ね、職場におけるエイズ問題への対応に関する初の国際的ガイドラインとして、「HIV/エイズと労働の世界に関するILO実施基準」を作成した。
この実施基準は、エイズが職場の問題であるとの前提に立って、政府、経営者(団体)及び労働者(団体)の責任と権利を明記し、エイズ問題を抱える労働者の権利保護のためにとるべき行動を示している。差別等の廃絶、男女平等、安全で健康的な労働環境の確保、職場からの排除を目的とした検査の禁止、個人の秘密保持、エイズを理由とした解雇の禁止、予防のための情報提供、教育その他の活動、HIV感染者またはHIVの影響を受けて働く者へのケアとサポートといった原則を盛り込むと同時に、具体的な実践方法を提示している。
去る6月にニューヨークで開催された国連エイズ特別総会には、ソマビアILO事務局長が出席し、「職場におけるHIV/エイズ政策に関する最も広範で包括的な青写真」としてこの基準を発表し、注目を集めた。
さらに詳しい情報は、ILOウェブサイト(http://www.ilo.org/aids)でご覧になれます。
6月22日にジュネーブで開催された第281回ILO理事会では、2001〜02年の新役員が選出された。議長には、ブルキナファソのアラン・ルドビック・トゥ雇用・労働・社会保障相が選出された。トゥ大臣は、ブルキナファソの住宅・都市化大臣(1991〜92年)、厚生大臣(1997〜2000年)も歴任している。
また、使用者側副議長としては、ダニエル・フネス・デ・リオハ・アルゼンチン産業連合社会政策局長が選出された。リオハ局長は、1995〜98年に米州機構使用者側グループの議長を務めている。労働者側副議長は、ウィリアム・ブレット英国労働組合会議総評議員が再任された。
役員の任期は1年で、毎年、6月に改選される。
近い将来、次の会議の開催が予定されている。
▼第13回アジア地域会議(バンコク・8月28〜31日)−アジア地域(アラブ、オセアニア地域を含む)の39加盟国から政労使三者構成の代表団が出席し、地域におけるILOの活動について話し合う。地域会議は地域毎に毎年順番に開かれており、アジアでの開催は、1997年以来4年ぶり。
▼非鉄金属産業安全衛生専門家会議(ジュネーブ・8月28日〜9月4日)−中国、フランス、日本、ノルウェー、ペルー、英国、米国、ザンビアの8カ国及び労使各8名の専門家が出席し、非鉄金属産業の安全衛生に関する実施基準の採択に向け、審議を行う。
| 加盟国数・・・・・・・・・・・・・・・・ | 175 |
| 条約の数・・・・・・・・・・・・・・・・ | 184(うち、撤回5) |
| 勧告の数・・・・・・・・・・・・・・・・ | 192 |
| 加盟国の平均批准数・・・・・・・ | ・40 |
| OECD諸国の平均批准数・・・ | ・67 |
| 日本の批准条約数・・・・・・・・・ | ・45 |
| ジュネーブ便り |
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ジュネーブに着任してから、フランス側の我が家を構え、毎日2回車で国境通過をしている。オフィスまでは6キロしかないのだが、その間にはEU加盟国フランスと非加盟国スイスとの国境がある。着任当初は、国境通過時にパスポートを用意したり、フランス側まで乗り入れているジュネーブのバスに乗ったままで国境を通過しても通常はパスポートのチェックがない、という事実に驚いたりしていた。
ILO本部財務局
松尾 嘉之 |
ILOは、学生の方々に、ILOの政策と実際の活動を知ってもらうことを目的に、1990年にインターンシップ制度を開始し、最近では年間約130名の学部生及び大学院生を受け入れている。
選考の上、インターンは、本人の関心とILO側の必要に応じて最も適当と判断される部局に配属され、通常1ヵ月以上、週40時間あるいは20時間の勤務体制で、研究、データ分析、報告書作成、法律関連文書の起案等の仕事を行う。
応募資格は、雇用、経済学、労働法等ILOが関心を有する分野を専攻する20歳以上35歳未満の学部生あるいは大学院生で英仏西語のいずれかに堪能な者。
締切は、毎年1〜5月の希望者は前年10月1日、6〜8月の希望者は3月1日、9〜12月希望者は6月1日。
その他応募条件・宛先等詳細については、ILO東京支局(пF03-5467-2701)またはILOウェブサイト(http://www.ilo.org/public/english/bureau/pers/vacancy/intern.htm)まで。なお、東京支局でのインターン希望者は、直接支局に応募のこと。
| 論 文 概 要 紹 介 | |
| ジェンダー、女性、 その他全て(第1部) |
ILOの季刊誌「インターナショナル・レイバー・レビュー」誌2000年4号と2001年1号に、「展望」として、フェミニズムやジェンダー研究における議論と調査研究における最近の動向が2回に分けてまとめられている。第1部では、背景として20世紀以降のフェミニズム思想の主な発展が概観される。以下ではその中で特に、開発におけるジェンダーの考え方の変化を紹介する。 |
男女平等の実現に向けた一方的な政策は、男性を排除するばかりでなく、周囲の幅広い制度的条件を無視しているために限界があると多くのフェミニズム研究者が考え始めている。こうした政策の弊害として、女性が仕事と家庭を両立させることの難しさ、男性からの反動、男性の労働市場での地位が低下することで達成される「否定的平等」などが指摘されている。
先進国では、20世紀後半に男女の経済格差が飛躍的に縮小してきたにも関わらず、こうした変化の推進者である女性たちも、手にした機会と自由をより広い社会や経済、政治や人間関係の文脈の中で考え、経験した時に、ある種のジレンマに直面せざるを得ない。
今日の社会と経済は、男女間の存在領域の分離の上に築かれている。しかし、女性が家庭という私的領域から仕事や政治などの公的領域に踏み出しているのに対し、男性の逆方向への動きはそれほどではない。
このいびつな変化の原因と結果は、労働市場の不平等、女性の有償雇用と家族的責任を中心に、数多くの研究にまとめられており、そこで明らかにされた原因に対処する政策は、今後も長く実施される必要があるだろう。しかし、従来の概念や議論の進め方は、特に政策レベルでは目的に反する恐れがある。それは、型にはまったジェンダーの構成概念に則って議論が行われているばかりか、場合によっては実生活における男女間の緊張まで悪化させるからである。さらにこうした議論が、男女の関心が明確に分かれていることを示唆する、あるいはその証拠であると受け取られる傾向がある。男女が分離して生活しているわけでもなく、人々の事情と考えは多様であるため、こうした対立的な論理展開には大きな弊害がある。
学問的な研究が、生物学的に決定される性の一元論から二元論を経て、性(ジェンダー)を構成する諸要素を複合的に見る多元論へと発展していったのと並行して、開発にフェミニズム思想を適用する一連の調査研究が発達した。
1970年代初めまで、女性に関する開発政策は、高度成長モデルに基づく福祉アプローチが主流だった。これはもっぱら女性の人口再生産における役割に注目し、経済活動における生産者としての役割は考慮しないものだった。が、70年代の米国のフェミニズム運動や初の国連女性の10年宣言、途上国の女性の生活調査への関心の高まりに刺激され、考え方の大きな転換が起きた。それが「開発の中の女性(WID)」アプローチであり、80年代半ばまで女性と開発政策の主流となった。この間、政策的な重点は平等から貧困対策、効率とエンパワーメントへと推移している。
80年代の債務危機以来支配的となった「WID効率性」アプローチは、生産者としての女性の役割を考慮しなかったことが資源の非効率的な利用を招いたとの反省にたっている。効率性アプローチは、WID以前の福祉アプローチを駆逐したが、これが進められた動機としては、WIDの中核的な課題である平等を開発援助機関や政府に対して売りこむ必要があったことが指摘される。それによって調査やプロジェクトが、女性のみに焦点を当てることを正当化する狙いがあった。このアプローチは、政策の重点が開発における女性のニーズと関心から、開発が女性に何を期待するかを考える方向に転換するという効果をもたらした。ただし、女性の生産的な役割に焦点を当てたものの、WID効率性アプローチは女性の福祉的な利益や生産と再生産との関係を無視する傾向があった。
WIDの女性を中心とするアプローチのもうひとつの効果として、男性とその役割、男女の力関係もまた見落とされがちであった。女性の従属的立場の分析がWIDアプローチの中心にあったものの、その従属性が本質的に男女間の相互関係に根差したものである点については、全く追究されなかった。このような懸念が次第に蓄積し、またWIDが制度化されてしまうと人々の関心が低くなってきたこととあいまって、戦略的思考の第2の重要な転換が起きた。「ジェンダーと開発(GAD)」の考え方は1980年代初頭から半ばにかけて生まれ、ジェンダー意識を開発政策の主流に同化させ、それによって効率性や資源の分配と平等を改善することを目的としていた。
WIDが女性を分析・事業の対象としてとらえたのに対し、GADはジェンダーの相互関係に注目した。同じ時期の構造調整の中で、新古典派の分析手法を用いてGADはジェンダー分析をプロジェクトレベルからマクロ経済政策立案レベルにまで、効果的に変換することも試みている。
GADの分析枠組みの弱点は、概念化された女性の利益が往々にして女性の自立志向を前提とし、世帯内の複雑な婚姻関係の協力的な側面を十分に考慮しなかったことである。また、世帯全員の利益が一致するという従来の経済的な仮説も当てはまらない。より中間的で均衡のとれた枠組みが必要なことは長く明らかになっていたが、ようやく近年、頻繁に取り上げられるようになってきた。
開発にジェンダーの概念を適用するためには、人間関係に注目し、人々の「社会的なつながり」や「共同性」を十分に考慮することが必要である。また、男性のジェンダー・アイデンティティーと、男性の役割への考察も不可欠であろう。問われているのは開発におけるジェンダーの概念を適用することの可能性と妥当性であるが、この課題への取り組みはすでに始められようとしている。
第2部では、このような取り組みを含め、ジェンダー研究と開発政策における幅広い思考を通じ、ジェンダーと平等の分野における今日の論点を考察する。
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第13回アジア地域会議には、「アジアにおけるディーセント・ワーク」と題する事務局長報告が提出される。報告は、ILOの4戦略目標(国際労働基準及び労働における基本的原則・権利、雇用、社会的保護、社会対話)毎に前回会合(1997年)以降のアジア地域におけるILOの活動を概説すると共に、今後この地域でディーセント・ワーク(権利が保障され、十分な収入を得、適切な社会的保護のある生産的な仕事)を確保する計画の方向性を検討しており、討議のたたき台となる。報告書の要旨は以下の通り。
90年代後半に起こったアジア金融危機はグローバル化に伴う政治、社会、経済面のリスクを露わにした。復興の過程で、特に景気後退時の労働者の保護に関する議論が地域全体で活発化し、社会と経済の両面を統合した政策、諸権利が守られる開発、雇用、社会対話、社会的保護の必要性が認識され、政策面、制度面、意識面で数々の変化がもたらされた。
南アジアやアラブの最貧国では依然貧困が大きな問題となっている。地域の貧困人口は7億人を数えるが、この大半がインフォーマル経済で働いている。フォーマル経済の政策、慣行、規則がほとんど通用しないインフォーマル経済の存在、貧困がもたらす社会的排除の問題は、ディーセント・ワークの目標達成における特別の課題となる。
アジア金融危機は南・東南アジアを中心に、貧困撲滅において達成された成果を無に帰した。全体的な成長の鈍化は、失業及び不完全就業の増加、労働市場形態の変化をもたらした。社会的保護は全く存在しないか、限定的であるか、あるいは縮小され、労働者とその家族に深刻な影響を与えている。韓国やタイのように、全国民の保護をめざした包括的な社会保障政策を通じ、バランスの取れた社会開発と経済開発を図ることの重要性を認識するようになった国もあるが、ほとんどの国で、社会支出は国際的な基準からは低く、GDPの10%にも達しない。
労働者の基本権に関する意識は高まってきたものの、結社の自由がまだ認められていない国もあれば、強制労働が問題になっているミャンマーのような国もある。ネパールを含む幾つかの国では、児童労働をなくすことをめざす計画が開始されたが、南アジアを中心にこの問題は依然大きい。
アジアは多様性を特徴とする。従って、ディーセント・ワークの目標と計画は国の事情によって異なるものとなろう。アジアでディーセント・ワークの不足に取り組むには、各側面に個別に取り組むのではなく、統合的なアプローチが求められる。アジア金融危機によって、ディーセント・ワークの不足に対処するには社会対話の強化が必要不可欠であることがはっきりした。しかし、労組組織率の低下、団体交渉よりも個別交渉を好む風潮、従来型の労使交渉になじまない弾力的な雇用形態の発生など、地域で社会対話を完全に実現するための道のりは長い。
中心的な課題は雇用創出であるが、これは安全かつ健全な労働環境、社会的保護と経済保障、自分たちの労働と生活に影響を与える決定における代表性と発言権、労働における権利の尊重を伴うものでなくてはならない。これには政労使その他広範囲にわたる関係者の共同作業が必要であるが、ILOはそのための支援を提供する用意がある。
報告書の原文はILOのウェブサイト(http://www.ilo.org/public/english/region/asro/bangkok/arm/report.htm)でご覧ください。