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ILOジャーナル2000年7・8月号目次

ILOジャーナル2000年7・8月号目次

第88回ILO総会(ジュネーブ・2000年5月30日〜6月15日)閉幕
日本、第138号条約批准(2000年6月5日)
第278回ILO理事会(ジュネーブ・2000年6月16日)
国際労使関係協会(IIRA)第12回世界会議(東京・2000年5月29日〜6月1日)
OSH−MSガイドライン講演会(東京・2000年6月30日)
ILOエイズ報告書
世界労働報告2000年版「変動する世界における所得保障と社会的保護」
ILOの現勢(2000年7月1日現在)
ジュネーブ便り:隣国フランスでの出来事...(ILO本部平等・雇用部 堀井 由紀)
ILO関係者往来(2000年6月)
ILO求人情報
論文概要紹介:International Labour Review 1999年版総目次
新刊紹介:協同組合の独自性と運営&職場からの声他広告

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ILOジャーナル2000年7・8月号

新母性保護条約・勧告を採択
第88回ILO総会閉幕
ミャンマー強制労働猶予付決議採択

 5月30日から6月15日までジュネーブで開催された第88回ILO総会は、結社の自由と団体交渉権に関する初のグローバル・レポート討議、新母性保護条約・勧告の採択、ILO憲章第33条に基づく対ミャンマー制裁措置決議の採択(発動は11月30日まで凍結)、未発効5条約の撤回、HIV/エイズ特別会合の開催及び同決議の採択等、2000年総会にふさわしい成果をあげて閉幕した。
第88回総会に臨む日本代表団。前列左から伊藤労働者代表、原口政府代表、岩田政府代表、奥田使用者代表の各氏
第88回ILO総会に臨む日本代表団写真

 今総会は、175の加盟国中159ヵ国が参加、政労使代表・顧問など参加者総数は3,115名であった。日本の代表団は総勢40名、ビジティング・ミニスターとして伊藤庄平労働事務次官が出席した。
 議長にはアルゼンチンのフラマリケ労働・訓練・人的資源大臣、政労使を代表する副議長に米国のムーアヘッド使用者代表、ガーナのアギエイ労働者代表、スロバキアのバウアー政府代表が選出された。
 ゲスト・スピーカーとして招かれたポルトガルのサンパイオ大統領は、6月5日本会議の冒頭、金融のグローバル化、ビジネスの国際化、情報技術の発達が社会・労働にもらたす影響をテーマとする演説を行った。同日、ソマビア事務局長も演説し、「子供を教育し、家族が健康で安全に暮らせる仕事をもち、引退後は年金で生活する」という人々の期待に表わされる「ディーセント・ワーク」を、異なる文化社会の中でそれぞれに実現すべく、ILO活動の中心に据えて展開していくことが重要と訴えた。
 以下、主な成果を報告する。

グローバル・レポート初審議

 第1議題「理事会議長及び事務局長報告」については、それぞれの報告をもとにILOの活動全般に関し、政労使が意見を述べた。
 1998年の労働の基本的原則・権利宣言採択以来初のフォローアップとして注目されたグローバル・レポート「Your Voice at Work(職場からの声)」に関する討議は、6月6日の本会議で行われた。政労使あわせて77名にのぼる代表が意見を述べ、◆今後の技術協力優先分野を決定する際の基礎資料という目的に照らすと、今回のレポートは条約の法的側面からの分析が強すぎる、◆結社の自由委員会等他の監視機構のデータ引用、違反事例の国名明記は監視機構の二重化である、◆ポーランド等基本的原則の促進を支援するILO活動事例は、それぞれの状況にあった解決策の必要性を示して有益、◆該当する基本条約未批准国のうち33%(17ヵ国)が年次報告を提出しなかったことは遺憾等の意見が出された。
 今回のグローバル・レポートについては、意見交換のための双方向性の討議が意図されたが、実際には、代表それぞれの意見表明に終わった。事務局長報告の議論もあわせ、本会議における討議のあり方について、事務局は、その有効性を真摯に考えるべきとの声もあがっている。

2001年分担率決定

 第2議題の予算・財政関連では、1998/99年の剰余金2,500万米ドルを、例外措置として「情報技術システム基金」の設立に充てること、2001年の加盟国分担率は、財政委員会の原案通り(日本は2000年と同様の20.26%)とすること等が決められた。

基準適用

 第3議題「条約・勧告の適用に関する情報と報告」の一般討議においては、条約勧告適用専門家委員会の一般報告及び三者協議(国際労働基準)条約(第144号)及び同勧告(第152号)の総合調査報告について審議された。一般報告では、強制労働条約(第29号)に関連し、民間刑務所内の受刑者労働が問題になり、来年の専門家委員会で詳細に検討されることとなった。第144号条約に関しては、この優先条約の批准が進んでいることが歓迎され、さらなる批准・適用の推進が求められた。
 個別審査については、24の個別案件が取り上げられた。特に問題のある案件として、スーダンの強制労働問題、カメルーンとベネズエラの結社の自由問題がスペシャル・パラグラフに特記された。

母性保護新基準採択

 第4議題の母性保護改正条約(第103号)及び同勧告(第95号)の改正については、総会の最終日、新母性保護条約が賛成304、反対22、棄権116、同勧告が賛成315、反対16、棄権108の投票をもって採択された。日本は条約、勧告共に労働側は賛成、政府・使用者側は棄権した。
 今回の改正は、1952年に採択された第103号条約の批准が39ヵ国と低水準に留まっているため、批准しやすい弾力性をもたせると同時に、ディーセント・ワークを実現する上でも重要な今日の社会的要請に応える高水準の保護を保障するという二重の目的をもち、委員会での改正作業はきわめて密度の濃い困難なものとなった。
 採択された条約は、「不定型な仕事に就く者を含むすべての雇用される女性」に適用され、新たに「母子の健康保護」に関する規定(妊娠・哺育中の女性を、健康を損なう危険のある業務に就かせない)が含まれた。
 出産休暇は最低14週間に延長され(第103号条約は12週間)、6週間の強制的な産後休暇を含む。妊娠・出産にかかわる疾病や併発症の場合には休暇が延長される。休業中の金銭給付水準は、従前所得を計算根拠とする場合、その所得または給付計算のために考慮される所得の3分の2以上とされるが、同水準に満たない場合でも、国内法で定める疾病または一時的障害に対する給付率を下回らない給付が支給されている場合には、この規定を満たすものとされた。
 雇用保障については、妊娠、出産休暇または国内法が定める復帰後の期間中に、使用者が雇用を終了することは、妊娠・出産・育児以外の理由である場合を除き違法とされ、解雇理由が母性とは無関係であることを証明する挙証責任は使用者にあるとされた。また、出産休暇後の職場復帰については、同等の職に従前の給与で戻れることを保障している。
 差別の禁止に関しては、妊娠・育児中の女性の就業を禁止・制限する職業や健康を損なう危険のある場合を除き、求人に応募した女性に妊娠テストを課したり、証明書の提出を求めたりすることを禁じている。また特定期間、1日1回以上の哺乳時間を付与し、これを労働時間とみなすこととした。
 勧告は条約を補足し、出産休暇の期間延長など推奨される措置等を具体的に規定する。

人材開発と訓練

 第5議題「人材開発と訓練」では、人的資源開発勧告(第150号)の一般討議が行われ、人材開発と訓練が経済発展、完全雇用の達成、社会統合の推進に寄与すること、人材開発予算拡充に向け、債務帳消し・軽減イニシアチブが必要なこと等が強調され、誰もが教育と訓練を受けられる権利の確保、全国的資格認証枠組みの開発、政府は個人や企業が個別あるいは共同で教育訓練に投資することを奨励するような一般的環境・イニシアチブ形成に努めること等が求められた。また、訓練における新しいアプローチを反映する方向で第150号勧告を改正するよう勧奨された。新勧告は、随時改訂される実務ガイド及びデータベースに補足されることも求められた。

農業における安全衛生

 第6議題に関しては、第1次討議の結果、来年の総会で、農業の安全衛生に関する条約・勧告の採択に向けた第2次討議が行われることとなった。基準は、自営農家を含むすべての農業労働者を対象とし、農業の環境に対する影響にも触れたものとなることが提案された。提案される基準案は、農業の安全衛生に関する国内政策策定の枠組みとなるものと見込まれる。危険評価・危険管理、機械の安全と人間工学に関する予防・防護措置、原材料の運搬と取り扱い、化学薬品管理、家畜の取り扱い、農業施設の建設と維持、若年労働者と児童労働、臨時・季節労働者と自営農家、疾病・傷害保険、福利、居住施設等に関する規定が盛り込まれる予定である。

5条約の初撤回

 第7議題に関しては、1930年代の採択以来発効していない5条約(労働時間に関する第31号、第46号、第51号、第61号及び移民労働者に関する第66号の各条約)が賛成421、反対9、棄権2票で撤回された(日本は政労使とも賛成)。条約の撤回はILO史上初のことであり、ILO条約の近代化を図り、その有効性を高め、基準設定活動の合理化を実現する上で極めて有意義な第一歩と考えられる。

ミャンマー決議採択

 第8議題に関しては、「ILO憲章第33条に基づき理事会が勧告した対ミャンマー措置に関する決議」が、6月14日、賛成257、反対41、棄権31票で採択された。日本は労使は賛成、政府は反対に回った。
 ミャンマーの強制労働条約(第29号)違反については、1998年に審査委員会が、@第29号条約に違反する条項を含む村・町法等を1999年5月1日までに改正する、A強制労働の廃止を行政命令の公布により実行する、Bこれに違反し強制労働を科した者には刑法を適用して処罰する、ことを勧告した。事態の改善が見られないため、昨年の総会で、審査委員会勧告の即時実施を支援するものを除き、ILOはミャンマー政府に技術協力・支援を行わないとする決議が採択された。
 その後、ILO・ミャンマー間での数度の書簡交換を経て、総会直前の5月23〜27日、モーパン事務局長特別顧問ら3名(随行2名)からなるILO技術協力ミッションがヤンゴンを訪れ、労働、内務、外務大臣をはじめ、法務庁、最高裁、国家平和開発評議会、国民民主連盟の代表らと会談し、審査委員会勧告の実施について討議した。これを受けて、5月27日付でミャンマーは事務局長宛に労働大臣名で書簡を送り、同国は強制労働をなくすための措置を講じており、将来の発生を確実に予防する立法・行政・司法措置を考慮する旨を伝えた。
 このような状況を背景に行われた総会選考委員会の議論であったが、「強制労働の実態は変わっていない」とする西欧諸国などの意見は強く、理事会が勧告した制裁措置が決議された。
 これにより、今年11月30日までに同国が審査委員会の勧告実施のための具体的な立法・行政・司法措置をとらない場合には、@ミャンマー問題を、将来もILO総会及び基準適用委員会の特別セッションで審議する、AILO加盟国の政労使がミャンマーとの関係を見直し、同国の強制労働制度が助長されないよう適切な措置を講じて理事会に報告する、BILOと関係のある国際機関にミャンマーへの支援を見直し、強制労働を直接・間接に認めるような活動を直ちに停止するよう働きかける、C国連の経済社会理事会に、この問題を2001年7月の議題とし、同理事会あるいは国連総会による勧告の採択を働きかける、D事務局長は上記措置の結果を定期的に理事会に報告するという措置を発動する。また、ILOは、期限までにミャンマーが必要な枠組みを確立できるよう同国の要請に積極的に対応することとなった。
 採択に先立ち、インドネシア等一部アセアン諸国は、「最近の対話姿勢を評価して、理事会の提案措置を見直し、勧告実施のための支援をミャンマーに提供する」旨の改正決議案を総会に提出したが、反対多数で否決された。
 決議採択後、日本政府代表の原口大使は、「ミャンマーを孤立させることなく、今年11月の期限までに、対話と支援を通じて、同国の強制労働をなくす措置を実現することが重要」との発言を行った。

HIV/エイズ

 6月8日午前、エイズウイルス(HIV)/エイズ特別会合が開かれた。南アフリカのエイズ女性感染者ネットワークの創始者マカーリメリ女史(エイズで夫と幼子を亡くし、自身もエイズに感染しながら子供を育て、NGO活動に従事)が、職場を追われ、困窮をきわめている感染者の窮状を訴えた後、国連エイズ合同計画(UNAIDS)のピオット事務局長が職場でのエイズ問題に取り組むことの重要性を強調した。続いて、エイズ禍に苦しむナミビアのヌジョマ大統領が、エイズを殺戮化学兵器を作る過程で生じた人災であるとし、関連諸国をはじめ、国連、人類が資金を出し合って解決する必要性を唱えた。最後に、ILOとUNAIDSの事務局長が、両機関の協力枠組み協定に署名した。
 この他に、議題外決議として、ILO加盟国と事務局が職場でのエイズ問題に取り組む決議が採択された。


6月5日
日本、最低年齢条約批准
批准総数44に

 去る6月5日、ILO総会出席のためジュネーブを訪れていた伊藤庄平労働事務次官は、1973年に採択された就業が認められるための最低年齢に関する条約(第138号)の批准書をソマビア事務局長に寄託した(発効は批准書寄託日から1年後の2001年6月5日)。同条約の批准は5月11日に国会で承認されている。これによって日本の批准するILO条約の総数は44になった。
 児童労働問題に対する世界的関心が高まっている中、児童労働の廃止を達成するための国際的な取り組みを推進するとの見地から有意義であるとの認識から、労働基準法の関連規定(最低年齢規定)改正を経て、日本はこの条約の批准に踏み切った。
 過去に採択された複数の産業別最低年齢条約を改正し、一般的な適用を目指した第138号条約は、基本条約の1つに数えられ、ILOでは全加盟国による批准達成に向けたキャンペーンを進めている。日本は、1976年に発効した同条約の92番目の批准国となった(批准国総数は7月20日現在で96カ国)。
 第138号条約は18条(うち11条は最終条項)からなり、原則として15歳及び義務教育終了年齢に達していない者の就業を禁止する。条約の批准によって、日本が既に批准している次の産業別最低年齢条約は即時に廃棄される。最低年齢(工業)条約(第5号)、最低年齢(海上)条約(第7号)、最低年齢(農業)条約(第10号)、最低年齢(石炭夫及び火夫)条約(第15号)、最低年齢(海上)改正条約(第58号)。
 第138号条約とこれを補足する同名の勧告(第146号)の概要は次の通り。
 批准国は児童労働の実効的な廃止の確保及び就業が認められるための最低年齢を年少者の心身の十分な発達が確保される水準まで漸進的に引き上げることを目的とする国内政策の遂行を約束する(第1条)。批准国は、批准に際して付す宣言において、この就業最低年齢を明示することになっており(第2条)、日本は15歳と明示した。最低年齢は、義務教育が終了する年齢を下回ってはならず、いかなる場合にも15歳を下回ってはならない。一定の要件を満たす軽労働については、13歳以上15歳未満の就業も認めることができる(第7条)。経済及び教育施設が十分に発達していない加盟国は、関係労使団体と協議の上、最低年齢を14歳、軽労働については12歳以上14歳未満とすることができる。年少者の健康、安全、道徳を損なうおそれのある業務またはそのようなおそれのある状況下で行われる業務については、最低年齢は18歳を下回ってはならない(第3条)。ただし、特定の条件を満たせば16歳からの就業も認められる。
 条約は特定業務に関する適用除外を認める(第4・5条)。また、学校・訓練施設で児童が行う労働、または企業において14歳以上の者が権限のある機関が定める条件に従って行う労働であって、教育・訓練・職業指導の課程の不可分の一部であるものについては適用しない(第6条)。芸術的な演劇への出演その他これに類する就業については、個々の事案について許可書を与えて例外を認めることができる(第8条)。許可書には労働時間数と条件も定める。
 権限のある機関は、条約の効果的な実施を確保するため、全ての必要な措置をとる(第9条)。これには条約規定の遵守について責任を負う者、使用者が保管し、利用に供すべき18歳未満の労働者に関する名簿について定めることが含まれる。
 勧告は条約を補足し、国内政策、最低年齢、危険な業務、就業の条件、実施に関し、条約適用の助けとなる具体的な事項を定める。


第278回ILO理事会
コロンビア特別代表で組合の権利監視

 総会直後の6月16日にジュネーブで開催された第278回理事会では、2000〜01年の1年間の議長としてブラジルのセウソ・L・ヌネス・アモリン駐ジュネーブ大使を選出した。副議長は昨年と変わらず、使用者側はドイツ使用者連盟のロルフ・チュージング理事、労働者側は英国労働組合会議のウィリアム・ブレット総評議員が再任された。ブラジルの外務大臣(1993〜94年)を経て、1995年より国連及び世界貿易機関(WTO)常駐代表としてジュネーブに駐在するヌネス・アモリン大使は、1999年1月に国連安全保障理事会の議長を務めたこともある。
 理事会はソマビアILO事務局長に対し、過去10年にわたり組合活動家に対する暴力の広がりが指摘されてきたコロンビアに関し、今年2月に派遣された直接接触ミッションの報告を受け、ILOの基準適用監視機構の勧告を政労使が実行することを支援し、取られた行動を確認する特別代表の任命を要請した。特別代表は労働組合の権利と組合活動家の安全に影響する同国の一般情勢とILO監視機構が行った提言の実行において達成された進展を事務局長を通じて理事会に報告することになる。2月のミッション報告書によれば、コロンビアでは準軍事組織、ゲリラ集団、公安勢力による組合リーダー及び組合員の殺害、誘拐、脅迫、その他暴力行為が広く見られ、政府記録によるだけでも1991〜99年の期間で593人が殺害されたとされる。
 理事会の結社の自由委員会では、この他に、国際自由労連(ICFTU)より出された中国の労組活動家に対する暴行・拘留、独立労働組合の結成または労働者の利益擁護活動を試みた者の投獄に関する申立が審議された。委員会は、同国の労働組合法は組合結成や組合活動の自由等に関する基本的原則に反する規定を含むと指摘した上で、政府に対し、組合活動家の即時釈放を確保する必要な措置を講じるよう求め、直接接触ミッションの受け入れ可能性を打診した。
 今回取り上げられることになっていたJR不採用問題に関する国労と全動労の申立は、新たな情報提供があったため、11月に先送りされた。
 また理事会は、条約勧告適用専門家委員として山口俊夫東京大学名誉教授の再任を承認した。1991年に着任した山口教授は、これで2002年までの3年間、4期目の任期を務めることとなる。


国際労使関係協会世界会議日本で開催

□IIRA第12回世界会議

 国際労使関係協会(IIRA)の第12回世界会議が、5月29日から6月1日まで東京・新宿の京王プラザホテル等の会場において開催された。同会議が日本で開かれたのは1983年以来13年ぶりで、世界約60カ国から約1,100名が参加した。ILO本部その他事務所からも10名を超える職員が参加した。
 世界会議のテーマは「21世紀の労使関係、人的資源管理の課題」であった。5つの全体会議(トラック)のテーマとして次のものが設定された。@21世紀の雇用関係と新たな労働のあり方を探るA国別、地域別雇用・労使関係システムへのグローバル化の影響B変化する労働者参加・代表制−新しい労使関係システムへの模索C柔軟性、公平性および繁栄を求めて−21世紀の雇用政策の選択肢D21世紀のアジア−労働の課題と可能性。各トラックごとに3つのワークショップが開かれた。また、それとは別に15のスペシャル・セミナーも開かれた。
 次回の世界会議は2003年にベルリンで開かれる予定である。

□ILO/JILネットワーク・プロジェクト

 IIRA会議と同時に、ILOと日本労働研究機構(JIL)が共同実施している「アジア労働問題研究機関ネットワーク・プロジェクト」の全研究機関が集う技術会議が、5月29日に京王プラザホテルで開催された。会議にはオーストラリア、中国、インド、インドネシア、韓国、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナム、日本の参加研究機関の代表者が出席した。
 また、本ネットワークは5月31日に「アジア諸国におけるグローバリゼーションの影響とそれへの対応」と題するIIRA会議のスペシャル・セミナーを開催した。
 本プロジェクトはアジア各国の労働問題研究機関の政策提言能力育成と、研究機関相互の情報提供と交換を目的に1994年に開始された。現在までグローバル化に関する3つの課題の共同研究を行ってきた。これらの課題は、@グローバル化がアジアの労働面に及ぼす影響A公正なグローバル化―成長のための政策Bグローバル化における社会調整―社会構成員の役割である。今回は、第3課題の各国報告と質疑、3本の課題の総括が行われた。また、各国における政策と研究の関係についても報告された。
 ネットワーク事業は今後も継続が予定されている。次回の共同研究課題としては、「情報経済と労働市場の課題」をテーマとすることが合意された。また、ウェブサイトによるネットワークの情報提供活動も進める予定である。


OSH−MSガイドラインILO講演会

 ILOのユッカ・タカラ安全労働国際重点計画部長は、中央労働災害防止協会主催の「ILOにおけるOSH−MSガイドラインについて」をテーマとする講演会に講師として出席した。
 講演会は、6月30日14時から17時半の間、東京・港区の女性と仕事の未来館四階ホールで開催され、参加希望者は定員250名を上回る盛況であった。

□講演の概要

 1996年の国際標準化機構(ISO)会議において、労働安全衛生管理システム(OSHMS)の基準の制定は、ILOが行うべきであるとの意見が大勢を占め、1999年のILO理事会、総会において2000/2001年度中のOSHMSに関する事業実施が決定された。
 しかしながら、1999年末にイギリス規格協会(BSI)は、ISOに対し、OSHMSの規格制定の提案を行った。2000年4月、BSIの提案はISO内部の投票の結果、十分な支持が得られず、ISOは、これを断念することとなった。
 ILOは、現在、OSHMSの1次案を作成し、7月6〜7日に日本、ドイツ、イギリスの政府各1名及び労(ICFTU)、使(モトローラ社)各1名、計5人の専門家小委員会で検討を行う。
 ILOは、2次案を今年9月までにとりまとめ、それをインターネット上で公開し、最終案を今年12月までに公表、2001年4月に専門家会合を開き検討の上、同年6月のILO理事会においてガイドラインの出版を承認する予定である。

□主要質疑

 日本の高い関心を反映し、ILOガイドラインの性格等多数の質問が出された。日経連等経営者団体からは、ガイドラインが柔軟性があり、非認証型で、日本の指針を反映したものになるかとの質問があり、タカラ部長は考慮する旨約した。


ILOエイズ報告書労使への悲惨な影響を警告

 総会会期中に開催された労働の世界におけるエイズ・エイズウイルス(HIV)問題を話し合うハイレベル特別会合に会議資料として提出された報告書「HIV・エイズ−人間的な労働、生産性、開発に対する脅威(英文・49頁)」は、エイズを原因として20年後には労働者数が一部諸国だけでも約2,400万人少なくなるとし、問題の深刻さを指摘した上で、政労使による緊急対応を呼びかけた。
 エイズ禍が最も深刻なサハラ以南アフリカ地域では、8カ国で成人人口の1割以上がHIVに感染している。HIV・エイズの蔓延は未亡人や孤児を増加させ、児童労働の増大、エイズ患者の早期引退、経済的な理由による女性・高齢労働者の増大を引き起こす。企業にとっても保健医療費・葬式代・訓練費・求人費等コストの増大と病欠や看護休暇の増大による収益の低下をもたらしている。
 ILOは国連合同エイズ計画(UNAIDS)と協力枠組み条約を締結し、予防・支援活動を強化する。報告書は政労使がとりうるエイズ対策として、予防の重要性に関する啓発活動、患者・感染者の保護・支援、労使を対象とした予防・保護計画の開発、データ収集・分析、法整備・政策立案等を提案する。
 報告書の全文及びその他エイズ関連情報はILOのウェッブサイト上に掲載されている。


世界労働報告2000年版
より良い社会保障に向けて

 去る6月21日に発表されたILOの定期刊行物「世界労働報告」2000年版(英文・321頁・4,500円)は「変動する世界における所得保障と社会的保護」を副題に、社会保障の現状と問題を、それを取り巻く環境を含み包括的に取り上げ、将来の道筋を示す。報告書の要旨を以下に紹介する。

 グローバル化と貿易自由化の進展は多くの所得稼得者をますます不安定な状態に陥れている。報告書は第1部で所得保障を取り巻く環境の変化を扱う。第2部では、世界各地の詳細なデータをもとに、高齢、労働不能、出産・育児、失業の際に、所得の支援、補完、代替を行う社会的保護の貴重な役割を吟味する。保健医療の問題も扱われる。第3部で将来のニーズと展望を示す。
 報告書は「社会保障(social security)」と「社会的保護(social protection)」の2つの用語を用いるが、ここでの定義は以下の通りである。
 社会保障は、@ILOの社会保障(最低基準)条約(第102号)に規定されるような不測事態(特に疾病、出産、業務傷害、失業、労働不能、高齢、主たる稼得者の死亡)を原因とする勤労所得の消失または大幅な減少を相殺するため、A人々に保健医療を提供するため、そしてB子どものいる世帯に給付を提供するため、社会がその構成員に一連の公的措置を通じて提供する保護と定義される。社会保険(拠出型制度)、社会扶助(低所得者のみを対象に提供される税を財源とする給付)、普遍的給付(所得調査または資力調査なしに支給される税を財源とする給付)が含まれる。
 社会的保護は、公的社会保障制度に加え、共済組合や企業年金のように同種の目的を持つ私的制度または法によらない制度を含む。拠出金が完全に市場原理で決定されるものでない限り、フォーマル、インフォーマルの別なくあらゆる私的な制度が含まれる。

□取り巻く環境の変化

 過去わずか5年のうちに極貧状態にある人々の数が世界全体で2億人増加した。この大半がサハラ以南アフリカ、中央アジア、東欧、東南アジアに住む。世界の大半の国で総合的な豊かさ水準が高まっているにもかかわらず、所得保障に逆の影響を与える人口及び家族構造の変化と労働市場の変化が進行しつつある。
 大半の途上国で伝統的に所得保障の責任を担ってきた家族の形態が変化した。核家族化が進み、出生率は低下し、離婚率と片親家庭の割合が急増した。途上国では、配偶者のいない女性を世帯主とする家族が全体の約20%以上を占める。一部先進国では、この30年間に離婚率が最大5倍(カナダ、英国)に急増し、シングルマザーが育てる子どもの数は最大6倍になった。児童労働の一因でもある児童の貧困率は60年代半ばから90年代半ばにかけて急上昇した(図1)。社会保障給付を受給していたとしても、オーストラリア、米国等では、シングルマザーを世帯主とする家庭が貧困になる確率は、両親が揃っている家庭の3倍に達する。一方、出生率の低下は、途上国における学齢期人口も低下させるため、皆民初等教育を確立し、教育の質を高めるまたとない機会でもある。
1990年代の児童の貧困率グラフ 高齢者の依存人口比率の上昇は当然、長期的には年金制度に影響する。しかし、年金財政は、現役拠出者数に直接関係する労働力率と制度加入者比率によっても左右される。世界的な出生率の低下は、女性の労働市場進出を促し、高齢者の労働力率も引き上げる見込みが高い。本質的な問題は人口問題ではなく経済的な問題であり、労働意欲があり労働能力を備えたすべての人々にいかにして雇用を確保するかということである。
 世界の労働力の3分の1、約10億人が失業中か、不完全就業状態にある。若者と長期失業者に対する給付が低いか、存在しないという事実にも関わらず、大半の国では若者の失業率が成人の2〜3倍に達し、長期失業者が失業者全体に占める割合が現在、70年代よりずっと高くなっている。
 雇用構造の変化の内容は全世界一律ではない。日本、オランダ等多くの国で、自営業者の割合が20年前より激減したが、米国等では横這い、移行経済諸国等では増加した。新しい自営業者の一部は、賃金や給与からの税及び社会保障拠出金の源泉徴収を避ける手段として考案された、姿を変えた賃金労働者である。この種の労働者は社会保障の適用対象でない場合が多く、企業年金等も利用できず、雇用保護法制も適用されず、通常、労働組合もなく、企業と個人で交渉しなくてはならない。パートタイム雇用、派遣雇用、臨時雇用、家内労働、テレワーキング等の雇用も増えつつある。これらは大半が、何らかの点で、企業内で働くフルタイムの正規従業員よりも所得保障が低い傾向がある。
 社会的保護は20世紀最後の4半世紀において大部分の国の経済でますます大きな役割を演じるようになってきた。アフリカと中南米を中心に例外も見られるが、社会保障支出のGDP比は大半の国で上昇した。最も急上昇が見込まれるのは高齢化が急速に進む日本で、2050年には27%になると予測される(1990年は12.4%)。これは西欧諸国(33.4%)よりはまだ低いものの北米諸国(17.9%)を大幅に上回る。既存の仕組みと政策が維持されるとすれば、50年後のOECD諸国の社会保障支出増加分は実質所得の伸びの約20%に相当すると見積もられる(図2)。
1990年から2050年の先進諸国の社会保障支出GDP比予想 社会保障支出の経済的影響については、通常はコスト面、例えば失業の長期化といった潜在的な悪影響が注目されてきた。しかし、社会的保護は特に給付を通じ、経済にプラスの影響も与える。良く設計された社会的保護制度は適切に組織された市場経済に必要な要素であり、プラスの経済的な役割として、構造変化を推進する。他方、特に旧ソ連諸国に見られたように、企業給付のようなある種の社会的保護は、労働力移動を妨げる場合がある。
 グローバル化は社会的保護にとって重要な意味を持つ。経済開放が進んでいる国は、社会保障支出も高いことを示す研究がある。しかし、最近、GDP比貿易高の上昇と社会保障支出の削減にある種の相関関係があることが見いだされており、これはグローバル化が、国の社会的保護財政をますます厳しくしていることを推測させる。
 拠出金の上昇は、少なくとも長期的には、賃下げの形で労働者に跳ね返ると考える経済学者が多いが、国際比較の結果はこの説を裏付ける傾向がある。例えば、支払給与税が極端に低いデンマークの労働費用総額が、支払給与税がかなり高いフランスの労働費用総額より低いということは決してない。しかし、短期的には社会保障拠出の使用者負担増は労働費用を引き上げ、負担減は労働費用を引き下げる。社会保障拠出は長期的に失業問題に影響しないことを推測させる研究も最近発表された。
 グローバル化は国際資本移動に最も大きな影響を与えた。市場の規制緩和と情報技術の導入は、特に海外の年金基金及びミューチュアル・ファンドといった短期資金が新興市場になだれ込むのを推進した。多くの識者はこの移り気な資金の流れが最近の金融危機の主要因であったと判断している。金融界が描く年金改革は、主要先進国の1国しか事前積立方式に転換しなかったとしても、これらの基金が地球レベルで大きく広がることを意味する。

□社会的保護の既存メカニズム

保健医療制度は2つの点で所得保障に影響する。労働者が十分な予防医療及び治療の利用を通じ、生計を得られるほど健康であることを確保すること、そして、多額で予測不能な保健医療費用が個々の家計に大きな負担をかけないよう確保することである。保健医療は全ての人々にとって重要であるが、多数の途上国では特に、多くの労働者、特に正規賃金雇用以外の労働者には満足できる保護が提供されていない。公的保健事業への支出を激減させた構造調整計画によって、この状況はさらに悪化した。
 ベニン、インド、トーゴ等世界の多くで保健医療用の少額保険制度が開発されつつあり、これ以外の保護を受けていない人々にリスク・プーリングの恩恵をもたらした。現在の所、政府、NGO、そしてILOのような国際機関の支援を受けて進められているこれらの制度の成功は、対象集団の規模とどの程度ネットワーク化できるかにかかっている。
 保健医療の財源としては、税、社会健康保険のような保険形式、医療貯蓄勘定のような保険以外の積立形式があげられる。近年、保健医療費の抑制が大きな課題となり、保健医療部門への市場原理の導入、適正な人々が適正な額の医療費を消費することを確保する規制管理またはサービスと商品の価格規制の二つの方向で改革が推進されつつある。

労働不能時の社会的保護には@短期的な疾病給付、A長期的な障害給付・年金、B労働災害や職業性疾病を対象とする特別給付、C職場復帰に向けたリハビリテーション措置があげられる。労働不能時の社会的保護は賃金労働者に限らず、自営業者も含み、働いて生計を立てている全ての人々に関係があるが、自営業者の多くは労働不能時に依存できる資金がほとんどない。基本的に大企業の被用者や公務員は、疾病時にも給与を全額受領できる制度を備える。しかし、労働市場の柔軟性の高まりは、一部先進国において、社会保障の疾病給付(通常、平均所得の50%以下)にさえカバーされていない労働者数の増加をもたらしている。多くの途上国では労働力の大半に労働不能時の社会保障が全く提供されていない。
 所得代替給付は重要であるが、とても十分とは言えない状態にある。究極の目標である労働者の健康と稼得力の回復には、良質の労働衛生サービスとリハビリテーション制度が求められるが、先進国を含み、たいていの国でこれはまだ非常に未発達の状態にある。幾つかの国で障害を理由とした早期引退者数が増えている事実は、これらのサービスや制度、そして労働者の再就業に一層重点を置く緊急の必要があることを推測させる。しかし、障害給付と失業問題に関する研究は、失業者に対する保護が不十分で、障害者に対する保護が十分な場合発生する各種の問題を指摘する。

▼年金制度が最近樹立されたばかりで保健医療の方がまだ規模が大きい途上国は唯一の例外であるが、老齢及び遺族年金はほとんど常に社会的保護制度の中で最も費用がかかる。カリブ諸国、インド等、最低限の所得が提供されている少数の国を除き、多くの途上国では、高齢者の大半が何の年金も受けていない。先進国では、20世紀を通じて状況が劇的に変化し、貧困の原因から高齢をほとんど駆逐するまでになった。しかし、非労働力であった、あるいは年金受給資格のない雇用に従事していた女性が離婚すると、老後の備えがほとんどなくなるなど、一部人口集団、特に女性高齢者の不安定性が問題となっている国も依然ある。
 途上国の公的年金はしばしば一般政府歳入を財源とするが、この種の年金は給付が一律で非常に低い。そこで、たいていの国では被保険者自身、そして適切な場合には事業主が支払う拠出金を財源とする。拠出型年金は様々な形態をとる。最も一般的なのは各種のリスクのプーリングとある程度の垂直所得再分配を可能とする社会保険である。一方、老後のための共済基金のような強制退職貯蓄制度(チリ等)では、年金受給者自身が大半のリスクを負担し、勤労時の不平等が老後まで継続する。強制退職貯蓄は将来受給する年金の低さを考えず、当座の年金費用の縮小または抑制を希望する人々にとっては魅力的であるが、このような年金は将来予測が不可能であるため、労働者や年金生活者に推奨できない。
 途上国における妥当な年金資金調達方法は、掛率を最初は低水準に設定し、長期にわたり徐々に上げていく社会保険方式であろう。社会保険はまた、制度導入時に、一定年齢以上の労働者に対する経過措置として、比較的短期間で年金支払いを開始するように設定できる利点もある。厳密な保険数理予測を通じて、これらの措置の長期的な財政的意味合いを明確にすることが必須である。
 政府は労働者が確固とした強制年金制度に保護されることを確保するだけでなく、付加的な任意退職準備金の開発を可能とする環境を提供する責任がある。頼れる私的制度の樹立においては、団体交渉が効果的であることが証明されており、これらの制度の労使共同運営は政府の規制よりも優れた保護措置となろう。

失業給付は主として先進国と一部中所得途上国に存在するが、中国とモンゴルにも見られる。失業保障制度がない国が多いだけでなく、あってもカバーされている労働者数が少ないため、世界の失業者1億5千万人中何らかの種類の失業給付を受けているのは4分の1以下であると見積もられる。拠出期間が受給資格を満たしていないか、受給期間が切れてしまった人も多い。失業給付は他の多くの社会保障給付と異なり、給付事由存在期間を通じて支払われるものではなく、主に財政的な観点から決定される傾向がある限られた期間しか支払われない。
 労働者の就職が近年ますます難しくなってきたため、多くの先進国は失業給付水準の引き下げに踏み切った。失業者に低賃金の雇用でも引き受けるよう求める圧力も強まっている。失業保険の給付水準が国民平均所得の63%に達するフィンランドから純賃金代替率が23%のニュージーランドまで、各国が提供する失業保護の水準には依然かなりの差がある。カナダ、オーストラリア等、一部諸国の給付は低く、期間も短いか、資力調査を伴う。デンマーク、スペイン等の給付は従前所得に占める割合が高く、支給期間も制度加入期間に比例してしばしば延長される。雇用保護法制の違いも大きいが、デンマークの例に示されるように、失業給付の高い国が必ずしも雇用保護が厳しいわけではない。
 中南米とカリブ諸国では、一括退職給付が支給される場合が多く、失業保険は導入されたものの、適用範囲と受給資格を司る規則が制約的である。現在、これらの国の一部では職業安定サービスの開発に重点が置かれている。アジア金融危機は韓国における失業保険制度の開発を加速化させ、この利点に対する域内諸国の注意を喚起する役割を果たした。後発開発途上国、特に南アジアとアフリカでは、労働集約型の公共事業が限られた形態の失業保護を提供してきた。これらの事業は参加を希望する労働者にある程度の所得保障を提供する一方で、社会扶助に伴う金がかかりやっかいな資力調査手続きを回避できる。

▼出産給付や、家族・児童給付といった親子に対する社会給付は一般の家族が子どもをもつことによる経費増に対処するのを支援するために導入された。これは男女平等を推進する上でも重要な役割を果たす。過去数年間に、支出を節減する目的で一部家族給付に資力調査を導入した国が東欧諸国等幾つかある。更に、近年、家族的責任を有する労働者の低賃金を補助するため、米国の家族税額控除のような新しい制度が開発されつつある。家族給付制度はここ数十年比較的無視され、社会保障支出に占める割合が低下する傾向がある。多くの場合、途上国は家族給付が高出生率問題を悪化させると考え(現実に支持する証拠はほとんどない)、導入に積極的でなかった。しかし、児童給付は所得保障に大いに貢献し、特に就学条件と結びつけた場合、児童労働の廃絶を支援することを示す例がある。家族給付は通常、母親に支払われるため、家庭内所得分布を改善し、男女平等の推進を助ける。保育サービス提供の改善も、母親の自立と労働市場参入の機会を高めることによって、同じ目標に寄与している。
 社会保障による出産給付の提供は男女労働者とそれぞれの事業主の間での費用分担を確保する。一部途上国のように出産給付を事業主責任とすることはこの連帯を確保することに失敗し、出産年齢にある女性に対する採用差別につながるおそれがある。幾つかの国では、両親の一方が出産後間もない乳幼児の世話をするために勤務時間を短縮できる育児給付が導入された。誰が給付を受けるかを選択する権利は両親にあるというのが基本原則である。分担を希望する両親のために、通常、両親がそれぞれ給付の一部を受給できるような選択肢が与えられている。この選択肢の導入は大いに男女平等の進展を助けた。

社会扶助は、何の給付も受けていないか、他の形態の社会的保護からの給付が不十分で困窮している人々に給付を提供する。しばしば社会保険の欠如が社会扶助に対する需要を生む。しかし、社会扶助制度の優先順位が高い途上国は比較的少なく、制度があった場合でも、通常、対象は限定され、給付も非常に低い。
 社会扶助給付は通常、所得調査を伴うが、特に途上国では申請者の所得情報を得るのが難しいため、他の指標(特定の品物の所有の有無等)や自己選択手続き(労働を伴うとか、貧しくない人々には魅力的でない方法で給付が提供されるなど)を用いて、ターゲットを絞ることができよう。先進国では、社会扶助を受けている人々の規模が、ある程度その国の社会的保護制度の不備を示す指標となる。危機的状況においては、そしてギャップを埋めるためには常に社会扶助が必要であるが、良い社会政策は最初からギャップの形成を予防することをめざす。

□将来のニーズと展望

 報告書で確定された主な政策結論は以下の通り。

▼社会的保護の対象の拡大

 これはたぶん社会的保護制度が直面している最大の課題である。ILOは、「拠出金の徴収を組織化することができ、かつ、給付の管理のために必要な措置を講じることができるときは(所得保障勧告(第67号))」それぞれの被用者を保障対象とすべきとする。これには、@家事労働者のような個々の集団固有のニーズに合わせた適応を行いながら、現在除外されている労働者の保護に向け、既存の制度を拡張すること、A自営業者及びはっきりと判別できる使用者がいないインフォーマル・セクター労働者向けの特別制度の開発、B税を財源とする社会給付制度の開発といった手段が含まれる。
 政府及び社会保障機関は、低所得途上国で見られる少額保険その他何らかの形態のリスク・プーリングを提供できる草の根事業に支援を提供すべきであるが、これは社会保障制度の代替物ではなく、保護を拡張する補足手段と見るべきである。非労働力の最も弱い集団向けに適切な社会扶助措置を開発する必要もある。

▼良い統治の必要性

 良い制度設計が重要なのは当然であるが、適切な制度手続きの確立と社会的保護制度の効率的な管理にも十分注意を払う必要がある。設計段階では、調査研究と企画立案に十分時間を費やすべきである。制度構造を決定する際には、受益者と負担者という関係者層が運営に参加する場合、制度はほとんど常により良く機能することに留意する必要がある。拠出金の徴収・記録、給付を正確かつ時間通りに計算し、支払うのに必要なシステムと能力を備えた、十分に訓練を受け、意欲を持った職員に変わるものはない。

▼社会的保護とジェンダーのつながり

 労働市場への女性の進出は進んだが、依然、女性の無給平均労働時間は先進国全体で男性の約2倍、日本や韓国では約8倍に達する。女性の所得保障の改善は、有償労働への女性の進出の改善を伴う、家庭と労働市場の双方における男女平等の向上を前提条件とする。男女が有償雇用と家庭内における介護・育児責任を両立させることを助ける実際的な措置が求められる。強制社会保障の対象を、特にパートタイムや家内労働といった女性が圧倒的多数を占める雇用集団に拡張する必要がある。拠出型制度において無償で介護・育児労働に従事する人々も拠出者と見なす特例制度または全国民への給付支給を通じた無償の育児・介護労働の認定も考えられる。間接または直接に女性を差別する制度は排除するか、その役割を縮小する必要がある。男女平等が女性の給付の削減につながる場合には、注意深く漸進的な移行が不可欠である。

▼社会的保護の負担可能性と積極的な経済効果

 負担可能と見なされる社会保障支出水準は所得水準が等しい国同士でも大きく異なる。負担可能性は主観的に決定され、政治風土や伝統のみならず、所得分布や社会的保護制度の設計にも影響される。多くの途上国における特に大きな所得格差(図3)は、例えば、より良い教育と訓練を通じ、長期的に改善されよう。教育や訓練は受けた人々の稼得力を高めるだけでなく、社会保障の改善を支援する。
1990年代の所得分布、所得上位層10%の所得合計が国民総所得に占める割合 社会のあらゆる集団に魅力的な給付を提供するよう設計された包括的な制度は、強い政治的、財政的支援を受け、反対に、給付を少数の人々に絞ったものは支持を受けない場合が多い。社会的保護の費用面だけに目を向け、その経済便益または、その基本的な存在理由である個人に対する利益を忘れてしまってはならない。社会保障は様々な方法で生産性向上を助ける。自由化とグローバル化がもたらした不安定を抑制し、保護主義的な反応とそれが引き起こす非効率をあらかじめ防ぐ上で重要であるだけでなく、経済繁栄の主要素である社会の安定を保障する助けともなる。

▼住民の参加、支援、支払い意欲

 適用範囲の拡大やできるだけ多くのリスクのプーリングをめざし、通常、社会保障制度は全国規模の強制的な制度となるために一般の人々から遠くなってしまう傾向がある。これに対する保護措置及び対抗手段として、制度の設計と運営に、特に労使団体を通じた人々の参加が求められる。地方の自主制度は参加型運営が容易であるが、必ずしも自動的に達成されないため、既存の社会運動から制度を発展させる必要がある。被用者向けの補足的な制度に関しては、労働協約に基づく共同運営の制度が社会的保護、特に年金分野の保護を提供する効率的な手段であることが証明されている。適用対象者の参加は、人々のニーズと希望が確実に反映されることを助ける。これは社会的保護に対する人々の支払い意欲、そして負担可能と考えられる水準に影響を与えるだけでなく、社会や政治への組み込みを推進する強力な手段となる。
 社会的保護は道徳的に不可欠なものであるだけでなく、経済的な将来性もある。所得保障と安定した社会の達成のためには、効率的な経済と効果的な社会的保護制度が共に不可欠である。両者を調和させることはILOの中心的な目標(全ての人々へのディーセント・ワークの確保)に一致し、現代の経済と政治の現実に対応したものである。


ILOの現勢
(2000年7月1日現在)

加盟国数・・・・・・・・・・・・・・・・ 175
条約の数・・・・・・・・・・・・・・・・ 183
勧告の数・・・・・・・・・・・・・・・・ 191
加盟国の平均批准数・・・・・・・ ・39
OECD諸国の平均批准数・・・ ・66
日本の批准条約数・・・・・・・・・ ・44

ジュネーブ便り

隣国フランスでの出来事...

 最近、フランス国内で、外国人に対する悪感情が、ここ2年間減少していたにも関わらず、再び復活してきているという調査報告が発表された。今年の3月に公表されたこのフランス人権諮問委員会(commission nationale consultative des droits de l'homme)の報告書は、オーストリア、スイスをはじめ、ヨーロッパ全体で反移民感情が高まり、極右政党の支持率が上がっており、フランスも例外ではないということを示している。1991年以来毎年フランス市民の人種差別的感情の動向を調査し、その文化的、社会経済的背景も含めて作成される本報告書は今年も話題を呼んだ。現にその公表後の数週間は、特に本年度の調査の中心をなした労働と住宅の面での差別の実態を取材した新聞特集やテレビ番組が多数報道された。
 先月、サッカーのヨーロッパ選手権で、フランスチームは2年前のワールドカップ優勝に引き続き、イタリアを制して見事ダブルチャンピオンの座を獲得し、フランス中を湧かせた。私は普段あまりサッカーは見ないのだが、今回はたまたま、準決勝での仏−ポルトガル戦を同僚の家で数人で集まって見ていた。その時、テレビに映ったフランスチームの11人中5人が、大スーパースターのジダン選手も含めて、いわゆる移民の出身だということに気付いた1人の同僚が「これをル・ペン(注)が見て何と言っているかな」と嬉しそうに言っていた。この事は、決勝で敗れたイタリアの新聞にも載り、フランスでもルモンド紙はじめ数紙が、この機会にと、長くからフランスに滞在する移民の権利等の問題を取り上げた。
 問題の存在を十分に認識し、それを機会ある毎に取り上げることはその解決へ向けての第1歩だと思う。これはフランスの1つの特徴ではないだろうか。

ILO本部平等・雇用部
堀井 由紀
(編集注)フランスの人種主義的極右政党「国民戦線(FN)」創設者

ILO関係者往来

▼ILO/日本マルチバイ「労働及び雇用政策行政の長期フェローシップ・プロジェクト」99年度事業の一環として、M・D・モンダル・バングラデシュ労働・雇用省共同次官等パキスタン、スリランカより各1名、バングラデシュ、インド、ネパールより各2名合計8名の公営企業再構築の社会的影響の最小化をテーマとする研修団が来日(6月16〜22日)。労働省、中央労働委員会、運輸省、郵政省、JR総連、JR東日本、新幹線運行本部、JR大井工場、NTT本社、NTT労働組合を訪問。

中央労働災害防止協会主催講演会「ILOにおけるOSH−MSガイドラインについて」(東京・6月30日)講演のため、ILO本部よりJ・タカラ安全労働国際重点計画部長が来日。


ILO求人情報

(詳細はILO東京支局までお問い合わせ下さい。最新の求人情報はインターネットでもご覧になれます)
▽雇用政策専門家(P4/P5)
[勤務地]
アンデス・マルチディシプリナリー・アドバイザリー・チーム(リマ)
[必要言語]スペイン語
[応募締切]8月22日



論 文 目 次 紹 介
インターナショナル・レイバー・
レビュー

−1999年版目次紹介−
 1921年創刊の標記定期刊行物は、「論文」、社会労働面の最新の動きを紹介する「展望」、「出版物」の3部構成で、労働関連問題を扱う論文集であり、年4回発行される(2000年度の年間購読料9,900円)。著者はILO職員に加え、外部委託論文もあり、投稿も受け付けている。1999年版に収録された全論文の概要を紹介する。

 1号 @労働と開発(米ウィリアムズ・カレッジ経済学部H. Bruton他著)−効率性、正義、福利の3つの規準を用い、経済開発の初期段階で職場の質に配慮することは必要なだけでなく、生産的でもあることを示す。A欧州における労働の変容と労働法の将来に関する学際的視点(仏ナント大学教授A. Supiot著)−西欧諸国の国際的、学際的な状況分析結果を総合し、労働法の基本的な機能を維持するには、「職業上の地位」の理念を中心に、法が基盤とするフォーディズム・モデルの相対的な衰退に対処する必要があるとする。B整理解雇の予防・救済策はILOジャーナル昨年8月号(注)に掲載。
 「展望」の労働統計における新たな展開は本誌昨年9・10月号(注)に掲載。

 2号 @国際市場の社会的良心?行動規範、社会的ラベリング、投資家イニシアチブの労働的側面本誌昨年11・12月号A労働時間の動向と新たな論点今年1・2月号にそれぞれ掲載。B1970〜98年の中南米における賃金、雇用、労働者の権利(英ロンドン大学開発政策・研究センター所長J. Weeks著)−貿易自由化と労働市場の柔軟性は雇用創出、経済成長、賃上げを招くとする伝統的な経済理論に反し、経済成長の利益が労働者に移転されていない中南米の経験を吟味する。唯一の対策は労働組合の権利保護の強化と結論づけられる。C南部アフリカにおける業務上の負傷に対する補償制度の概要と改革提案(ILO南部アフリカ多角的専門家チームE. Fultz他著)−業務傷害給付の概念、その経済的論拠、必要不可欠な特徴、基本的な型などの説明に続き、アフリカ南部の制度の対象範囲、給付、財源、管理の各要素を比較し、制度の強化と改革のための優先事項が提案される。
 「展望」では、アジア金融危機のフォローアップにおける社会的側面と題し、1999年3月に開催されたこれに関するILOシンポジウムの結論を掲載し、合意された優先事項を示す。
 「新刊紹介」には、アンセンヌ前ILO事務局長の回顧録も含まれる。

 3号及び4号は「女性、ジェンダー、労働」特集号である。
 3号では内在する問題点と議論を分析する。@女性と平等への可能性論的アプローチ(米シカゴ大学法学部、神学部、哲学部、古典学部エルンスト・フロイント法学・倫理学教授M. Nussbaum著)−男女平等を追求する目的論として、人間が共通して持つ平等の価値が意味するところの自由と機会が、性を理由に広く侵害されているとし、人権と共に人間の可能性の達成を目指す必要があるとする。A雇用におけるアファーマティブ・アクションという難しい概念に対する最近の司法的アプローチ(ILO南部アフリカ多角的専門家チーム国際労働基準・労働法上級専門家J. Hodges-Aeberhard著)−90年代後半の米国、南アフリカ、欧州司法裁判所等における主な裁判結果を吟味し、同じような事実状況でも異なった判断が下されることに対する説明を試み、裁判所が公正で現実的な決定に到達するには、下級審におけるより厳格な論証と新しい国際基準が有用と論じられる。B労働統計におけるジェンダーの問題(ILO統計局A. Mata Greenwood著)−労働統計の生成においては、現実の簡素化が図られるが、女性の経済活動への貢献を体系的に過小報告し、誤って伝えることによって、男女不平等が永続化するとし、労働市場における男女それぞれの多様な状況が統計に完全に反映されるために必要な主な特徴が示される。C無報酬労働に関する終わりなき論争本誌今年3・4月号で紹介。Dケアの割当における性別規範と経済的結果(米マサチューセッツ大学経済学准教授M.V.L. Badgett他著)−育児・介護労働、社会規範、経済的結果の関係分析を通じ、介護・育児責任の再配分に留まらず、市場による介護提供に関する厳格な品質基準など育児・介護労働の保護に向けた具体的な措置が提案される。

 4号は多様な見解と傾向を判断するための経験的基盤を紹介する。@欧州連合における機会平等の評価(蘭ユトレヒト大学経済学研究所講師J. Plantenga他著)−家事労働の平等分担や教育における平等といった基本的な決定要因、賃金格差や失業率といった指標を用い、機会平等の原則を雇用に適用する際の適切な定義の作成を試み、この定義を用いて、15欧州連合加盟国の機会平等の程度が評価される。A性差別に対する超国家的活動としての欧州連合における同一報酬と平等待遇(ILO男女平等局I. Heide著)−欧州の男女平等推進に大いに貢献した欧州法を歴史的・社会的枠組みから分析し、賃金、年金、夜業、職業応募資格等に関する欧州司法裁判所の判例を紹介する。B家族と柔軟な労働と社会的統合の危機本誌今年5月号C男女の経営スタイル6月号でそれぞれ紹介。D性別特有の労働市場指標が示すもの(ILO雇用戦略局S. Elder他著)−新しい雇用情勢を監視するために開発されたILOの主要労働市場指標(KILM)を用いて、性に係わる国際情勢を示す。就業分野や有給労働時間の違いなど、世界的に、労働市場における男女の違いが大きいことが示される。


(注)ILOジャーナル過去の号をご希望の方はILO東京支局までご請求ください。


ILO新刊書

Managing the
cooperative difference:
A survey of the application of modern management practices in the cooperative context
協同組合の
独自性と運営


P. Davis著
1999年刊 英文・134頁
2,500円

 協同組合は組合員制の組織で、共生の原則とコミュニティに根ざして設立されている。その協同組合の事業運営に、最新の経営手法を活用することができるのか。本書は世界各地の国際協同組合同盟(ICA)事務所、各国の人材管理専門家など多くの関係者の協力を得て作成された調査報告書で、デンマーク国際開発庁(DANIDA)の協力を得てILOが実施している協同組合経営とネットワーク作りのための人的資源開発プログラム(COOPNET)の活動の一環として出版された。
 本書は3部8章から成る。まず第1部と第2部で、協同組合が現在直面している諸問題(低い資本利益率、市場占有率の低下、市場におけるイメージの貧困さ、スタッフのモラルと生産性の低さ、戦略の欠如など)に対処するための運営モデルや具体的な対策を提示し、競争力を増すためには、協同組合独自の価値に基づいた新たな運営戦略が必要だと説く。第3部は、本書が提案する経営戦略を実際の協同組合運営に適用していく方法を実例と併せて紹介する。各章末では具体的な行動提案もされており、実践的である。
 協同組合を運営する責任者は、最善かつ最新の経営方法や戦略に関する知識を得るだけでなく、それを協同組合の原則と価値観のもとで具体的に実践できなければならない。協同組合は、一般企業の利益主導型の市場支配に対して、サービス主導型の選択肢を提供している。グローバル化・自由化した経済において、製品やサービスの質の向上のみならず、環境問題や倫理的な側面をも視野に入れた協同組合の価値観・原則・組織体制は、民間企業との競争において有利に作用する可能性を秘めている。その有利な条件を活かして協同組合の事業を運営できるプロフェッショナルの育成が急がれる。関係者に一読をお奨めする。


Your Voice at Work

職場からの声


2000年刊 英文・88頁
2,000円

 本書は、1998年に採択された労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言のフォローアップとして今年のILO総会に提出された初のグローバル・レポートである。今回は、基本的原則及び権利の4分野のうち、結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認(第87号条約及び第98号条約)を扱う。今後、強制労働の禁止、児童労働の実効的な廃止、雇用及び職業における差別の排除の順番で、毎年1つずつ全体像を示す総合的な報告書を作成する。
 本書は3章から成り、まず第1章で、現下の労働の世界を取り巻く急激な変化とグローバル化の問題を概観し、それが結社の自由と団体交渉権にどのような影響を与えているかを分析する。結社の自由と団体交渉権は、長い歴史を経て確立した慣行であり、その意義は広く認められていたが、生き残りをかけた厳しい市場競争を前に、かつてのようには重視されていない現状が明らかになっている。
 深刻な人権侵害の例も数多く報告されている。過去十年間にILOは、コロンビア、ドミニカ共和国、エクアドル、グアテマラ、インドネシアの国々における労働組合活動家の殺害に関する申立を審議した。オマーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦では、労働組合自体が禁止されている。また、様々なカテゴリーの労働者(農業労働者、家内労働者、公的部門など)が、法的保護の対象外であったり、団結権や団体交渉権が認められていなかったりする。日本における消防士のように公的部門の労働者については、農業労働者に次いで団結権・団交権が制約される者が多いが、ILOは、軍隊と警察を除くすべての労働者と使用者には、基本的原則として、団結権が保障されるべきとする。
 第2章でILOが提供した支援の効果を評価し、第3章で、これからどのような技術協力活動をするべきか優先事項を決定するための提案がなされている。
 本報告書をもとに行われた総会での議論を踏まえて、本年11月の理事会で技術協力活動の優先事項と活動計画が決定されることになっている。(報告書原文)


第88回ILO総会報告書
第1議題:事務局長報告
◆ I(A) Activities of the ILO 1998-99
「1998/99年度ILO活動報告」
2000年刊 141pp. 2,000円
第3議題:条約・勧告の適用に関する情報と報告
条約勧告適用専門家委員会報告書
◆ III(1A) Application
「適用」
2000年刊 529pp. 5,000円
◆ III(1B) Tripartite Consultation
「三者協議」
2000年刊 110pp. 1,500円
条約別・国別批准リスト
◆ III(2) Ratifications
「批准」
2000年刊 242pp. 3,000円
第4議題:母性保護改正条約・勧告の改正(第2次討議)
◆ Maternity Protection at work IV(1) 1999年刊 15pp. 750円
IV(2A) 2000年刊 150pp. 2,000円
IV(2B) 2000年刊 18pp. 750円
第5議題:人材開発と訓練−職業指導と職業訓練(一般討議)
◆ Training for employment: Social inclusion, productivity and youth employment
「雇用のための訓練−社会的統合、生産性、若年者雇用」
人的資源開発と訓練の分野における主要な国際労働基準は、1975年に採択された人的資源開発条約(第142号)と同勧告(第150号)であるが、勧告については現状に適した内容とはいえなくなっており、新しい人材開発勧告の必要性について、今年の総会で話し合う。本書はその討議資料として作成され、人材開発と訓練をめぐる近況を概説する。
2000年刊 62pp. 1,250円
第6議題:農業における安全衛生(第1次討議)
◆ Safety and health in agriculture
「農業における安全衛生」
VI(1) 1999年刊 100pp. 1,500円
VI(2) 2000年刊 188pp. 2,500円
ILO産業別会議報告書
◆ Symposium on Information Technologies in the Media and Entertainment Industries: Their Impact on Employment, Working Conditions and Labour-Management Relations
「メディア、エンタテインメント産業における情報技術に関するシンポジウム」
情報技術がテレビ、ラジオ、映画、雑誌、印刷などの業界、演奏家・音楽家・フリーのジャーナリストなどの契約、著作権、働く人々の労働条件に与える影響について報告する。
2000年刊 95pp. 1,750円
書籍ご注文はILO東京支局まで(пF03-5467-2701、FAX:03-5467-2700、電子メール:tokyo@ilotyo.or.jp


最終更新日:2000年9月25日 作成者:EU 責任者:NH