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ILOジャーナル2000年10・11月号目次
▼ ILO新刊:雇用終了ダイジェスト
▼ ILO/日本マルチバイ・プロジェクト報告:労働・雇用行政フェローシップ
▼ ILO活動推進議員連盟総会
▼ 最悪の形態の児童労働条約(第182号)11月19日発効
▼ ILOの現勢(2000年10月1日現在)
▼ ジュネーブ出張便り:ジュネーブとチューリヒ(ILO東京支局 大間知 久美子)
▼ 2000年11〜12月の主な会議日程
▼ ILO関係者往来(2000年9〜10月)
▼ 新人紹介:大内真理子さん、社会保障・健康保険ジュニア専門家としてジュネーブへ
▼ 論文概要紹介:先進国の部分的退職と年金政策(International
Labour Review 2000, Vol. 2より)
▼ 新刊紹介:セクシュアル・ハラスメント&労働統計に関する現行の国際勧告他広告
▼ ILO図書邦訳版刊行案内
ILOジャーナル2000年10・11月号
| 労働者が有する不正または不当な解雇を受けないとの権利は、雇用終了に関する現代の法の基本である。しかし、この権利は全世界的に保障されているわけではない。世界72の国・地域の雇用終了に関わる法制を収録したILOの新刊書「雇用終了ダイジェスト(英文・401頁・5,000円)」の概要を紹介する。 |
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報告書は原則として1998年1月までに得られた情報に基づき(その後の進展も可能な限り盛り込んである)、日本を含む世界72の国・地域における民間部門の雇用終了に関わる法制を紹介する。法の実態をより良く示すため、必要な場合には、判例や労働協約にも簡単に触れる。使用者の発意による雇用終了に加え、自己都合退職や雇用契約の解消といったその他の形態の雇用終了も扱う。
3部構成の報告書は、第1部で雇用終了を司る各国法制の主要点を比較概説し、第2部で世界72の国・地域の法制概要を国・地域別に記し、第3部で不当解雇の際の補償、予告期間、保護、剰員解雇等に関する法制の一覧表を掲載し、一目で国際比較ができるよう工夫してある。第2部には、@法源、A法の適用範囲、B雇用契約、C雇用終了、D使用者の発意による雇用終了、E予告期間と事前手続き要件、F離職手当、G対抗手段の8項目に関する情報が含まれる。
□解雇に関する国際論議
不当または不正に解雇されないという労働者の権利は、全ての国で認められているわけではない。19世紀の欧州大陸では、労働者保護の理念のもと、終身契約を禁止し、期間の定めのない契約の場合には、当事者の一方が事前予告だけで契約を終了できる自由を定めた。米国等にはまだこの名残があり、雇用契約の継続における使用者の決定権を認める。20世紀に入ると、労働運動の興隆、労使紛争の激化、労働者保護の必要性に関する認識の高まりから、立法者の考え方が変化し、例えば、1917年制定のメキシコ憲法は解雇は有効な理由を必要とすると規定する。正当な理由のない解雇に対する制限はナポレオン法典に基づく法体系を備える国々で広まり、1940年代までに解雇の正当化、予告期間、離職手当の支払いに関する法規が制定された。60年代の経済成長期から70年代にかけて、国内法に雇用保障に関する保護基準を組み込むことが一般化し、基準内容の強化、拡張が図られた。しかし、国際経済危機が広まった80年代になると、雇用に関して取られた保護主義的なアプローチが激しく非難されるようになった。
失業に対する特効薬は解雇規制の緩和であるとの考え方は現在でもまだ広く見られる。雇用保障が就業及び失業の全体的な水準・構造と因果関係を有すると結論づけるに足る十分な証拠はないが、適切な雇用保障と適度の保護が不当解雇に基づく不要な雇用喪失を減らし、技術的及び経済的な理由に基づく剰員解雇を制限することによって、雇用の増加に貢献できると信じられるだけの理由はある。解雇規制の解雇抑制効果は高いが、不適切なあるいは過度の解雇規制は、使用者の採用意欲を抑え、女性や障害者といった不利な状況にある労働者の雇用を阻害し、失業の長期化や不安定な雇用を促進する危険性がある。近年、多くの国で違法解雇の件数は明らかに減少したが、この一因として自動的に終了できる有期雇用契約の多用や非典型的雇用関係の自由化をあげることができる。
□世界の解雇法制
表に解雇法制の一例を示す。法規定は多様であるが、雇用終了に関するILO第158号条約も認めるように、ほとんどの国が不可抗力による解雇に加え、経済的な理由、労働者個人の職務遂行能力または行為に基づく雇用終了を認める。一般に労働組合役員、妊産婦等、特別の状況にある労働者の解雇は規制される。解雇規制事由としては、この他に人種、婚姻の有無、兵役、病欠中、使用者に対する訴訟への参加等が挙げられる。
大半が解雇に先立つ手続き要件を定め、使用者に解雇理由の正当化義務を課す。通常、解雇予告期間が必要とされ、労働者には提訴の権利とその手段の行使が認められる。救済手段としては復職と補償金が用いられる。経済的、技術的、構造的理由による集団解雇の場合、緊張の緩和を目指し、企業内及び行政当局との協議及び労働当局への通告手続きを定める。対象者選定の際の客観的な規準の設定も求められる。
| 個別の不当・不正解雇に関する法規制 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 国・地域名 | 使用者が解雇の正当性を示す義務 | 従業員代表との協議義務 | 行政認可 | 不当・不正解雇の際の法定補償額 | 復職請求 |
| オーストラリア | 有 | 無 | 不要 | 当該労働者が解雇直後の6ヶ月間に受け取ったであろう賃金額または32,000オーストラリアドルのいずれか低い方を上回らない額 | 可 |
| ベルギー | 特定の種類の解雇を除き無 | 無 | 不要 | 賃金6ヶ月分を上限 | 特定の種類の解雇を除き不可 |
| ブラジル | 有 | 無 | 不要 | 有 | 不可 |
| カナダ | 有 | 無 | 不要 | 解雇がなかった場合、使用者が支払ったであろう最高報酬同等額を上限 | 可 |
| 中 国 | 通常無 | 無 | 不要 | 仲裁委員会が決定可 | 不可 |
| 香 港 | 有 | 無 | 不要 | 裁決機関が決定 | 可 |
| エジプト | 有 | 有(三者構成委員会と) | 要(三者構成委員会) | 裁判所が決定 | 労働組合活動による解雇の場合を除き不可、執行停止は可 |
| フランス | 有 | 無 | 不要 | 賃金6ヶ月分を下限 | 可 |
| ドイツ | 有 | 有 | 不要 | 賃金12ヶ月分を上限(56歳以上の場合は18ヶ月分を上限) | 可 |
| インド | 有・例外有 | 無 | 不要 | 裁判所が決定 | 可 |
| インドネシア | 有 | 無 | 要 | 全国委員会、地方委員会が決定 | 可 |
| イタリア | 有 | 無 | 不要 | 賃金15ヶ月分 | 可 |
| 日 本 | 通常無 | 無 | 不要 | 実損額 | 可 |
| 韓 国 | 有 | 無 | 不要 | 賠償有 | 可 |
| マレーシア | 有・法的保護無 | 無 | 不要 | 勤続1年につき賃金1ヶ月分を含む補償額 | 可 |
| メキシコ | 有 | 無 | 不要 | 有 | 可 |
| オランダ | 有 | 無・ただし、三者構成委員会が解雇を裁定 | 要 | 実損額または勤続期間と年齢に応じた補償額 | 可 |
| フィリピン | 有 | 無 | 一般従業員のみ要 | 実損額、復職できなかった場合には勤続1年につき賃金1ヶ月分の離職金 | 可 |
| ロシア | 有 | 特定の種類の解雇を除き無 | 不要 | 実損額 | 可 |
| スペイン | 有 | 無 | 不要 | 未払い賃金額合計及び勤続1年につき賃金45日分の補償額、上限は不当解雇の場合の最高42ヶ月分 | 可 |
| スウェーデン | 有 | 有 | 不要 | 通常、賃金32ヶ月分を上限 | 可(技術的には雇用関係は継続) |
| スイス | 特定の種類の解雇を除き無 | 無 | 不要 | 賃金6ヶ月分を上限(「不正」終了の場合) | 不可 |
| タ イ | 通常無 | 無 | 不要 | 裁判所が決定 | 可 |
| 英 国 | 有 | 無・例外有 | 不要 | 通常、補償上限12,000ポンド(50,000ポンドへの引き上げを予定)+基本裁定額6,150ポンド | 可 |
| 米 国 | 無 | 無 | 不要 | 法定補償無、ただし、差別的その他不法解雇の場合裁判所の決定有。ごくまれに、契約違反及び懲罰的損害賠償の裁定有 | 通常不可 |
| 期間の定めのない雇用契約の法定解雇予告期間と予告に代わる補償 | ||
|---|---|---|
| 国・地域名 | 予告期間 | 予告に代わる補償 |
| オーストラリア | 年齢と勤続期間に応じて1〜6週間 | 有 |
| ベルギー | ブルーカラーは勤続6ヶ月以下7日、20年以下28日、20年超56日。ホワイトカラーは勤続5年で最低3ヶ月、その後勤続5年ごとに最低3ヶ月ずつ増加 | 有 |
| ブラジル | 給与支払い単位が週またはそれ以下の場合8日、2週間ごとまたは月払いの場合30日 | 有 |
| カナダ | 2週間 | 有 |
| 中 国 | 30日 | 無 |
| 香 港 | 「毎月更新」の労働者の場合1ヶ月以上、7日以上必須 | 有 |
| エジプト | 見習いを除き規定無 | − |
| フランス | 勤続6ヶ月〜2年は1ヶ月、2年超は2ヶ月 | 有 |
| ドイツ | 勤続2年以下は4週間、2〜5年は1ヶ月、5〜10年は2ヶ月、10〜20年は4ヶ月、20年超は7ヶ月 | 無 |
| インド | 1ヶ月 | 有 |
| インドネシア | 政府事前認可の制度があるため無 | − |
| イタリア | 勤続期間、産業部門、労働者の種類によって異なる(労働協約で設定) | 無 |
| 日 本 | 30日 | 有 |
| 韓 国 | 30日 | 有 |
| マレーシア | 勤続2年未満は4週間、2〜5年は6週間、5年超は8週間 | 有 |
| メキシコ | 法規定無 | − |
| オランダ | 通常は賃金支払単位相当期間。上限6週間であるが、それより長い契約が締結されている場合は別。勤続期間と年齢による例外有 | 有 |
| フィリピン | 一般従業員の場合、政府の許可が必要なため、法規定無。態度不良による解雇の許可を得るには、使用者は申立通知を含む「正当な審問期間」の満了を事前に示す必要有 | − |
| ロシア | 無 | − |
| スペイン | 最低30日 | 有 |
| スウェーデン | 同一事業所に6ヶ月以上中断なく勤務した場合、または直近2年間で合計12ヶ月勤務した場合、25〜30歳は2ヶ月、30〜35歳は3ヶ月、35〜40歳は4ヶ月、40〜45歳は5ヶ月、45歳超は6ヶ月 | 無 |
| スイス | 雇用初年度1ヶ月、2〜9年は2ヶ月、9年超は3ヶ月 | 無 |
| タ イ | 支払い期限ごと、最長3ヶ月 | 有 |
| 英 国 | 雇用継続期間1ヶ月超2年未満は1週間、2年以上12年未満は勤続1年当たり1週間、12年以上は12週間 | 有 |
| 米 国 | 無 | 無 |
| 集団剰員解雇の法定要件 | |||||
|---|---|---|---|---|---|
| 国・地域名 | 従業員代表との協議義務 | 行政当局に対する事前通告義務 | 行政認可 | 剰員解雇の際の法定支払金 | 社会計画 |
| オーストラリア | 有 | 15名以上の剰員解雇の場合有 | 不要 | 無・ただし、裁定によって決定される場合が多い | 不要 |
| ベルギー | 有 | 有 | 不要 | 有・労働者が請求できる失業給付水準に応じる | 不要 |
| ブラジル | 有 | 無 | 要 | 通常、経済的理由による場合勤続1年につき賃金2ヶ月分 | 不要 |
| カナダ | 有 | 有 | 不要 | 通常、勤続1年につき最低5日分 | 不要 |
| 中 国 | 有 | 有 | 不要 | 通常、勤続1年につき賃金1ヶ月分 | 不要 |
| 香 港 | 無 | 無 | 不要 | 勤続2年で離職金受給資格を取得、勤続年ごとの上限有 | 不要 |
| エジプト | 無 | 全ての解雇について有 | 全ての解雇について要 | 勤務開始から5年目までは賃金月額の半額、その後は1年につき1ヶ月分 | 不要 |
| フランス | 有 | 有 | 不要 | 勤続2年以上は有 | 要 |
| ドイツ | 有 | 有 | 不要 | 有・企業に適用される社会計画によって設定 | 常用労働者20人以上の事業所は要 |
| インド | 有 | 有 | 従業員数100人以上の事業者は要 | 通常、勤続1年につき賃金15日分、予告期間の延長有 | 不要 |
| インドネシア | 有 | 有 | 要 | 有・勤続1年につき賃金1ヶ月分上限5ヶ月分の基準に基づき、地方委員会または全国委員会が決定 | 不要 |
| イタリア | 有 | 有 | 不要 | 賃金1年分の13.5分の1に勤続1年につき1.5%及びインフレ補正を追加 | 要 |
| 日 本 | 法規定無、判例法と労働協約による | 無 | 不要 | 無 | 不要 |
| 韓 国 | 有 | 無 | 不要 | 通常、勤続1年につき30日分 | 不要 |
| マレーシア | 無 | 無 | 不要 | 離職金は勤続初年度は賃金10日分、2〜5年は15日分、5年超は20日分 | 不要 |
| メキシコ | 無 | 無 | 仲裁委員会の許可要 | 通常、勤続初年度は賃金6ヶ月分、その後は1年につき20日分 | 不要 |
| オランダ | 有 | 有 | 要 | 法定の離職金はないが、労働協約の対象とすること可。剰員解雇を理由とした契約破棄と裁判所が裁定した場合、年齢と勤続期間に応じ、裁判所が補償額を決定 | 要 |
| フィリピン | 有 | 有 | 要 | 通常、勤続1年につき賃金1ヶ月分 | 不要 |
| ロシア | 有 | 有 | 不要 | 通常、1ヶ月分の離職金+賃金2ヶ月分 | 要 |
| スペイン | 有 | 有 | 要 | 勤続1年につき賃金20日分、12ヶ月分を上限 | 不要だが、労働当局が条件を付す場合有 |
| スウェーデン | 有 | 有 | 不要 | 無 | 要 |
| スイス | 有 | 有 | 不要 | 勤続20年以上で50歳超の労働者を除き無 | 不要 |
| タ イ | 従業員とは有(従業員代表無) | 有 | 不要 | 有・額は勤続期間に応じる | 不要 |
| 英 国 | 有 | 有 | 不要 | 有・年齢と勤続期間に応じる。基本額は勤続1年につき賃金1週間分 | 不要 |
| 米 国 | 1988年労働者調整・再訓練通告法の対象企業は有 | 有 | 不要 | 労働協約で定めた場合を除き無 | 不要 |
労働・雇用行政フェローシップ
−ILO/日本マルチバイ・プロジェクト報告−
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| JR東日本を訪問中のフェロー一行 |
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アジア・太平洋地域の労働行政官を対象としたILO視察研修事業「労働・雇用政策行政フェローシップ」は、日本政府(労働省)の発案・協力により1989年に開始して以来、2000年9月末現在まで域内の労働行政官を中心に27カ国・地域から263人の参加を得ている。
同事業の特徴は、開発途上国が互いに学びあう途上国間協力(TCDC)を主体としつつ、域内先進国への訪問を組み込んでいる点にある。労働行政の分野ごとに国籍の異なる行政官で構成された視察団が、経済発展の度合いの異なる域内の3カ国程度を各約1週間訪問する。参加者はグループ内の交流を通じて、さらに各訪問先で、多様な国情と労働行政に触れることができる。見聞に幅をもたせるため、原則的に最終訪問国は先進国である日本とし、視察と評価会を行う。日本での受け入れには労働省を中心に政労使の多大な協力を得ている。
■域内のニーズに対応
視察の主題は労働行政のほぼ全分野にわたる(右図)。アジア金融危機以降は、最も影響を受けた東南アジア諸国を主な対象に、失業の急増に対応するため、職業紹介や訓練等雇用サービスの強化、社会的安全網づくりの参考となるテーマが多く選ばれている。
一方、特に南アジア諸国では公営企業の民営化が進行し、雇用等社会へ与える影響に関心が高まっていることを受け、今年6月、インド、ネパール等南アジア5カ国を対象に民営化と雇用を主題とした視察団を初めて実施した。労働省と民営化委員会等政府機関をそれぞれ代表する各国2名からなる視察団は、主に上海と東京で民営化に伴う大量解雇・失業を回避するための配置転換、職業紹介、技能訓練計画の成功例を目にし、「雇用問題を中心に据えた民営化の計画・実施の必要性を痛感した(パキスタン民営化委員会副事務局長)」とする。同視察団の成功を受け、2002年、同様の主題で東南アジアの行政官を対象とする視察団が予定されている。
■はじめての労使の参加
1999年9月には参加者に労使を加え、初の三者構成を試みた。三者構成制度の機能と強化を主題とし、マレーシア、タイ等東南アジア4カ国より政労使が招かれた。参加者からは、「社会的パートナーの参加により、研修を通じ活発な意見交換が実現した。三者構成主義への理解を深めるのに効果的」との声が多数寄せられ好評で、三者構成での続行が強く要望された。今後も参加を政府のみに限らず、適当ならば幅広い人材に機会を与える方向が検討されよう。
■一村一品運動等を視察
最近の国内視察では、雇用創出を主題とする視察の折、1999年10月には一村一品運動の発祥地である大分県大山町へ、今年7月には競争力ある中小企業の集積地、長野県坂城町と独自の農産品生産加工戦略で実績ある群馬県沢田農協への訪問が初めて実現し、参加者にとり多様な経験の蓄積と創意がもたらした成功の事例を見聞する得難い経験となった。
去る10月6日に東京都内で開催されたILO活動推進議員連盟総会では新役員として、会長に森山眞弓衆議院議員、副会長に甘利明衆議院議員(新)、吉田之久参議院議員、浜四津敏子参議院議員(新)、事務局長に大脇雅子参議院議員、事務局次長に小山孝雄参議院議員(新)、他に顧問4名、常任幹事8名が選出された。ILO活動の支援を目的に1988年に発足したこの超党派議員連盟は現在衆参両院100名の議員から構成される。
総会では他に、堀内光子ILOアジア太平洋地域総局長が「最悪の形態の児童労働条約(第182号)採択の背景にあるもの」と題する報告を行い、第182号条約の概要、批准状況、児童労働撲滅国際計画(IPEC)の活動概要を紹介した。続いて、天野万利外務省国際社会協力部審議官が「第182号条約批准に関する基本的見解」として、この基本条約の重要性に鑑み、日本政府が批准に向けて、前向きの姿勢で取り組んでいることを報告した。
第182号条約11月19日いよいよ発効
最悪の形態の児童労働禁止
□最悪の形態の児童労働条約
昨年の総会で採択された最悪の形態の児童労働条約(第182号)は、昨年9月28日にセーシェル、11月19日にマラウイが批准したことによって発効要件を満たし、2国目が批准した1年後の来る2000年11月19日に発効する。全会一致で採択された事実を反映し、この基本条約の批准速度は過去最速で、今年10月10日現在、カナダ、デンマーク、フィンランド、イタリア、スイス、米国、英国等主要先進国を含む38カ国が批准する。この他にも多くの国で批准が検討されている。
批准を後押しするものとして、例えば、米国の2000年貿易開発法は、サハラ以南アフリカ諸国からの各種輸入品に免税特恵を与え、北米自由貿易協定(NAFTA)におけるメキシコと同じ貿易特恵をカリブ諸国に拡大することを目的とするが、第182号条約を採用し、最悪の形態の児童労働を廃止する措置を講じていることを特恵待遇の条件とする。
正式名称を最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する条約とする第182号条約と付属する同名の勧告(第190号)は、児童(18歳未満)の健康、道徳、精神を害する影響を与え、児童の正常な発育を深刻に妨げる可能性のある労働を最悪の形態の児童労働とし、このような活動を禁止し、最悪の形態の児童労働を優先事項として撤廃する活動計画の設計と実施を批准国に求める。最悪の形態の児童労働には、@児童の人身売買、奴隷労働、強制労働(武力紛争における児童の使用を含む)、A売春、ポルノ等への児童の使用、斡旋、提供、B薬物の生産、取引等不正な活動への児童の使用、斡旋、提供、Cその他児童の健康、安全、道徳を害するおそれのある業務が含まれる。
□児童労働撲滅国際計画
1992年に開始された児童労働撲滅国際計画(IPEC)を通じ、ILOは第182号条約に対する国際的な理解と支援を得るための努力を続けている。第182号条約批准国の半数以上が、受益国(準備中を含む)または支援国としてIPECに関与している。条約の採択は政策の策定や法改正に加え、具体的な活動の推進といった点で、働く子供達の生活に目に見える効果を与え始めている。
現在、IPECは、日本国政府、連合を含む20を超える国・機関の任意資金協力を受け、約70カ国(準備中を含む)で活動している。ユニセフ等国際機関、各国政府に加え、使用者団体(バングラデシュの衣料産業における児童の救済、社会復帰等)、労働者団体(ネパールの運輸、ホテル、レストラン産業における児童労働実態調査等)、NGO(ペルーのレンガ製造業における所得向上、教育推進等)、教育部門(タイ文部省による奨学金支給を通じた児童の売買、売春予防等)といったようにIPECのパートナーは社会全体に広がりつつある。最近の活動の一端を紹介しよう。
▼1998〜99年にIPECの児童労働統計情報・監視計画(SIMPOC)の枠内で、15カ国の国立統計局及び労働省職員が児童労働のデータ収集訓練を受けた。1998年にポルトガルで実施された初の児童労働調査は、43,000人を超す6〜15歳の児童(当該年齢集団の4%近く)が働いていることを明らかにした。ウクライナでは、1999年第2四半期の調査から、50万人を上回る7〜17歳の働く児童(同約6.2%)の存在が明らかになった。他にザンビア等アフリカ5カ国でフィールド・データの収集が終わり、今年7月に結果が発表された。2000〜01年には中米、アフリカ、アジア、東欧16カ国で調査が予定されている。先進国ではイタリアで、非合法児童労働(児童売春、児童を利用した組織犯罪、都市部で見られる児童の物乞い)に関する調査プロジェクトが予定されている。
▼米国は1999年度予算に、酷使されている児童を世界中からなくす助けとして、総額3,000万ドルの計画を盛り込んだ(2000年度も同額を計上)。この一部として、昨年12月、IPECを通じ、カンボジア沿岸部カンポトの塩田における児童労働に対し、100万ドルが拠出された。カンポトの塩田では約5万人が働くが、うち1,500人が年少者と見積もられる。重い荷の運搬を含む重労働は背中を痛めるだけでなく、塩によって肌が焼け、ひび割れる。最も近い学校までも6〜8キロ離れており、非識字も問題となっている。米国の計画は、学校の新設、家族の代替収入源開発を提案する。加えて、ゴム製造や漁業で働く児童、性産業から救出された女子を対象とした活動も予定されている。米国はこの他に、コスタリカ等中米6カ国のコーヒー産業で見られる児童労働対策として600万ドル、バングラデシュの建設業、エビ加工、皮革工場等危険な産業から児童労働をなくし、通学を可能にすること等のIPECの既存活動に、1,400万ドル超の追加資金を拠出した。
▼働く児童の割合が最も高いアフリカ(1999年で8千万人)では、第182号条約の採択によってIPECの活動が大幅に拡充された。既に各地で進められていた国内計画に加え、ケニアとタンザニアではコーヒー及び紅茶農場で働く児童を救出する活動が進められている。一部西アフリカ諸国では児童の人身売買、家事労働を行う児童の虐待、児童兵士の各問題に取り組む計画が開始された。人身売買に関する計画は、西・中央アフリカ九カ国を対象とし、児童の人身売買の規模と動向を評価し、国内及び小地域レベルで活動計画を設計することを目指す。既に、今年2月にリブルビルで開催されたILOとユニセフ共催のワークショップで初期調査結果が発表され、7月にコトヌで開かれたワークショップでは国別研究の結果発表に加え、行動計画の立案に向けた話し合いがもたれた。計画第2段階として、人身売買の予防と救出された児童の社会復帰に向けた活動が実施される。
ILOウェッブサイトには第182号条約関連情報、児童労働の現状、IPECの活動等、多彩な情報が含まれている。
| 加盟国数・・・・・・・・・・・・・・・・ | 175 |
| 条約の数・・・・・・・・・・・・・・・・ | 183(うち、撤回5) |
| 勧告の数・・・・・・・・・・・・・・・・ | 191 |
| 加盟国の平均批准数・・・・・・・ | ・39 |
| OECD諸国の平均批准数・・・ | ・66 |
| 日本の批准条約数・・・・・・・・・ | ・44 |
| ジュネーブ出張便り |
|
「20年前と比べてどうですか?」同じ頃ジュネーブに勤務しておられた某氏の質問に、私は咄嗟に「汚くなったと思います」と答えてしまった。(在住の皆様ごめんなさい。もちろん郊外は昔と変わらず素敵です!)空港からタクシーで街中に入る道すがら、奇妙に古い雰囲気を気取る新築ビルの姿に違和感を覚えていた私は、「駅西側再開発の失敗」という同氏の言葉に同感した。
ILO東京支局
大間知 久美子 |
近い将来、次の会議の開催が予定されている。
▼第279回ILO理事会及びその委員会(ジュネーブ・11月2〜17日)
▼雇用機会平等政策データベース妥当性検査ワークショップ(ジュネーブ・11月20〜21日)−バングラデシュ、中国、エストニア、インド、インドネシア、日本、韓国、南アフリカ、タンザニア、タイ、旧ユーゴスラビア共和国マケドニア、英国、ベネズエラ、ベトナム、ザンビアより政労使各5名を招き、@現在、ILOが開発中の雇用機会平等政策・慣行プロトタイプ・データベース(インターネット及びCD−ROMで公表予定)の妥当性を検査し、Aナビゲーションのしやすさ、画面のデザイン及びレイアウト、用語といった利用性及びデータベースの内容が需要にあったものかといった点に関し、フィードバックを得る。
▼ILO/日本/米国・労働における基本的原則・権利ILO宣言の適用に関するアジア地域セミナー(カトマンズ・11月20〜22日)−昨年に続く、日米政府の任意資金拠出事業として、オーストラリア、バングラデシュ、カンボジア、中国、フィジー、インド、インドネシア、イラン、日本、キリバス、韓国、ラオス、マレーシア、モンゴル、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、シンガポール、ソロモン諸島、スリランカ、タイ、ベトナムの域内24カ国及び香港特別行政区より政労使が参加し、宣言が取り上げる結社の自由と団体交渉権、強制労働及び児童労働の廃止、雇用及び職業上の差別の除去といった基本的原則・権利に関わる中核的8条約の批准及び適用促進、宣言のフォローアップに関する話し合いを行う。
▼条約勧告適用専門家委員会(ジュネーブ・11月23日〜12月8日)−加盟国のILO条約・勧告適用状況を吟味する適用監視機構の定期会合
▼使用者団体とよりクリーンな生産に関する地域間ワークショップ(ニューデリー・11月28〜29日)−中国、インド、インドネシア、ケニア、モーリシャス、フィリピン、スリランカ、タンザニア、ザンビア、ジンバブエといったアフリカ及びアジアの使用者団体代表10名が参加し、題記技術協力プロジェクトの経験に関する意見交換を通じて、その効果向上、将来活動の立案、プロジェクトの見直し、今後の活動に向けた教訓引き出しを目指す。
▼企業業績の向上に向けた訓練に関するアジア太平洋三者構成会議(バンコク・12月12〜14日)−オーストラリア、中国、インド、日本、韓国、マレーシア、シンガポール、タイの8カ国及び労使が集い、世界の変化が企業の作業組織と技能開発に与える影響を分析的に討議する。
▼第6回欧州地域会議(ジュネーブ・12月12〜15日)−域内加盟国が集い、欧州地域におけるILOの活動に関する話し合いを行う。
▼ILO/日本マルチバイ「労働及び雇用政策行政の長期フェローシップ・プロジェクト」99年度事業の一環として、民営及び公共の雇用サービスの強化視察団として、Y・ワン中国労働社会保障省雇用訓練局農村雇用訓練課長ほかカンボジア、ラオス、モンゴル、ベトナムより各1名が来日(9月6〜14日)。労働省、木場公共職業安定所、東京都立江戸川技術専門校人材開発センター、日経連、マンパワー・ジャパン(株)、連合を視察。
同じく東・東南アジアにおける若年者の雇用視察団として、R・D・コンフェリド・フィリピン労働雇用省政策・国際担当長官補ほかカンボジア、インドネシア、マレーシア、モンゴル、タイ、ベトナムより各1名が来日(9月23〜30日)。労働省、生涯職業能力開発促進センター、東京都立品川技術専門校、文部省、学生職業総合支援センター、日経連、連合、東京都立世田谷工業高校を視察。
▼ハノーバー万博2000会期中にILOが複数機関と共催した社会対話フォーラム及びワークショップ(ハノーバー・10月3〜5日)に連合総研の鈴木不二一主任研究員が出席。
▼日経連/ILO/国際使用者連盟(IOE)第5回アジア太平洋使用者団体ハイレベル会合(シンガポール・10月9〜10日)に日経連の奥田碩会長、福岡道生専務理事、(財)日経連国際協力センターの鈴木俊男専務理事ほか4名が出席。
▼ILO労働安全衛生管理システム・ワークショップ及び協議会(ミュンヘン・10月11〜13日)に労働省安全衛生部の榎本克哉主任中央産業安全専門官が出席。
▼ILO履物・皮革・繊維・衣料産業の労働慣行三者構成会議(ジュネーブ・10月16〜20日)に(株)クラレの藤井信雄人事部次長、ゼンセン同盟の郷野晶子国際局長が出席。
▼ILO/日本マルチバイ「労働及び雇用政策行政の長期フェローシップ・プロジェクト」99年度事業の一環として、雇用における男女公平の推進視察団として、L・B・タパ・ネパール労働運輸管理省副次官(女性開発担当)ほかバングラデシュ、カンボジア、インドネシア、韓国、ラオス、タイより各1名が来日(10月23〜28日)。労働省、日経連、東京労働局雇用均等室、渋谷公共職業安定所宇田川町出張所、(財)21世紀職業財団、東京都立お茶の水技術専門校、総理府男女共同参画室、女性と仕事の未来館、連合を視察。
▼ILO職場の児童労働監督アジア地域会議(ダッカ・10月24〜26日)に労働大臣官房国際労働課より恒川謙司課長、荒木治美協力交流係長、日経連国際部の坂下多身職員、(財)国際労働財団調査教育課の鈴木るり職員が出席。
| おおうち ま り こ 大 内 真 理 子さ ん 本部社会的保護総局へ |
9月28日より当面5ヶ月の短期契約で、神戸大学博士課程でロシアの年金制度と貧困を研究されていた大内真理子さんが、社会保障・健康保険ジュニア専門家としてジュネーブのILO本部に赴任された。大内さんは社会的保護総局社会再保険プロジェクトに所属し、社会保険の育成と小規模健康保険制度の危機管理に関する調査研究、新しい手法の開発、運営機関の相互交流に関与した活動を行う。このプロジェクトは、低所得国における地域社会基盤の健康保険再保険制度の開発を目的とする。
大内さんの一層の活躍を祈念します。
◇ILO人の動き◇
▼9月1日付で、ILO東南アジア太平洋多角的専門家チーム(マニラ)の乙部尚子経済・ジェンダー専門家がILO本部雇用総局ジェンダー推進局へ異動。
▼9月12日付で、ILOジャカルタ事務所にアソシエート・エクスパートとして約1年勤務していた鈴木亜希子さんが、当面1年の予定で、本部雇用総局社会的融資課に少額融資担当のアソシエート・エクスパートとして異動。
| 論 文 概 要 紹 介 | |
| 先進国の部分的 退職と年金政策 |
ILOの季刊誌「インターナショナル・レイバー・レビュー」誌2000年2号にD・ラトゥリップ・ケベック年金局主任保険数理士(元ILO職員)他が標記の論文を寄稿している。以下はその概要である。 |
□部分的退職と高齢者の就業
先進国の常用雇用者は退職まではフルタイムで働き、その後は完全に仕事をやめてしまうのが一般的である。しかし、近年、高齢者の就業パターンが徐々に変化してきている。少なからぬ数の高齢者が退職前や年金を満額受給するようになって後も、パートタイムで就労している。このように、雇用者がキャリア職から引退に至る間にパートタイム労働をしつつ年金の一部もしくは全額を受けとる就労形態を、「部分的退職」と呼ぶ。
先進国の高齢者の労働力率は、過去数十年間に大幅に低下した。この変化は、年金制度の拡充と高齢者のパートタイム就労と関係している。先進7カ国の比較調査によると、パートタイム労働と年金の受給を組み合わせている高齢者の割合は、60〜64歳ではスウェーデンと米国で高かった。特にスウェーデンでは、これらの人々の割合は同年齢人口の19%、就業者の31%に達している。
部分的退職の利点は、個人レベルでは引退生活への軟着陸(生活時間、収入等)、労働市場では勤労意欲の向上や技能労働者の保持、労働供給の増加といった点が挙げられている。
他方で年金を受給していることが、企業再編等で高齢者の立場を不利にしたり、パートタイム労働を強いられたりする原因となる不利益も指摘されている。また政府財源による部分的退職奨励策が、所得が高い労働者に有利であれば、資源の分配に不公平が生じる可能性もある。
□部分的退職に影響を与える政策
国が部分的退職を奨励するには、次の3通りの政策選択肢がある。@所得テストを実施して年金給付を段階的に支給する方法、A所得テストを実施せず、満額支給する方法、B部分年金支給のために別立ての社会保障制度を用意する方法である。
@では、一定水準の所得を下回る場合、給付を満額受給しつつ部分的退職を選ぶことができる。賃金の低い労働者の方が、労働時間の面での裁量が大きい。年齢については、高齢である方が所得制限や年金の減額率が緩やかなので部分的退職へのインセンティブが大きい。労働者は部分的退職の選択を検討する場合、選択しなかった場合の経済的なインセンティブと比較するため、部分的退職を奨励するには、所得テストの効果に十分配慮する必要がある。
部分的退職の取得に対して社会保障制度が「罰則」を科すことがある。例えば、年金受給中は掛け金を積み立てることができない。支給される年金が退職前の賃金よりも上昇率の低い物価に連動している。より若い年齢で年金を受給すると給付額が減額される。これらの要因が合わさると、部分的退職を選択した労働者が引退した時の所得が大幅に減るため、制度は魅力を失う。継続的な就労が将来の給付の増額につながり、完全に引退した時に年金額が再計算されるのであれば、こうした「罰則」は避けられる。
Bは所得テストの代替的政策である。部分年金の算定基準は削減された労働時間数と、部分的退職の前年の所得である。一方、年金給付は制度への加入年数、勤続年数と所得に応じて決定される。部分年金は年金制度への加入期間が短い人には、所得テストよりも好ましい。部分年金制度の仕組みによっては、年金権が限られている人にしか好ましくない場合もある。
□先進国の部分的退職政策
本論文には、ノルウェー、スウェーデン、ドイツ、ベルギー、フランス、オランダ、日本、米国の政策概要が紹介されているが、ここではスウェーデンの取り組みに触れる。
スウェーデンは部分的退職奨励策で他国に先んじている。部分的退職は主に60〜65歳の高齢者を対象とし、労働時間を削減した者であれば、雇用者でも自営業者でも取得可能である。部分的退職の方法には次の3通りがある。
@60〜65歳では、特別年金制度の元でパートタイム労働と部分年金の受給を組み合わせることができる。1993年以降年金額は2分の1、4分の1、4分の3から選べるようになった。部分年金を受給すると引退時の年金は減額されるが、継続的に就労することで年金が増額されるので、その分は相殺される。
A障害年金と就労を組み合わせることもできる。1993年以降、満額、そして就労が可能である者は、4分の1、4分の3、2分の1の年金額から選べる。
B1976年に特別年金とは別の部分年金制度が設けられた。1995年の所得代替率は55%、支給対象となる削減労働時間数の上限は10時間、支給開始年齢は61歳であった。部分年金制度は、使用者から徴収される賃金税で賄われ、税率は0.5%である。
スウェーデンの法的な退職年齢は67歳だが、65歳を過ぎた者の就労を制限する労働協約があるため、部分的退職が可能なのは実質的に65歳までとなっている。2001年には年金制度の大幅な改革が予定されており、実質的な引退年齢の是正も含む変化が見込まれている。
かつては早期退職奨励策により、高齢者を労働市場から引退させることに政策の主眼が置かれていたが、退職を遅らせる方向に焦点が移った現在では、部分的退職政策が今後一層注目されるだろう。
| Sexual harassment: Addressing sexual harassment in the workplace A management information booklet セクシュアル・ハラスメント A. Reinhart著 1999年刊 英文・39頁 1,200円 |
本書はILO本部の雇用創出・企業開発局が、近年の企業経営上の重要な問題に対する企業の実践実例を紹介するシリーズの1冊目である。調査協力企業は、IBM、フォルクスワーゲン、ネスレ、シェルなどの欧米大企業14社。
セクシュアル・ハラスメントの問題を適切に処理できないと、企業イメージや社員の勤労意欲、ひいては生産性にまで影響を及ぼしかねないとの認識から、各社とも徹底した対策をとっていることが本書の調査結果から伺える。
日本でも男女雇用機会均等法が改正され、事業主にセクシュアル・ハラスメント防止のための配慮が義務づけられ、労働省の指針に沿って体制を整備する企業も多いと聞く。しかし本書が紹介する欧米企業のように明確で徹底した対策を取っている日本企業はまだ少数派ではないだろうか。
そもそもセクシュアル・ハラスメントとはどのような行為をさすのか、その性質上定義はあいまいなものとなりやすいが、調査協力企業の共通認識は「セクシュアル・ハラスメントは望まれない性的行為」であって、あくまでも受ける側がどう感じるかによる。それでは「職場でごく普通の悪意のない冗談まで言えなくなってしまう」と不安に思う向きもあるが、相手の尊厳を重視し敬意を持って接するという態度をもてば、さほど難しいことではないだろう。
またハラスメントの多くが権力と関係し、弱い立場の者が被害者となることが多い。とくに下劣な行為に対価型ハラスメントがある。これは性的な要求に応えるか否かで失業を含む雇用条件や業務評価等に影響がでると脅すもので、明らかな職権濫用である。このような卑劣な行為を防止するために欠かせないのが、企業のトップがハラスメントに対する明確な方針を示すことである。1997年、当時のフォード自動車のトロットマン会長が世界中の従業員に対して「どのようなハラスメントも許さない」という通達を出した。ハラスメントに対する苦情処理手続きの整備や、こうした行為が明らかになった場合の処分を定めること、さらに研修の実施などを通して、セクシュアル・ハラスメントの問題に真摯に取り組む姿勢を示すことが重要である。
企業の人事担当者はもとより、研修教材としても大いに参考になると思われる。
なお、本書の日本語版が、このたび日科技連出版社より出版された。
| Current international recommendations
on labour statistics: 2000 Edition 労働統計に関する 現行の国際勧告 2000年刊 英文・89頁 2,000円 |
本書は統計作成の基礎となる各種資料を収録したもので、労働統計に関する現行のILO資料がすべて掲載されている。1993年、98年に開催された国際労働統計家会議で新たに決議が採択されたため、1988年版を更新してこのたび新しく2000年版が刊行された。
収録資料は、労働統計に関するILO第160号条約、第170号勧告(ともに1985年採択)をはじめ、国際労働統計家会議で採択された決議で現在有効なもの、さらに同会議で採択されたガイドラインである。具体的な収録内容は以下の通り。
国際標準職業分類(ISCO−88)、従業上の地位別国際分類(ICSE−93)、経済活動人口・雇用・失業・不完全就業統計に関する決議、不完全就業の測定に関する決議、インフォーマル・セクター統計に関する決議、労働時間統計に関する決議、労働コスト統計に関する決議、各種賃金統計を関連づけるシステムに関する決議、雇用関連所得の測定に関する決議、家計の消費支出調査に関する決議、消費者物価指数に関する決議、社会保障統計に関する決議、職業上の負傷統計に関する決議、ストライキ・ロックアウト・その他労働争議関連統計に関する決議、労働協約統計に関する決議、雇用促進計画が雇用と失業の測定に与える影響に関するガイドライン、雇用及び失業統計における長期欠勤者の取り扱いに関するガイドライン、労働統計の配布に関するガイドライン。
ILO図書邦訳版
お問い合わせ・お申し込みは直接各出版元へ。
| ◇セクシュアル・ハラスメント:欧米企業の実践実例◇ | フォルクスワーゲン、シェル、IBMなど日本人にもなじみの深い欧米企業14社の実例をもとに、セクハラ対策の基本をわかりやすく示したハンドブック。社内方針の徹底、苦情処理手続きの実際、処分のあり方など、人事管理者には必携の書。また、セクハラ行為に嫌な思いをしている社員にとっても強い味方となるだろう。社内のセクハラ防止研修に是非ご活用下さい。 アリアン・ラインハルト著 ILO東京支局監訳 2000年刊 106pp. 1,300円(税別) 購入のお申し込みは、お近くの書店か、日科技連出版社(:03-5379-1238)まで。 |