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2011年記者発表概要(全文は英語

2011年12月発表分

 ミチェル・バチェレ前チリ大統領よりブラジルのジルマ・ルセーフ大統領に社会的保護の床報告書を贈呈英語原文
    2011年12月19日(月)発表ILO/11/99

 社会的保護の床顧問団の議長を務めるミチェル・バチェレUN Women事務局長(前チリ大統領)は、12月15日に、同顧問団が作成し、ILOから刊行された『Social protection floor for a fair and inclusive globalization(公正で包摂的なグローバル化のための社会的保護の床・英語)』のポルトガル語版をブラジルのジルマ・ルセーフ大統領に贈呈しました。報告書は、経済危機の中で社会の結束を増し、経済成長を刺激するために、最低限の社会的保護を意味する「社会的保護の床」を整備することを求めています。
 贈呈式においてルセーフ大統領は、生活の質の劇的な低下につながる失業問題の存在などを挙げ、ブラジルは2003年に始まる経験から、「社会的保護への投資は、貧困対策、不平等の縮小、生活水準の改善、そして社会の結束と安定を育む上で極めて効果的な手段であることを身をもって知った」と語りました。バチェレ顧問団議長は、「報告書の準備過程で、社会的保護政策がいかに経済危機の最悪の事態、とりわけ、最も脆弱な人々にとっての最悪の事態の回避に役立ち、ブラジルその他の新興国における需要を支え、景気回復を押し上げたか、示す機会を得た」と語っています。
 世界で14億人が1日1人当たり1.25ドル未満で暮らす極度の貧困状態にあり、9億2,500万人が慢性的な飢餓に苦しみ、8億8,400万人が安全な飲料水を入手できず、26億人が衛生設備を利用できず、非識字の成人が7億9,600万人おり、世界人口70億人の約75%に相当する51億人が十分な社会的保護を受けられず、何らかの形態の失業給付を受給している人々は失業者全体のわずか15%強に過ぎないことを報告書は示しています。社会的保護、とりわけ社会的保護の床の概念は、11月に開かれたG20カンヌ・サミットや2010年9月に開かれたMDGs(ミレニアム開発目標)国連首脳会合などといった様々な国際的な場で開発の基本的な手段としてますます認められるようになってきています。社会的保護の床は国連が危機に対応するために定めた九つのイニシアチブの一つです。ILOと世界保健機関(WHO)が主導するこのイニシアチブは、最貧困層及び最も脆弱な人々を保護し、これらの人々が貧困から脱する力を付けられるように社会的保護の床、つまり、一連の基礎的な権利と社会移転集合、そして雇用、保健、水・衛生、栄養、教育、世帯扶助の分野における必要不可欠なサービスの促進を目指しています。ILOは他の国連機関と共に「社会の床」の形で資金移転、基礎的サービスを受ける機会、生産的な包摂を組み合わせた事業計画を通じて極度の貧困を世界から根絶しようと活動しています。ブラジルの「貧困のないブラジル計画」はそのような政策の一例です。贈呈式典に際し、ILOとブラジルは社会的保護、貧困根絶、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に向けた生産的な包摂の分野での協力の趣意に関する議定書を締結しました。

 マスターカード財団が1,460万ドルを拠出してILO若年雇用計画と「Work4Youth」協力事業を開始:若者が教育から仕事の世界に移行する際に直面する課題について世界の人々の意識向上を図る英語原文
    2011年12月14日(水)発表ILO/11/98

 ILOとマスターカード財団はこのたび、高い失業率、働く貧困層(ワーキング・プア)、求職意欲喪失といった仕事の危機の悪化に直面している若者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)促進に向けたユニークなパートナーシップを形成することになりました。マスターカード・ワールドワイド社によって2006年に設立されたマスターカード財団が1,460万ドルを拠出して開始されるこの5年間の「Work4Youth」協力事業は、若者が教育から仕事の世界に移行する際に直面する課題について世界の人々の意識を高めることを目指すと共に、若年雇用に関する政策策定と計画立案の改善を世界的に支援していくことになります。若者がディーセント・ワークへ移行しようとする際に直面する困難に関する、特に途上国における情報不足に取り組み、5大陸28カ国で学校から仕事への移行調査を行うことが予定されています。得られた情報及びデータは若年雇用に関する国別・地域別・世界全体の分析報告に盛り込まれ、若者のニーズに応えた計画策定・政策決定が行われるよう、若年雇用や学校から仕事への移行問題に取り組んでいる政策策定者及び実務家を情報面で支援していくことになります。
 最近出されたILOの報告書は、世界全体の若年失業者の絶対数は2009年に記録された7,580万人の最高値から少し下がって2010年後半で7,510万人と推計されるものの、若者の就職はますます困難になって仕事探しをあきらめてしまっていると指摘して、良質の仕事の不足に対する不満を高めている「失われた世代」の若者の形成を警告しています。安定した雇用を見つけられないことは、若者の間に欲求不満と無力感を生み、若者本人のみならず社会全体に大きな課題を提示しているだけでなく、企業や国家のイノベーション(革新)力や競争優位を育む力を損なうことにもなります。
 ILO若年雇用計画のジャンニ・ロサス調整官は「若者にディーセント・ワークを見つける機会を提供することは、貧困撲滅、民主主義の醸成、持続可能な開発の促進に必要不可欠」と唱えた上で、働く貧困層の悪循環に捕らわれる若者が増えている現状を指摘して、世界全体で1億5,200万人に上るワーキング・プアの若者の生産性、貯蓄、投資、収入の向上を助ける学習機会提供の必要性を説き、「若者の雇用上の課題に取り組む創造的な解決策とパートナーシップが緊急に必要とされており、Work4Youthパートナーシップはそのようなイニシアチブの一例」と語っています。マスターカード財団のディーパリ・カンナ若者学習部長は「私どもとILOのパートナーシップは、政策策定者、民間部門、その他の使用者、教育機関がいかに国際機関と協力して世界中の若者のディーセント・ワーク機会の拡大を促進できるかを示す好例」であるとして、ILOと協力して若年雇用と教育に関する正確かつ適時のデータを提供できることの喜びを誇らしく語っています。

 「雇用、若者、民主的統治」国際フォーラムをILO開催:若者により多くのより良い仕事を英語原文
    2011年12月13日(火)発表ILO/11/97

 ILOは12月12〜13日にペルーの首都リマで「雇用、若者、民主的統治」に関する国際フォーラムを開き、若者の高失業率とインフォーマル経済における就業の多さが欲求不満と意欲喪失につながり、統治上の課題が提起されている中南米・カリブの若者の雇用情勢改善に向けた取り組みの強化を求めました。会議には、米州機構(OAS)のホセ・ミゲル・インスルサ事務局長やペルーのラファエル・ロンカリオロ外務大臣も出席しました。
 開会演説を行ったエリサベト・ティノコILO中南米・カリブ総局長は、中南米・カリブの都市部では2011年に失業率が1990年代半ばと同水準の7%まで下がり、この地域は2008〜09年の危機からの回復に成功しているとしつつも、「新たな危機の影響の可能性に対処する方法、それが雇用、特に若者の雇用、そして社会事業計画や投資の流れにどう影響し、国家は統治を維持し、市民を保護するためにいかに対応すべきかを検討すること」という会議の目的を強調しました。ティノコ総局長は、この地域では若者の失業率が全体平均の2倍の14.4%に達し、若者の10人中6人がインフォーマル経済の仕事しか見つけられずにいることを指摘し、今回のフォーラムが若者に焦点を当てた理由は、「社会が若者に仕事を創出しなかったら、若者は民主機構に対する信頼を失ってしまう」との懸念にあると語りました。そして、「若者の失業及び不完全就業はこれまでで最も高い訓練と教育を受けた世代の潜在力の活用を妨げ、開発を阻み、政治的にも大きな影響がある」として、アラブの春から始まって2011年に見られた若者の暴動の世界的な広がりに言及しました。その上で、こういった課題に取り組む公共政策の重要性を強調し、ILOは地域の政策利害関係者と協議の上、こういった戦略を促進する体系的な取り組みを可能にする若年雇用の綱領開発に参加することを発表しました。そして、「若者は民主主義に答えを求め、機会を欲して街頭に繰り出している」として、「若者の声に耳を傾け、それに従って行動しよう」と結びました。
 OASのインスルサ事務局長は、「市民は必ずしも満足しているわけではないものの、唯一正統な政府形態である民主主義は地域で依然として妥当性、有効性を保っている」としつつ、近年の進歩にかかわらず、貧困や不平等といったなかなか解消されない問題が依然残っていることを指摘して、「民主主義は必要なものを提供してこなかった」と語りました。

 ILOアジア太平洋地域会議閉幕:世界経済の混迷が雇用に与える影響に抗するための勧告を採択英語原文
    2011年12月7日(水)発表ILO/11/96

 アジア太平洋地域内のILO加盟国中38カ国より410人以上の政労使代表が参加し、京都で開催された第15回ILOアジア太平洋地域会議は、雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)への支援を、力強く持続可能でバランスの取れた成長と開発のための政策の中心に置くべきことに合意する結論を採択して12月7日に4日間の日程を終えました。会議では、現在見られる経済の不確実性の結果にこの地域が備えるための方法について幅広い話し合いが行われ、政府及び労使団体の関与、実効的な社会対話、団体交渉の促進を伴い、ILOのグローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)を基礎とした、公平で仕事を豊かに生む成長を促進する政策集合が提案されました。生産性向上を生活・労働条件の改善、所得向上、ディーセント・ワークの機会拡大の基礎とすべきことも求められました。世界的な経済情勢の悪化に取り組む準備態勢を改善する措置としては、持続可能な企業と雇用集約的投資への支援、最低賃金制度の整備、実効的な社会的保護の床の構築、よりグリーンな成長とグリーン・ジョブの促進、若年雇用及び労働力移動に係わる問題に対処する政策などが挙げられました。
 会議では、アジア太平洋地域が特に被害を受けやすい自然災害の影響緩和に向けて適用できる雇用・社会政策についても日本政府主催の特別セッションで検討が行われ、災害対応と雇用政策に関する知識の共有、重要な教訓の抽出が図られました。また、社会的保護の床顧問団が10月に発表した、議長の名を取って「バチェレ報告」と呼ばれる報告書『Social protection floor for a fair and inclusive globalization(公正で包摂的なグローバル化のための社会的保護の床・英語)』について顧問団の一員であるインド国家計画委員会のスーダ・ピライ事務局長が紹介したことを受けて、地域会議の結論では「各国の状況に応じた実効的な社会的保護の床の構築」が優先事項の一つに掲げられました。
 山本幸子ILOアジア太平洋総局長は、「この地域は経済的には世界で最も力強いものの、この成長から十分な仕事、ディーセント・ワークが生み出されなかった」として、現在の混迷以前から成長が均等に分かたれず、不平等が拡大しつつあった状況を指摘して、「対処されなければ、この不平等は経済と社会の進歩を脅かす」と訴えました。会議では、一部アラブ諸国で見られる最近の展開と、社会的排除、人間らしい仕事の不足、基本的な権利の否定の結果とのつながりに留意し、社会正義、尊厳、人間らしい仕事、基本的な権利の尊重、経済的排除の解消に対する幅広い要求に対処する上で、すべての人へのディーセント・ワークを目指すILOのディーセント・ワーク課題の重要性が認められると同時に中核的労働基準の批准・実施努力を強めることで合意が達成されました。ナダ・アル=ナシフILOアラブ総局長は、「この力強い地域は膨大な課題に直面している」として、「ディーセント・ワークと完全雇用を持続可能な開発の中心に確保することが鍵」と唱えています。
 第15回ILOアジア太平洋地域会議の開会式には野田佳彦首相も出席して演説を行いました。他に、東チモールのジョゼ・ルイス・グテレス副首相、アラブ労働機構(ALO)のアハマド・ルクマン事務局長、東南アジア諸国連合(ASEAN)のスリン・ピッスワン事務総長の基調講演も行われました。

 政策策定者は勤労世帯のニーズと自らを再び結び付け、雇用創出を景気回復努力の中心に据える必要があるとILO事務局長英語原文
    2011年12月4日(日)発表ILO/11/95

 国立京都国際会館において12月4日に開幕した第15回アジア太平洋地域会議開会演説を行ったフアン・ソマビアILO事務局長は、成長が再開し、投資が戻ってきているにもかかわらずアジアの上空には再び暗雲が集まりつつあると述べ、世界経済が再び落ち込む恐れがある中でかつてないほど開かれたアジア経済にはプラスとマイナスの二つの影響がある可能性を指摘しました。そして、過去30年間育まれてきた世界の成長モデルは幾つかの域内諸国に経済的な利益をもたらしたかもしれないものの、不均衡かつ不公正で持続不能であることが立証され、「不平等、環境面の新たな課題、大きなディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の不足を形成し、放置しておけば社会の結束、政治の安定、長期的な発展を脅かす」と警告し、社会正義の新たな時代に道を開く成長と開発の新たなビジョンの必要性を説きました。さらに、今のこの時を主としてユーロ圏の金融市場における信頼の危機ととらえるのは「深刻な誤り」と指摘し、逆に、「我々の多国間統治の枠組み、さらには多くの国内政治体制さえもが、世界の金融を操作している人々の力にうまく抗し切れていないとの思いが広がってきている」として、「勤労世帯と地域社会のために、そして実体経済の企業や起業家のために公共政策を策定する政府の能力に対する人々の信頼感を維持回復することが急務」と訴えました。
 また、アラブ世界などで広がりつつある人民暴動の多くが、経済的排除と真の機会の欠如に対する欲求不満と怒りを表明する若者に主導されている現状を紹介し、「そのどこでも、人間らしい仕事に至る公正な機会に対する要求が見られる」として、「政策策定に携わる人々は、自らを勤労世帯のニーズに再び結び付け、世界的な仕事の危機の根源に取り組む必要がある」と唱え、「人間らしい仕事を生み、インフォーマル経済を吸収し、非生産的な金融操作の余地を大幅に減じるような生産的な企業を伴う実体経済における投資を刺激するグローバルな政策と措置」の導入を訴えました。さらに、世界の金融業界を融資という伝統的な銀行業へ復帰させる改革が必要不可欠とも主張しました。
 ソマビア事務局長は、地域会議で検討すべき政策課題として、社会的・経済的により効率的な成長モデルの形成に必要な措置に加え、より効率的かつより公平で仕事を豊かに生む成長パターンの開発、とりわけ最も脆弱な人々及び最貧困層を保護する社会的保護の床の構築・強化、中小企業の潜在力の解放、グリーン・ジョブの開発と低炭素経済に向けた正しい移行、社会対話を核として国際労働基準と就労上の権利を支えるより包摂的でより公平な労働市場の確立、地域協力・地域統合の支持、若者に対する人間らしい雇用機会の確保を挙げました。最後に、日本でよく用いられる「実行力なき洞察力は白日夢、洞察力なき実行力は悪夢」の言葉を引用し、「道徳のコンパスを伴わない経済はあまりにも多くの人々に悪夢のような存在を創り出す」としてディーセント・ワーク・ビジョンの重要性を説き、「行うべきことはまだ多く残っているものの、政策策定の場においてはこのビジョンが既に根付き、様々に行動を規定している」として、引き続きの努力を求めました。

 ディーセント・ワークに向けた日本の公約を賞賛、世界経済危機の解決努力に際しては人を第一に置くべきとILO事務局長英語原文
    2011年12月4日(日)発表ILO/11/94

 第15回ILOアジア太平洋地域会議の開幕に先立ち、12月4日に京都で野田佳彦首相と会談したフアン・ソマビアILO事務局長は、男女・若者にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を創り出すことに向けた日本の公約を評価した上で、主要20カ国・地域(G20)における発言力を引き続き用いて、世界経済危機の解決に向けた取り組みの中心に仕事の創出を据えることを目指す、より協調的な国際活動への支援を求めました。過去30年の成長モデルは良質の仕事を提供することに失敗し、世界は人を第一に考える新たなモデルを必要としており、とりわけ仕事が見つからない若者や不完全就業状態の若者の苦境は緊急の注意を要すると指摘した上で、ソマビア事務局長は、「市場の信頼を回復することについては多く話されているものの、人々の信頼もまた回復する必要があり、この危機から何とか抜け出すには人々から信頼されることが必要不可欠」と唱えました。また、ディーセント・ワークをすべての人へ実現することを目指すILOのディーセント・ワーク課題に対する日本の公約を評価し、雇用創出における日本の経験、とりわけ、災害復興過程における経験は他の域内諸国に貴重な教訓を与えていると述べました。
 野田首相は、ソマビア事務局長が1999年の事務局長就任時に導入したディーセント・ワーク課題の概念の重要性を強調し、ディーセント・ワークは国際社会におけるILOの存在感を高めたと評した上で、2010年6月に政府が打ち出した「新成長戦略」を構成する概念の一つになっていることを紹介しました。
 ソマビア事務局長は、今年3月に起こった大震災と福島原子力発電所の事故後の困難な状況にもかかわらず開催国として会議を受け入れてくれた日本政府に対し、そしてILOの活動に対する寛大な支援について日本に対する感謝の意を表明しました。

 ILO地域会議、アジア太平洋の雇用、経済・社会の脆弱性に焦点英語原文
    2011年12月3日(土)発表ILO/11/93

 約40のアジア、太平洋、アラブ諸国の政府及び労使団体の代表約450人が参加して12月4〜7日に国立京都国際会館で開かれる第15回ILOアジア太平洋地域会議では、世界経済の見通しが不確実な中、雇用、経済・社会進歩を守る方法について話し合いが行われます。4日の開会式では野田佳彦首相が基調講演を行います。ほかに、東チモールのジョゼ・ルイス・グテレス副首相、アラブ労働機構(ALO)のアハマド・ルクマン事務局長、東南アジア諸国連合(ASEAN)のスリン・ピッスワン事務総長、ILOのフアン・ソマビア事務局長の演説も行われます。
 会議の中心的なテーマは、◇マクロ経済政策、雇用政策、社会的保護政策の調整、◇生産的な雇用、持続可能な企業、技能開発の支援、◇労働における権利と社会対話、となっています。グリーン・ジョブ、雇用政策を中心に据えた自然災害危機対応、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)のためのパートナーシップに関する特別セッションに加え、緊急の課題である若者の雇用を取り上げる若者リーダーズ・フォーラムも開かれます。
 アジア太平洋地域は経済成長を続けているものの、経済は極度に不確実で、その重要な輸出市場に影響を与える他の地域の混乱に影響を受けないままではいられないだろうとの不安が高まる中で会議は開幕します。現在でもまだアジア太平洋地域の失業者数は金融危機突入前の2007年に記録された7,690万人まで下がっておらず、地域の労働者の6割近くが脆弱な就業形態にあるといった問題を指摘して、ソマビア事務局長は、「現在の不均衡な成長は労働者とその家族に人間らしい暮らしを確保するのに必要な質及び量の仕事を提供することに失敗してきた」として、「社会的及び経済的により効率的な成長モデル」の必要性を説いています。
 アジア太平洋地域会議は通常4年ごとに開かれます。2006年に開かれた前回の会合は韓国・釜山で開かれました。

 ILOグローバル・ビジネス障害ネットワーク・ウェブサイト新設英語原文
    2011年12月2日(金)発表ILO/11/92

 2011年の国際障害者デー(12月3日)に際し、ILO技能・就業能力局の障害事項担当チームと使用者活動局は、多国籍企業、使用者団体、障害者ネットワークを結び付けるグローバルな知の交流スペースをインターネット上に新設しました。この「ILO Global Business and Disability Network(ILOグローバル・ビジネス障害ネットワーク・英語)」は、参加者が知識を共有して好事例を見出し、障害者の採用・雇用維持を円滑化する製品・サービスを開発し、障害事項に関する専門知識を強化し、全国的及び地元の事務所やサプライチェーン(供給網)を通じてILOの活動やパートナーと参加者を結び付ける助けになることを目指しており、障害者の包摂促進に向けた大きな一歩になることが期待されます。
 ウェブサイトの開発に携わったILOのデブラ・ペリー上級障害技術専門官は、「皆が一緒になって、障害者を職場に組み込む最善の方法、つまり何が好事例で、誰が企業の良きパートナーとなり、どうすれば企業がビジネスの論拠を実現し、障害者がディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)にアクセスできるよう前に進めるか、見つけだす方法」を求めたことが着想点になったことを挙げています。使用者活動局のヘンリク・モラー上級専門官は、「この協力関係によって、障害事項に関するILOの知識と専門性がネットワークのメンバーに提供され、より多様で生産性が高く、障害者をより包摂する方向に職場を変えることになろう」と期待を表明しています。
 ILOはまた、ネットワーク・メンバーへのインタビューや日本IBM社などにおける働く障害者の事例を紹介した新しいビデオも制作し、YouTube上で公開しています。

 第16回アフリカのエイズ・性感染症国際会議の基調を定めるILO英語原文
    2011年12月1日(木)発表ILO/11/91

 2011年12月4〜8日の日程でエチオピアの首都アディスアベバで開かれる第16回アフリカのエイズ・性感染症国際会議(ICASA)にILOからはアリス・ウエドラオゴHIV(エイズウイルス)/エイズと仕事の世界ILO計画部長をはじめとした多くの専門家が参加し、複数のセッションで発表するのに加え、主催イベントを通じて職場におけるエイズの烙印と差別を減らすことの重要性に光を当てる予定です。12月5日に開かれる「HIV対応のための促進的法環境」と題するセッションに参加するウエドラオゴ部長は烙印と差別のない職場形成の重要性を説くと共に2015年までに新規感染者ゼロ、差別ゼロ、エイズ関連死亡者ゼロを達成するという目標に向けてILOの国際労働基準が果たし得る役割を紹介します。ILOはまた、同日、「HIVとエイズに関する新国際労働基準:政策から行動への移行」と題するサテライト・セッションを主催し、企業、労働組合、市民社会の代表者を招き、職場における差別を評価する方法、HIVと共に生きる労働者の保護に向けて既存の法の執行を確保する方法、HIVとエイズに関する新国際労働基準がもたらすであろう違いなどに関して意見交換を図る予定です。
 「実際のHIV感染状態または感染者と見なされている状態に基づく烙印と差別は就職機会の障害となり、しばしば失業や貧困の増大につながります」と、ウエドラオゴ部長は語っています。ILOは2001年にHIV/エイズと働く世界に関する行動規範を策定し、職場におけるHIV/エイズ問題に関する手引きと支援を率先して提供してきました。2010年にはこれを発展させてHIV及びエイズ並びに労働の世界に関する初の国際労働基準(第200号勧告)を採択し、HIVと共に生きる労働者の権利保護を強化し、HIVに対する予防、治療、ケア、サポートの機会を円滑化するための国内法・政策・方針の開発に向けた手引きを提供しています。第200号勧告の価値は2011年の国連特別総会で採択されたHIV/エイズに関する政治宣言でも認められました。
 ILOはこの他に、1)動き出す組み合わせ予防:職場を入り口として用いる、2)鍵を握る集団の最も危険度の高い層に到達する手法、3)HIV及びエイズに関する職場の法及び政策/方針の改善を主唱する方法、の三つのワークショップを開催し、国のエイズ対応の改善に向けて協同組合を関与させる方法やリベリアのゴム農園労働者のHIVに対する脆弱性評価に関する口頭発表、ブルキナファソ、レソト、モザンビーク、セネガルにおけるILOの活動のポスター発表を行い、「職場におけるHIV及び結核の管理不作為の克服:より大きな主体性と持続可能性に向けた一つの道としての労働安全衛生への統合」、「職場において中心的な人権問題:職場におけるHIV、性と生殖に関する健康と権利、母子保健の組み込み」といったテーマに関する他団体主催イベントに参加します。

 南南開発グローバル・エクスポ2011:社会的保護、ディーセント・ワーク、食料安全保障に関する解決策交換フォーラムをILO主催英語原文
    2011年12月1日(木)発表ILO/11/90

 2011年12月5〜9日にローマにある国連食糧農業機関(FAO)本部で開かれる南南開発グローバル・エクスポ2011の中で、ILOは12月6日に社会的保護とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と食料安全保障に関する解決策交換フォーラムを主催します。ILO本部で開かれた2010年のエクスポに続き、ILOはディーセント・ワークを促進しつつ水平協力を促進する数多くの好事例及び戦略を紹介する予定です。今回は、食料安全保障に係わる一連の問題を取り上げ、ディーセント・ワークと社会的保護を通じて食料安全保障を改善する革新的な解決策や仕組みを示すことになっています。「生産的で人間らしい雇用と社会的保護に対する投資戦略は、経済成長を加速し、食料の生産・加工・入手可能性を刺激し、国民の多くの部分に貧困と食料不安から脱することを許す収入を提供できます」と、パネル討議の司会を務めるILO部門別活動局のアレッテ・バン・ルール局長は語っています。ケニア、ブラジル、パナマ、カンボジアの専門家が参加するフォーラムは、ディーセント・ワークをすべての人へというディーセント・ワーク課題の促進に向けた総合的な南南協力アプローチを紹介する良い機会となります。
 児童労働に従事する子どもの7割が農業、漁業、畜産業などの第一次産業で見られることから、フォーラムではとりわけ経済・食料危機時における反児童労働戦略の一つとしてますます注目されるようになってきている社会的保護の重要性にも光を当てる予定です。来年初めの完成を目指してILOとFAOが共同制作中の漁業・水産養殖業における児童労働に取り組むための好事例ガイドの草稿も発表されます。
 グローバル・エクスポにおいて、ILOは他に開発協力に関するハイレベル会合や南南利害関係者会合などにも参加し、ILOの開発協力戦略の概念普及を図る予定です。

2011年11月発表分

 パレスチナ被占領地のディーセント・ワーク促進に向けてクウェートが50万ドル拠出英語原文
    2011年11月15日(火)発表ILO/11/89

 11月に開かれた第312回ILO理事会では議題の一つとして、アラブ被占領地におけるILOの拡大技術協力計画の実施状況が報告されましたが、11月14日にILOを訪れたクウェートのダハラル・アブドゥル・ラザク・ラズーキ大使はパレスチナにおけるILOの技術協力計画を支援するために50万ドルの任意資金協力を申し出ました。この資金は、とりわけパレスチナ雇用・社会的保護基金を通じた雇用創出努力、経済・社会国家協議会の設立支援、そして労使がこれらの事業に十分に参加できるための能力構築に用いられます。
 パレスチナにおけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現に向けた道徳的・金銭的支援の拡充に用いられるこの拠出金について、ナダ・アル・ナシフILOアラブ総局長は、「法律相談所などの戦略的な活動を支えるため、そして貧困及び不平等の縮小並びに社会の安定化を助ける社会的な権利、サービス、設備の基礎集合を確保することによって社会的保護の強化を目指すILOの取り組みの拡充にとって決定的に重要」として感謝の意を表しました。
 2009年12月から始まったパレスチナ被占領地におけるILOの活動に対するクウェートの資金協力は今回で3回目になり、拠出総額は200万ドルに達しています。

 欧州委員会のアンドル委員、厳しい激動の時代に直面する欧州に対し、仕事により強く焦点を当てることを呼びかけ英語原文
    2011年11月14日(月)発表ILO/11/88

 現在ジュネーブで開かれている第312回ILO理事会のグローバル化の社会的側面作業部会で11月14日に講演を行った欧州委員会のラースロー・アンドル委員は、景気見通しの悪化を食い止めようと苦闘する欧州に向けて雇用創出にもっと重点を置くことを呼びかけました。欧州委員会で雇用・社会問題・社会的包摂を担当するアンドル委員は、長期失業者の増加、不安定雇用率の上昇、若者の高い失業率を最も喫緊の課題に挙げ、厳しい激動の時代にある欧州連合(EU)の現状を紹介しました。1年以上の長期失業者がEU全体では失業者の43%に達し、国によっては半分を超えていることを指摘した上で、アンドル委員は、「成長見通しの低下と組み合わさったこのような高い数字は、人々が労働市場から長く排除される深刻な危険をはらみ、社会に重大な結果」をもたらす可能性を警告し、「今までとは異なった政策選択肢を検討する時」と訴え、全ての人々に人並みの収入を確保することを目指した措置、若者の雇用展望の促進に向けた措置、不安定契約対策などを挙げました。収入側の問題に取り組み、労働者の課税負担の一部を取り除くことの重要性も強調しました。また、「EUは財政政策、成長見通し、金融部門の強さ、これらの変数に対する市場評価といった複雑な相互作用に直面している」とした上で、財政強化の取り組みの中で、成長の鍵を握る前提条件である労働市場の展望が妨げられるべきでないと訴えました。
 フアン・ソマビアILO事務局長はアンドル委員を紹介する演説の中で、今年になって急激に膨らみつつある「雇用、社会的保護、社会対話の課題」に注意を喚起して、言葉を行動に移し、回復の政策課題を実行することを各国政府に呼びかけました。
 ILO国際労働問題研究所と欧州委員会の雇用・社会問題・包摂総局は、今回の危機が労働市場と社会にもたらした課題に力を合わせて取り組む協力活動を2010年から実施しています。この成果物である2冊の新刊が完成し、講演に先立ってアンドル委員とソマビア事務局長は共同で記者発表を行いました。『Building a sustainable job-rich recovery(仕事を豊かに生む持続可能な回復の構築・英語)』は、2008年に始まった金融危機の原因を分析し、先進国・途上国双方において即時に取られた政策対応を概説しています。『Towards a greener economy: The social dimensions(よりグリーンな経済に向けて:社会的側面・英語)』は、環境に配慮したグリーン経済の特徴とそれが労働市場にとって持つ意味に関する理解の促進を目指しています。

 ディーセント・ワーク研究賞受賞者ILOで講演英語原文
    2011年11月11日(金)発表ILO/11/87

 ILOは2007年からディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の概念の普及に向けて多大な学問的貢献を行った人々にディーセント・ワーク研究賞を授与してきましたが、今年2月16日に発表された2人の受賞者に対する授賞式典と受賞記念講演会が現在ジュネーブで開かれている第312回ILO理事会の中で11月11日に行われました。
 グローバル化の中でのディーセント・ワークに関する分析、そして雇用、ジェンダー、開発の相互連結に関する研究に対する学問的な貢献が認められたジャワハルラル・ネール大学のジャヤチ・ゴーシュ教授と、ILO基準、労働法、社会正義に関する知識の進展に対する功績が認められた国際的に名高いイブ・C・ランダウ教授の2人の女性学者はいずれも、世界の労働市場が現在直面している課題に対処するには、ディーセント・ワークを基礎とした経済政策の改革が必要であると訴えました。開発経済学に携わる研究者の国際的ネットワークであるIDEAS(International Development Economics Associates)の事務局長も務めるゴーシュ教授は、「持続可能でないバブルを基礎とした急成長期は、より多くのディーセント・ワークの創出の点で寄与するところがほとんどなく、不平等を相当に拡大した」として、各国で見られる抗議の波に反映されているように、今、こういった結果を受け入れない人々の感情が存在することを示し、ますます声高に表明されてきている大多数の市民の願望と期待によりよく沿った、全く異なるマクロ経済政策の策定法が求められると説きました。職場における男女平等の問題に長く光を当てて数々の著書を著し、ジュネーブ大学やエルサレムのヘブライ大学など複数の国の有名大学で教鞭を執ってきたランダウ教授は、数日前に誕生した70億人目の地球市民に言及し、この人に対して生産的なディーセント・ワークへのより円滑な道が開かれることへの期待を述べ、『Oxford Companion to Law(オックスフォード法学必携)』やフランス語辞典『ラルース』にディーセント・ワークという語が含まれることへの希望を表明しました。
 授賞式に際し、フアン・ソマビアILO事務局長は、仕事の世界を通じた社会正義の課題にその豊富な知的能力を生かして貢献した2人の学者を讃え、その研究はより公正な世界の可能性に対する信念を生かし続ける助けになり、今後の選択肢を指し示していると語りました。

 よりグリーンな経済に求められる新たなグリーン・ジョブ技能の育成−ILO新刊英語原文
    2011年11月7日(月)発表ILO/11/86

 ILOはこのたび発表した新刊書『Skills for green jobs: A global view(グリーン・ジョブのための技能:世界概観・英語)』の中で、より環境に配慮したグリーン経済への移行が秘める雇用潜在力は、環境に優しいグリーン・ジョブに関連した幅広い新たな技能の育成なしには実現されないと結論づけています。ILO技能・就業能力局が欧州職業訓練開発センター(CEDEFOP)と協力して世界人口の約6割に当たる全21カ国を対象に行った研究の成果物である本書は、グリーン経済の成長を支える上で決定的に重要な新たな技能の育成に関連したニーズと課題を概説しています。
 この分野で現在得られる中では最も包括的な書である本書は、経済のグリーン化が秘める相当の雇用創出潜在力を認めつつ、直面している環境上の課題、国内の政策と政治、規制枠組みによって決められるところが大きい各国特有の新技能育成の現状を記した上で、国際的な政策・立法活動の役割の増大と各国の政策変化に与えるその影響力の増大を示しています。報告書は例えば、建物のエネルギー効率といった幾つかのグリーン部門の成長の過小評価、一般的な科学者・技術者不足、廃棄物管理など一部部門の魅力のなさと評判の悪さ、各国の一般的な技能基盤構造などの諸要素から生じている技能不足が既にグリーン経済への移行を阻む主要な障壁となっている事実を明らかにしています。
 経済のグリーン化からもたらされる変化は三つの方向から技能需要に影響を与えています。第1は、炭素集約的な活動から生産のグリーン化に向けた産業レベルの活動移行を意味する「グリーン構造改編」、第2は、新たな規制の導入、新技術の開発に伴う新しい職業の誕生、そして第3は、最も幅広い技能要求の変化の源となっている、生産工程や職場のグリーン化に伴う既存職業の技能プロフィールの変更で、あらゆる教育・訓練レベルにおける既存カリキュラム、資格基準、研修プログラムの大規模な改訂努力を要請します。
 生産のグリーン化が生み出す新たな雇用機会は雇用の喪失を相殺すると期待されているものの、環境に配慮しない産業で職を失った人が必ずしもグリーン・ジョブに就けるわけではなく、報告書は、環境に優しい低炭素グリーン経済への公正かつ円滑な移行を促進する上での緊急の課題は依然として、労働者の再訓練と技能向上であると唱えています。にもかかわらず、国内経済のグリーン化を加速する戦略に技能開発を持続的に含む例はまだ限定的であることが国際比較から示されています。政策調整の欠如に加え、新たな技能に投資するインセンティブを減じるものとして、既に成立した環境規制が十分に実施されていない例も多く見られます。
 著者の1人であり、研究の全体的な調整を行ったILOのオルガ・ストリエツカ=イリナ技能開発専門家は、「生産のグリーン化に向かって移動する経済は、来るべき構造変革と既存の仕事の変化に対処すれば雇用創出の潜在力をとらえられることを報告書は示している」として、「幼少期を含むあらゆる教育・訓練レベルに持続可能な開発と環境についての意識を組み込むことが重要」と語っています。
 ILOは、2008年に国連環境計画(UNEP)、国際使用者連盟(IOE)、国際労働組合総連合(ITUC)と共に、環境と雇用の政策・目標を揃えることによって政府及び社会的パートナーがこのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)潜在力を実現することを支援するグリーン・ジョブ・イニシアチブを開始しました。今回の研究はその一環として行われたものです。

 成長、仕事、社会的保護に再び注意を向けたG20をILO歓迎英語原文
    2011年11月4日(金)発表ILO/11/85

 11月3〜4日にフランス・カンヌで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会合においてG20の「強固で持続可能な均衡ある成長のための枠組み」の中で成長と仕事が強く強調されたことを歓迎し、フアン・ソマビアILO事務局長は、「G20の首脳はマクロ経済面の政策課題をディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、若者が勤労生活に向けてより良いスタートが切れるための政策、極度の貧困を予防する社会的保護の床についての政策と結び付けようとしていますが、これが決然と追求・実行されれば、政府は自分たちの利益のために世界経済を管理でき、その用意があるとの信頼感が勤労者の間に再び醸成され始めるでしょう」と語っています。
 G20カンヌ・サミットは、メキシコ政府が議長国を務める2012年のG20の話し合いの過程で開かれる「雇用に関するタスクフォース」の設置も決定しました。タスクフォースは当初、他の年齢層の2〜3倍の失業率を示す若者の雇用問題に特化して取り組むことになります。カンヌ・サミットの最終宣言では、社会的保護の床顧問団が最近発表した報告書をもとに、各国が独自に設計する社会的保護の床に投資することの重要性も認められました。宣言はまた、ILO、国際通貨基金(IMF)、経済協力開発機構(OECD)、世界銀行を含む複数の国際機関が世界の雇用見通しとG20の枠組みの下での経済改革課題が仕事の創出にどう貢献できるかに関し、各国財務大臣に報告することや、国際機関における雇用・社会問題と経済・通貨・金融問題との整合性の強化を求め、経済政策が社会に与える影響の評価における協働を呼びかけています。労働における基本的な原則と権利の促進と完全な尊重の確保に向けた公約も改めて強調され、ILOは8基本条約の批准と実施の促進に向けた活動の継続を奨励されました。
 ソマビア事務局長は、実体経済を代表する人々の声が政策討議に反映されることの重要性を強調していますが、社会対話の役割はG20首脳からも支持されました。企業の代表からなるB20と労働界の代表からなるL20も雇用政策イニシアチブに関する共同声明を発表し、若者、社会的保護の床、労働における基本的な原則と権利、多国間システムにおける政策整合の問題を特に取り上げました。

2011年10月発表分

 ILO新刊「仕事の世界報告書2011年版」:新たにより深い雇用減退に向かいつつある世界、さらなる社会不安の発生を警告英語原文
    2011年10月31日(月)発表ILO/11/84

 ILOはこの度発表した定期刊行物の最新版の中で、「世界の景気回復の行き詰まりは労働市場に劇的な影響を与え始めた」として、世界は新たにより深い仕事の落ち込みの縁にあり、これは景気回復をさらに遅らせ、多数の国にさらなる社会不安を生じさせる可能性があると警告しています。『World of work report 2011: Making markets work for jobs(仕事の世界報告書2011年版:仕事のために機能する市場の形成・英語)』は、労働市場は現在、通常の6カ月遅れの景気減速の影響下にあり、危機前の就業水準に戻るには今後2年間で正味8,000万人分近く(うち先進国で2,700万人分)の仕事が新規に創出される必要があるものの、最近の景気減速は創出される仕事を必要な数の半分程度に留める可能性が高いことを推測させ、この傾向から見て、先進国の雇用が危機前の水準に回復するには、同書昨年版の予測を1年上回る最低5年かかるとの予測を示しています。世界の失業者数は2億人超と記録史上最高に達し、雇用情勢は既に不安定ですが、最近のデータが得られる先進国の3分の2近く、新興国及び途上国の半数で雇用が再び減速している状況が示されています。
 仕事がないことに対する不満や危機の負担が公正に分配されていないといった認識による怒りの度合いを示すものとして、新たに作成された「社会不安」指数は、調査対象119カ国中45カ国以上で社会不安の危険度が上昇していることを示しています。これは欧州連合(EU)諸国を中心とした先進国、中東で激しく、少し遅れてアジアが続き、対照的にサハラ以南アフリカと中南米では低くなっています。
 現在進行中の景気減速が雇用情勢に特に強い影響を与える可能性がある理由として、報告書は次の三点を挙げています。
  1. 危機の開始時に比べて今は企業の労働者を雇い続ける力が低下
  2. 財政緊縮措置を求める圧力の高まりによって、政府が雇用・所得支援計画を維持または新規に採用する見込みは低下
  3. 国際的な政策調整の欠如によって各国は孤独に行動するよう放置されていること
 報告書が見出したこの他の主な事項には以下のようなものがあります。

 危機と社会の不安定性に取り組む鍵は「社会的保護の床」英語原文
    2011年10月27日(木)発表ILO/11/83

 ILOが世界保健機関(WHO)と協力して設置した「社会的保護の床顧問団」は10月27日に、「社会的保護の床」は経済成長を増進し、社会の結束を高める可能性があると結論づける画期的な報告書『Social protection floor for a fair and inclusive globalization(公正で包摂的なグローバル化のための社会的保護の床・英語)』を国連に提出しました。潘基文国連事務総長は、その声明の中で、本書について、人々が至る所で将来を心配し、経済に不満を抱き、指導者にいらいらしている「重大な時期に出てきた極めて重要な報告書」と評し、「全ての人への社会的保護の床の達成は、より公正かつ包摂的で公平な社会の構築にとって決定的に重要」と述べています。社会的保護の床の概念は、ブラジルのルセーフ大統領やフランスのサルコジ大統領をはじめとする世界各地の指導者から歓迎されています
 報告書は、世界全体で推計51億人が十分な社会保障または社会的保護を受けておらず、何らかの形態の失業給付を受給できている失業者の割合は世界全体の15%強に過ぎない現状を明らかにした上で、社会的保護計画は、社会の結束を維持し、総需要を刺激することに寄与しつつ、労働市場に対する経済危機の悪影響を緩和する安定化装置として機能できることを示しています。顧問団を率いるミチェル・バチェレ前チリ大統領は、「社会的保護の拡張は、マクロ経済の安定化装置としての効果に基づく短期的な成果に加え、人間開発と生産性に影響を与える点で長期的な成果ももたらす『一挙両得』型投資」と語っています。社会的保護の床の手法の開発に係わったフアン・ソマビアILO事務局長は、社会的保護の床について、「必要なものであり、実現可能で効果的」として、財政健全化包括策の一環として社会的保護計画を削ることは回復を弱める可能性を指摘しています。
 報告書の中間結論はパリで9月に開かれた主要20カ国・地域(G20)の労働大臣級会合に提出され、経済危機の影響に対する防護策、貧困削減、経済刺激の手段として社会的保護を世界中に広げることを目指した新たな措置に対する支持が直ちに表明されました。報告書は、各国で設計された社会的保護の床は低所得国でも負担可能とし、エルサルバドル、ベナン、モザンビーク、ベトナムなどでも国内総生産(GDP)のわずか1〜2%で大規模な社会的保護の床を整備できることを示し、11月3〜4日に予定されるG20カンヌ・サミットに対し、既存の及び新しい金融の仕組みを通じて社会的保護の床を実行する「行動計画」の検討を求めています。サミットに出席するソマビア事務局長は、「社会的保護拡大に向けた誓いを新たにすることによってG20のリーダーは市場の信頼感の前提条件である人々の信頼感の回復に寄与できる」とし、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を全ての人へ実現することを目指すILOのディーセント・ワーク課題や社会正義の必要性とも直接関連した報告書の提案事項を議論の一部として組み込むよう検討を求めることを明らかにしました。
 国連が定める九つの危機対応イニシアチブの一つであり、ILOとWHOが主導機関となってその推進を図っている「社会的保護の床」とは、貧困層及び脆弱な人々を保護し、これらの人々に貧困から抜け出して働ける力を付けるための雇用、保健、水・衛生、栄養、教育、世帯扶助の分野における必要不可欠なサービス並びに基礎的な社会保障への権利及び社会移転の集合で構成されています。ILOは2012年の総会で社会的保護の床に関する新しい国際労働基準の設定を検討することになっています。世界各地の社会的保護の専門家11人で構成される社会的保護の床顧問団は、この手法の概念・政策的側面に関する手引きを提供し、世界的な広報活動を強めるために2010年8月に設置され、ILOが事務局を務めています。

 ILO会議で化学産業の事業再構築について討議英語原文
    2011年10月21日(金)発表ILO/11/82

 40カ国以上から政府・労使団体の代表90人余りが参加して10月24〜27日にジュネーブのILO本部で開催される「化学・医薬品産業における事業再構築及びその雇用に対する影響に関する社会対話の促進三者構成会議」では、この産業で見られる事業再構築の現状と労使関係の改善を通じてそれを持続可能なものとする方法が検討されます。事業再構築に際しての労使関係好事例が紹介され、使用者と従業員の関係を改善する方策に関する手引きが提示されます。
 会議の討議資料として準備された報告書『Restructuring, employment and social dialogue in the chemicals and pharmaceutical industries(化学・医薬品産業における事業再構築、雇用、社会対話・英語)』は、化学・医薬品・ゴム・タイヤ産業合わせて世界全体で現在最大2,000万人が従事し、2009年の化学製品売上高が2.7兆ドルと推計される化学産業が国の経済に占める戦略的な重要性に光を当て、この産業における事業再構築の現状と雇用、労働条件、社会対話に対するその影響をまとめています。
 化学・医薬品産業では、1987年から2009年第3四半期の間に世界全体で2,203件の合併・買収が発生しています。化学産業の就業者数は一部の国に集中し、欧州連合(EU)、ブラジル、中国、インド、日本、メキシコ、韓国、ロシア、アメリカで全体の6割近くを占めています。近年、アジア諸国では雇用が急成長を示し、とりわけ中国では化学産業の合計就業者数は2008年末で450万人を超え、インドでも220万人近くに達しています。一方で世界経済危機は欧米諸国で相当の雇用喪失を生み、米国では2008年から2009年の間に化学産業の労働力の5.1%を占める7万人近くが仕事を失い、EU27カ国でも2005年に300万人を数えた就業者数が2008年に280万人まで落ち込みましたが、2010年第1四半期には310万人まで回復しました。
 化学産業では長時間労働が一般的で、2008年でも週平均労働時間は40時間を超え、生産労働者の週平均労働時間が50時間を上回っている国もあります。この長時間労働は高賃金と関連づけられることがありますが、一部新興国では化学産業の賃金は他の産業よりはるかに低くなっています。化学産業が近年直面している主要課題の一つは高技能労働者や科学者の不足であり、これは先進国間、先進国・途上国間の労働力移動を引き起こしており、多くの企業で現在、自社の資金・資源を用いた労働者の育成が積極的に進められています。女性就業者数の増大に向けた措置は講じられているものの、その割合は低いままで、女性役員数はフォーチュン誌の企業ランキング上位500社の製造業平均よりはるかに低くなっています。
 労使関係分野の大きな問題としては業務外注、契約労働が挙げられることが多く、一方、世界経済危機を背景に、意見の収斂が求められる新たな分野として、労働者の就業能力向上に向けた訓練、再訓練、生涯学習の促進の問題が登場してきました。報告書は、危機はこの部門の社会対話の有効性を試すことになったとし、効果的な社会対話が見られる企業の方が従業員コミュニケーションがまずい企業よりも株主に高い見返りを提供していることを示しています。また、化学産業のグローバル化の進展に鑑み、企業の構造的な変化のみならず、当該企業のビジネスと雇用の一連の問題を国を越えて話し合う場としてのグローバルな社会対話の場の役割も指摘しています。

 ますます悪化する世界的な雇用危機が今の若者世代に残す「傷跡」を警告−ILO新刊英語原文
    2011年10月19日(水)発表ILO/11/81

 ILOは若者に絞って世界の雇用情勢を報告する定期刊行物の新版を発表し、「大景気後退期に労働市場に入る世代の不運は、失業、不完全就業、そして無職や非労働力人口である期間の長期化に関連した社会的危害のストレスよりもたらされる現在の不快感に留まらず、将来賃金の低下と政治・経済体制に対する不信感の点でより長期的な結果を生む可能性もある」として、先進国では高失業率、非労働力人口や不安定労働従事者の増加、途上国では働く貧困層の高止まりといった危険な組み合わせに直面している若年労働者世代の「傷跡」に警鐘を鳴らしました。この『Global employment trends for youth: 2011 update(世界の雇用情勢−若者編:2011年更新版・英語)』は、パートタイム労働と臨時労働以外の仕事を見つけることがますます困難になってきたこの若者の集団的な欲求不満が今年世界中で見られた抗議運動に寄与した一つの要因であるとし、例えば、中東や北アフリカでは教育水準の向上にかかわらず過去20年間に若者のほぼ4人に1人が失業者になってきた状況を記しています。
 若者失業者の絶対数はピーク時より少し減り、この傾向は2011年にも続くと見られます(世界全体で2009年7,580万人→2010年後半12.7%7,510万人→2011年予想12.6%7,460万人)。ただし、先進国・欧州連合(EU)地域を中心に、これは就職よりもむしろ若者が労働市場から撤退したことによる減少であるとして、例えば、2010年に27.5%(2007年9%)を記録したアイルランドの若年失業率は、教育制度に身を隠したか、見通しの改善を自宅で待っている若者を数に入れたとしたら少なくとももう19.3ポイントは高くなったであろうと推測しています。
 他方、低経済諸国では若者が働く貧困層の悪循環にはまっており、先進国に比べて比較的好成績を示している南アジアやサハラ以南アフリカの最貧困地帯で見られる高い就業率は実際には働く以外選択肢のない貧しさによるものと指摘しています。
 報告書の見出したこの他の主な事項には以下のようなものがあります。  報告書は、◇若者に焦点を当てた成長と雇用創出のための総合戦略の開発、◇労働基準の強化を通じた仕事の質の改善、◇教育訓練の質に向けた投資、◇景気回復の障害除去を目指した金融・マクロ経済政策の追求などといった、若年雇用を促進する政策措置を提案しています。

 ILO新刊:主要労働市場指標(KILM)2011年第7版英語原文
    2011年10月14日(金)発表ILO/11/80

 ILOはこのたび、世界200以上の国、地域、経済の雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の状況を18の指標で表す隔年刊行の統計図書『Key indicators of the labour market(主要労働市場指標−KILM・英語)』の2011年版(第7版)を印刷物、CD−ROM、オンライン・データベースの三つの形態で発表しました。
 失業、労働力率、従業上の地位、産業別就業人口、パートタイム労働者、若年雇用、教育到達度及び非識字率、貧困、所得分布などに関する従来からのデータに加え、2011年版には新たに、平均月額賃金と職業別就業者数のデータ、そして働く貧困層の年齢集団・性別各国推計値データベースが追加されました。このデータベースは、働いていながら世帯収入が1日1人当たり1.25ドル及び2ドルの各貧困線を下回る労働者の数を示しています。
 KILMには統計に加えて論文部分もありますが、第7版には次の3本が掲載されています。
  1. ミレニアム開発目標(MDG)1のモニタリング用に選定された四つの指標の一つである働く貧困層に焦点を当てた「世界の働く貧困層:家計調査データを用いた新たな推定値の導入」
  2. 労働市場における男女平等の1変数としてパートタイム雇用を分析した「先進国経済の男女平等、雇用、パートタイム労働」
  3. 報告書に含まれる幾つかの指標を用いて一国の労働市場の状況を示す方法を例示した「KILMと国内データをもとにしたブラジルの労働市場分析」
 KILM第7版で見出された主な事項には以下のようなものがあります。

 ザンビア共和国大統領夫人がILO母性保護条約の早期批准をアフリカ諸国に呼びかけ英語原文
    2011年10月14日(金)発表ILO/11/79

 10月11〜14日の日程でヨハネスブルグで開催されている第12回ILOアフリカ地域会議の中で、10月13日に「女性の経済的・社会的エンパワーメントと男女平等の達成」をテーマとする特別討議が行われました。討議に参加したザンビア共和国のクリスティーン・ムウェラ・カセバ=サタ大統領夫人は、妊娠に関連した合併症で亡くなる女性は年に50万人以上を数え、死産の赤ん坊は300万人、生後1週間以内に命を落とす赤ん坊は400万人に達するとの統計を示した上で、ILOの母性保護条約(第183号)と付随する同名の勧告(第191号)をディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の核に位置づけ、アフリカ地域における女性の社会的・経済的エンパワーメントのスピードアップを図るためにもこの条約を緊急に批准することをアフリカ諸国に呼びかけました。母性保護条約・勧告は妊産婦・哺育中の女性の保護を規定していますが、「ディーセント・ワークの機会を得るためには、女性労働者が産前産後期に保護されることが必要」と夫人は説いています。
 アフリカの男女不平等は、地域の国内総生産(GDP)の伸びを毎年約1%引き下げていると推計されます。全員を女性が占めた特別討議のパネリストは、アフリカ女性の経済的エンパワーメントの実現に男女不平等と差別が否定的な影響を与えることを声を合わせて主張しました。討議に参加したILOのジェーン・ホッジス男女平等局長は、例えば、セネガルやマリでは女性の賃金は同種の仕事を行う男性の66%程度であるなどといった、職場参加の面でアフリカの女性が依然として直面し続けている性に基づく障壁を説明した上で、「差別が寛容されないようになってきている」として、例えば、同一価値労働同一賃金の原則を実施し、違反企業に年間総売上高の最大1割の罰金を科す提案が検討されている南アフリカの例などを示しました。

 2億人のアフリカの若者に2億人分の雇用機会を:アフリカの若者のための雇用創出共同イニシアチブ英語原文
    2011年10月12日(水)発表ILO/11/78

 世界で最も若い地域であるアフリカでは人口の3分の2以上を若者が占めていますが、若者の失業の可能性は高く、南アフリカ、チュニジア、モロッコなどでは若者の失業率がそれ以外の層の最大3倍に達しており、アラブの春のような社会の緊張を回避するためにもこの問題に早急に対処する必要があります。
 そこでILOは、アフリカ開発銀行(AfDB)、アフリカ連合(AU)、国連アフリカ経済委員会(UNECA)と手を結び、ますます膨らむ若年失業の問題に対処するアフリカ諸国の取り組みを支援する共同イニシアチブを開始しました。ヨハネスブルグで開かれている第12回ILOアフリカ地域会議の中で10月12日に発表されたこの共同イニシアチブは、若者の雇用が国の開発枠組みと雇用政策の中心に置かれることを確保するために、アフリカの省庁・政府機関、社会的パートナー、開発パートナー、若者の権利擁護団体の間の幅広い同盟を育み、アフリカの若年雇用に関するこれら4機関の活動の影響力を強め、相乗効果を形成することを目指しています。AUの政治的影響力、若者の失業問題に関する分析と広報におけるUNECAの重要な役割、生産的なディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進する主導国際機関としてのILO、アフリカの主要金融機関としてのアフリカ開発銀行の資金動員力といった、各機関が持てる力を結集したこのパートナーシップはまた、アフリカ諸国が若者の就業能力を高めるために技能開発に投資し、必要と見られる行動を実行する持続可能な政治的リーダーシップの確保に努めます。
 共同イニシアチブはアフリカ諸国の正式な支持を求めて、来年1月にアディスアベバで開かれるAUサミットに提出されます。

 アフリカの効率的な成長、雇用、ディーセント・ワーク:今こそ新たなビジョンを英語原文
    2011年10月12日(水)発表ILO/11/77

 4日間の日程でヨハネスブルグで開かれている第12回アフリカ地域会議では、開幕日の10月11日に「アフリカの効率的な成長、雇用、ディーセント・ワーク:今こそ新たなビジョンを」と題する特別討議が行われました。討議ではアフリカ経済のしなやかな回復力とこの大陸が他の地域よりも世界経済危機をうまく乗り切った事実が強調され、仕事を豊かに生む包摂的な成長をアフリカに実現するためには新たな考え方が必要と唱えられました。
 討議のたたき台として作成された新しい報告書『Efficient growth, employment and decent work in Africa(アフリカの効率的な成長、雇用、ディーセント・ワーク・英語)』は、過去10年余りにわたり勢いづいてきたアフリカの成長の証拠を示しています。しかし、ミレニアム開発目標(MDGs)に関する国連開発計画(UNDP)の2010年の報告書に記されているように、2015年までに働く貧困層を半減させるためには、アフリカは1億人分の生産的な雇用を創出しなくてはなりません。討議では、この大きな課題に加え、多くのアフリカ諸国が経済を多角化し、急速に成長する労働力に対して生産的な雇用を促進できていない状況も指摘されました。
 討議に参加したフランスのジル・ド・ロビアン大使は、成長と開発だけでなく、成長とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の間のつながりも見出す必要性を強調し、アフリカの成長に関する全く新しいビジョンの形成を呼びかけました。討議ではまた、アフリカの経済及び社会の持続可能な開発には、人間開発に対する投資の鍵を握り、成長、生産的な雇用、ディーセント・ワークに寄与する効果的な社会的保護政策の必要性も指摘されました。
 アフリカ労働組合統一機構(OATUU)のハッサン・スモヌ書記長は「40年余りにわたってILOが唱えてきた社会開発を経済開発の礎にすべきとの教義」に誰も耳を貸さなかったとして、現行のグローバル化のあり方を批判し、「人々を優先させる新たなビジョンへとパラダイムの転換が緊急に求められる」と訴えました。
 南アフリカのエブラヒム・パテル経済開発大臣は、2009年に国内総生産(GDP)が1.8%減と1992年以来初めて景気後退を経験し、100万人が仕事を失ったことなど、同国に対する世界経済危機の影響を紹介した上で、「仕事は社会の課題に取り組む手段を形成し、若者に生きる意味と目的を与える」として仕事の大切さを説き、「人に対する投資は国が行い得る最も持続可能な投資」にすべきことを強調しました。

 「成功物語は数多いが、働きがいのある人間らしい仕事の創出、貧困削減に向けたさらなる取り組みが必要」とアフリカ地域会議でILO事務局長英語原文
    2011年10月11日(火)発表ILO/11/76

 10月11日に南アフリカのヨハネスブルグで開幕した第12回ILOアフリカ地域会議において、フアン・ソマビアILO事務局長は、出席したアフリカのILO加盟国政労使や政府間機関などの代表を前に、世界経済・金融危機を他の大陸よりうまく乗り切り、成長が再開され、輸出急増、外資流入を経験しつつあるアフリカの状況に触れた上で、新たな世界不況が懸念される現状においては特に、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を創出し、貧困を削減するため、まだ多くのことに取り組む必要があると語りました。
 開会式に出席した南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領は、持続可能な開発に至る上でのディーセント・ワーク課題の重要性を強調し、ディーセント・ワークの創出を貧困対策の最も効果的な武器に位置づけ、社会的賃金に関する支出を意識的に向上させている自国の取り組みを紹介し、人間開発の点のみならず、長期的な基盤構造の点でも成果が達成されることへの期待を表明しました。
 ソマビア事務局長は、「過去30年にわたって展開されてきた世界の成長モデルは、今回の危機で示されたように世界のためにもアフリカのためにもならないものであった」として、フォーマル経済における十分に生産的で人間らしい仕事の創出の点でも、不平等縮小、労働条件の改善、利益共有の点でも非効率であることを指摘して、不公正かつ不均衡で持続可能でないグローバル化に至った問題点を示し、進路変更を呼びかけてアフリカにとっての政策課題として次の六つを挙げました。
  1. 成功を経済成長だけで測らない、より効率的な成長・雇用戦略の必要性
  2. 雇用提供において鍵を握る中小企業の役割
  3. 実体経済における生産的な投資を促進する必要性
  4. 危機を口実として国際的に合意された基準を曲げないこと
  5. 最も脆弱な層、最も貧しい人々を保護する政策・事業計画の導入
  6. 世界全体の優先課題としての若者の人間らしい雇用機会の促進
 アフリカ地域会議は10月14日まで開かれます。会議は12回を数えますが、南アフリカで開催されるのは今回が初めてです。

 ILOアジア太平洋地域会議サイトに取材お申込用紙を掲載英語原文
    2011年10月11日(火)発表ILO/11/75

 今年12月4〜7日に京都市の国立京都国際会館で開催が予定されているILOの第15回アジア太平洋地域会議には、中東11カ国を含む45カ国余りのアジア太平洋地域におけるILO加盟国の政労使代表が出席し、地域の経済・労働市場に対する世界的な経済・雇用危機の影響について話し合い、持続可能で均衡の取れた成長の再建に伴う課題を検討します。雇用に率いられた成長、脆弱な就業者、働く貧困層、若年失業、男女不平等、労働者の技能と労働市場が求めるものとのミスマッチなどといった問題も取り上げられます。環境に優しいグリーン・ジョブ、開発協力、災害復興における雇用の役割に関する特別会合の開催も予定されています。討議のたたき台となる事務局長報告は、世界の成長と発展において重要性を増しつつあるアジア太平洋地域の役割、そして世界的な危機からの回復を主導し、より公正でより包摂的なグローバル化の仕組みを形成する上でこの地域が秘める潜在力について記しています。
 取材をご希望の報道機関の方々は、同会議のウェブサイト(英語)日本語)内に用意されている取材お申込用紙日本語)をご利用の上、11月25日までにお申し込み下さい。

 アフリカ大陸におけるディーセント・ワーク課題の実行速度をスピードアップ−ILOアフリカ地域会議英語原文
    2011年10月10日(月)発表ILO/11/74

 10月11日にヨハネスブルグで開幕する第12回ILOアフリカ地域会議には、アフリカのILO加盟国54カ国の政労使代表、専門家、開発パートナーが出席し、2007〜15年の「アフリカのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)課題」の実行速度を速め、雇用なき経済回復に効率的に対応する手段について話し合います。南アフリカで初めて開かれるこのILOの地域会議には、同国のズマ大統領、アフリカ連合の現議長を務める赤道ギニアのンバゾゴ大統領、トーゴのウングボ首相などアフリカ諸国の国家元首・政府首脳に加え、国連アフリカ経済委員会、欧州連合、アフリカ開発銀行、世界銀行などの多国間機関やドナー諸国などの出席も予定されています。
 世界金融・経済危機からのしなやかな回復力を示しているアフリカ経済ですが、域内全体で見られる経済成長の再開はまだ貧困や失業、不完全就業を減らす方向に向けられていません。中東・北アフリカで最近起こった政治・社会の動乱は多くのアフリカ諸国で見られる世界で最も高い若年失業率の問題を前面に押し出しました。アフリカの開発戦略にとっての主な課題は、この大陸の貿易・開発パートナーの回復速度であり、欧米経済の回復が本調子にならない限り、アフリカの持続可能な開発は脅かされ続けることになります。危機後の世界的な経済回復期におけるアフリカの政策課題の一つは、成長目標と雇用及びディーセント・ワーク創出目標との整合性を許す枠組みの採用です。
 このような背景の中で開かれる第12回アフリカ地域会議には、アフリカの普通の人々、特に若者にディーセント・ワークを速やかに達成し、その真の影響を深める最善の方法の枠組みを示す「ディーセント・ワークでアフリカの民に力を付ける」と題するILO事務局長報告が討議資料として提出されます。「アフリカの効率的な成長、雇用、ディーセント・ワーク:今こそ新たなビジョンを」と題する特別討議に加え、1)若者の雇用とディーセント・ワークの促進に向けたアフリカ連合、国連アフリカ経済委員会、アフリカ開発銀行、ILOの新しい共同イニシアチブと、2)女性の社会・経済的エンパワーメントと男女平等に特に焦点を当てた討議、そして次の六つのテーマについての並行討議が行われます。
  1. 国際労働基準に関する国のオーナーシップの促進
  2. ディーセント・ワークに向けた技能と持続可能な企業への投資
  3. ディーセント・ワークへ向かう一つの道としての農村雇用、工業開発、構造変革
  4. インフォーマル経済からの脱却における社会的経済の役割
  5. アフリカでディーセント・ワーク課題を実現する上での鍵を握るガバナンス(統治)の仕組みとしての社会対話
  6. アフリカにおける社会的保護の床の構築:ヤウンデ三者宣言フォローアップ

 ドイツ首相と5国際機関のリーダー、信頼を回復し、成長と雇用の展望を改善するために調整を図った政策行動を呼びかけ英語原文
    2011年10月6日(木)発表ILO/11/73

 10月6日にベルリンで会合を持ったドイツのアンゲラ・メルケル首相と経済協力開発機構(OECD)のアンヘル・グリア事務総長、世界貿易機関(WTO)のパスカル・ラミー事務局長、ILOのフアン・ソマビア事務局長、国際通貨基金(IMF)のクリスティーヌ・ラガルド専務理事、世界銀行グループのロバート・B・ゼーリック総裁の5国際機関トップは連名で、11月3〜4日にカンヌで開かれる主要20カ国・地域(G20)の次回首脳会合に向けて、世界経済への信頼を回復し、力強く持続可能でバランスの取れた成長路線に向かうために必要な構造政策を実行する国際的な取り組みの強化を呼びかける声明を発表しました。
 共同声明は、2011、12年にわずか4%の成長が予測される世界経済、G20諸国が危機前の状態に戻るためだけでも2,000万人分の仕事が不足している高失業率の持続、多くの国で劇的に上昇した債務水準といった成長の持続可能性を脅かす最近の展開を挙げ、世界経済は新たにより危険な段階に突入しつつあるかもしれないとして、信頼を回復し、成長と雇用の展望を改善するために、構造改革と合わせて財政強化を確保する強い措置の必要性を説いています。そして、マクロ経済と構造的な手段の相乗効果を最大化するために必要な政策行動の国際的な調整を図る重要性を強調し、国際経済協力を話し合う一番の場として確立されたG20の次回会合の野心的な議題内容を歓迎し、そこで達成された約束が具体的な行動と成果につながることへの希望を表明しています。
 さらに、この協力は、各国政府、国際機関、その他利害関係者を通じたそのほかの制度的な連携によって補足されているとして、この点で、金融危機への取り組み、貿易の重要な役割、人々の安寧をより包括的な形で示すよう提案されている伝統的な成長の概念の拡大、グリーン成長、中東・北アフリカにおける革命といった、5国際機関が協力を強めてきた具体的な分野を紹介しています。ILOの活動に関連するものとしては、健全なマクロ経済政策は、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をすべての人へというILOのディーセント・ワーク課題と2009年のILO総会で採択されたグローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)を基礎として、雇用を増大させる取り組みと手を携えて進むべきと記した上で、実体経済の雇用を創出する企業における生産的な投資を刺激することを優先事項の一つに掲げ、この点で、新規雇用の創出と社会的保護の強化に対する重要な貢献として9月末にパリで開かれたG20労働・雇用大臣会合の成果を歓迎しています。

 「ヨーロッパが危ない」−欧州ブレーンストーミング会合で社会的に責任ある財政強化と欧州諸国の政治的協力意思の増強を呼びかけ英語原文
    2011年10月6日(木)発表ILO/11/72

 ILOの欧州・中央アジア総局と国際労働問題研究所が共催して10月3〜4日にジュネーブのILO本部で開かれたハイレベル会合では、欧州諸国の政労使代表や欧州議会議員を含む出席者に対して、失業、特に若者の不安定労働、格差拡大、賃金と生産性のつながりの欠如、社会的保護のような自動安定化装置の弱体化、中小企業に対する支援の欠如、労働者の基本的な権利の尊重に関する懸念すべき状況の増大、社会対話の減少といった欧州の懸念すべき現状が紹介され、欧州は長引く雇用危機の社会・経済的リスクに十分注意を払っていないとの警告が発せられました。
 こういった傾向の一部は景気後退前からあったものの危機によって加速・深刻化していますが、財政赤字と公債比率の増大を警戒した多くの欧州諸国で雇用回復を頓挫させる政策移行が見られます。財政不足と雇用不足の組み合わせは、社会的に不公正なだけでなく、欧州連合(EU)の機構や各国政府に対する人々の信頼感を失わせることにもなっていますが、会合では、強い政治指導力と各国の協力意思の表明によってこの問題に取り組むことができるとされ、国際労働基準の尊重を含む経済、雇用、社会の諸政策のより一層の整合性が求められました。EUとILOの関係については、基礎となる価値のつながりが指摘され、若者の雇用に関するものを好例とする政策の整合性が例示されましたが、他の政策分野においても活動と協力を強化する余地があることも指摘されました。
 会議ではILOのグローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)を基礎とした一連の政策提案が示され、雇用・社会政策と良質の雇用を経済・金融政策の中心に置くことによって実体経済を欧州経済の運転席に据えることが求められました。具体的には、◇労働市場分割化への取り組み、◇若者の教育、訓練、正規雇用に焦点を当てること、◇金融取引税などの歳入創出策などを通じた生産的な投資を導く環境の提供、◇欧州の社会モデルを持続可能なものとすることを目指した欧州諸国政府とEUの能力拡大などで構成されています。会議の結果は今後の議論の土台になると共に、2013年春に予定されている次のILO欧州地域会議の基礎情報ともなります。

 G20カンヌ・サミット:優先事項、課題、行動英語原文
    2011年10月5日(水)発表ILO/11/71

 11月3〜4日に予定されている主要20カ国・地域(G20)カンヌ・サミットの開催に先立ち、サミットの準備担当官及び大統領外交顧問を務めるジャン=ダビド・レビテ大使が10月3日にジュネーブのILO本部を訪れ、集まった加盟国政労使とILO職員を前にサミットの準備状況と優先事項について説明しました。大使は、G20の正統性を保つ前提条件として、このグループを国際社会全体に開くことの重要性を説きました。
 2008年に開始されて以来、G20サミットは危機とその後、そして回復において取るべき政策措置に焦点を当て、金融制度の回復、危機の影響を緩和する適切な措置の探求、国際金融機構の改革、新しい成長モデルの開発に焦点を当てて会合を積み重ねてきましたが、最近の経済動向は取り組みを継続する必要性を示しています。G20カンヌ・サミットでは、新興国や途上国への危機の影響も取り上げ、欧米諸国、中国、日本等の具体的な経済政策措置をもとにした成長のための行動計画の採用に向けて話し合いが行われます。議論の大きな道筋として、レビテ大使は、フランスのギリシャに対する支援と地球規模の取り組みとしての経済に対する信頼感の回復の二つを挙げました。
 大いに必要とされている国際通貨制度の改革と過度の価格変動に対する闘いに関しては、今年3月に南京で開かれたG20国際通貨セミナーで合意が達成された九つの活動分野のうち、1)国際通貨基金(IMF)の特別引出権の構成内容、2)資本移動を管理するための参照枠組み、3)IMFの新規融資枠の創設を通じた広く波及するショックへの対応強化、4)IMFによる多国間機関モニタリング強化に対するG20の協力、の四つを強調して、今や改革は成長行動計画を補足するものとなったことを説明しました。
 危機への効果的な対応には、雇用、社会的保護、社会権に改めて焦点を当てる必要があります。9月末にパリで開かれたG20労働・雇用大臣会合では、1)若者その他の脆弱なグループについてのものを中心とした積極的雇用政策の改善、2)各国に適した「社会的保護の床」の構築による社会的保護の強化、3)社会権・労働者の権利の効果的な適用の促進、4)経済政策と社会政策の整合性強化の四つの政策提案について合意が達成されました。仕事と失業はG20諸国の中核的な懸念事項であり続けており、G20諸国はこの点でのILOの活動を十分に考慮に入れています。カンヌでは使用者側のG20ビジネスサミットと並行して労働者側のG20労働サミットも開かれます。
 金融規制に関しては、フランスは2010年にワシントンDCで開かれたG20労働・雇用大臣会合の提案を支持し、適切な規制・監督が金融部門に等しく適用されるよう求めてきましたが、カンヌ・サミットでは、租税の相互執行共助に関する多国間条約の署名をG20諸国に呼びかける意向を明らかにしました。
 開発課題に関するカンヌ・サミットの優先事項は、食糧安全保障並びに基盤構造及び開発財源です。開発財源に関し、大使は、ビル・ゲイツ氏より革新的な財源メカニズムの選択肢メニューを含む報告書が提出され、G20諸国は少なくともその一つを選んで実行するよう求められると説明しました。大使はまた、金融取引税を支持するフランスの立場にも触れ、主要な開発課題に取り組むにはそのような税の必要性が立証されることを期待すると述べました。

 第12回ILOアフリカ地域会議−南アフリカで開催(2011年10月11〜14日)英語原文
    2011年10月5日(水)発表ILO/11/70

 来る10月11〜14日に南アフリカのヨハネスブルグで開かれる第12回ILOアフリカ地域会議には、アフリカ全54ILO加盟国の政労使代表が出席し、2007〜15年のアフリカのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)課題で設定された目標の達成状況を見直します。会議では、1)アフリカのディーセント・ワーク課題について合意を形成し、その実行速度を速め、2)雇用なき経済回復に対する国内対応策としてディーセント・ワーク国別計画の効果的な実行を促進し、3)ミレニアム開発目標(MDGs)の達成確保に向けたパートナーシップの構築を目指して話し合いが行われます。世界金融・経済危機からの回復の過程でアフリカ諸国が直面している課題、若年雇用危機、社会的保護の必要、ガバナンス(統治)と社会対話、女性の経済的・社会的エンパワーメントと男女平等、社会的経済、農村雇用、国際労働基準などのテーマ別パネル討議も予定されています。アフリカの30カ国以上のILO加盟国に導入されているディーセント・ワーク国別計画の実行状況の検討も行われます。
 南アフリカのズマ大統領をはじめとした複数のアフリカ諸国の国家元首・政府首脳に加え、国連アフリカ経済委員会、欧州連合、アフリカ開発銀行、アラブ労働機構(ALO)などの多国間機関やドナー諸国などの出席も予定されています。
 取材をご希望の報道機関の方々は、10月10日までに所定の申込用紙を用いてILOプレトリア事務所にお申し込み下さい。

 良質の雇用を経済成長の目標とするチュニジアの取り組みをILO支援英語原文
    2011年10月4日(火)発表ILO/11/69

 ILOはこのたび、チュニジアの労働・経済状況を詳しく分析する新しい報告書を発表しました。ILO国際労働問題研究所の「Studies on growth with equity(公平性を伴った成長に関する研究)」シリーズの1冊として発行された新刊書『Tunisia: A new social contract for fair and equitable growth(チュニジア:公正で公平な成長のための新たな社会契約・英語)』は、チュニジア経済はそのマクロ経済面での成果と競争力、教育制度の成功によって賞賛されてきたものの経済成長は本質的に不公平であったとして、強い経済成長の陰に隠れて見過ごされてきた約30%と世界屈指の高い失業率を示す若者失業者対策を中心とした良質の雇用の創出、経済のてこ入れ、賃金改善、平等と社会的保護の促進に向けた一連の措置の導入を呼びかけています。
 国際労働問題研究所のレイモン・トレス所長は、「高い経済成長とより教育水準の高い労働力にもかかわらず、十分な雇用が創出されてこなかった経済の持続不能性がやがて立証された」として、「新たな政治の展開は包摂的な成長、したがって真の繁栄を達成する大きな機会を呈する」とした上で、そのためには以下のような構造的な弱点に取り組む必要があると語っています。  新政権は既に、若年失業対策など様々な政策を実行していますが、報告書は、この勢いを利用して労働市場の欠陥そのものに取り組み、重要な問題に関する国内対話の改善を図ることを提案しています。
 この問題は9月28日に国立労働・社会学研究所(INTES)が主催してチュニジアで開かれた学習会でも検討され、チュニジアの高技能労働力を考慮に入れ、技術水準を高める革新的な政策を通じたより持続可能でより力強い雇用創出やより幅広い基盤の民間投資の奨励による古い開発パターンからの脱却が提案されました。社会的保護制度の効率性と資力を改善する必要性、賃金、労働者の権利、投資環境に関する労使対話の促進に対する支持も表明されました。

 米労働省、児童・強制労働撲滅に向けて1,750万ドルをILOに拠出英語原文
    2011年10月3日(月)発表ILO/11/68

 米国労働省は世界から児童・強制労働をなくす活動を支援するため、ILOに1,750万ドル(約13億4,000万円)を拠出することを発表しました。
 10月3日に署名された協力協定は、児童労働グローバル行動計画(1,500万ドル)とグローバル評価モニタリング・プロジェクト(250万ドル)の二つで構成されています。5地域41カ国の活動を支援する前者は、1)児童労働・強制労働に関する法・規制面のギャップへの取り組みを支援し、国内行動計画の強化を支援する能力構築、2)児童労働データの改善、3)啓発活動、政策枠組み・介入モデルの開発支援を通じた児童家事労働者の保護強化に向けた活動、の三つの要素で構成されています。後者は、2000年以降に米国労働省から資金拠出を受けた複数のILOプロジェクトにおける影響評価、追跡研究、受益者のモニタリングと追跡、プロジェクト・モニタリング・システム、政策影響などの分野において達成された成果を基礎として、国内外で復元でき、規模を拡大できる効果的な介入策に関する知識基盤の拡大を目指します。最悪の形態の児童労働をなくす最も効果的な戦略の確定に向けたモニタリング・評価技術の利用も支援します。
 両プロジェクトは、ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)を通じて実施されます。調査研究関連活動の重要な部分はILOと国連児童基金(UNICEF)、世界銀行の共同事業である「子どもの仕事の理解(UCW)」を通じて行われます。強制労働関連活動については、ILOの強制労働撲滅特別行動計画(SAP/FL)が支援を提供します。
 児童労働への取り組みは近年重要な成果を達成しているものの、児童労働者は依然として2億1,500万人を数え、うち1億1,500万人近くが最悪の形態の児童労働に従事していると推計されます。世界各地に存在し続けている強制労働も同じくらい緊急の取り組みを要する懸念事項です。「この新しい協力協定のおかげで、ILOは、世界規模の知識基盤を構築し、児童労働及び強制労働に取り組む活動と政策枠組みの開発を支援し続けることができます」と、IPECのコンスタンス・トーマス部長は今回の決定に謝意を述べています。

2011年9月発表分

 ILO事務局長早期退任希望表明英語原文
    2011年9月30日(金)発表ILO/11/67

 フアン・ソマビアILO事務局長は、理事会役員に宛てた9月30日付書簡で家庭的事情から2014年3月の第3期任期満了に先立つ来年9月30日にILOを退任したい意向を表明し、後継者の選出手続きに取りかかってくれることを要望しました。
 1999年3月にチリの国連大使からILO事務局長に就任したソマビア事務局長は現在まで13年に及ぶ在任期間中に「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」の概念に命を吹き込み、これをILOの政策課題の中心に据えることに成功しました。この概念に基づく政策提案と共にILOはますます幅広く政治的な支持を受けるようになってきています。今年6月の第100回ILO総会で行ったように、最近の事務局長は「社会正義の新時代」を強く呼びかけています。
 2011年10月にヨハネスブルクで開かれる第12回アフリカ地域会議、今年12月に京都で開かれる第15回アジア太平洋地域会議に加え、招待されている2011年11月のG20カンヌ・サミットへの出席、若年雇用や社会的保護などが議題となっている来年6月の第101回ILO総会の準備、2009年の第98回ILO総会で採択されたグローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)に関する活動の推進など、理事会宛書簡の中で、事務局長は、今後1年間の様々な予定を全力で全うしていく所存を示しています。その上で、9年間にわたる在ニューヨーク国連代表部時代を含む22年に及ぶ海外生活に終止符を打ち、母国で家族と共に過ごす希望を訴えています。

 雇用とディーセント・ワークの促進に向けて前代未聞の社会対話プロセスがブラジルで始動英語原文
    2011年9月27日(火)発表ILO/11/66

 ブラジルは、より多くのより良い雇用、つまりディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の創出に向けた政策の実行について全国的な合意を得ることを目指して、国内全ての州で雇用創出とディーセント・ワークに関する集会を開き、その結果を2012年5月に首都ブラジリアで政府が主催する全国大会に反映させるという世界初の試みを開始しました。
 全27の連続州大会の先頭を切って9月22〜23日に開かれたバイア州大会にILOを代表して出席したエリサベト・ティノコ中南米・カリブ総局長は、開会式における挨拶の中で、「経済成長は雇用創出の鍵を握るが、それだけでは不十分」として、革新的な社会的保護制度を通じて人々の所得を保護し、雇用を創出することに向けた政策を設計することの重要性を強調しました。そして、財政支出の拡大と人々の仕事及び所得の保護に向けた措置を基盤とした政策に助けられてこの地域で成果が達成されたことは、「より多くのより良い仕事の創出に焦点を当てた政策がいかに経済に直接利益するかを示すもの」と語りました。その上で、中南米では都市の失業率が2010年に危機前の水準の7.3%まで低下し、2011年にも下がり続けているといったように、域内諸国は国際的な危機の影響にもちこたえ、回復の利益を享受しつつあるものの、先進国でのさらなる景気後退の危険性が不確実性を生んでいるとして、まだ備えをゆるめるべきではないと警告しました。
 ブラジルは2010年に7%の経済成長を達成し、失業率は記録がある中で最低の6.3%に低下し、公式データによれば、約3,000万人が貧困を克服し、1,500万人に公式の仕事が創出され、児童労働や強制労働に対する取り組みも熱心に展開されています。ティノコ総局長は「これはディーセント・ワークである」と賞賛しつつも、依然残る多くの課題として、仕事を通じた不平等の払拭、強制労働及び児童労働の完全撤廃、男女平等の達成、若者が未来に対する希望を新たに持てるような形での雇用創出努力の追求といった課題を挙げました。
 各地の州大会では、全国大会に向けた提案の策定と出席者の選定が行われます。州大会の開催に先立ち、既に市町村レベルの大会も開催されています。次の州大会は9月28〜29日にブラジリア連邦区で開かれます。ILOはこのプロセスを最初から見守っており、手を貸すと同時にそれから学ぶことを意図しています。2006年に世界で初めて州独自のディーセント・ワーク課題を開発したバイア州では、既に過去3回ディーセント・ワークに関する会議が開かれています。

 国際労働基準問題でILO幹部ギリシャを訪問英語原文
    2011年9月27日(火)発表ILO/11/65

 経済支援策実施の過程で、結社の自由、団体交渉、賃金、社会保障、雇用政策、労働監督、差別禁止の分野における批准ILO条約の適用状況に関する問題が指摘されているギリシャについて、条約勧告適用専門家委員会基準適用総会委員会を中心としたILOの基準適用監視機構から出された指示に従って同国を訪問していたILO事務局の一行がこのたび情報収集を終えて帰国しました。
 ILO事務局で基準分野を統括するガイ・ライダー総局長率いる一行は、1週間にわたる滞在期間中に、労働・社会保障省、財務省、ギリシャ労働総同盟(GSEE)、ギリシャ公務員労働組合連合(ADEDY)、ギリシャ企業連盟(SEV)、ギリシャ専門職・職人・商人総同盟(GSEVEE)などの政府及び主要労使団体に加え、調停仲裁機関(OMED)、ギリシャ・オンブズマンなど、労働市場に係わる全ての関係団体と幅広く会合を持ちました。
 今年の総会の基準適用委員会より、国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)からも、提案されている財政救済措置の全貌を得て、ILOの加盟国としてギリシャが引き受けている自主的な義務に対するその影響の可能性を探るよう要請されているため、調査団の報告書はこの両組織との会合後にギリシャの政府及び社会的パートナーに提出されます。

 G20主要労働市場の状況は2012年に悪化、2015年までに仕事不足が深刻化とILO警告英語原文
    2011年9月26日(月)発表ILO/11/64

 主要20カ国・地域(G20)の要請を受けて、ILOが経済協力開発機構(OECD)と協力してまとめたG20諸国の雇用情勢に関する統計資料は、世界経済の伸びの鈍化によって来年までにG20諸国で大きな仕事不足が生じる可能性を記しています。9月26〜27日にパリで開かれるG20労働・雇用大臣会合に提出される統計資料『Short-term employment and labour market outlook and key challenges in G20 countries(G20諸国の雇用・労働市場の短期見通しと主要課題・英語)』は、現行1%の雇用成長率では、2008年の危機開始以来失われた推計2,000万の仕事を回復するには不可能で、2015年までに危機前の雇用水準に戻るには、最低でも年1.3%の成長率が必要と予想しています。その上で、現在予想されている2012年末まで0.8%という雇用成長率ではG20諸国だけで来年4,000万人分の仕事不足が生じ、この落ち込みは2015年までにさらに悪化しようと警告しています。
 統計資料はまた、次のような事項を明らかにしています。  このような見通しを受けて、フアン・ソマビアILO事務局長は、「雇用成長の鈍化を逆転させ、雇用の喪失分を埋め合わせるには今行動しなくてはならず、ディーセント・ワーク、実体経済への投資を優先させることが絶対的に不可欠であり、そのためには決然とした地球規模の協力が必要」と唱え、「良質の雇用を回復の中心に置くことを約した2009年のG20ピッツバーグ・サミットや2010年のG20ソウル・サミット」の約束に立ち戻る必要性を指摘しました。
 G20パリ労働・雇用大臣会合では、完全雇用の促進、良質の雇用、就労に係わる基本的な権利及び原則の尊重、多国間レベルでのより良い政策の整合性などといった事項が話し合われます。初日にはソマビアILO事務局長の演説も予定されています。会合では、「社会的保護の床(最低限の社会的保護)顧問団」の発表した新しい研究報告書に含まれる提案事項も検討されます。報告書は、貧困層その他の脆弱な人々の保護、商品・サービス需要の安定化支援、人々の経済機会を捉える能力の強化を通じて、危機の際に社会的保護が重要な役割を演じていること、そして危機以外でも貧困と不平等を削減し、包摂的で持続可能な経済成長を押し上げる上で社会的保護の床が効果的なツールであることが立証されていることを示した上で、どんな社会でも社会的保護の床を全国的に張り巡らすことは実現可能な政策選択肢であると論じ、これを政策の真の優先事項とするようG20諸国に呼びかけています。

 巨大な仕事不足に取り組む「決然とした世界規模の協力」が必要 とILO事務局長英語原文
    2011年9月22日(木)発表ILO/11/63

 フアン・ソマビアILO事務局長は、9月24日にワシントンDCで開催される国際通貨基金(IMF)の国際通貨金融委員会及び世界銀行/IMF開発委員会の会合に向けた声明を発表し、世界経済は、既に危機的状況にある雇用情勢にさらに負担を課すような金融危機と景気後退の危険に再び直面していると警告し、この巨大な仕事不足に取り組み、景気の可能な落ち込みを回避するために、決然とした世界規模の協力を呼びかけました。
 2015年までに雇用が危機前の水準まで回復するには、世界平均で1.3%の雇用成長率が求められます。IMFは2011〜12年の経済成長予測を下方修正しましたが、これは雇用の伸びが労働力の伸びを下回ってわずか0.8%になることを意味し、失業者や不完全就業状態にある人々、困窮状態で暮らす人々の増大につながります。「私たちが今過ごしている決定的に重大な瞬間を、主として金融市場の信頼性の危機と読み違えるのは深刻な間違い」とソマビア事務局長は訴え、「私たちの多国間統治の枠組み、あるいは国内政治体制でさえ、その多くが金融市場を操作する人々の力にうまく抗し切れていないと感じる人々が至るところで増えてきている」と語りました。そして、現下の優先事項は、実体経済への投資を刺激する政策及び措置を導入し、政府、世帯、企業による、借金を財源とした持続不能な金融操作につながった機能不全的政策を逆転させるのに必要不可欠な世界的な金融業界の改革を実行することであると唱えています。実体経済への生産的な投資の増大に加え、事務局長は、中小企業の支援、勤労世帯の所得支援、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を危機対応策の中核に位置させることを提案するグローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)に向けた協力の促進、より実体経済の役に立つ方向に向けた金融部門の改革、社会的に責任ある財政強化の実行などを呼びかけています。

 労働力不足対処策として小売業界では高齢労働者の採用増大−ILO新刊英語原文
    2011年9月20日(火)発表ILO/11/62

 9月21〜22日にジュネーブのILO本部で開催される「小売業における作業プロセス及び作業環境の変化に関連した高齢労働者のニーズに関する世界対話フォーラム」には、世界25カ国以上から政府、使用者、労働者の代表40人以上が出席し、労働集約的な小売り部門の労働市場に高齢化社会が与える影響を検討し、高齢者の労働市場への参加を促進するようにこの部門の労働環境を適応させる方法について意見交換を行います。
 会議の論点資料として作成された報告書『Adapting work processes and working environments in retail commerce to older workers' needs(高齢労働者のニーズに合わせた小売業の作業プロセス及び作業環境の適応・英語)』は、先進国を中心に30歳以下の若年人口比率が低下し、50歳以上層の人口比率が増大するにつれて、高い労働集約性と平均以上の労働異動率で知られる小売り部門では、販売と顧客サービスの業務を中心に50代以上層を引き付け、定着させる能力を高めるためにその雇用慣行、作業プロセス、作業環境を見直す必要が生じようと記しています。そして、予想される労働力不足に対処するものとして、訓練・人材育成・昇進、柔軟な労働慣行、エルゴノミクス(人間工学)や職務設計などの分野においてこの産業が参考にできるであろう好事例を複数紹介しています。さらに、競争が非常に熾烈な労働市場において、あらゆる年齢の労働者を引き付け、定着させるこの部門の能力を高める有効な措置の採用を大いに円滑化する可能性があるものとして、政労使間の社会対話の役割を強調しています。
 商業はしばしば、各国で最大の産業または主要産業の一つに位置づけられています。この部門は、例えば、2005年に欧州連合(EU)加盟27カ国全体で3,000万人以上の労働者に仕事を提供してきました。南アフリカでは、2010年第4四半期に、同国の総就業人口の22.7%に当たる300万人近くが小売業をその主な構成要素とする商業に従事していたと推計されます。日本でも2010年に小売業就業者数は730万人を数えていますが、これは総就業者数の11.6%に相当します。

 グローバル化を社会的に持続可能にする方法を吟味−ILO/WTO共同出版物英語原文
    2011年9月20日(火)発表ILO/11/61

 ILOと世界貿易機関(WTO)事務局は、9月20日に、両機関の共同調査研究プログラムの成果物として、生産性と経済成長を刺激するグローバル化の潜在力を認めつつ、この潜在力を活用するには貿易、雇用、社会の各政策を一体的に推し進める重要性を強調する共同出版物を発表しました。第一線の専門家である世界各地の13人の学者が雇用と賃金に対するグローバル化の影響を様々な視点から分析した『Making globalization socially sustainable(グローバル化を社会的に持続可能なものにする・英語)』は、効率性を改善し、したがって経済成長を高める上で貿易自由化が演じ得るプラスの役割を改めて主張した上で、グローバル化が成長を高めるものとなるには、公共財に投資し、市場の機能を強化する政府の役割が重要としています。鍵を握る社会的保護の役割や社会的保護制度を現地の事情に合わせる必要性も強調しています。
 報告書は、最近注目を集めている雇用、労働市場の不確実性、不平等という三つのテーマに焦点を当て、グローバル化が失業率に与える短期的な影響、途上国の雇用構造に与える長期的な影響、2000年代後半の大景気後退期における雇用に対する影響、輸入市場の競争の影響を受けている労働者が認識している不確実性などといった問題を論じています。労働市場に影響する外部要因に取り組む政策、グローバル化の分配効果に関する最新の証拠、グローバル化した世界において分配面の懸念事項に取り組む各国政府の能力の分析も行われ、グローバル化の利益を広める上での教育・技能政策の役割も検討されています。報告書は、グローバル化の社会的持続可能性を確保しようと努める政策策定者が直面する、1)市場開放の増大からもたらされる雇用の構造と水準が大体において労働市場と経済成長に好ましいものとなること、2)大景気後退期に目撃されたように、市場開放は国内の困難を相殺する助けになるものの外部要因に対する国内労働市場の脆弱性を高める可能性があること、3)グローバル化の利益は平等に分配されず、一部の労働者と企業は短期的にあるいは中期的にさえ損失を被る場合があること、といった三つの課題に光を当て、これらに対する政策対応も論じています。
 ジュネーブのWTO本部で開かれた合同発表会に出席したILOとWTOの両事務局長は、本書がグローバル化に強い社会的側面を与える方法に関する政府の理解を改善するものになることへの期待を述べました。この共同研究事業は国際商業会議所(ICC)研究財団の資金協力を受けていますが、ジェラール・ウォルムICC会長は、この研究プロジェクトから見出された事項を世界の意思決定者に対する具体的な政策提案に盛り込む意向を表明しています。

 目に見えぬ経済を追跡:国際会議でボランティア活動の経済価値測定を助ける新刊を発表英語原文
    2011年9月15日(木)発表ILO/11/60

 国連ボランティア国際年の10周年を記念して9月15〜17日にハンガリーの首都ブダペストで開かれるグローバル・ボランティア活動会議の最終日に、ILOは新しい統計マニュアルを発表します。国際年では政府に対し、ボランティア活動の測定改善が求められましたが、これに応えて、国連ボランティア計画(UNV)の支援を受け、米国ジョンズ・ホプキンス大学市民社会研究センターと協力して開発された『Manual on the measurement of volunteer work(ボランティア活動測定マニュアル・英語)』は、統計家やエコノミストが国内のボランティア活動の規模、種類、価値を追跡することによって、国別・地域別・世界全体でボランティア活動の価値を測定する助けになることを目指しています。
 ボランティア活動の世界的な規模は、比較可能なデータがないために導くことができませんが、ジョンズ・ホプキンス大学市民社会研究センターは、世界37カ国の価値を測定し、少なく見積もっても4,000億ドルに達すると推計しています。ボランティア活動に従事する人の数は数百万人に上り、国の経済において大きな役割を担っていると推定されるものの、これまではこの見えない状況を適正に追跡する合意された手法はほとんどありませんでした。今回、国際的に支持された初の手引きが完成したことから、共通の定義と手法を用いて信頼のおける公式のデータが生成されることが期待されます。
 フラビア・パンシエーリUNV事務局長は、「この長く待たれてきたマニュアルはボランティア活動の可視性を本当に高め、ボランティア活動の重要性を測定する合意された方法論を提供することによって、ボランティア活動に関する政府の政策や立法の改善を助ける一方で、持続可能な開発、ミレニアム開発目標、平和構築、人道支援に影響を与えている、草の根ボランティアの実力発揮を助けることでしょう」と期待を示しています。
 UNVと国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)が共催するグローバル・ボランティア活動会議には、政府、非政府組織(NGO)、国連機関その他の国際機関のハイレベル代表が出席し、「持続可能な未来に向けたボランティア活動」をテーマに話し合いを行い、最終日に採択される予定のボランティア活動に関する宣言は国連総会の将来的な決定にも影響を与えることが期待されます。

 予防的安全衛生文化の構築に向けた新たな公約を呼びかけ−世界労働安全衛生会議英語原文
    2011年9月15日(木)発表ILO/11/59

 140カ国以上から5,400人と、1955年の第1回会議以来最高の参加者数を得て9月11日からトルコの首都イスタンブールで開かれていた第19回世界労働安全衛生会議は、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)とは安全な仕事であるとの原則を再確認し、世界的な予防文化の構築及び維持に向けた新たな公約を呼びかけて15日に閉幕しました。
 会議開幕前の11日にトルコ政府主催で開かれた予防文化大臣サミットに出席した世界34カ国の労働大臣は、前回2008年に開かれた第18回世界会議の折に採択され、包括的な安全衛生文化の青写真と見なされているソウル宣言の公約を踏まえた「仕事における安全と健康に関するイスタンブール宣言」に署名することによって、健康的で安全な作業環境は基本的人権であるだけでなく社会の責任であることを認め、持続可能な安全衛生文化を国内で育むことを約しています。
 開会式で挨拶したトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン首相は、生産的な経済は有能で高技能の労働力を必要とすることを強く訴え、人間に値する労働条件を目指す、予防と保護を基盤とした労働安全衛生アプローチを呼びかけました。閉会式で挨拶したILOの町田静治労働安全衛生・環境部長と国際社会保障協会(ISSA)のハンス=ホルスト・コンコレウスキー事務局長は共に、人口構造の変化や労働市場の進化が引き起こしている作業環境の変化に対応できるであろう労働安全衛生文化に向けた新たな公約を呼びかけました。
 会議では、職場の安全と衛生に影響を与えている要素として、経済危機、ナノテクノロジーなどの新技術、気候変動、グローバル化、人の移動の増大、インフォーマル経済の成長などが挙げられ、労働者の安全に深刻な課題を提示しているこの展開には、伝統的な労働安全衛生の責任をより幅広い健康の観点に結び付ける革新的な解決策に加え、予防的で先行対策的な取り組みが必要であるとされました。会議で共有された経験は、政府、労働者、使用者を巻き込んだ社会対話と教育訓練重視が安全衛生文化の改善における鍵を握ることを示しています。
 ILOは会議に提出した新しい報告書に労働安全衛生に関する最新の推計を掲載し、2003年から2008年の間に、労働災害による死亡者数は予防面の向上によって減少したものの、業務関連疾病による死亡者数が増加した結果、業務関連の死亡者数は全体として増加し、2008年に世界全体で約234万人と推計されることを示しています。ISSAの提出した調査研究プロジェクトの中間報告は、安全衛生に対する投資は企業に多大な経済便益があることを確認し、予防措置に対する投資の便益は費用の2.2倍、時にはそれ以上に達する可能性があることを示しています。
 世界会議の一環として開かれた第8回国際フィルム・マルチメディア・フェスティバルには30カ国から232本の応募があり、フィルム部門ではブラジル、スイス、英国の作品、マルチメディア部門ではスウェーデンの作品が最優秀賞に選ばれました。安全衛生展示会の入場者数は1万2,000人余りに及びました。
 世界労働安全衛生会議はILOとISSAが共催して3年ごとに開かれています。第20回の会議はドイツ法定労災保険組合(DGUV)の招きにより、2014年8月24〜27日にフランクフルトで開かれることが決まりました。

 実体経済をグローバル経済の運転席に、とソマビアILO事務局長英語原文
    2011年9月14日(水)発表ILO/11/58

 フアン・ソマビアILO事務局長は、欧州連合(EU)の議会組織である欧州議会において9月14日に行った演説で、「実体経済をグローバル経済の運転席に据え、金融システムを従とする」時代が来たとして、「実体経済における生産的な投資を政策策定の中心に置くこと、持続可能な企業を可能にする環境、非生産的でリスクの高い金融商品の入手可能性を減らすこと」を訴えました。欧州連合諸国が直面している、雇用・社会面の大きな課題、働く貧困層(ワーキング・プア)、不安定労働、低賃金、社会的排除、長期失業の問題については、「雇用が破綻しているときに苦しむのは私たちの家族や地域社会」として、若い世代を中心に人々の信頼感を回復し、所得や富の点に留まらず、教育、保健、住宅、信用機会の点でも拡大しつつある不平等に取り組む必要性を指摘し、短期的な課題への対処として、社会的に責任ある財政強化を求めました。さらに、労働者の基本的な権利や批准ILO条約の適用を弱める口実に危機を用いるべきでないと強調して、この点で、組合からILO条約違反の申立てが出され、ハイレベル調査団の派遣が予定されているギリシャの例を挙げました。
 ソマビア事務局長はまた、より効率的な成長パターンとより多くのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)につながる類の政策を形成するには新たな思考様式が必要として、その要素として、所得主導型の成長パターンへの転換、完全雇用をマクロ経済の主要な優先事項とすること、小企業に重点を置くこと、社会対話や団体交渉の自律性、賃金と生産性のより良い結び付きの促進、労働基準の尊重、全ての人々の下に社会的保護の床を張り巡らすこと、などを挙げました。そして、これら全ての政策を下支えするものとして、一貫性のあるルールに基づいた国際体制の必要性を挙げ、貿易を担当する世界貿易機関(WTO)、金融を担当する国際通貨基金(IMF)、労働市場を担当するILOといった国連機関内の三つの主要な政策策定機関がそれぞれ開発したルールと基準は一貫性をもって適用される必要があるが、現状はそうなっていないとの問題点を指摘しました。事務局長は、今年11月に予定されている主要20カ国・地域(G20)の首脳会合についても触れ、実体経済、そして「質の高い雇用の創出を経済回復の主目的」にするという2年前のピッツバーグ・サミットで採択された決定に各国首脳を再び結び付ける機会を提供すると語りました。
 ILOとEUはこれまで、児童労働、労働力移動、貿易、雇用の分野で協力してきましたが、ソマビア事務局長は、この協力関係はまた、厳しい財政引き締め措置やコンディショナリティー(条件付融資)につながる深刻な経済・金融危機の克服に苦労している加盟国にとっても有益になろうとした上で、協力の強化が考えられるこの他の分野として、今年7月に欧州議会で採択された、金融支援計画におけるILO、EU、IMFのより緊密な協力関係を求める提案に言及しました。

 より健康的で安全な職場の構築が焦点−第19回世界労働安全衛生会議英語原文
    2011年9月12日(月)発表ILO/11/57

 安全衛生の専門家の世界最大の集まりとして、9月12日にイスタンブールで本会議が開幕した第19回世界労働安全衛生会議は、世界経済の不確実性が続く中、職場における安全衛生文化に対する世界の公約を強めることを目指しています。
 会議に向けて提出されたILOの新しい報告書『Global trends and challenges on occupational safety and health(労働安全衛生に関する世界の動向と課題・英語)』は、2003年から2008年にかけて世界の死亡災害の件数(35万8,000件→32万1,000件)は減少したものの、業務関連疾病による死亡者数(195万人→202万人)は増加した結果、業務関連の死亡者数は全体として増加し、1日当たりの平均死亡者数は6,300人を超えることを示しています。この他に、毎年、3億1,700万人あまりの労働者が労働災害で負傷し、4日以上の休業に至っていると推計されます(1日当たり平均約85万人)。しかし、今年の労働安全衛生世界デー(4月28日)のメッセージの中で、フアン・ソマビアILO事務局長が、「今年の福島原子力発電所の事故や昨年のニュージーランドの鉱山事故のような新聞紙面を賑わす出来事がある一方で、業務関連の負傷、疾病、死亡事故のほとんどが気づかれず報告もされずにいる」と述べたように、この数字は氷山の一角に過ぎません。
 災害や職業病の予防の必要性に関する理解が多くの国で進み、安全で健康的でない作業状況は生産性や雇用、経済全体に悪影響を与えるだけでなく、人々の健康や福利にも重い負担を課すとの認識が広がった結果、労働安全衛生の分野では近年、相当の進展が達成されました。報告書はしかし、「世界的な景気後退は労働者の安全衛生と労働条件に相当の影響を与えているように見える」とし、長期的な影響を語るには時期尚早としつつも、「企業が生産的であり続けようと苦闘する中で、労働安全衛生促進の点で得られた最近の進展の一部が失われつつある証拠がある」と記しています。そして、企業業績に対するプレッシャーが生み出す労働強度の増加が予防に費やす時間の縮小や労働安全衛生マネジメントシステムの効力低下につながる可能性、工場の保守スケジュール切り詰めが保守の不備や新しい機器への投資不足によって事故のリスクを高める可能性、雇用の不安定化に伴って、ストレス、いじめ、職場内暴力といった、労働者の健康に著しい影響を与える心理社会的要因が顕著になる可能性、雇用が維持された人々の作業量や労働時間がしばしば増加していることを挙げています。
 世界労働安全衛生会議はILOと国際社会保障協会(ISSA)が共催して3年ごとに開かれています。トルコ労働・社会保障省の協力を得て9月11〜15日に同国の首都イスタンブールで開かれている第19回世界会議は、「健康で安全な未来に向けたグローバル予防文化の構築」をテーマに、世界100カ国以上から3,000人を超える政策策定者、専門家、労使リーダーらが参加し、包括的で先行対策的な労働安全衛生への取り組み、労働安全衛生に関する社会対話やパートナーシップ、変動する仕事の世界と世界経済の不均等な回復の中における新たな課題などの事項について幅広く議論する予定です。前回2008年6月に韓国で開かれた第18回世界会議の際には、会議に先立って開かれたハイレベル・サミットで、安全で健康的な作業環境を基本的人権として認めるべきと初めて明言する労働安全衛生ソウル宣言が採択されました。宣言の署名者は、「率先して、予防的安全衛生文化を促進し、労働安全衛生を国の政策課題の上位に位置させること」を約しています。イスタンブールの会議では、この宣言を足場に、これをさらに発展させる指針や優先事項が設定される予定です。

 ILOとチョコレート/カカオ産業が西アフリカの児童労働撲滅に向けて新たなパートナーシップを形成英語原文
    2011年9月12日(月)発表ILO/11/56

 ILOはこのたび、チョコレート/カカオ産業の8社(ADM、バリーカレボー、カーギル、フェレロ、ザ・ハーシー・カンパニー、クラフトフーズ、マーズ・インコーポレイテッド、ネスレ)と官民パートナーシップを形成し、西アフリカのカカオ栽培コミュニティーにおける児童労働の撲滅に乗り出しました。この新しいパートナーシップに基づき約束された200万ドルの拠出金は、世界最大のカカオ生産地であり、合わせて世界の生産量の6割を占めるガーナとコートジボワールにおいて、1)カカオ栽培コミュニティーにおける最悪の形態の児童労働撲滅に向けた政府、社会的パートナー(労使)、カカオ農家の能力強化、2)地域社会を基盤とした児童労働監視システムの開発・拡大支援、3)この二つの目的に向けた、政労使三者構成の全国児童労働運営委員会の調整的役割の向上、の三つの分野に重点を置き、今後4年間にわたり、両国で実施されているILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)の活動を補足することになります。
 児童労働には多くの要因がありますが、家庭の貧困と限られた教育の機会がその最たるものです。最悪の形態の児童労働条約(第182号)を遵守する形でのカカオ豆の製造・加工をチョコレート製造業者協会が約したハーキン=エンゲル議定書が2001年に調印されて以来、多数の子どもが学校教育を犠牲にして働き、危険で有害な農作業に従事している西アフリカのカカオ・サプライチェーン(供給連鎖)における最悪の形態の児童労働の撤廃に特に注意が向けられるようになりました。
 IPECのコンスタンス・トーマス部長は、「この歴史的に重要な協定は、児童労働者の6割に当たるおよそ1億3,200万人が依然として働いている農業における児童労働の世界的な課題についての明確な理解を基礎としている」として、このプロジェクトが小自作農から成る農村社会から児童労働をなくし、取り組みを向上させる方法に関する理解を高める助けになることへの期待を表明しました。産業連合のロン・グラフ議長は、ガーナとコートジボワールにおける児童労働監視システムの強化に向けてIPECと協働できることを「至上の喜び」とした上で、ココア・コミュニティーがその子どもたちに代わって行動を取ることを助ける上で決定的に重要な次の一歩は、「この重要な手段の拡大と改良」であると語っています。

 フアン・ソマビアILO事務局長がストラスブールの欧州議会で演説(9月14日)英語原文
    2011年9月7日(水)発表ILO/11/55

 フアン・ソマビアILO事務局長は来る9月14日に、欧州連合(EU)の議会組織である欧州議会で、イェジ・ブゼク同議長の招きを受けて演説を行います。
 EUは現在、金融・経済・社会危機に応えて、経済統治の強化を目指して新たな一歩を踏み出そうとしていますが、9月26〜27日にパリで開かれる主要20カ国・地域(G20)雇用・労働大臣会合に先立って行われるこの演説で、ソマビア事務局長は現在の雇用・社会情勢と共に長引く雇用危機に対抗する政策の方向性について論じる予定です。とりわけ、実体経済の現状、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を求める人々の要求を強調し、国際労働基準に反映されているものを含み、EUとILOが共有する、拠って立つ価値を基盤とした戦略について論じることとなっています。
 欧州議会は最近、ILOの活動に対する強い支持を表明していますが、これには、今年6月の本会議で採択された「社会政策の外的側面、労働・社会基準の促進、欧州における企業の社会的責任に関する決議」におけるディーセント・ワークに対する支持の表明、7月の本会議における、ILOのディーセント・ワーク課題、グローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)、社会的保護の床に対する支持を盛り込んだ「EU開発政策の影響力増大に関する報告書」の採択、沖合石油・ガス関連活動の安全性の課題に関連しての、雇用及び社会問題委員会における石油・ガス産業全体にわたってILOの労働安全衛生マネジメントシステムに関するガイドライン(ILO−OSH2001)を促進することを呼びかける意見の採択などが含まれています。

 アフリカ諸国の大臣ら、雇用集約的基盤構造投資の増強に対するILOの支援を要望英語原文
    2011年9月7日(水)発表ILO/11/54

 ガーナの首都アクラで9月5〜9日の日程で開かれている第14回労働基盤型事業実務者対象地域セミナーの中で開かれていた閣僚会合を終え、13余りの参加アフリカ諸国の大臣らは7日、他の国際パートナーとの協力を強め、基盤構造その他の部門における雇用集約的投資を支援することをILOに求める共同声明を発表しました。共同声明はILOに対し、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、欧州連合、主要20カ国・地域(G20)などのパートナーとの関係を続け、提言広報や雇用影響評価に重点を置いた知識共有、能力構築、最善事例に関する技術助言支援の提供を強化し続けていくことを求めています。
 1990年にILOが開始した労働基盤型事業実務者対象地域セミナーは、今ではほとんど自主財源で賄われる、労働基盤型事業と雇用集約的投資の国際的な南南相互学習の中心的な場に成長し、アフリカ諸国が持ち回りで2年ごとに主催しています。ガーナの道路省、地方政府・農村開発省、雇用・社会福祉省がILOの雇用集約的投資計画(EIIP)と協力して開催した第14回セミナーは、「人間らしく働きがいのある仕事と貧困軽減のための公共事業に関する政策と実務」をテーマに掲げています。アフリカを中心に400人を超える実務者、計画家、政策策定者、研究者、資金拠出・開発機関パートナーが出席し、開発問題について論じると共に必要不可欠な基盤構造の提供における雇用集約的手法の適用に関する経験やアイデアの交流を行っています。
 セミナー参加者に宛てた声明でガーナのミルズ大統領は、雇用集約的投資が雇用創出において果たしうる重要な役割を強調し、「基盤構造における労働基盤型方式の採用は貧困とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を結び付ける重要な手段を提供し得る」として、「貧困の悪循環から抜け出すためには人間らしい収入を生み出せるだけの人間らしい雇用に就く機会が必要」と訴えました。ILOのホセ・マヌエル・サラサール=シリナチス雇用総局長はセミナー参加者に向けた挨拶で、労働市場への参入を求める多数の若者に新たな雇用機会を見つけるためにあらゆる手立てを尽くす必要がある時代においては特に、仕事を豊かに生む成長をもたらす基盤構造の役割を注意深く検討すべきとして、「地元資源を基盤としたアプローチは、中・小規模の基盤構造事業に用いられる従来の手法の3〜5倍の直接雇用を生むことが経験上明らかになっており、これはしばしば約2倍の相乗効果がある上、地元の商品やサービスの購買量を3倍に増やす」と例示して、雇用集約的投資の効果を説明しました。

2011年8月発表分

 第19回世界労働安全衛生会議(イスタンブール・2011年9月11〜15日)英語原文
    2011年8月17日(水)発表ILO/11/53

 労働安全衛生に関する世界最大のイベントとして、ILOと国際社会保障協会(ISSA)が共催して3年ごとに開催している世界労働安全衛生会議が今年はトルコ労働・社会保障省の協力を得て標記の日程で開かれます。第19回世界会議は「健康で安全な未来に向けたグローバル予防文化の構築」をテーマに、安全衛生予防文化の構築と維持の重要性に焦点を当て、世界100カ国以上から約3,000人の労働安全衛生専門家、政策関係者、労使リーダーらが参加し、包括的で先行対策的な労働安全衛生への取り組み、国家レベルでの労働安全衛生に対するシステム的アプローチの導入と実行、社会対話を通じた互恵的パートナーシップと労働安全衛生分野におけるイノベーションの開発、変動する仕事の世界と世界経済の中での新たな課題などについて幅広く議論する予定です。前回2008年に韓国で開かれた第18回世界会議の際には、会議に先立って開かれたハイレベル・サミットで、安全で健康的な作業環境を基本的人権と明言する初の国際宣言である労働安全衛生ソウル宣言が採択されました。イスタンブールの会議では、これに関して2008年以降に達成された成果が報告され、その業績を足場に安全衛生予防文化の促進に関する国際公約の強化が図られます。
 ILOは会議に合わせて、労働災害と職業病の影響を世界的観点から評価し、労働安全衛生の向上に向けた国内・国際戦略を検討した報告書を発表します。労働安全衛生に関する200本以上の短編フィルムやマルチメディア作品が発表されるISSA国際フィルム・マルチメディア・フェスティバル、幅広い企業の安全衛生技術・製品が展示される国際安全衛生展示会も併せて開催され、トルコの主要産業における安全衛生管理状況を見学できる技術視察の機会も設けられます。
 会議の取材をご希望の方は、取材要項のページに掲載されている登録用紙をご利用の上、8月29日までに会議事務局宛お申し込み下さい。

 フィジーにおける労働組合の動向に関してILO事務局長が声明発表英語原文
    2011年8月8日(月)発表ILO/11/52

 フィジーでは最近、無許可の集会を開いたとして2人の労働組合指導者が公共非常事態規則に基づき逮捕・起訴され、労働組合の主張によるとその正常な機能が不可能になるような必要不可欠国内産業(雇用)令が告示されています。ILOは昔から同国における労働組合の権利行使状況に懸念を表明してきましたが、フアン・ソマビアILO事務局長は8月8日に、このような展開を深く懸念する声明を発表しました。
 状況の重大さとさらなる悪化の危険性に鑑み、ソマビア事務局長は、全ての当事者による関連問題の建設的な検討をILOが支援できる方法について探るため、来週早々にもハイレベル調査団をフィジーに送る意向を表明しました。

2011年6月発表分

 労働市場の規制状況に関するハイレベル会合をILO主催英語原文
    2011年6月30日(木)発表ILO/11/51

 ILOは来る7月6〜8日にジュネーブのILO本部において「ディーセント・ワークのための規制(RDW)ネットワーク」の第2回会合として、「公正な回復に向けた規制」をテーマとする会合を開催します。世界各地より約300人の学者、エコノミスト、法律家、政府及び労使団体代表が出席し、世界経済危機後の労働市場における規制の状況を検討し、賃金及び収入の不平等に特に焦点を当てて、労働者にとって公正な回復を形成する方法に関して意見を交換します。単なる規制か/規制緩和かの二元論を越え、どうすれば規制が政府、使用者、労働者、そして社会全体にとってより効果的になるかに焦点が当てられる予定です。賃金、不平等、成長に係わる労働市場規制の役割、人間らしく働きがいのある(ディーセントな)労働条件を確保する上で労働市場規制が秘める潜在力といった事項も取り上げられます。
 1)ディーセントな労働条件:規制に欠けていてもいい理想か?、2)危機後の職場における公正、3)ディーセント・ワークの執行、4)賃金、不平等、経済成長、の四つをテーマとする全体会合に加え、労働規制研究、ワークライフバランスとケア経済、平等に対する挑戦、賃金などに関する九つの分科会が開かれ、職場内いじめや個別労働関係の法律解釈、団体交渉なしでの賃上げ、下請け構造で分裂した雇用がディーセントな職場を形成する上で持つ意味と影響などに関して第一線の学識者による基調講演が行われます。ILOでは、会合開催に合わせ、『Regulating for decent work: New directions in labour market regulation(ディーセント・ワークのための規制:労働市場規制の新たな方向・英語)』と『The role of collective bargaining in the global economy: Negotiating for social justice(グローバル経済における団体交渉の役割:社会正義を目指しての交渉・英語)』の2冊の新刊書を発表します。
 RDWとは、近年、雇用政策の場を占めている労働法に反対する議論に一貫した対応を開発することを目指して展開されているILOの研究者とメルボルン大学ロースクール雇用・労働関係法センター及びマンチェスター大学の仕事における公正(FaW)研究グループとの協力事業です。労働市場の規制をより効果的にする方向に研究と政策を導くことも目指しています。労働者の権利を経済成長戦略に統合することに関する調査研究に光を当て、そのような研究を進め、グローバル化経済の中で労働者の権利を保ち、増進するための理にかなった一貫性のある論拠をできるだけ幅広く普及させることを目指して活動を展開しており、2年ごとにネットワーク会合を開催しています。

 仕事を中心に据えた政策で脆弱な回復を強固に−スペインに関するILO新刊英語原文
    2011年6月27日(月)発表ILO/11/50

 雇用創出のピークであった2008年第1四半期から2011年第1四半期までの間に300万近くの雇用が失われ、今年第1四半期の失業率は先進国一の21.3%を記録するスペインですが、高付加価値製品関連を中心とした年15%超の輸出の伸びに主として主導され、設備機械投資も上向きに転じ、弱いながら景気回復の兆候が見られます。2008年第1四半期から今年第1四半期までの雇用喪失全体の平均52.3%程度を占める建設業などの部門では雇用喪失が続いていますが、これを相殺する勢いで高い成長潜在力を秘めた部門における雇用が伸びています。
 このたび発表されたILOの新刊書『Spain: Quality jobs for a new economy(スペイン:新しい経済のための良質の仕事・英語)』は、このような元気づけられる兆候を示し始めたスペインで、まだ弱々しい回復を強固にし、失業減を導くような経済、雇用、労働市場政策を幅広く検討しています。より公平で持続可能な成長パターンに雇用・社会政策がいかに貢献できるかを探るILO国際労働問題研究所の新シリーズ「Studies on growth with equity(公平性を伴った成長に関する研究)」の一冊として発表された本書は、さらなる賃下げを回避し、持続可能な企業の資金調達機会を広げる金融改革を推進しつつ、45%以上の若者が失業しているこの国で、「若者が1人も取り残されない」よう確保する包括的な雇用戦略を提案しています。危機の影響は、若者に加えて移民労働者にも大きく、就業者全体の約14%を占める移民労働者が2009年第1四半期から今年第1四半期までに失われた雇用の23.5%を占め、危機突入以降の移民総数は新規入国者の減少を主な理由として60%以上の減少を示しています。
 国際労働問題研究所のレイモン・トレス所長は、スペインの課題は、世界金融危機と建設業や住宅などの債務主導型需要に牽引された非効率的な成長モデルの終焉の二つに対応しなくてはならないことであるとして、「雇用情勢の悪化に取り組みつつ、新しい、よりバランスの取れた経済に向けた構造転換」を行うことを目標とすべきとし、そのために以下のような要素を提案しています。  報告書は、「上手に設計されれば、こういった政策は費用効果的」であることを示し、拙劣な緊縮措置では、「既に弱い雇用市場をさらに悪化させる可能性がある」と唱えています。

 農薬への暴露が農業に従事する児童労働者に与える影響に注意を喚起−ILO/FAOパネル討議英語原文
    2011年6月21日(火)発表ILO/11/49

 世界全体で2億1,500万人近いと推計される児童労働者のうち、危険有害業務従事者は1億1,500万人余りと見られますが、その約6割に相当する6,800万人が三大危険産業の一つである農業分野で働いています。
 6月20〜24日の日程でジュネーブで開かれている「国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤についての事前のかつ情報に基づく同意の手続きに関するロッテルダム条約」の第5回締約国会議(COP5)のサイドイベントの一つとして、ILOと国連食糧農業機関(FAO)は6月22日に農薬への暴露が農業に従事する児童労働者に与える影響に光を当てるパネル討議を開催します。「脆弱な集団と農薬への暴露:農業における危険で有害な児童労働の削減に向けた力の結集」と題するパネル討議では、複数の国連機関などの農業、労働、保健の専門家が農業における危険で有害な児童労働に焦点を当てて、児童労働に取り組むイニシアチブとロッテルダム条約実行の相乗効果を模索します。政策策定過程及び立法活動の必要不可欠なツールとして、脆弱な層に対する有毒化学物質の暴露についてのデータ収集法に関する提案も行われる予定です。このサイドイベントは、農業における危険で有害な児童労働、とりわけ農薬の呈する脅威と子どもが暴露に弱い事実に注意を喚起することを目的としています。
 今年の児童労働反対世界デー(6月12日)は危険で有害な児童労働をテーマとし、世界デーに合わせて発表された報告書は、農業を含む危険で有害な児童労働の実態と取り組みをまとめています。

 バーレーンの情勢に関してILO事務局長が声明を発表英語原文
    2011年6月20日(月)発表ILO/11/48

 バーレーンでは、デモや行進に参加した労働者が解雇されるなどの問題が報告されていますが、フアン・ソマビアILO事務局長は、6月20日、バーレーン大手企業共同委員会がバーレーン労働組合総連合の執行委員15人に即時辞任に応じなければ刑法及び民法に基づく訴えの提起を受けることになろうと公開の呼びかけを行ったことを非難して、政府が所有する企業が起訴を脅迫することは、「バーレーンが2002年から着手し、過去にはILOも広く認め、賞賛していた労働組合の権利尊重路線からさらに遠ざかる威嚇行為」であるとする声明を発表しました。
 ILOはここ数ヶ月、バーレーンにおける社会対話の回復奨励、労働組合指導者の安全と保護の確保、最大2,000人に上る解雇された労働者の職場復帰の促進に向けた取り組みを強めてきました。にもかかわらず、政府委員会でも勧告された571人の労働者の職場復帰もまだ実現しておらず、事務局長はこの迅速な達成と、すべての解雇労働者の職場復帰に向けた期待を訴えました。さらに、大手企業によるこの対立的な最後通告を深く憂慮し、その即時撤回及び5月31日にバーレーンのハマド・ビン・イーサ・アール・ハリーファ国王が行った対話要求に沿ってすべての当事者を社会対話の席に着かせるあらゆる努力を尽くすよう政府に呼びかけました。

 ILO理事会新議長選出英語原文
    2011年6月17日(金)発表ILO/11/47

 第100回ILO総会直後の6月17日にジュネーブで開かれた第311回ILO理事会は、2011〜12年の議長として、オーストラリア政府在ジュネーブ国連常駐代表部のグレッグ・バインス公使(労働)を選出しました。現在、オーストラリア政府特別労働顧問を務めるバインス公使は、連邦及び州政府で数々の上級幹部職を歴任し、30年以上にわたって労働関係に関与し、2008〜09年には東チモール首相の相談役も務めました。使用者側副議長には、ダニエル・フネス・デ・リオハ・アルゼンチン産業連合社会政策部会長が再任され、労働者側副議長には、ベルギーのリュック・コルトベック・キリスト教労組連盟会長が新たに選出されました。両副議長はそれぞれ、理事会の使用者側及び労働者側グループのスポークスマンも務めます。
 理事会はまた、今年4月の予定が延期になっていた第15回ILOアジア太平洋地域会議について、2011年12月4〜7日に京都で開催することを改めて決定しました。
 ILOの理事会は、任期3年の正理事56名(政府側28名、使用者側14名、労働者側14名)及び副理事66名(政府側28名、使用者側19名、労働者側19名)で構成されています。第100回ILO総会において6月6日に行われた選挙の結果、2011〜14年の理事が選出され、日本からは使用者側正理事として、社団法人日本経済団体連合会の松井博志国際協力本部副本部長、労働者側正理事として、日本労働組合総連合会の桜田高明国際顧問が選出されました。松井理事は既に2010年6月の第308回理事会、桜田理事は2011年3月の第310回理事会より、それぞれ前任の鈴木俊男使用者側理事、中嶋滋労働者側理事を引き継いで理事を務めていました。日本政府は、ブラジル、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、ロシア、英国、米国と共に、十大産業国として常任理事となっています。

 複数の国家元首・政府首脳が第100回ILO総会でILOに支持を表明英語原文
    2011年6月17日(金)発表ILO/11/46

 第100回ILO総会(ジュネーブ・2011年6月1〜17日)に出席した6人のハイレベル特別ゲストからは、次のようにILOの活動を支持する言葉が聞かれました。

 社会正義の新時代に向かい歩を進めて第100回ILO総会閉幕英語原文議題紹介&日本代表団名簿
    2011年6月17日(金)発表ILO/11/45

 100回目を迎えたILOの年次総会は6月17日、フアン・ソマビアILO事務局長の呼びかけた「社会正義の新時代」に歩を進める複数の決定を下して17日間にわたる会期の幕を閉じました。ドイツ及びロシアの首相、インドネシア、フィンランド、タンザニア、スイスの大統領、クラブ・オブ・マドリッドのメンバーである5人の元国家元首・政府首脳を含む、ILO加盟183ヵ国の政府、使用者、労働者を代表する4,000人以上の出席者は、すべての人へのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を目指すILOのディーセント・ワーク課題と国際体系におけるILOの役割の強化に対する強い支持を表明しました。ソマビアILO事務局長は閉会挨拶で、「家事労働者の尊厳が擁護され、社会的保護の床の新しい概念が確立し、より安定した世界のためには、私たちの声、価値、行動が必要であることが世界のリーダーの人々から再び表明されたこの第100回ILO総会を、後世の代表団は振り返って、『社会正義の新しい時代の端緒が現れた時』と評価すると信じる」と語りました。共に6月14日に演説した小宮山洋子厚生労働副大臣、社団法人日本経済団体連合会の中村芳夫副会長、日本労働組合総連合会の桜田高明国際顧問は、いずれも3月11日の東日本大震災に対する国際社会からの支持とお見舞いに対する謝意を表明し、被災地及び福島県の原子力発電所事故における取り組み、社会保障制度改革や公務員制度改革に関する最新状況報告などを行いました。
 第100回総会の主な出来事は以下の通りです。

 第100回ILO総会、世界全体で推計5,300万〜1億人の家事労働者を労働基準の枠内に置くことを決定英語原文
    2011年6月16日(木)発表ILO/11/44

 加盟183ヵ国の政労使代表が出席して6月17日までの日程でジュネーブで開かれている第100回ILO総会は、6月16日に家事労働者の労働条件改善を目指した歴史的な国際基準を採択しました。フアン・ソマビアILO事務局長は、「ILOの基準体系を初めてインフォーマル経済に持ち込んだ画期的な出来事」と喜びを表明しました。
 家事労働者のためのディーセント・ワークに関する条約(第189号)は、賛成396票、反対16票、棄権63票、付属する補足的な同名の勧告(第201号)は、賛成434票、反対8票、棄権42票で採択されました(日本は政府及び労働者側は条約・勧告とも賛成、使用者側は条約は棄権、勧告は反対)。昨年の総会における第一次討議を経て採択されたこの新しい基準は、家族の世話や家事を行う家事労働者は他の労働者と同じ基本的な労働者の権利を有するべきとして、妥当な労働時間、最低でも連続24時間の週休、現物払いの制限、雇用条件に関する明確な情報の提示、結社の自由や団体交渉権といった就労に係わる基本的な権利及び原則の尊重などを規定しています。第189号条約は、家事労働を、一つもしくは複数の世帯においてまたは世帯のために遂行する業務と定義し、すべての家事労働者を対象にしつつ、年齢の低さや国籍、住み込み状態などの理由によって追加的なリスクにさらされている可能性がある労働者についての特別保護規定も定めています。
 世界117ヵ国の調査に基づき、ILOは家事労働者の数を世界全体で5,300万人余りと推計していますが、家事労働者は未登録で隠されている場合が多いことから最大1億人と唱える専門家もいます。この約83%が女性で、移民が多く、途上国では賃金労働者の少なくとも4〜12%を占めていると見られます。条約の前文に記されているように、家事労働は依然として低く評価され、その労働は目に付かず、主として女性や少女が従事しており、その多くが移民や不利な社会の出身者であり、雇用・労働条件の点での差別やその他の人権侵害に特に弱い現状が明らかになっています。第100回ILO総会に出席したUN Womenのミチェル・バチェレ事務局長は、家事労働者のディーセント・ワークの不足に「もはや耐えることはできない」として、この条約・勧告の批准及び適用の過程にUN Womenが支援を提供していく意向を示しました。
 ILO事務局でこの基準策定作業を担当してきた労働・雇用条件計画のマヌエラ・トメイ部長は、この新しい基準を「頑健でありながら柔軟」と評し、「家事労働者が召し使いでも家族の一員でもなく、労働者である」ことがこの基準で明らかになったとし、「今日以降はもはや二級の労働者」と見られなくなるだろうと語りました。

 「社会正義への切迫感が復活」とスイス大統領−第100回ILO総会英語原文
    2011年6月15日(水)発表ILO/11/43

 ジュネーブで開かれている第100回ILO総会で6月15日に演説したスイスのミシュリン・カルミ=レ大統領は、社会正義と国際的なガバナンス(統治)におけるILOの役割を演説の二つの柱に据え、「尊厳と平等な機会を得る権利、世代間・地域間の公平、持続可能な開発が一般化される状況」を内包する社会正義に対する切迫感の復活を指摘しました。そして、世界の生産年齢人口の2割程度にしか社会的保護が確保されていない現状は、「大きな不正義」であると同時に「政治の安定性を危険にさらすもの」と説き、社会正義は、最低限の社会的保護を意味する「基本的な社会的保護の床」を必要とするとして、ILOと世界保健機関(WHO)が開発した社会的保護の床イニシアチブを歓迎し、それに対するスイスの全面的な支持を表明しました。
 大統領はさらに、「ILOは国際的なガバナンスの一つのモデル」であり続けており、「ILOなしに国際的なガバナンスは公正になり得ない」として、雇用及び仕事に関連した国際的な議論におけるILOの役割の強化を求め、この点で、ILOに世界貿易機関(WTO)におけるオブザーバーの地位が与えられるよう働きかける意向を示しました。また、労働基準の重要性に言及して、大統領は、今総会において世界で約1億人を数える家事労働者に社会権・経済的権利への機会を開く条約の審議が行われたことを歓迎すると共にスイスは雇用政策に関するILO第122号条約を批准する予定であると発表しました。
 フアン・ソマビアILO事務局長は、「より公正でより現実的で、形あるグローバル化」に向けた取り組みにおけるスイスの関与を強調し、「スイスは、より整合性がある多国間システム、そしてよりバランスが取れ、誰もに利益をもたらすグローバル化の主要活動主体であることは皆が知っている」と評価しました。

 ロシアはディーセント・ワーク課題を強く支持し、その実施を進める国際会議を受け入れるとプーチン首相−第100回ILO総会英語原文
    2011年6月15日(水)発表ILO/11/42

 ロシアの政府首脳として初めてILOの年次総会で6月15日に演説したウラジミール・プーチン首相は、同国の政策は、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をすべての人へ」を目指すILOのディーセント・ワーク課題と歩を一にしていると語り、その目標達成に向けた歩みを進める方法に関する国際会議を来年受け入れる用意があることを発表しました。
 首相は、一部の国だけでなく国際社会全体に利益するであろう「より持続可能でバランスの取れた」経済成長モデルの必要性を説き、景気回復政策の形成におけるILOの重要な役割を強調しました。そして、ジュネーブで開かれている第100回ILO総会に出席している183加盟国の政労使代表団を前に、世界金融・経済危機への対応策の一環として、グローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)のようなイニシアチブを考案できた理由はひとえにこの機関独特の政労使三者構成にあるとして、ロシアはこの文書を支持しているだけでなく、国民だけが経済問題の負担を担うことにならないよう可能な最大限の努力を尽くしているとして、年金、給付、賃金の凍結に走らず、危機の最中に年金制度の大規模な近代化を図ったことや、2009〜10年に400万人分以上の雇用が新規に創出または回復されたことを紹介しました。さらに、今後10〜15年以内に世界5大経済国の一つになることを目標に掲げるロシアとしては、少なくとも労働生産性を2倍にし、十分な賃金が支払われる近代的な仕事を2,500万人分以上創出する必要があろうと語りました。
 プーチン首相はまた、政府、企業、国際政治・金融機関の市民に対する「根本的な責任」と「社会的使命」を強く訴え、それこそが「我々がこの世界危機から学んだ主な教訓であり、長期的な開発政策を策定するに際し、留意すべきもの」と主張しました。
 フアン・ソマビアILO事務局長は、「移行の時代に際し、ロシアはILOの価値の重要性とその三者構成主義の役割を認め、複数の重要な条約の批准をもって、国民により良い結果を達成する上でのILOの基準体系の意義に特別の注意を払ってくれた」として、国連、G8、G20の場における「ILOとその目標の力強いパートナー」としてのロシアに謝意を表し、生活の社会的側面をロシア政府がいかに重視しているかを強調しました。

 第100回ILO総会でキクウェテ大統領が社会正義の新時代における効率的な成長を提唱英語原文
    2011年6月15日(水)発表ILO/11/41

 ジュネーブで開かれている第100回ILO総会で、加盟183ヵ国の政労使代表団3,000人以上を前に6月15日に演説したタンザニアのジャカヤ・キクウェテ大統領は、最近の世界経済・金融危機が「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をすべての人へ」というディーセント・ワーク課題の実現に新たな課題を提示し、過去数十年間に世界で得られた崇高な歩みの幾つかを脅かしていることを指摘して、「新たな課題は新たなアプローチを求める」として、社会正義の新時代に向けた効率的な成長路線の促進を通じてグローバル化に対処する新たなアプローチを提唱しました。そして、「グローバル化は、したがって、より公正かつ公平で持続可能な開発に向けて世界経済の舵を切ることができる政策を設計し、促進することによってこれらの課題に応えられる客観的で変化をもたらす力のあるリーダーシップを求めている」として、グローバル化の否定的な傾向に最初に警鐘を発した国際機関の一つであったILOのこの重要な事項におけるリーダーシップを高く評価しました。
 大統領はまた、「グローバル化の時代に社会正義とディーセント・ワークを達成することは、途上国の多く、とりわけサハラ以南アフリカ諸国にとっては、気の遠くなるような課題であることが立証された」としつつ、「包摂的で、環境に優しく、持続可能である効率的な成長パターンを促進する政策の設計」を途上国に呼びかけました。若者の雇用促進を公約するタンザニアの大統領はさらに、失業問題に取り組む必要性にも言及し、「極度の貧困と高失業の状態下では、インフォーマル・セクターが救済者となる」として、アフリカの数多くの労働者が人並みの労働条件のもとで生計を得て貧困から抜け出すことを可能にする適切な答えを発見することは「私たち皆にとっての課題」と語りました。その上で、「すべての人に社会正義が実現されるであろうとの十分楽観的な考えをもって未来を楽しみに見据えている」と大統領は結びました。
 フアン・ソマビアILO事務局長は、2007年のアフリカ地域会議における演説で大統領が既に、より公正なグローバル化の必要性を説いていたことを挙げ、「ある意味でその言葉は私たちが今日直面している多くの問題を予言した」として、「私たちが平和な世界を望むならば出現すべきこの新しい社会正義の時代において」、大統領は、アフリカのみならず国際舞台においても重要な立役者の1人であると評しました。
 タンザニアでは現在、労働力1,600万人の約5.4%が社会保障制度の対象になっていると推計されます。ILOが支援しているタンザニアのディーセント・ワーク国別計画には、国連の「一体となっての援助提供(Delivering as One)」計画の一要素である企業家精神と技能育成の分野も含まれています。

 南南・三角協力活動の拡大に光を当てるILO−第100回ILO総会英語原文
    2011年6月14日(火)発表ILO/11/40

 ジュネーブで開かれている第100回ILO総会のイベントの一つとして6月14日に行われた南南・三角協力に関するパネル討議では、インド、ブラジル、南アフリカの代表がこの分野における自国の経験を披露しました。3国の代表は、南南・三角協力への参加を強め、国際連帯と知識及び成功体験共有の精神に則り、すべての人へのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を目指すILOのディーセント・ワーク課題の前進に向けてILOと協力し合っていくことを改めて強調しました。南アフリカ労働組合会議(COSATU)の副書記長による労働者の能力開発を目指すグローバル労働大学の活動紹介、ネパール大使による水平協力を伴った観光部門の経験及び好事例紹介も行われました。自国の南南協力経験を発表した中国大使は、ディーセント・ワーク課題に対する支持を表明し、ILOの南南協力計画への参加を発表しました。
 インド、ブラジル、南アフリカの3国は2010年11月に趣意宣言に署名し、ILOのディーセント・ワーク課題とILO内における南南協力計画の設置に対する支持を表明しています。ILOは既に100以上の南南協力イニシアチブに参加しています。
 パネル討議の司会を務めたILOのマリア・アンヘリカ・ドゥッチ総局長は、この開発協力に新風を吹き込む南南・三角協力の鍵として国家間の連帯を呼びかけた上で、児童労働、社会保障、雇用集約型投資、知識共有、労使団体の強化などの分野に取り組むために南南・三角協力方式を用いるイニシアチブに対するILOの強い支持を表明しました。

 ドイツのメルケル首相、ILOの役割強化を支持−第100回ILO総会英語原文
    2011年6月14日(火)発表ILO/11/39

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、ジュネーブで開かれているILOの年次総会で6月14日に演説し、国際協力の緊密化においてILOがますます大きな役割を果たしていることを強調し、主要国・地域によるG8、G20の会合は「この機関の豊かな経験なしには考えられないだろう」として、ILOの関与は「グローバル化に一つの形、一つの構造」を与える唯一の手段であると語りました。
 ILOを初めて訪れたメルケル首相は、第100回ILO総会に参列する加盟183ヵ国の政府、使用者、労働者の代表4,400人以上に向けて、ILOとILO総会は、新たな問題に取り組み、グローバル化にその印を刻みつける組織に属するという「情熱と勇気」を示すべきと唱えました。そして、グローバル化する世界に、強制労働・児童労働・差別の禁止、結社の自由の促進などといった中核的労働基準をしっかりとつなぎ止めるILO基準の「高度の正統性と拘束的性格」に注意を喚起した上で、今総会で審議されている家事労働者の保護に向けた新しい条約について、すべての人類の個人としての尊厳を尊重する「新たな分野で公正な雇用へと向かう道における里程標」と位置づけました。「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をすべての人へ」というILOの掲げるディーセント・ワーク課題については、「世界的に認められた文書」として、さらなるインプットを求めました。
 アラブ世界を中心とした途上国における自由と民主主義は、究極的には、「働くことを欲している若者に見通し」を与える能力に左右されるだろうとして、これらの国における社会の安定の促進においてILOが果たしている重要な役割を強調した上で、メルケル首相は、これらの目標達成に向け、ILOもドイツも対話とパートナーシップを支持しているとして、この点で、ILOのグローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)とドイツの社会的パートナーシップを「失業を抑制し、社会的保護を確保するツールキット」の傑出した例として紹介しました。また、今回の危機の過程でドイツでは社会的パートナーシップの優れた経験が示され、「クルツアルバイト(ワークシェアリング)」という言葉が国際的に認められるようになったことを紹介しつつ、計画がうまくいったのは「企業が未来を信じ、政府が多額の資金を投下した一方で、労働者と使用者が犠牲をいとわなかった」ことにあると語りました。そして、社会的パートナーシップが受け入れられるには、危機が始まる前から確立していることが必要として、「景気回復期に社会的パートナーシップにも投資すること」を国際社会の教訓に挙げました。

 若年雇用に向けた世界の連合を求めるインドネシア大統領−第100回ILO総会英語原文
    2011年6月14日(火)発表ILO/11/38

 ジュネーブで開かれている第100回ILO総会において、加盟183ヵ国の4,400人を超える政府、使用者、労働者の代表を前に、6月14日に特別ゲストとして演説したインドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は、世界人口の半分近くが25歳未満である現状下で若者が世界の繁栄に対して行い得る重要な貢献に注意を喚起して、「若者に仕事を生む部門にもっと投資しなくてはいけない」と唱え、若者の失業増加を予防するために協力し合うことが社会正義の新たな時代を形成するために決定的に重要と訴えました。15〜24歳の労働力人口は2009年に世界全体で6億2,000万人を数えますが、うち8,100万人が失業していると推計され、これは過去18年間の最高記録です。
 大統領はまた、インドネシアは世界経済危機の影響が最も少なかった国の一つであると語り、対応が成功した中心的な理由として、中央政府と地方政府、民間部門と労働組合が政策及び行動を同調させる決定を下した点を挙げ、政府、企業社会、労働者が協力し合って失業を最小限にするよう動いたことを紹介し、この建設的なコンセンサスの形成を助けたILOの活動を評価しました。そして、企業及び特に若者の企業家精神に対する支援、教育や住宅といった社会給付や社会的保護の促進、意思決定へ参加する機会を労働者に与えること、グローバル化の利益が均等に分かち合われることの確保に向けたより良い国際協力などといった、成長、仕事、貧困層、環境を重視した政策を中心とした、危機の影響に対抗し、世界の雇用を改善することに向けた一連の措置を提示した上で、労働者が社会正義を享受できる必要条件として8基本条約の実施を挙げ、批准ILO条約の実施を各国に呼びかけました。さらに、移民労働者の貢献、そのニーズと権利を特別に認識する必要性を強調し、今総会で審議されている家事労働者のディーセント・ワークに関する条約案への支持を総会出席者に要請しました。
 インドネシアの大統領がILOの総会で演説するのは今回が初めてです。フアン・ソマビアILO事務局長は、インドネシアは中核的労働基準に関するILOの基本8条約をアジアで初めてすべて批准したことや、仕事に関する独自の協定を開発したことを紹介し、「人々の具体的な要求と実体経済のニーズに取り組むインドネシアは、先頭を切って世界的な危機に対応している」と評価しました。

 UN WomenとILO−職場における女性のエンパワーメント促進に向けて手を結ぶ英語原文
    2011年6月13日(月)発表ILO/11/37

 ILOと「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関(UN Women)」は、6月13日に、男女平等の促進、性に基づく差別の撤廃、家事労働者の保護、「社会的保護の床(最低限の社会的保護)」の促進、ジェンダーに基づく職場内暴力の撲滅などの重要な事項を含む幅広い内容の覚書を締結しました。覚書には、南南・三角協力を含む複数の協力形態が盛り込まれ、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)とジェンダー・エンパワーメントの分野における政策整合を高め、加盟国政労使を対象とした共同の広報提言・啓発活動、調査研究、訓練、技能向上、能力構築活動などを実施していくことが予定されています。
 第100回ILO総会に出席するためにジュネーブを訪れていたミチェル・バチェレUN Women事務局長は、覚書の署名に当たり、「これは単なる覚書以上」で、「ILOとUN Womenとの間の強いパートナーシップ及び政治的意思の反映」であると語り、「男女平等と女性のエンパワーメントの目標を本当に前進させ、世界中の女性にディーセント・ワークを確保するまたとない機会」と喜びを表明しました。フアン・ソマビアILO事務局長は、UN Womenのビジョンと行動計画の実現に向けて素早く支援の動員に動いているバチェレ事務局長の「見事なリーダーシップ」を賞賛した上で、覚書がILOとUN Womenとの間の既に強力な協働関係を制度化することになったとして、「UN Womenと共に各国の社会的パートナーと協働することによって、私たちは働く人々の男女平等に向けて影響を与え、より大きな成果を達成できる」と期待を示しました。
 UN Womenは、2010年7月の国連総会決議64/289号で、既存のジェンダー関連4国連機関を統合して発足することが決定された新しい機関です。

 ILO新刊「世界危機:原因、対応、課題」英語原文
    2011年6月13日(月)発表ILO/11/36

 このたび発表されたILOの新刊書『The global crisis: Causes, responses and challenges(世界危機:原因、対応、課題・英語)』は、過去2年間にわたってILOが行った調査研究を集め、雇用創出を刺激し、経済成長をより堅固で公平なものとする上で、巧みに設計された雇用・社会政策が今やいかに決定的に重要な役割を演じることができるかを示しています。報告書は、世界各地のこのような政策の具体例を紹介し、それが中期的な公的債務削減と財政安定の目標に沿っていることを示しています。
 2008年に始まった世界金融危機は大量失業を生み、数百万人の労働者が脆弱な就業形態に追いやられたり、貧困に逆戻りする結果を招きましたが、にもかかわらず、複数の国で実施された巧みに設計された雇用・社会政策は持続可能な回復への道を敷設しました。このような政策はそれらの国で世界金融危機による崩落を食い止める床を構築し、回復を始動させる上で中心的な役割を演じ、結果、数百万人分の雇用創出または失業予防が達成され、労働市場に対する金融危機の影響は減じられました。仕事を中心に据えた戦略は望ましく、可能であるものの、その実行は各国のニーズに注意深く合わせる必要があり、その点で社会対話が必要不可欠になります。マクロ経済の政策環境との整合性、とりわけ、効率的な金融制度も求められます。フアン・ソマビアILO事務局長は、本書について「過去30年にわたって優勢であった経済成長政策の再考」を迫るものと評しています。
 報告書は以下のような事項を見出しています。

 性差別の撤廃は「スマート経済学」の問題−ILO総会でミチェル・バチェレUN Women事務局長英語原文
    2011年6月10日(金)発表ILO/11/35

 現在ジュネーブで開かれている第100回ILO総会の日程の中で6月10日に開かれたグローバル・レポートに関する討議に特別ゲストとして参加したミチェル・バチェレUN Women事務局長は、「女性の生産的な能力と創造力を解き放つことは、企業、労働者、政府、社会の4者に利するウィン・ウィンの状況」をもたらすと述べ、総会の政労使出席者に対し、性差別の撤廃に向けたより強い公約と、問題を基本的人権に加えて「スマート(賢い)経済学」の観点から検討することを求めました。今年のグローバル・レポートは、『Equality at work: The continuing challenge(仕事における平等:続く挑戦・英語)』と題し、平等の問題を取り上げています。
 バチェレ事務局長はまた、「男女平等の道のりはまだ遠い」として、今年は男女同一価値労働同一報酬に関するILO第100号条約の採択60周年に当たることに触れた上で、「労働者の性だけを理由とした賃金不平等が大きな問題としてあらゆる地域に残っている」ことを指摘し、「男女平等の目標に向けた歩みを決して止めてはならない」と訴え、すべての男女に職場と雇用における平等を達成するという公約の強化を呼びかけました。
 フアン・ソマビアILO事務局長は、過去数十年の間に反差別法制の点では大きな歩みがあったことを紹介しつつ、「差別は複雑な怪物で、進化し変化する」として、多種多様な差別の存在を語りました。男女平等に関しては、「進展はあるが、女性の賃金はいまだに男性の平均7〜9割」と指摘した上で、妊娠や母性に係わる差別が依然非常に一般的であることや多くの少女が少女であるとの理由だけで教育を受けられない現状を示しました。
 グローバル・レポートのパネル討議に参加したノルウェーのハンネ・ビューストローム労働大臣は、「管理的職務に女性を採用しただけでは平等を得ることにならない」として、団体交渉のような手段を通じて賃金格差に取り組む必要性を指摘し、「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と社会的保護への投資は、差別に反対し、平等を促進する強力な手段になる」と語りました。ブラジルのイリニ・ロペス女性政策特別長官は、貧困は差別を増すとして、新たな貧困計画を基本的な取り組みとして、差別脱却に向けた幾つかの措置を検討している自国の状況を紹介し、「真の平等を伴って歩を進めるに先立ち、開発の主流から通常取り残されている人々を明確に捉える」必要性を唱えました。

 必要なのは「仕事」とILOに訴えつつ、将来に希望を抱く若きリーダーら−第100回ILO総会英語原文
    2011年6月10日(金)発表ILO/11/34

 ジュネーブで開かれている第100回ILO総会のプログラムの中で6月9日に行われた若者のハイレベル・パネル討議では、世界各地から集まった若者リーダーが仕事の必要性を訴えつつも、自分たちの取り組みがやがては雇用、より公平な社会、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)につながるであろうとの希望的観測を表明しました。そして、仕事、訓練、政治過程への関与の形で機会が与えられれば、違いを生み出すことに貢献できる用意があるとして、強い意欲を示しました。また、学習、教育、訓練の促進の点で企業のより多くの関与も求めました。
 討議は、最初にアラブに焦点を当てた後で世界全体を取り上げる2部構成を取りました。第1部に参加したアルジェリア、エジプト、チュニジア、イエメンの若者は、若者の失業問題が特に深刻なアラブ地域において社会正義を求める願いを現実のものとする助けを国際社会に呼びかけました。アルジェリアの若い活動家は、「決して行ってはいけないのはタオルを投げること」と強調し、目標達成に向けた闘争を続けるよう若者達に呼びかけました。イエメンの新聞編集者は自国の暴力的な状況を声を詰まらせて紹介し、国際社会の支援を訴えました。チュニジア労働総同盟の若年労働者コーディネーターは、「雇用は権利」の訴えが中心的な抗議スローガンの一つに掲げられていることを紹介した上で、「旧体制からの脱却だけでは不十分」と、再建の必要性を訴えました。1月の抗議活動に参加したエジプトの学生活動家は、「ほとんどの抗議は民主主義よりも社会正義の要求」であると語り、「社会正義が達成されるには、世界のシステム全体が変わる必要がある」と唱えました。
 第2部に参加したスペイン経済団体連合会の若年雇用の専門家は40%を超える同国の若者の失業状態を紹介した上で、「課題はすべてこれ仕事」と強調しました。国際ユース年の広報活動を担う国連ユース・チャンピオンの米国人女優モニーク・コールマンさんは、「若者には老人の知恵が、老人には若者のエネルギーが必要」と語り、「プラスの結果を達成するためのプラス思考」の必要性を説きました。コロンビア労働総同盟の若年労働者局の代表は、「組合は、失業者、インフォーマル経済で働く人々、若者にもっと近寄る必要がある」として若者失業者を代表する労働組合の役割を求めると共に国際社会の行き過ぎた分散化を指摘し、対話と収斂を求めました。インドネシアの若い作家は、「若者は変化の力」と語り、その鍵を握る要素としてより多くの教育と企業家精神の必要性を説きました。

 2011年児童労働反対世界デー(6月12日):危険有害形態の児童労働に対する緊急の行動を求めるILO英語原文
    2011年6月10日(金)発表ILO/11/33

 ILOは2011年の児童労働反対世界デー(6月12日)に向けて6月10日に発表した報告書『Children in hazardous work: What we know, what we need to do(危険有害労働における子どもたち:私たちが知っていること、しなくてはいけないこと・英語)』の中で、世界全体で2億1,500万人と推計される児童労働者のうち1億1,500万人余りが危険有害労働に従事していると指摘して、この慣行を停止する緊急の行動を呼びかけました。2004年から2008年にかけて、危険有害労働に従事する子ども(5〜17歳)は、少女を中心に全体的には減ってきていますが、15〜17歳の年齢層では5,200万人から6,200万人(20%増)に増えています。危険有害労働の具体的な定義はなく、183のILO加盟国中173ヵ国で批准されている1999年の最悪の形態の児童労働条約(第182号)の中で、子どもの健康、安全、道徳を害する業務と規定され、各国がそれぞれ関係労使団体と協議した上で、「危険有害業務一覧表」を定めることになっています。
 報告書は、作物農業、漁業、家事労働、鉱業・採石業、路上労働、サービス産業の六つの経済部門を詳しく検討し、次のような事項を見出しました。  昨年の総会で検討された児童労働に関するILOのグローバル・レポートは、最悪の形態の児童労働撤廃に向けた取り組みの失速を警告し、2016年までに最悪の形態の児童労働をなくすという目標に向けた歩みに世界経済危機がさらにブレーキをかける可能性を懸念していましたが、1年後の今も子どもに対する危機の影響は極めて懸念され、報告書は、少なくとも就業の最低年齢まですべての子どもが教育に留まるよう確保し、危険有害業務一覧表を設定するよう取り組みの強化を各国に呼びかけています。
 報告書は、毎分1人の児童労働者が世界のどこかで業務に関連した事故、疾患、心的外傷に陥っていると記し、問題は途上国に留まらず、若者が職場の事故に弱い証拠は欧米先進国からも得られると指摘しています。その上で、危険有害物質への暴露は10代後半まで心身がまだ発達途上にある子どもたちに特に深刻な影響を与えるとして、最低年齢に達してはいても職場で危険にさらされている可能性がある子どもの危険有害労働に取り組む緊急の必要性を指摘し、若年労働者が職場における危険、権利、責任を認識するよう訓練と組織化を求めると共に、すべての労働者の労働安全衛生の強化に向けた包括的な取り組みの一部として、就業の最低年齢以上18歳未満の青少年を対象とした特別の安全措置の整備を求めています。
 フアン・ソマビアILO事務局長は、過去10年間の貴重な歩みにかかわらず、危険有害労働を中心に児童労働に従事する子どもは依然として多いとして、子どもの安全、健康、道徳を危険にさらすような労働への取り組みを緊急かつ共通の優先事項に掲げ、政府、使用者、労働者が力を合わせて、児童労働を廃絶できる政策や行動の形成・実行における強いリーダーシップを発揮することを求めています。

 HIV及びエイズに関する国連政治宣言が仕事の世界のリーダーシップを要請英語原文
    2011年6月10日(金)発表ILO/11/32

 国連のエイズに関するハイレベル会合(ニューヨーク・2011年6月8〜10日)で10日に採択されたHIV(エイズウイルス)/エイズに関する政治宣言は、「HIV及びエイズと仕事の世界に関するILO勧告(第200号)」をHIVに対する世界の対応における鍵を握る人権文書と認めました。宣言は、HIV及びエイズの流行が労働者、その家族、職場、経済に与える影響の緩和において、国際社会は第200号勧告を始めとしたILOの関連する条約・勧告を手引きとすべきことを規定しています。宣言は、「HIVと共に生きている人々は、その家族を含め、差別や偏見なしに社会活動、経済活動、文化的活動に平等に参加でき、社会のすべての構成員同様、保健医療や地域社会のサポートに平等にアクセスできるべき」として、刻印と差別をなくし、人権を保護し、HIVの予防、治療、ケア、サポートへのアクセスを円滑化することを使用者、労働組合、従業員、ボランティアに呼びかけています。また、この流行への対応において若者リーダーに接触し、若者リーダーと協働する場の一つとして職場を挙げています。HIV及びエイズに関するサービスへのアクセスを阻む最大の障壁の一つとして、保健医療労働者の訓練と熟練労働者を引き留める必要性も強調しています。
 2010年のILO総会で圧倒的な支持を受けて採択された第200号勧告は、HIV感染の有無にかかわらず、経済生活に全面的に参加できるすべての労働者の資格に焦点を当て、国連宣言同様、家族を保護し、HIVと共に生きる人々の政策及び事業計画の設計・実施への参加を育み、人権を保護する必要性を強調しています。女性、若者、移民特有の脆弱性はまた、関連する措置を通じて対処すべきとし、それを可能にする環境の構築に向けて法、政策、慣行を変えることを国に奨励しています。HIVに対する世界の対応を整理統合するために採択された宣言の一般規定に第200号勧告の主要原則の多くが反映されたことによって、仕事の世界における介入の妥当性と寄与が確立されました。第200号勧告の価値が宣言で認められたことに対し、HIVと共に生きる人々のネットワークを中心に既に市民団体から強い支持が表明されています。HIV/エイズと仕事の世界ILO計画のソフィア・キスティング部長も、「HIV及びエイズをなくす取り組みの強化に向けた国連の公式の約束の一環として、HIVに対する世界の対応において仕事の世界の利害関係者がリーダーシップを取ることを求めるこの国連のアピールを歓迎します」と語っています。
 3日間にわたる国連ハイレベル会合の日程の中で、ILOは、移民その他の移動労働者のHIV予防プログラムへのアクセスを円滑化する方法を話し合うサイドイベントを国連合同エイズ計画(UNAIDS)、国際移住機関(IOM)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と共催しました。2001年6月に開かれた国連HIV/エイズ特別総会における政府の公約にもかかわらず、移住過程の状況に関連した脆弱性に対処し、差別的な慣行と政策を食い止めるためには、国際的な取り組みのさらなる強化が求められます。第200号勧告はこの点で、移民の送出国、通過国、受入国が二国間及び多国間協定を締結し、移民労働者がHIVの予防、治療、ケア、サポートの諸サービスにアクセスできるよう確保することを提案しています。

 世界雇用危機、均衡ある成長、ディーセント・ワークについて検討 −第100回ILO総会ハイレベル・パネル討議英語原文
    2011年6月7日(火)発表ILO/11/31

 加盟183ヵ国の政労使代表団約4,000人が出席し、6月1〜17日の日程でジュネーブで開かれている第100回ILO総会では、現在世界中で見られる経済・社会的課題について掘り下げた話し合いを行う以下の五つのハイレベル・パネル討議が開かれます。
  1. アラブの若者:社会正義を切望して(6月9日)−アルジェリア、バーレーン、エジプト、チュニジア、イエメンの若い活動家が、排除、貧困、不平等といった課題に取り組む若者の視点からアラブ地域の最新の動向を紹介します。
  2. 世界の若者:変革を主導(6月9日)−若者に焦点を当てたパネル討議の第2部では、今年8月11日までの国際ユース年を広報する国連ユース・チャンピオンの米国人女優モニーク・コールマンさんを始め、インドネシア、コロンビア、スペインの若者が参加して、世界の若者が直面している雇用、社会、政治面の課題を示し、これに対処する実践的な計画や取り組みについて論じます。
  3. グローバル化経済における雇用と社会正義(6月13日)−エジプトの財務相、ギリシアの労働・社会保障相、国際労働組合総連合(ITUC)書記長、ドイツ使用者団体連盟事務局長などの政策策定に携わるハイレベルの人々が参加して、経済成長がディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に転換するのを確保するためには何が必要か意見を交換し合います。
  4. より公正かつよりグリーンで持続可能なグローバル化におけるディーセント・ワークの役割(6月14日)−過去30年余りにわたる成長のパターンとグローバル化のモデルは、経済成長は刺激したものの、利益が平等に分かち合われる社会を作り出していないことの懸念は、ILOのみならず国連の地域経済委員会でもたびたび表明されています。この討議では、アジア太平洋、アフリカ、西アジア、欧州、中南米・カリブといった国連の五つの地域委員会の事務局長らが出席し、バランスの取れた形で利益と機会が分配される効率的な成長パターンの達成に向けて各委員会が行ってきた取り組みを踏まえ、ディーセント・ワークを中心に据えてより高い政策の整合性と統治の改善を達成するために何が必要かについて提案します。
  5. 社会正義の新たな時代の必要性(6月15日)−50ヵ国以上の元大統領・首相が国際問題を話し合うために集結した非営利組織「クラブ・オブ・マドリッド」のメンバーであるエクアドル、ガーナ、ナイジェリア、イエメン、オランダの元大統領・首相が出席し、回復を強化し、力強く持続可能でバランスの取れた成長の基盤を構築するために今回の危機からどんな教訓が得られたかについて話し合いが行われます。

 2011年児童労働反対世界デー(6月12日)英語原文
    2011年6月6日(月)発表ILO/11/30

 今年の児童労働反対世界デー(6月12日)は、「警告!危険有害労働における子どもたち−児童労働に終止符を」をテーマに、世界50ヵ国以上で、政府、使用者、労働者、国連機関、非政府組織(NGO)、市民団体が関与して、ハイレベル政策討議からメディア・イベント、啓発キャンペーン、文化的実演活動、各種公開イベントなどに至る幅広い行事が行われます。日本でも世界デー当日に、児童労働ネットワークやILO駐日事務所などが共催して「ファッションで世界を変える〜危険・有害労働から子どもを守るために〜」をテーマに映画上映会とシンポジウムが開かれます。
 世界デーに先立つ、6月10日には『Children in hazardous work: What we know, what we need to do(危険有害労働における子どもたち:私たちが知っていること、しなくてはいけないこと・英語)』と題する報告書が発表されます。ILOの児童労働撤廃国際計画(IPEC)が作成したこの報告書は、欧米先進国から途上国に至る幅広い地域で危険有害労働における子どもの最新の動向と推計を示し、農業、鉱業、建設業、製造業、家事労働、ごみ拾いなどの労働が子どもの健康を損なうリスクを分析し、問題に取り組む一連の政策提言を行っています。報告書は、10日正午に、コンスタンス・トーマスIPEC部長や報告書執筆者などが出席する記者発表会で発表されます。ジュネーブで開催中のILO総会の枠内でも同日、危険有害労働における子どもに関するパネル討議が行われます。午後遅くには、国連前広場のプラース・デ・ナシオンでジュネーブ市内の学童数百人が集まって「子ども連帯イベント」が開かれる予定です。

 ILO新刊−アラブ被占領地の労働者の状況:第100回ILO総会討議資料英語原文
    2011年6月3日(金)発表ILO/11/29

 ILO総会の求めに応じて既に30年間にわたって毎年のILO総会に事務局長報告付録として提出されている『The situation of workers of the occupied Arab territories(アラブ被占領地の労働者の状況・英語)』の今年の報告書は、人の移動の点で若干の改善が見られるものの、過去1年間でこれらの地域の労働者の状況に大きな好転はなかったと結論づけ、「イスラエルの占領によって課された制約と占領自体が除去されない限り」そのような変化は起こらないだろうとして、現在の安全保障の論理を「域内のすべての男女の経済、雇用、人間の安全保障の利益の点から見た長期的なビジョンに基づく開発の論理」に置き換えることを呼びかけています。例年通り、西岸、ガザ、ゴランなどを含むアラブ被占領地、イスラエル、シリアを今年初めに訪れて労働者の状況を評価した視察団の報告をもとに作成された報告書は、ガザの封鎖、分離壁の影響、西岸からの東エルサレムの分離などといった様々な分離の側面に言及した上で、「パレスチナ経済は、占領と分離という二大制約に関する合意と行動なしには乗り越えられない限界に達している」と指摘し、当事者すべてで次の段階について決定に至る必要性を強調しています。
 パレスチナ被占領地の経済情勢にはさらなる改善が見られるものの、ガザでは封鎖が続き、住民の5分の4が生活を人道援助に頼り、インフォーマルな「トンネル経済」が生き残っている経済活動の主な推進力となりつつある現状下では、成長分布は不均等で、2010年の失業率は2009年の24.8%からわずかに改善して23.7%となったものの、若者の失業率は39%と相変わらず驚くほど高く、報告書は、占領の終結と統一を求めるガザ及び西岸の若者の声に耳を傾けることを求めています。西岸の人々の移動の自由が増したことを歓迎しつつも、報告書は、居住許可を有するパレスチナ人に対する制約が強められてきている東エルサレムやガザでも制約を緩和するよう求めると共に、ゴランの状況が和平交渉から抜け落ちていることに注意を喚起しています。また、最低賃金問題やパレスチナの労働者がイスラエルの使用者に対する賃金支払い請求を解決できる効果的な仕組みなどを含む賃金制度の検討、激しい性別分離が見られる労働市場における女性の潜在力の活用、将来的なパレスチナ国家における社会対話のための強力な制度的取り決め、そして貧困緩和等への効果的な寄与を目指したパレスチナ雇用・社会的保護基金の潜在力の最大化を図ることなどを求めています。さらに、民主パレスチナ国家の構築には強い社会的側面を備えた措置を伴わせる必要性を指摘し、この国がまだ全世界的に認められた現実でないという事実があろうとも、それが今こういった措置に着手すべきでないことを意味するわけではないと訴えています。

 社会正義の新時代を呼びかけて歴史的な第100回ILO総会を開幕−ILO事務局長英語原文
    2011年6月1日(水)発表ILO/11/28

 6月1日に行った第100回ILO総会開会演説において、フアン・ソマビアILO事務局長は、約3,000人の加盟国政府、使用者、労働者の代表を前に、仕事の世界で増しつつある「大混乱」に対処する持続可能な開発を基礎とした社会正義と経済成長の新しい時代に向けた緊急の公約を呼びかけました。事務局長は、総会に討議資料として提出した事務局長報告『A new era of social justice(社会正義の新時代・英語)』を引用し、仕事の世界は、許容できないくらい高い若者の失業水準、実体経済に対する世界の投資の低迷、雇用を創出する小企業の疎外、まともでないレベルの所得と富の集中などといった複数の危機に直面しているとして、「社会正義の新時代が望ましい未来に関する単なる理想的なビジョンに留まるか、私たちの社会に根付いた現実になるか」は、「多くの点であなた方、私たち、ILOファミリー」にかかっているとして、「今こそ、より強いILOを」と訴えました。また、回復が依然として脆弱であるにもかかわず、満足感が広がっている現状に懸念を表明し、「私たちは、危機の根源にあり、この30年間ほとんど至る所で体系的に不平等を拡大してきた非効率な成長パターンと不公正なグローバル化のルールをさらに堅固にする、より大きな危険に直面している」として、通常の状態に戻れば早晩次の危機につながる危険性を警告しました。
 さらに、あまりにも多くの人々が、危機が社会に与えている直接的な影響と長期的な傾向の間に挟まれて搾り取られているように感じていることや、金融機関は「大き過ぎて倒産させられない」のに対し、人は「小さ過ぎて気にならない」と見られているように人々が感じている点などを挙げ、ソマビア事務局長は「人々の怒りといらだちももっとも」とし、「エジプトのタハリール広場からスペインのプエルタ・デル・ソルに至るまで、多くの国の通りや広場で、この世界を変えるかもしれない若者の主導する社会運動・人民運動の誕生が目撃されている」として、そこから読み取れる「今日の真の変革は、人々の声と要求を政治的な意思決定の中心に投影することができる幅広い平和的な社会と人民の動員を求めている」との力強いメッセージに耳を傾けることを求めました。そして、ILOの政策は、「緊張がより少なく、より公正で、安全保障が強化された世界」に寄与するとして、社会正義の新しい時代は、現在の結果に単に社会的な風味を加えたものであってはならず、異なる市場結果を伴う異なる成長パターンを導くものでなくてはならないと訴えました。その上で、経済的・社会的に効率的な成長が求めているものとして、「リーダーシップ、知識、対話、協力」の4点を挙げ、「多国間機関の中で少なくとも一つの場所は、人々の苦しみに耳を傾けている事実」を世間に知らせる必要を唱え、ILOの第100回総会をこういった課題及びILOの将来的な役割について考える機会とすることを呼びかけました。

 ILOの価値と政策がかつてないほど必要とされている−フィンランド大統領ILO総会演説英語原文
    2011年6月1日(水)発表ILO/11/27

 6月1日に開幕した第100回ILO総会の開会式において、約3,000人の加盟国政府、使用者、労働者の代表団を前に演説したフィンランドのタルヤ・ハロネン大統領は、「社会正義が欠けている」世界の現状に注意を促し、「より少ない緊張、より多くの公平性、強化された安全保障を伴う世界」を形成するために、ILOの「価値と政策がかつてないほど必要とされている」と語りました。そして、「ILOが採択した中核的な条約が話題になることは依然として多いものの、世界の多くの場所で、国家による実施面で行わなくてはならないことがまだ多く残っている」と語り、「世界経済を前進させる手段を探す際には、これらの基本権を尊重すべき」と唱えました(演説全文)。
 ハロネン大統領はさらに、G20諸国の活動を含み、グローバル経済の議論の中で勤労生活の問題が確実に考慮に入れられるよう活発に働きかけてきたILOの努力に触れ、自らが共同委員長を務めたILOの「グローバル化の社会的側面に関する世界委員会」の議論が、2005年の国連世界サミットの成果につながり、ILOの現在の戦略目標を定める2008年の「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」の採択に寄与し、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)へのアクセスという要求事項を含むグローバル化の影響に対処することができたことに喜びを表明しました。そして、世界委員会が、より公正なグローバル化に向けた活動は国内で開始するよう提案したことに言及し、フィンランドを始めとした北欧諸国が高い競争力を維持しつつ、「福祉社会モデル」を基盤とした体制を築き上げたことを紹介し、政府、労働市場の諸組織、その他の主要なパートナーは、「グローバル化の利益の十分な活用が保障される国内措置」について合意すべきと呼びかけました。また、国際機関同士の緊密な協力の必要性も強調し、「ILO、国連貿易開発会議(UNCTAD)、世界貿易機関(WTO)などの機関間の緊密な相互作用は、グローバルな解決策の堅固な基盤を提供しよう」と述べた上で、グローバル・レベルにおける、「様々な目的と活動の間のより良い整合性、そして目標を達成する方法に関する共通の理解」の必要性を唱えました。

 第100回ILO総会役員選出英語原文
    2011年6月1日(水)発表ILO/11/26

 ジュネーブで6月1日に開幕した第100回ILO総会(〜6月17日)は、議長としてカメルーンのロバート・ヌキリ労働・社会保障大臣、副議長として、ブラジルの全国工業連盟(CNI)のダゴベルト・リマ・ゴドイ相談役(使用者側)、ルーマニアの全国労働組合総連合(Cartel Alfa)のボグダン・イウリュ・ホッス会長(使用者側)、ドミニカ共和国のオメロ・ルイス・サンチェス=エルナンデス在ジュネーブ国連常駐代表(政府側)を選出しました。
 議長就任に当たり、ヌキリ大臣は、今総会が第100回という象徴的かつ歴史的な会期を迎えたことに触れ、「より良い仕事の世界に向けた解決策をもたらす上でILOが中心的なプレーヤーであることを確保しよう」と総会出席者に呼びかけました。
 第100回ILO総会には、183のILO加盟国から政府代表、労使団体リーダーなど、代表・顧問約3,000人が参加することが見込まれます。各加盟国は各々独立して発言し、投票する政府2名、労使各1名の4名からなる代表団を総会に送ることになっています。

 毎日2,500人の若者がHIVに新たに感染−共同出版物『危機における機会』英語原文
    2011年6月1日(水)発表ILO/11/25

 国連児童基金(ユニセフ)、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)、国連人口基金(UNFPA)、ILO、世界保健機関(WHO)、世界銀行が6月1日に発表した共同刊行物『Opportunity in crisis: Preventing HIV from early adolescence to young adulthood(危機における機会:青少年期におけるHIV予防・英語)』は、青少年とHIV(エイズウイルス)に関する各種のデータを初めて提示し、毎日2,500人の若者がHIVに新たに感染していると推計され、若者の感染率は少し低下してきているものの、若い女性や少女の感染リスクは不均等に高く、これは生物学的な弱さ、社会的不平等・排除に由来していると記しています。報告書は大人への移行期にある青少年の直面するリスクを強調し、感染リスクを高める要因に加え、予防サービスを強化し、有害な社会慣行に取り組む機会を示しています。
 2009年に15歳以上の新規感染者の中で15〜24歳の青少年が占める割合は41%となり、この年代の感染者数は世界全体で約500万人に達し、うち10代が約200万人と推計されています。大半がサハラ以南アフリカに住み、女性がほとんどを占め(世界全体では6割超、サハラ以南アフリカでは72%)、大部分は自分が感染している事実を知りません。
 HIV感染のリスクを高める有害なジェンダー・社会規範がまだ確立されず、ほとんどが性に目覚める以前の早期思春期は、介入するには格好の時期であり、地域社会にも若者自身にも、若者をリスクにさらす行動様式に変化を招き、若者の生育環境を形成する上で果たすべき役割があります。HIV感染率の削減には一回の介入ではなく、ライフサイクル全体にわたって情報、支援、サービスを提供する連続的な予防活動が求められます。
 世界全体で、搾取、社会的排除、家族の支援の欠如、さらには経済的な必要性に迫られて、多くの若者が商業的セックスや注入薬物利用に走り、極度に高い感染リスクにさらされているだけでなく、そのような行動様式に従事することによる一般的な刻印と差別に直面しています。若者にHIVの予防・保護サービスの利用機会が提供されていないこともしばしばです。国のHIV対応が効を奏するには、政府が将来の世代の健康を脅かす貧困、排除、男女不平等といった根底にある問題に取り組む必要があります。公平性を道しるべとして用いることは、手を差し伸べるのが最も難しい人々が後回しにならないよう確保する助けになります。フアン・ソマビアILO事務局長は、昨年採択されたHIV及びエイズと仕事の世界に関するILO勧告(第200号)がHIV及びエイズに関する国の政策及び事業計画で若者に特別の焦点を当てるよう呼びかけ、HIVに関する情報を主流化する決定的に重要な経路として教育・訓練制度や若者の就労を支援する事業計画・サービスの役割を強調していることを紹介し、「若者は既に失業、不完全就業、貧困といった負担を不均等に抱えていることが多く、世界的な景気後退で状況は一層悪化している」として、若者がその潜在力をフルに発揮できる環境の整備を求めています。

 第100回ILO総会:先般の経済・雇用危機後に求められる新しい社会正義の時代について討議英語原文議題紹介&日本代表団名簿
    2011年6月1日(水)発表ILO/11/24

 先般の世界金融危機後における雇用情勢に対する人々の懸念、世界的な失業・不完全就業問題が見られる中、6月1〜17日にジュネーブで開かれるILOの今年の年次総会は、第100回総会として、社会正義の新しい時代を呼びかけます。総会では、記録的に高い失業率、十分な社会的保護が得られていない世界の10人中8人にこの保護を拡大する手段、職場における公正な処遇を確保する上での労働行政の役割、ほとんどが女性で構成される数百万人の家事労働者に就労上の基本的な権利を拡大することを目指した国際労働基準案などの仕事の世界における今日及び将来の課題が話し合われます。北アフリカ・中東その他の地域における若者の雇用、グローバル化経済における雇用と社会正義、より公平かつよりグリーンで持続可能なグローバル化におけるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の役割、社会正義の新時代ビジョンに関するハイレベル・パネル討議やアラブ被占領地の労働者の状況に関する最新報告の討議も予定されています。6月10日には、児童労働反対世界デー(6月12日)の記念行事の一環として危険有害労働における子どもに関するパネル討議も開かれます。
 フアン・ソマビア事務局長が提出する今年の事務局長報告は『A new era of social justice(社会正義の新時代・英語)』と題し、危機後の仕事の世界の現状を概説した上で、現在の成長パターンが、経済的に非効率で社会的に不安定、環境を損ない政治的に非持続可能で、幅広い不満の種となってきている現状に警鐘を発し、「人々が求めている幅広く均衡の取れた結果集合」を生み出すようなグローバル化の新しいモデルの構築を呼びかけています。報告書は、「現在のルールは、人々及び社会にますます不平等な結果を生み出す成長パターンにつながったため非効率」とした上で、効率的な成長路線が目指すべきものとして、「社会正義の目標が何より優先されることと、異なる市場結果集合、すなわち、ディーセント・ワークの結果を生み出すことのできる政策の貢献について合意すること」と提案しています。ソマビア事務局長は、実体経済を代表する政労使代表団が、今総会で、「世界が直面している深刻な社会正義の課題」に取り組む方法を検討することを求めています。
 総会では、特別ゲストとして、ドイツのメルケル首相、インドネシアのユドヨノ大統領、ロシアのプーチン首相、パレスチナのファイヤード首相、フィンランドのハロネン大統領、タンザニアのキクウェテ大統領、スイスのカルミ=レ大統領、その他多数の国家元首経験者や国際機関の長の演説も行われる予定です。

2011年5月発表分

 第100回ILO総会(ジュネーブ・2011年6月1〜17日):議題と取材要項英語原文議題紹介&日本代表団名簿
    2011年5月27日(金)発表ILO/11/23

 ILOの今年の年次総会である第100回ILO総会は2011年6月1〜17日にジュネーブのパレ・デ・ナシオン(国連欧州本部)で開かれます。日本を含む183の加盟国から政府、使用者、労働者の代表の出席が予定されています。
 経済及び仕事の危機などの世界的な課題がいまだ進行中であるのに加え、中東・北アフリカの一部その他世界各地で大きな社会の変革が進んでいるただ中で開かれる第100回ILO総会の議題は、こういった新しい現実と懸念事項を反映しています。「社会正義の新時代」の必要性を唱える事務局長報告、アラブ被占領地の労働者の状況、雇用及び職業における差別の排除に関するグローバル・レポート、2012/13年度ILO事業計画・予算案、家事労働者のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)のための条約・勧告の採択に向けた第二次討議、2008年の総会で採択された「公正なグローバル化のための社会正義に関するILO宣言」が掲げる四つの戦略目標の一つである社会的保護の中の社会保障部分に関するフォローアップ審議、労働行政と労働監督に関する一般討議、ミャンマーの強制労働問題などのILOの条約・勧告の適用に関する審議などが行われます。6月12日の児童労働反対世界デーに際しては、今年のテーマである危険で有害な形態の児童労働に関する新しい報告書も発表されます。
 記念すべき100回目の会期であることから、フィンランドのハロネン大統領、パレスチナのファイヤード首相、インドネシアのユドヨノ大統領、ドイツのメルケル首相、ロシアのプーチン首相、タンザニアのキクウェテ大統領、スイスのカルミ=レ大統領などのハイレベル・ゲストの出席に加え、1)アラブ及び世界の若者、2)グローバル化経済における雇用と社会正義、3)より公平で、よりグリーンで持続可能なグローバル化におけるディーセント・ワークの役割、4)社会正義の新時代、のそれぞれをテーマとするハイレベル・パネル討議も予定されています。3年毎に行われる理事会の改選期に当たっているため、理事の選挙も行われます。
 総会の取材を希望される報道機関の方々は、事前登録(登録用紙)の上、身分証明書または旅券、記者証、所属機関の取材指示書を提示して、ジュネーブのILO本部で記者バッジを受け取る必要があります。国連に登録されているジュネーブ駐在員の方々には、国連ジュネーブ本部プレスオフィスから総会取材用のバッジが配布されます。総会会場には、無料の無線インターネット・アクセスが整備されたメディアセンターが開設されるほか、ラジオ・TV取材用の様々な支援も提供されます。

 サルコジ仏大統領がG20にグローバル化の社会的側面の強化を呼びかけ英語原文
    2011年5月24日(火)発表ILO/11/22

 2011年の主要20ヵ国・地域(G20)サミット議長国として5月23日にパリで開催した「グローバル化の社会的側面の強化に関するG20会合」で開会演説を行ったサルコジ・フランス大統領は、G20諸国の雇用・労働大臣に向け、「労働者に利益をもたらし、社会進歩を進める、より堅固で力強いグローバル化」に向かう野心的な行程表の開発を、9月に開かれるG20労働・雇用大臣会合に付託されている任務に位置づけました。そして、社会正義とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に関するILOの最近の声明を反映する形で、グローバル化を規制し、それが引き起こす行き詰まりを避けるために用い得るレバーとして、1)基礎的な社会的保護の開発の奨励、2)雇用を経済選択肢の中心に据えること、3)労働者の権利がより良く守られることを挙げました。
 フアン・ソマビアILO事務局長は、ILOのような政労使三者構成の機関がグローバル化の社会的側面の強化に果たし得る重要な役割が認められたことを歓迎し、「グローバル化の社会的側面の強化を呼びかけることによって、G20サミット議長国としてのフランスは、雇用、仕事における尊厳、安全保障に対する人々の懸念に寄り添うことを図っている」として、G20が、マクロ経済政策と社会進歩のより一層の整合性、そしてそれが促進すべき雇用を求めるこの呼びかけに耳を傾けることへの期待を示しました。
 雇用を経済選択肢の中心に据える必要性に関連し、サルコジ大統領は、G20の求めに応じてILOが経済協力開発機構(OECD)と協力して行った研究の有用性を強調し、2015年までに雇用を危機前の水準に回復させるには、G20諸国全体で今後5年間に年当たり2,200万人、計1億1,000万人分の雇用を創出する必要があるとの数字を引用しました。最低限の社会的保護である「社会的保護の床」を世界全体に張り巡らそうとの国連のイニシアチブにも触れ、ミチェル・バチェレ議長を中心とした社会的保護の床顧問団の活躍を賞賛しました。
 労働者の権利をさらに尊重する必要性に関連し、サルコジ大統領は、すべての人を引きずり下ろすような「ルールなき競争」に反対する意思を示し、この点で、大半がILO加盟国でもあるG20諸国に対して労働者の基本的な権利に関するILOの中核的8条約の批准を呼びかけました。
 大統領はまた、社会問題に関する議論に社会的パートナーを参加させることの重要性を強調し、フランスが議長国を務めるG20の議論の過程に社会的パートナーを密接に関与させていく意向を再言しました。

 先住民の権利増進に向けた国連初のグローバル・パートナーシップ発進英語原文
    2011年5月20日(金)発表ILO/11/21

 現在ニューヨークで開かれている第10回国連先住民問題常設フォーラムに合わせ、国連は5月20日に、先住民の権利の促進と保護に向けた初のグローバルな国連機関間イニシアチブを立ち上げました。ILO、国連開発計画(UNDP)、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)、国連児童基金(ユニセフ)の四つの国連機関がそれぞれの経験と専門知識を持ち寄って活動を展開するこの「国連=先住民パートナーシップ(UNIPP)」は、資金協力と技術支援の動員を通じて「先住民族の権利に関する国連宣言」の完全な実現を呼びかけています。1989年に採択されたILOの先住民及び種族民条約(第169号)も、国連宣言と並んで、先住民の権利の保護と促進に向けた重要な国際文書として広く認められています。
 UNIPPは、先住民の権利の確保に加え、先祖伝来の土地と天然資源の利用に関する紛争予防を含み、先住民が地元及び国家レベルで統治と政策のプロセスに十分に参加できる能力と制度の強化を図ります。世界約90ヵ国に住む3億7,000万人以上の先住民は、世界全体の貧困層の15%、極度の貧困層の3分の1を占めています。不正義の犠牲となってきた歴史の存在は、不均等に多くの先住民の人々が貧困、差別、法的救済手段へのアクセス不能、社会の縁辺における生活に苦しむ状況を招いています。多くの先住民コミュニティーが、しばしば自分たちの権利を無視した採取産業による土地や資源の搾取を目撃しています。低い教育水準、健康問題の多さ、犯罪率の高さ、人権侵害が見られる傾向もあります。例えば、中南米では、先住民の子どもの死亡率が非先住民の子どもと比べて相当に高く、暑熱ストレスや塩水流入によって農業の脆弱性が高まっている太平洋地域では食の安全保障の欠如が先住民を脅かしています。UNIPPは、訓練、対話の促進、協議過程の確立、法制の見直し及び改革、紛争予防などの様々な手段を通じて、政府及び先住民団体と協力し、こういった問題への取り組みに支援を提供します。

 ILO新刊「2011年グローバル・レポート:仕事における平等」−世界経済危機は仕事に関連した新たな差別への道を開く英語原文
    2011年5月16日(月)発表ILO/11/20

 今年6月に開かれる第100回ILO総会の討議資料として作成されたグローバル・レポート『Equality at work: The continuing challenge(仕事における平等:続く挑戦・英語)』は、反差別法制面においては進展が続いているものの、世界的な経済・社会危機は移民労働者など特定のグループに対する差別のリスクを高めたと記しています。そして、平等問題を扱う機関に届く申立数の増大、職場内差別の多様化、様々な理由に基づく差別の一般化を示しています。さらに、景気後退期には反差別政策や労働者の実際の権利の優先度が引き下げられる傾向があると警告し、労働行政や労働監督業務、差別禁止や平等問題を扱う専門機関に得られる資金の削減・緊縮予算措置は、今ある機構が経済危機による差別や不平等の増大を防止する能力を深刻に損なう可能性を指摘しています。また、信頼のおけるデータの欠如がこれらの措置の正確な影響の評価を困難にしているとして、差別に関するデータの収集を全国的に向上させるよう技術資源・人的資源・資金を充実させることを政府に呼びかけています。
 報告書は、仕事に関連した新しい形態の差別が増えてきている一方で、古い課題は対処されているとしてもせいぜい部分的に過ぎないとして、次のような事項を示しています。  グローバル・レポートは、1)平等と差別禁止に関するILOの基本条約(第100号第111号条約)の全加盟国による批准と適用の促進、2)雇用及び職業上の差別の撤廃に関する知識の開発と共有、3)仕事に係わる差別禁止の基本的な権利をより効果的に実行するILO加盟国政労使の機構能力の育成、4)平等に関する主要行動主体との国際的パートナーシップの強化の四つの優先分野を含み、差別撲滅に向けた一連の措置を提案しています。フアン・ソマビアILO事務局長は、「経済に逆風が吹いている時代は、職場のみならず、より幅広く社会に差別が生まれる温床となる」と警鐘を発し、正しい対応策として、「経済成長政策を雇用政策、社会的保護政策、仕事に係わる権利に関する政策と組み合わせ、教育を通じて姿勢の変化を促すことを含み、政府、社会的パートナー、市民社会が協働できる環境を形成すること」を挙げています。
 グローバル・レポートとは、1998年の総会で採択された「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」のフォローアップの仕組みの一つとして、毎年、労働における基本的権利の4分野(結社の自由及び団体交渉権の承認、強制労働の禁止、児童労働の撤廃、雇用及び職業における差別の排除)の一つについて順にまとめて総会に提出される討議資料です。今年は差別に焦点を当てています。

2011年4月発表分

 2011年労働安全衛生世界デー:職場におけるリスクの予防と管理に向けた安全衛生マネジメントシステムに焦点を当てて世界各地で行事英語原文
    2011年4月26日(火)発表ILO/11/19

 ILOは4月28日を「労働安全衛生世界デー」と定め、労働安全衛生に関する意識を世界全体で高める日としています。今年の世界デーは「労働安全衛生マネジメントシステム」をテーマに、職場におけるリスクの予防・管理活動を継続的に改善する労働安全衛生マネジメントシステムの価値を改めて強調しています。世界デーに際して発表された報告書『OSH Management System: A tool for continual improvement(労働安全衛生マネジメントシステム:継続的な改善のためのツール・英語日本語訳)』は、労働安全衛生マネジメントシステムの適用法、具体的には、このシステムを国家及び企業レベルで利用する方法を順を追って説明しています。建設、化学、大規模災害を招く恐れのあるエネルギー部門、新たな危害を生む可能性があるナノテクノロジーなどのハイリスク部門も取り上げられています。
 毎年、世界全体で3億3,700万件の労働災害が発生し、230万人(1日当たり約6,300人)の命が奪われているとILOでは推計しています。労働安全衛生マネジメントシステムの実行は、労働災害、職業病、業務上の死亡者数を減らす助けとして決定的に重要です。「この10年ほど、マネジメントシステムを用いた労働安全衛生への取り組みが人気を得、多くの職場に導入されました。この人気は、職場における安全と健康の継続的な改善を円滑化する上でこのシステムが有用なことを反映しています。すべての労使の積極的な参加を伴い、うまく機能する労働安全衛生マネジメントシステムは、安全・健康状態を継続的に改善する実践的な解決策を見出す手段となるでしょう」と、町田静治ILO労働安全衛生部長は語っています。
 世界デーに際し、世界各地で様々な行事が行われます。例えば、ロシアでは労働安全衛生マネジメントシステムに焦点を当てた複数の会議が、アスタナでは2日間にわたり、労働安全衛生に関する第1回カザフ国際会議・展示会が、オスロでは政労使三者が参加して「良好な作業環境に向けた世界デー:職場で感じていることに不安を抱いている方々のために」をテーマとする会議が、中国・唐山では企業における安全文化の促進に焦点を当てたワークショップが、タンザニアでは複数の企業による展示と最善事例コンクールを伴う労働安全衛生に関するシンポジウムが開かれます。政府が2011年を「ディーセント・ワーク及び労働者の安全・健康年」に指定したアルゼンチンでは、第8回労働安全衛生週間として、多数の会議、ワークショップ、啓発キャンペーンが行われます。ILOと国際金融公社(IFC)の共同事業であるベターワーク(より良い仕事)計画では、ベトナムにおける安全ランニングなどの一連の行事がプロジェクト実施国で行われます。ILO駐日事務所では、世界デー関連情報と共に3月11日に発生した東日本大震災を受け、災害対応・復旧活動における労働安全衛生に関する情報を集めたポータル・ページを新設しました。

 2008〜09年の大景気後退の原因と結果、政策対応を吟味−ILO新刊英語原文
    2011年4月5日(火)発表ILO/11/18

 ILOは4月7日にジュネーブのILO本部において、2007年の金融危機に端を発する世界的な経済・雇用危機の原因と結果を分析し、途上国・先進国双方に向けて政策対応策を提示する新刊書を発表します。ILO雇用総局の上級経済専門官2人が共編したこの報告書『From the Great Recession to labour market recovery: Issues, evidence and policy options(大景気後退から労働市場の回復へ:論点、証拠、政策選択肢・英語)』は、この分野におけるILOの現役職員及び元職員による掘り下げた調査研究の集大成となっています。危機前の時代から、景気後退が失業及び社会に与えた影響、そして各国政府が採用したマクロ経済刺激策及び労働市場政策に至るまで、危機の諸側面が世界的な観点からまとめられています。
 4月7日の発表会では、ホセ・マヌエル・サラサール=シリナチスILO雇用総局長が司会を務め、国連貿易開発会議(UNCTAD)のハイナー・フラスベック・グローバル化・開発戦略部長が基調講演を行います。

2011年3月発表分

 成功からの学習が後発開発途上国の景気改善のカギ−ILO新刊英語原文
    2011年3月29日(火)発表ILO/11/17

 2011年5月9〜13日にイスタンブールで開かれる第4回国連後発開発途上国会議に向けてILOが作成した新しい報告書『Growth, employment and decent work in the Least Developed Countries(後発開発途上国における成長、雇用、ディーセント・ワーク・英語)』は、過去10年間に後発開発途上国では成長が回復したものの、成長、雇用、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の性質については大きな構造的な課題が残ると論じています。
 2000年代に後発開発途上国では国内総生産(GDP)の伸びよりはずっと弱いものの、人口成長率をわずかに上回る年平均2.9%の雇用成長が記録されました。伸びの大半はサービス部門で生じ、工業部門就業者比率は2000年に8%で2008年になってもわずか1割程度です。賃金・給与労働者が就業者全体に占める割合は少し増加したものの(2000年14%→2008年18%)、依然として大多数の労働者が、貧困線を上回る暮らしができない脆弱な就業形態に留まっています。報告書は、最近10年の成長は高かったものの一次産品の輸出を基礎としていたために変動が大きかったとし、公共インフラ、教育、技能の大きな不足が、より持続可能でバランスの取れた成長戦略の制約となっていると記しています。政策上の無視、それに起因する農業不振、製造業の弱い成長、多角化の失敗は、特に若者と女性の生産的な雇用の伸びを弱める結果を招き、働く貧困層、脆弱な就業者、インフォーマル雇用、低生産性が広く見られることになっています。報告書は、成長、投資、貧困削減、社会的保護などの点で他よりも成績の良かった地域・諸国を分析し、国が何を生産するかが重要と結論づけています。そして、一次産品から製造業へと移行する産業部門・輸出の多角化や雇用創出及び貧困削減に優しいマクロ経済枠組みを促進する必要性、工業や農業などの生産力構築を支援する政策、より良い社会的保護、フォーマル経済への移行を奨励する労働市場・社会政策の実施など、20の政策提案と指針を提示しています。
 報告書は過去10年に特に焦点を当てつつ、後発開発途上国における経済成長、雇用、ディーセント・ワークの関係を長期的な視野から吟味し、アフリカ、アジア、島嶼国の成長と開発における主な問題点を取り上げ、構造変化、雇用創出、貧困撲滅に向けた課題と機会に光を当てています。フアン・ソマビアILO事務局長は、「後発開発途上国の労働市場における第一の課題は、失業ではなく、多数の働く貧困層のためのディーセント・ワークと生産的な雇用の不足」であると指摘しています。

 イエメンにおける平和的デモ参加者の殺害・抑圧をILO非難英語原文
    2011年3月22日(火)発表ILO/11/16

 イエメンで3月18日に、治安部隊の攻撃によって平和的なデモ参加者が命を失うような事態が発生していることに関し、フアン・ソマビアILO事務局長は、先に出された潘基文国連事務総長の遺憾表明に同調し、社会・経済・政治改革を求める平和的なデモ参加者と意味のある対話に何ら従事しなかったアリー・アブドッラー・サーレハ大統領の態度に強い失望を表明しました。そして「内戦に発展する恐れがある抑圧と衝突に緊急に終止符を打つ」ことを呼びかけました。
 ますます多くの労働組合活動家のみならず、イエメンの使用者団体も同国の若者とデモ参加者の正当な懸念に応えるよう大統領に求めていますが、ソマビア事務局長は、この姿勢を強調し、「この長引く困難な状況下にあって、イエメン労使はこの国の平和的な移行に向けて声を上げ、行動する責任を引き受けており、それは全面的な支援に値する」と語りました。
 ジュネーブで開かれているILO理事会は、21日にアラブ諸国の課題と変革に関する話し合いを行いましたが、ソマビア事務局長は、その席上で、イエメンに関し、「18日の衝突を目撃した後では、適切な仕事と基本的な権利を求めている人々が銃撃され、命を奪われるようなことは許容できないと非常に強く明言する必要がある」と語り、「域内の他の国における最近の経験は、最終的に、人々の意思の平和的な表明から生じた要求に応える以外の方法はないことを示している」と強調しました。

 アラブ世界におけるより公平な未来についてILO理事会で討議英語原文
    2011年3月21日(月)発表ILO/11/15

 ジュネーブで開かれている第310回ILO理事会のグローバル化の社会的側面作業部会は、アラブ諸国の政労使の出席を得て、「アラブ世界の課題と変革」に関するハイレベル討議を開催し、労働における基本的な権利の尊重、雇用、社会的保護を持続可能な成長の基盤としてアラブ世界により公平な未来を確保する方法について話し合いました。フアン・ソマビアILO事務局長は、社会対話の価値を特に主張し、「対立から経済・社会への短・中期的な利益がもたらされることはない」と訴えました。
 エジプトのアフメド・エルボライ労働力・移住大臣は、エジプト革命を「地域及び世界全体における平和で理性的な変革」のモデルとし、結社の自由の完全な尊重を伴った独立労働組合の設立を含み、民主主義と人権の道を歩み続ける政府の決意を表明しました。アルジェリア企業総同盟(CGEA)のハビブ・ユスフィ会長は、「社会平和を実現し、経済発展を育む風土を形成する」上での政府、使用者、労働者の間の社会対話の価値を主張し、域内数ヵ国でILO事務局長が示している価値と権利を主張する戦略的イニシアチブについて、「政治的な勇気の一例」として歓迎しました。チュニジア一般労働組合(UGTT)のアブデサレム・ジェラド書記長は、チュニジア革命へのILO事務局長の支持に対する謝意を表し、チュニジア支援の先頭に立ってくれるようILOに頼みました。
 域内政労使の発表に続き、より持続可能な社会・経済発展をこの地域に確保する様々な政策、戦略、措置に関する活発な議論が展開されました。ドイツ労働総同盟(DGB)のミハエル・ゾンマー会長は「ILOは国際通貨基金(IMF)、社会的パートナー、当事国の主要な専門家と協力して社会・経済の行程表を開発する必要がある」と語りました。国際使用者連盟(IOE)のダニエル・フネス・デ・リオハ副会長は、「課題に対処する上で決定的に重要な基盤は、政策対話の力を活用し、良い政策策定に向けて提供される専門家のインプットとアイデアを活用すること」として、企業社会との対話の重要性を強調しました。
 ハイレベル討議の一つの目的は、この地域で形成されつつある変化が地域の政府、使用者、労働者、そして社会全体のディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の達成に向けた基本的な懸念事項を満足するよう、この再生過程におけるILOの役割に光を当てることでしたが、この点で、ソマビアILO事務局長は、堅固な社会対話の仕組みを通じた雇用と権利の促進を全体目標に、若年失業の削減、民主的な統治と社会の変革の強化、社会正義の向上などの戦略を追求するよう呼びかけました。

 危機からの教訓−今後に向けた課題:ドイツの危機取り組み政策を初めて包括的に評価し、今後のための政策を提案−ILO英語原文
    2011年3月21日(月)発表ILO/11/14

 世界金融・経済危機の影響で、ドイツ経済は2009年に他のほとんどの国より激しい4.7%の落ち込みを記録したものの、雇用は他の先進国平均の5分の1の0.2%しか低下しませんでした。3月21日に発表されたILOの報告書は、ドイツの危機対応策を初めて包括的に評価し、「景気刺激策内容の賢明な組み合わせ、労働市場手段の賢い活用、社会保障制度の改善、効果的な社会対話のすべてが、ドイツがこの危機を他の国よりもうまく克服することを助けた」と結論づけています。『Germany: A job-centered approach(ドイツ:仕事を中心に据えた取り組み・英語)』と題する報告書は、ILO国際労働問題研究所の新しいシリーズ「Studies on growth with equity(公平性を伴った成長に関する研究)」の一冊として発表されました。
 景気後退期に、企業は人員ではなく労働時間を削減しましたが、これは、好景気時の残業時間が多く蓄積されていた労働時間口座と短時間勤務の可能性を相当に拡大した政府からの支援があって可能になりました。政府はまた、幅広い総合景気刺激策と年金保障を含む社会の改善措置を講じました。
 報告書はドイツの成功から学ぶことのできる教訓を示すと共に依然存在する課題に取り組むための政策提案も行っています。第1の課題は、300万人以上の求職者の半分近い140万人が失業期間1年以上、90万人以上が2年以上に達していることで、こういった人々が労働市場との接触を失わないよう確保することです。第2の課題は、人口の高齢化に伴う労働者数の低下に合わせて調整を図る必要性で、女性、高齢労働者、移民といったこれまで労働市場における存在が小さかった集団の参加を増大させることが決定的に重要と考えられます。第3は、1980年から2006年の間に対GDP(国内総生産)比で6ポイント以上の低下が記録された、長引く投資下降傾向を終結させることで、中小企業の資金繰り条件の改善、雇用・勤労所得を再び生産性ともっと密接に接合させることが提案されています。
 公平性を伴った成長に関する研究シリーズは、国別報告をまとめた総合報告に加え、他にブラジルとインドネシアに関する国別報告書も刊行されています。スペインとチュニジアに関する報告書も今後刊行される予定です。

 ブラジルの公平性を伴った成長戦略が危機打倒のカギとILO新刊英語原文
    2011年3月21日(月)発表ILO/11/13

 ブラジルは過去2年間で300万人分以上のフォーマル・セクターの雇用を創出し、2010年に7%を超える経済成長を達成しました。国際労働問題研究所の新しいシリーズ「Studies on growth with equity(公平性を伴った成長に関する研究)」の一冊として発表された新刊書『Brazil: An innovative income-led strategy(ブラジル:革新的な所得主導型戦略・英語)』は、ブラジルの革新的な所得主導型戦略は予想より早い金融危機からの回復をもたらし、経済回復より早い2009年2月から雇用創出がプラスに転じたことを報告しています。そして、最も重要なこととして、この経済・雇用成長は公平性を犠牲にして達成されたのではなく、危機にもかかわらずインフォーマル雇用と所得格差が縮小したことを示しています。報告書はこのブラジルの成功の要因として、危機前の好ましい経済環境、雇用を中心に据えた迅速な対応、社会・労働・マクロ経済の諸政策の適正な組み合わせを挙げています。
 ブラジルは1999年の通貨危機後に、対外的な脆弱性の削減と財政黒字の構築に焦点を当てた新しいマクロ経済体制を導入し、最低賃金を大幅に引き上げると共に社会扶助の対象層も拡大しました。今回の危機の影響で2008年11〜12月だけで70万人近いフォーマル・セクターの雇用が失われた際に、政府は個人や企業に対する信用貸付の回復、建設業などの雇用集約的な部門における国内需要の刺激、社会的保護の拡大を通じた最も脆弱な層の保護などの一連の景気対策を即座に導入し、既存の社会的保護制度の向上を図りました。ブラジルの成功はまた、政府が、雇用・社会政策とマクロ経済政策及び経済成長とのバランスを取る能力を有したことによるとも言えます。また、インフォーマル雇用の増大を抑制することにも成功しました。ブラジルの総合刺激策は国内総生産(GDP)の1.2%と、主要20ヵ国・地域(G20)の中でも最も小規模なものの一つですが、これが効果的だった理由として、ILOブラジル事務所のアブラモ所長は「政府が経済成長と同じくらい雇用の保護・創出が重要であると気づいたことと、主要な措置が社会対話を通じて達成されたこと」を挙げています。
 報告書は、改善点と共に今後の課題も示し、労働市場の仲介業務と職業訓練にもっと注意と資源を傾けることを提案しています。さらに、依然として国際水準から見て高い貧困と不平等の問題に取り組む策として、フォーマル・セクターにおける雇用を促進し、もっと多く創出することを提案しています。
 公平性を伴った成長に関する研究シリーズは、国別報告をまとめた総合報告に加え、他にインドネシアとドイツに関する国別報告書も刊行されています。スペインとチュニジアに関する報告書も今後刊行される予定です。

 公正かつ公平な政策は持続可能な経済回復の鍵−ILO新刊英語原文
    2011年3月21日(月)発表ILO/11/12

 ジュネーブのILO本部で開かれている第310回ILO理事会に3月21日に提出されたILO国際労働問題研究所の新刊書『Making recovery sustainable: Lessons from country innovations(回復を持続可能なものに:各国の革新的な経験から学んだ教訓・英語)』は、適正な政策の組み合わせを用いると成長と公平を同時に達成できること、つまり、通念に反し、公平性を高める措置は経済成長を推進できることを示しています。そして、経済・雇用・社会政策を一まとめにして考えると、より良い全体的な成果が期待できると記しています。
 国際労働問題研究所の新しい「Studies on growth with equity(公平性を伴った成長に関する研究)」シリーズから見出された事項を主としてまとめた本書はまた、より多くのより良い仕事を創出し、長期的な生産性を改善する、雇用を中心に据えたプロジェクトの効率性にも光を当てています。社会的保護措置についても、上手に設計されていれば、最も脆弱な層の所得を刺激し、維持する助けになるだけでなく、総体的な水準に刺激を与える大きな相乗効果が期待できると唱えています。そして、好成績を達成しているブラジルとインドネシアの総合財政刺激策が主要20ヵ国・地域(G20)の中でも予算規模が小さいことから明らかなように、仕事を中心に据えた政策が効果的であるために高価である必要はないことが今回の危機の経験から得られたと報告書は記しています。
 「公平性を伴った成長に関する研究」シリーズからは、ブラジル、ドイツ、インドネシアの国別報告書が出されています。今年後半にはスペインとチュニジアの報告書も予定されています。国別報告書はそれぞれ、各国が最新の経済危機にどう対処したかを分析し、改善された分野を記しています。
 『Brazil: An innovative income-led strategy(ブラジル:革新的な所得主導型戦略・英語)』と題するブラジルの報告書は、うまく設計され、十分に統合された政策が導入されれば、経済成長と公平性の組み合わせは可能であることを示し、企業投資に好ましい環境の創出、注意深く設計された最低賃金の引き上げなどといった危機の過程で見られた成功の重要な要素は社会対話から生まれたことを記しています。
 『Germany: A job-centered approach(ドイツ:仕事を中心に据えた取り組み・英語)』と題するドイツの報告書は、2008年の危機による生産高の低下が激しかったドイツで雇用がほとんど減らなかった事実は、一時解雇に代わる労働時間短縮による調整策などの、仕事を中心に据えた政策の成果であるとして、社会包摂的な政策を危機対応におけるドイツの成功の鍵に挙げ、今後もこれを基礎とした行動を取ることを推奨しています。
 『Indonesia: Reinforcing domestic demand in times of crisis(インドネシア:危機時における国内需要の補強・英語)』と題するインドネシアの報告書は、経済・労働市場への世界危機の影響が比較的限定的であったインドネシアで取られた、低所得世帯向け免税措置や所得税切り下げ、社会的保護計画の引き上げなどを通じた国内需要促進措置を紹介し、多数のインフォーマル雇用、良質の仕事の創出、若者の雇用展望改善といった課題に取り組む際に成功の鍵を握るのは、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)とマクロ経済政策の整合性を育めるか否かにあると記しています。

 社会の高まる需要に取り組む鍵は「社会的保護の床」とバチェレ議長英語原文
    2011年3月21日(月)発表ILO/11/11

 「社会的保護の床」顧問団第2回会合出席のためにジュネーブのILO本部を訪れていたミチェル・バチェレ顧問団議長は、3月17日に開かれた協議ワークショップで講演し、「社会的保護の床」の実行は、多くの国でますます高まってきている社会の結束、政治の安定、回復力ある経済成長を求める声に対する効果的な対応策を提供できると語りました。過去数十年間における幾分の進歩にかかわらず、依然として世界全体で14.4億人が1日1.25ドル未満で暮らし、世界人口の3分の1近い17.5億人が健康、経済機会、生活水準に不自由を感じる多次元的な貧困状態にあり、世界人口の約75%に十分な社会保障が提供されていません。このような状況は「政治の安定を脅かし、経済繁栄を切り崩す社会の負債」を表し、北アフリカや中東で連鎖的に広がっている人民暴動のような社会不穏の広がりと強まりは「その最も顕著な表明」として、バチェレ議長は、「社会的保護の床」を、「私たちの時代の現実に非常によく即した実現可能で持続可能な解決策」と位置づけました。
 「社会的保護の床」とは、基礎的な社会保障への権利と所得移転、そして貧困層及び脆弱な人々を保護し、貧困から抜け出す力を付与するような、雇用、保健、水・衛生、栄養、教育、世帯扶助の分野の必要不可欠なサービスの集合で構成されています。バチェレ議長は、世界経済危機は、景気後退期にも社会支出への投資を続けた国の方が削減した国よりもうまくやっている事実を明らかにしたとした上で、「社会的保護政策には社会への影響に加え、男女どちらの労働力率も高め、リスクをいとわない進取の気性も促進するような肯定的な影響力があることが示されており、これはすべて、全体的なマクロ経済成績と生産性の向上に寄与する可能性がある」と語っています。
 バチェレ議長は、主要20ヵ国・地域(G20)を中心とする国際社会に向けて、世界経済危機の原因となり、今もなお存在する不均衡に取り組む手段の一つとして「社会的保護の床」を支援するよう求めると共に、各国の開発計画に「社会的保護の床」を組み込むことを求め、「これまでは、通貨、金融、財政の仕組みを通じて世界の不均衡に取り組む方法に議論が費やされ、人々と企業、実体経済問題に焦点を当てた所得主導型戦略にはあまり注意が払われてこなかった」として、「雇用、社会的保護、女性のエンパワーメントなどといった、より人に向けた問題に焦点を切り替える時ではないか」とG20諸国に呼びかけました。そして、「社会的保護の床」は、一貫した形で世界をより良い方向に作り替える急進的かつ現実的な戦略を表し、私たちが今日直面している経済・社会危機の多くから永久に抜け出す道を提供し、社会正義と持続可能な経済繁栄が一般的となる未来を構築できる手段であると結びました。

 エジプトの改革と変化に支持を表明−ILO事務局長英語原文
    2011年3月14日(月)発表ILO/11/10

 サミル・ラドワン財務大臣とアフメド・エルボライ労働力・移住大臣の連名で招待を受け、3月11〜13日にエジプトを訪れていたフアン・ソマビアILO事務局長は、公式訪問の日程を終え、同国における結社の自由その他の労働市場改革及び経済改革の確立に対する支持を表明しました。そして、1月25日にエジプトで勃発した「人民革命」は、「完全な民主化へ戻る道筋と自由をもたらした」とした上で、この変革の時代を誕生させた若い男女の勇気と犠牲を讃えると共にタハリール広場のデモに女性が参加した事実を強調し、「この変革と民主化のプロセスにおいて女性は引き続き重要な役割を演じるべき」と語りました。また、独立労働組合の信念と決意を賞賛し、能力構築に向けた即時の支援を公約しました。
 事務局長の今回の訪問を貫く重要なテーマはエジプトの結社の自由でした。事務局長は、労働力・移住大臣が12日に自らの眼前で行った、すべての労働組合が登録によって正当な活動を自由に追求できることを保障する宣言を歓迎し、真の社会対話と自由な団体交渉の基盤強化に向けた支援を公約しました。さらに、「財務と労働の両分野を担当する大臣が連名で今回ILOを招待したことは、結社の自由、賃金、社会的保護、雇用、特に若年雇用といったILOの関与を求めている事項に関する重要な政策の収斂を示すもの」と語りました。そして、エジプトがより公平で持続的かつバランスの取れた成長を望むならば、マクロ経済政策は雇用創出にも優先的に取り組むべきとの見解を述べ、雇用集約的な投資計画、中小企業のさらなる開発、大規模開発プロジェクトなどの、政府が雇用面の課題に取り組むために予定している当面の活動に対する支持を表明しました。実効的な最低賃金政策の確立や持続可能な失業保険制度の樹立といった政府の取り組みを支える用意があることも示しました。
 ソマビアILO事務局長は、エルボライ労働力・移住大臣に、現在開かれているILO理事会の場で3月21日に開催される閣僚会合に参加し、労働分野における新たな状況を政労使理事に報告するよう提案しました。また、その際、財務省及び労働力・移住省の上級職員を同行させ、今回の訪問の際に話し合われた事項の今後の取り組みをILO事務局専門部局と直ちに打ち合わせることも提案しました。
 3日間の訪問日程の中で、事務局長は他に、イサム・シャラフ首相を始めとした政府高官に加え、独立労働組合の代表、若き革命指導者、市民運動家などとも会談しました。

 結社の自由に関するエジプト政府の宣言をILO歓迎英語原文
    2011年3月12日(土)発表ILO/11/9

 エジプトの労働力・移住大臣は、3月12日に、結社の自由の原則を全面的に認め、届け出制による労働組合の自由な設立のための手続きの整備を宣言する声明を発表しました。
 エジプト訪問中のフアン・ソマビアILO事務局長は、「登録され、自らの正当な活動を自由に遂行するというすべての労働組合の権利の認識は、法律上及び実務上、結社の自由の権利が完全に尊重されるという新たな時代の幕開けを記すもの」として、この声明を歓迎し、次のように述べました。「真に代表的で独立した組織を結成し、そのような組織に参加するというエジプトのすべての労働者及び使用者の権利は、エジプトで起こりつつある革命的な変化における大きな一歩です。ご存じのように、エジプトは結社の自由の制限に関連し、ILO総会で審議される国のリストに繰り返し取り上げられました。本日の発表は根本的な変化であり、歴史的な瞬間です。これはエジプトが関与している民主化プロセスにおける大きな一歩です。私はここにあって耳を傾け、この新たな社会正義の時代においてILOがエジプトの民、政府、社会的パートナーに寄り添って支援を提供することを公約するものであります。」

 政府の招請に応え、フアン・ソマビアILO事務局長がエジプトを公式訪問英語原文
    2011年3月10日(木)発表ILO/11/8

 エジプト政府の招請に応え、フアン・ソマビアILO事務局長は3月11日から同国を訪問し、現地の労働・社会情勢を調査すると共に同国の移行期及びその後の過程でILOが提供できる最善の支援と援助の形について話し合うこととなりました。2日間にわたる首都カイロ滞在中には、イサム・シャラフ首相を始め、財務、労働、外務の各大臣、さらに独立労働組合の代表を含む政労使代表、若き革命指導者、市民運動家などとも会談する予定になっています。
 歴史的な変革をもたらした1月の出来事を経て、エジプト政府はILOに対し、様々な未解決の課題、とりわけ若者を中心とした高失業率、賃金問題、結社の自由、社会対話、その他の労働市場関連問題に取り組む意向を示しました。出発に先立ち、ソマビア事務局長は、「ILOは得られるあらゆる専門知識をもってエジプトとその民を支援する用意がある」として、「この訪問がエジプトとILOとの間の対話と協力の新たな一章の始まりを記すものとなることを確信している」と語りました。
 ソマビア事務局長は2月2日にも、「エジプト国民の大規模かつ勇敢な意思の表明」に敬意を表し、エジプト独立労働組合連合の設立を歓迎する声明を発表しています。

 第100回国際女性の日:ILOの焦点は「女性のためになる回復過程」英語原文
    2011年3月4日(金)発表ILO/11/7

 創設100周年に当たる今年の国際女性の日に際し、ジュネーブのILO本部では、前日の3月7日に、持続可能で公平な回復を確保する上での男女平等の役割に光を当てたパネル討議を行います。「女性のために機能する危機回復を!」をテーマとするパネル討議では、1929年の大恐慌以来の深刻な経済危機から抜け出すに当たっての政策措置が、仕事と労働条件の点で男女に平等な機会と待遇を確保できる方法について専門家らが話し合います。国連による今年の国際女性の日の総合テーマである「教育、訓練、科学技術への平等なアクセス:女性のためのディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)への道筋」に沿って、ILOのパネル討議では技能開発と訓練政策に重点が置かれる予定です。
 国際女性の日は、1910年にコペンハーゲンで開かれた勤労女性国際会議の決定を受けて翌年から公式に開始されました。当時、オーストリアやドイツなどといった国では主に選挙権が求められていましたが、アメリカの女性は劣悪な労働条件に抗議を表明しました。1911年3月25日に発生し、移民を中心に146人の若い女性労働者が犠牲になった衣料品工場の火災は、男女を問わず社会正義を求める声をこの日に根付かせることとなりました。
 100年後の今、ある程度の進歩は達成されたものの、仕事の世界における男女平等の達成に向けて取り組まなくてはならない事項はまだ多数残っています。最新のILOのデータによれば、経済危機の影響は男女に共に感じられており、2010年の失業率は世界平均で男性が6%、女性が6.5%となっていますが、フアン・ソマビアILO事務局長は、「危機はそれ以前から存在していた不平等を強調し、悪化させた」として、男女平等の達成に向けてまだ残る多大な課題を示し、「持続可能で公平な回復と公正なグローバル化の確保にはジェンダーを意識した対応」が求められると語っています。ジェーン・ホッジスILO男女平等局長は、女性は一般に低賃金、長い労働時間、インフォーマルな労働取り決めを特徴とする経済部門に従事するという明確な性別分離が見られ、これは世界的に脆弱な就業形態にある女性の割合(51.8%)が男性(48.9%)を上回っているという事実に反映されていると指摘しています。その上、途上国を中心に教育や訓練へのアクセスの点でも女性は男性に劣っています。
 ILOは1919年の創立以来、同一価値労働同一報酬と差別禁止の原則を掲げてきました。2009年のILO総会では、すべての男女が自由かつ活発に労働市場に参加できる取り組みを導く「ディーセント・ワークの中心にある男女平等に関する決議」が採択されています。同年採択された、危機の社会的影響の緩和を助けることを目指す文書「グローバル・ジョブズ・パクト(仕事に関する世界協定)」は、様々な危機回復策を提示していますが、男女平等への配慮も求めています。

2011年2月発表分

 ILOオンライン・データベース拡充:17経済部門に関するデータを新たに追加英語原文
    2011年2月28日(月)発表ILO/11/6

 ILOはこのたび、ウェブサイト上で提供されているオンライン労働市場統計データベースLABORSTAを拡充し、経済活動部門別の情報も追加しました。農業、鉱業、製造業、建設業、商業、運輸など17の部門毎に、まず就業者数のデータが54ヵ国について提供されています。ILO統計局と部門別活動局の協力の成果として達成されたこのサービス向上によって、産業部門毎の動向や変化がより良く分析・モニタリングできるようになることが期待されます。
 今回の世界金融・経済危機に際し、最新の労働統計を求める声が高まったことから、LABORSTA内には昨年秋から短期指標データベースが加わり、労働力率、失業率など労働市場と消費者物価の短期的な動きを示す月別・四半期別の公式データが収集され、毎月更新されています。従来の表形式画面表示、Excelファイルによるデータ・ダウンロード機能に加え、推移のグラフ表示や地図画像上でデータを選択・表示できる機能も追加されています。失業率・者数、経済活動人口、就業者数については季節調整データも得られます。現在、75の国について国別プロフィールが提供されており、100以上の指標が男女別で得られるようになっています。ILOでは産業別で得られるデータの種類を今後さらに充実させていくことを計画しています。

 採択5周年の海事労働条約をスイスが批准英語原文
    2011年2月21日(月)発表ILO/11/5

 2011年2月21日にスイスが海事労働条約の批准書をILOに寄託しました。この条約の批准国はこれで12ヵ国になります。
 海事労働条約の発効要件は二つあり、批准国の合計船腹量が総トン数で世界全体の船腹量の33%以上という一つ目の要件は既に満たされています。内陸国でありながら64万総トン近い船団を抱え、起草段階から海事労働条約の成立に積極的に関与してきたスイスの批准は、30ヵ国以上の批准というもう一つの要件の達成に向けて昨年12月からILO事務局長が展開している批准促進キャンペーンに弾みを付けることが期待されます。事務局長は、海事労働条約採択5周年に当たる今年2月または今年6月の記念すべき第100回ILO総会のいずれかの時に、この条約を批准することを加盟国に呼びかけています。
 批准書の寄託に当たり、国際連合及び専門機関スイス国常駐代表のダンテ・マルティネリ特命全権大使は、スイスは、海事産業のグローバルな性格に鑑み、船員の特別の保護の必要性を確信していると語りました。
 商船に関して過去に採択されたILOの37本の条約と31本の勧告を改正・統合する最新の文書として2006年2月に採択されたこの包括的な条約は、海上における人命の安全、船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準、環境保護に関する国際海事機関(IMO)の主要海事条約と並び、海運の国際的な規制枠組みにおける「第4の柱」と呼ばれています。世界全体で120万人を超える船員に「権利章典」を提供すると共に、船主が平等に競合できる場を設定しています。船員が船上で働くための最低限の要件、雇用条件、労働・休息時間、賃金、休暇、送還、居住設備、娯楽設備、食料・供食、労働安全・健康保護、医療、福祉、社会保障など、船員の労働・生活条件のあらゆる側面が網羅されています。海事労働証書及び海事労働適合申告書の船舶常備などといった、柔軟でありながら強力な遵守・執行メカニズムを備えています。

 2人の傑出した女性学者にILOディーセント・ワーク研究賞を授与英語原文
    2011年2月16日(水)発表ILO/11/4

 ILOは2月16日に、公平、開発、マクロ経済政策の分野における研究で素晴らしい業績を上げているジャヤチ・ゴーシュ教授(インド)とイブ・C・ランダウ教授(スイス/イスラエル)の2人の女性学者に2010年のディーセント・ワーク研究賞を授与することを発表しました。この賞は、ILOの中心的な懸念事項であるディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)に関する知識向上に際立った学問的な貢献を行った人々に授与されます。フアン・ソマビアILO事務局長は、審査団によるこの決定を讃え、「2人の貢献は、南北両半球の、男女を問わずすべての人々により多くのディーセント・ワークを実現する方向に経済・開発政策を向かわせるための識見を増やすこととなった」と評価しています。
 開発経済学に携わる研究者の国際的ネットワークであるIDEAS(International Development Economics Associates)の事務局長も務めるジャワハルラル・ネール大学のゴーシュ教授は、開発とディーセント・ワークの問題を巡る多数の著作物があり、グローバル化の文脈で見たディーセント・ワークの分析や、雇用とジェンダーと開発の相互連関の研究において大きな学術的功績を上げています。
 比較法を専門として欧州各地の大学で長く教鞭を執ってきたランダウ教授は、ILO基準、労働法、社会正義の分野における知識の進展に果たした学術的な貢献が認められました。平等と仕事に関する教科書的なものも含み、教授が著した複数の出版物及び多数の学術論文や行った調査研究は、これまでに多くの学生のみならず、法曹界の目も開いてきました。
 2人の受賞者には賞金5,000ドルに加え、11月に開かれる第312回ILO理事会の場で自らの研究内容を発表する機会が与えられます。ディーセント・ワーク研究賞の過去の受賞者は、南アフリカのネルソン・マンデラ元大統領、高名な社会保障の専門家であるピッツバーグ大学のカルメロ・メサ=ラゴ教授、ノーベル経済学者のジョセフ・スティグリッツ氏、カナダにおける労働研究の第一人者であるハリー・アーサーズ氏の4人です。

2011年1月発表分

 チュニジアにおける労働組合に対する暴力にILOが懸念を表明英語原文
    2011年1月27日(木)発表ILO/11/3

 2010年12月に失業中の若者が焼身自殺を図ったのを契機に混乱が続くチュニジアで最近、労働組合の事務所が攻撃を受けていることに対し、フアン・ソマビアILO事務局長は、「労働組合と使用者団体の役割は決定的に重要であり、労使団体に対する何らかの攻撃は、ILOが掲げるところの社会対話と政労使三者による協力の原則に対する攻撃である」とのコメントを発表して、強い懸念を表明しました。そして、「ILOは加盟国政労使のニーズに丁寧に耳を傾け、当該国の経済、社会、雇用面の問題について一緒に解決策を探っている」として、「民主化のプロセスが、労働者、使用者、そして社会全体の基本的な利権に利するよう確保するには、平和的な対話が一般的にならなくてはならない」と訴えました。ソマビア事務局長はまた、国民の意思に基づく政権がすぐに樹立されることへの希望を表明しました。
 ILOは今回の危機開始直後からチュニジアの社会的パートナーと密に連絡を保ち、結社の自由の行使というILOの恒久的な懸念事項の状況を注意深く見守り続けています。

 ILO報告書「世界の雇用情勢2011年版」:2011年まで続く弱い雇用回復を警告、世界の優先事項は若年雇用英語原文
    2011年1月24日(月)発表ILO/11/2

 世界全体の国内総生産(GDP)、個人消費、投資、国際貿易、株式市場といった主要なマクロ経済指標は2010年に危機前の水準を上回る回復を見せているものの、ILOがこのたび発表した年次報告「Global employment trends(世界の雇用情勢・英語)」の2011年版は、「雇用回復の課題」を副題に、世界経済危機の開始から3年目に入ってもなお続く世界の高失業状態と、先進国を中心に2011年も弱いままと見られる労働市場の回復の見込みを示しています。
 2010年の世界の公式失業者数は2009年とほとんど変わらない2億500万人と推計され、2011年も2億330万人(失業率6.1%)に達すると予想されています。危機前の2007年から2010年の間に失業者数は2,760万人増えていますが、この55%が、世界の労働力のわずか15%を抱える欧州連合(EU)・先進国地域で生じています。一方、ブラジル、カザフスタン、スリランカ、タイ、ウルグアイといった幾つかの途上国では、危機前の水準まで失業率が低下しています。
 2009年に、就業者全体の50.1%に相当する15.3億人が、個人事業主や寄与的家族従業者といった、正式な労働取り決めや十分な社会保障などの、適切な就業に係わる要素を欠く可能性が高い脆弱な就業形態で働いていたと推計されます。このような就業形態にある労働者の数は危機前までは漸減を示していたものの、2008年からはほとんど変わっていません。2009年にはまた、1日1人当たり1.25ドル未満の所得で暮らす世帯に属する労働者が世界の労働力の20.7%に相当する6億3,000万人に達したと推計されますが、これは危機前の水準に基づく予測より1.6ポイント高い4,000万人増となっています。
 2010年に15〜24歳の若者の失業率は25歳以上層の失業率の2.6倍に当たる12.6%に達したと推計されます。2009年の8,000万人よりは減ったもののまだ7,800万人の若者が失業していると推計され、これは危機前の2007年の7,350万人よりかなり増えています。また、データが得られる56ヵ国について見ると、求職意欲を喪失するなどして労働市場から離れた若者が170万人に達したと推計され、フアン・ソマビアILO事務局長は「若年雇用は世界の優先事項」と位置づけています。
 2002年から2007年にかけて年平均3.4%の伸びを記録していた工業の世界合計就業者数は2009年に下降に転じ、特にEU・先進国地域では2009年に2007年より950万人減っています。農業の就業者数は2009年に、最近の減少傾向から転じて伸びを記録しましたが、これは生産性の低い農業部門がしばしば製造業やサービス業で職を失った労働者の受け皿となる事実を反映しています。世界中で続く食糧価格の上昇も脅威を増しており、他の経済部門にインフレが転移した場合のさらなる雇用喪失が危惧されます。
 労働市場の回復状況は地域ごとに大きく異なり、先進国では高失業率の持続と共に仕事探しをあきらめてしまった失意の労働者が増加しつつある一方、途上国では雇用成長は見られるものの脆弱な就業者と働く貧困層の割合が相変わらず高いままです。ソマビアILO事務局長は、「回復状況は千差万別ながら、景気後退の多大な人的コストはまだ感じられている」として、「標準的なマクロ経済政策集合を再考し、高成長、低インフレ、バランスの取れた公共予算と共に、良質の仕事の創出とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をマクロ経済政策の中心的な目標とする必要性」を共通の課題として掲げ、「仕事の質が社会の質を規定する事実を忘れてはならない」と訴えています。
 地域別で見ると、東南アジア・太平洋では失業率の増加は見られないものの脆弱な就業形態にある労働者は2009年に2007年より540万人増えて1億7,370万人に達しています。南アジアでは脆弱な就業形態にある労働者の割合が2009年に総就業者の78.5%と、世界一の高さを示しています。東アジアでは若者の失業が依然として大きな課題であり、その失業率8.3%は25歳以上層の2.5倍に当たります。中南米・カリブでは急速な経済回復が力強い雇用成長につながっていますが、脆弱な就業形態の労働者も増えています。サハラ以南アフリカでは、労働者の4分の3以上が脆弱な就業形態にあり、ほぼ5人に4人が1日1人当たり2ドル未満で暮らす世帯に属しています。北アフリカでは若者労働力の23.6%が2010年に失業していたと推計されます。地域別で最高の失業率を記録した独立国家共同体(CIS)及び中・南東欧では、2009年に10.4%あった失業率が2010年に9.6%に低下しました。
 労働市場の回復の遅れは、産出高の伸びに対する雇用の伸びの遅れだけでなく、生産性の伸びが実質賃金の伸びに十分反映されていない事実にも見られるとし、報告書は、これが将来の回復展望を損なう可能性を指摘しています。また、先進国で見られる、雇用創出の課題に取り組まずに財政赤字の削減に焦点を当てる狭い視点が、2011年の雇用展望をさらに悪化させる危険性を警告しています。報告書は、雇用創出を押し上げ、持続可能な雇用回復を始動させる助けになり得る措置の重要性を強調し、労働市場の成果の改善がより広範なマクロ経済回復を支え、財政強化の悪影響を相殺する助けになる可能性を強く唱えています。

 ILO年次報告「世界の雇用情勢2011年版」を近々発表英語原文
    2011年1月18日(火)発表ILO/11/1

 ILOは来る2011年1月25日(火)に年次報告「Global employment trends(世界の雇用情勢・英語)」の2011年版を発表します。今年の報告は、「雇用回復の課題」を副題に、世界経済が金融・経済危機から回復しようとしている中で世界の労働市場がどう動いているかを初めて分析し、今後予測される世界全体及び各地域の失業・就業動向を示しています。
 発表日前日の1月24日には、ジュネーブの国連欧州本部で、報告書の著者らによる記者会見が開かれます。著者らが所属するILO雇用総局経済・労働市場分析局の総局長及び局長の出席も予定されています。

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駐日事務所記者発表−2011年

 ILOと日本政府、アジアの社会的保護を促進する合意書に署名
    2011年6月15日(水)発表

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お知らせ−2011年

 第15回ILOアジア太平洋地域会議(京都・2011年12月4〜7日)

 中東を含むアジア太平洋地域のILO加盟国政労使が出席し、この地域でディーセント・ワークを実現する方法などについて話し合う第15回ILOアジア太平洋地域会議が12月に京都で開かれました。日本でILOの地域会議が開かれるのは、いずれも東京で開催された第3回(1953年)、第6回(1968年)以来43年ぶりのことです。当初は4月に予定されていましたが、3月11日の東日本大震災の発生を受けて8カ月余り延期されての開催でした。アジア太平洋地域内のILO加盟国中38カ国より410人以上の政労使代表が参加し、現在見られる経済の不確実性の結果にこの地域が備えるための方法について幅広く話し合い、採択された結論は、雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)への支援を、力強く持続可能でバランスの取れた成長と開発のための政策の中心に置くべきことへの合意を示しています。会議の採択文書、討議資料などを掲載した会議ページを作成しました。
[2011年1月10日掲載]



 2011年総会関連文書日本語版

 2011年に開かれた第100回ILO総会(ジュネーブ)に関連する以下の文書の日本語版を掲載しました。

[2011年10月18日掲載]



 広報誌「ワールド・オブ・ワーク」最新号(2011年第1号)

 ジュネーブのILO本部コミュニケーション・広報局より年3回発行されている広報誌の一部記事の和訳と日本における関連記事を掲載した日本語版広報誌の最新号(通巻15号)が完成しました。本号では、「仕事に焦点を当てた回復の促進」と題して仕事の世界に対する世界金融・経済危機の影響、これに対するILOの取り組みを特集しています。欧州プロスポーツ界の社会対話や建設業におけるグリーン・ジョブなどの報告記事、パキスタンの洪水被災地における生計手段の回復、スリランカにおけるTREE(農村経済エンパワーメントのための訓練)計画、インドネシアのSCORE(競争力と責任ある企業を通じた持続可能性)計画や先住民女性起業家育成計画、南アフリカの労働集約型公共事業などのILOの活動を紹介する記事も掲載されています。最新号をご覧になりたい方はこちらへ(PDF版・2.21MB)。印刷版をご希望の方は、ILO駐日事務所(TEL: 03-5467-2701 FAX: 03-5467-2700 E-mail: ilo-tokyo@ilotokyo.jp)までご相談下さい。
[2011年10月18日掲載]



 ILO図書日本語版

 2011年に刊行されたILO図書日本語版には以下のようなものがあります。お問い合わせ・お申し込みはお近くの書店または直接各出版元へお願いします。  この他のILO図書日本語版のリストはこちらでご覧になれます。
[2011年8月16日更新]



 2011年労働安全衛生世界デー(4月28日)

 ILOは4月28日を労働安全衛生世界デーとして労働災害と職業病の予防の大切さについて世界の意識を高める日としています。2011年の世界デーは「労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)」をテーマに、労働災害予防に向けたこの継続的な改善のためのツールに注意を喚起しています。ILO駐日事務所では、世界デー関連情報と共に3月11日に発生した東日本大震災を受け、災害対応・復旧活動における労働安全衛生に関する情報を集めたポータル・ページを新設しました。
[2011年4月27日掲載]



 3月11日の地震・津波被害に関しILO事務局長が日本国政労使にお見舞い状送付

 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震に関し、国際労働機関(ILO)を代表し、フアン・ソマビアILO事務局長は同日、菅直人首相に宛ててお見舞い状を送付し、日本国民に対する深い哀悼の意を表した上で、以下のように述べました。「本日体験された喪失とトラウマに立ち向かわれる際のご心痛はいかばかりかとお察し申し上げます。この極めて困難なときにあって私どもの連帯と友情をお受け取り下さい。この危機への対処に際し、私どもで可能な支援でしたら何なりとご提供できる用意があることをお忘れにならないようお願い申し上げます」。
 ソマビアILO事務局長はまた、3月11日に細川律夫厚生労働大臣、3月14日に社団法人日本経済団体連合会(日本経団連)の米倉弘昌会長、日本労働組合総連合会(連合)の古賀伸明会長に宛ててもILOを代表してお見舞い状を送り、現在ジュネーブで開催中のILO理事会に出席している理事らからの深い懸念やお悔やみ・連帯の意を伝えると共に、日本経団連のすべての協力団体及び友人達、日本国民、連合の仲間と家族に対する心からの哀悼の意を表しました。
[2011年3月15日掲載]



 KILMデータ利用方法解説書

 1999年から出されているILOの統計資料「主要労働市場指標(KILM)」は、労働市場の理解を深め、政策策定に役立てることを目的に、労働力、雇用、労働時間、失業、賃金、労働生産性、所得分布など20の指標を通じて、世界約230の国・地域の統計データを提示しています。印刷刊行物に加え、CD−ROM版、オンライン・データベース、ダウンロード用ソフトウェアの形態で配布されています。このたび、日本語によるKILMデータ入手方法解説書を新たに作成しました。1.書籍・CD−ROM版解説書(PDF版・2.74MB)、2.ILOホームページからのオンライン版・ソフトウェア版のダウンロード方法(PDF版・2.14MB)
[2011年2月10日掲載]


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最終更新日:2012年1月10日 作成者:EU 責任者:SH