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12月14〜16日の日程で、シュトゥットガルト(ドイツ)で開かれたG8労働・雇用大臣会合は、国際機関レベルにおけるグローバル化の社会的側面に関する検討の強化、成長と雇用を全政策分野を横断した中心的な政策目標に据えることを求める結論を採択し、幕を閉じました。そして、この目標を推進するため、ILO、国連貿易開発会議(UNCTAD)、世界貿易機関(WTO)、世界銀行、国際通貨基金(IMF)から構成される機関間フォーラムの設置を提案しました。
ソマビアILO事務局長は17日、この結論を「全ての人にとっての機会を確保する、より公正で包含的なグローバル化のプロセスに向けた一歩」と歓迎し、グローバル化の中での雇用目標を国際機関レベルで推進することへの協力を約しました。
会合には先進8カ国の雇用・労働大臣に加え、ILO、経済協力開発機構(OECD)、欧州委員会の代表も出席し、グローバル化がもたらした急速な変動の時代における雇用政策と社会対話の中心的な役割について話し合いが行われました。労働組合及び実業界の代表との協議も行われました。シュトゥットガルト会合の結論は、来年米国で開かれる先進国首脳会議で検討されることになります。
ILOのグローバル化の社会的側面世界委員会は、グローバル化の恩恵をより多くし、より広く行き渡らせるためには、国際社会及び各国はどのように政策を変えていけばよいか検討してきましたが、来年初めに、その検討結果を記した報告書を発表することになっています。
12月2〜5日に開かれた第10回アフリカ地域会議は、最終日の5日に、雇用をアフリカ開発戦略の中心に据えることや、アフリカ大陸の貧困削減におけるILOの役割を強化することなどを求める最終声明を採択して幕を閉じました。HIV/エイズに関し、職場における活動を可能にする法的・政策的枠組み並びに差別と汚名に対抗する措置の提供、職場戦略を含むことによるエイズ全国計画の強化などによって、HIV/エイズと戦う労使の努力に対する政府の支援などを求める決議や、アフリカにおいて若者の雇用促進を重点課題とすることをILOに求める決議も採択されました。
また、2004年にブルキナファソで開かれるアフリカの雇用と貧困緩和に関するアフリカ連合(AU)特別サミットに対しては、政府、労働者団体、使用者団体というILOのネットワークを発動させて支援するとの合意が達成されました。
現在、アディスアベバ(エチオピア)で開かれている第10回アフリカ地域会議では、2日目の12月3日に、2004年にブルキナファソで開かれるアフリカの雇用と貧困緩和に関するアフリカ連合(AU)特別サミットに対するILOの支援の土台を構築するための特別会合が開かれました。開会演説を行ったサミット提唱者でもあるコンパオレ・ブルキナファソ大統領は、貧困と戦うため、アフリカ諸国は開発の優先事項を雇用創出を中心としたものに再編成する必要があると訴えました。そして、ILOは、より良い世界を夢見る貧しい人々の夢を支える数少ない機関の一つであるとし、開発の社会的側面に対する十分な配慮を確保するため、ブレトンウッズ諸機関が開始した方策と政策へのILOの関与を求めました。続いて挨拶に立ったAUの雇用・労働三者構成委員会議長を務めるショウクタリ・スードゥン・モーリシャス労働・労使関係大臣は、社会・経済政策上の難しい決定を行う過程における社会対話の重要性を指摘しながら、アフリカにおけるディーセント・ワーク目標達成に向けたILOの努力に支援を表明しました。
3日はこのほかに、ILO事務局長の報告書「アフリカ開発のためのディーセント・ワーク(英文・Decent Work for Africa's Development)」をもとにした話し合い、アフリカにおける若者の雇用に関する討議も行われました。
12月2日の第10回アフリカ地域会議開会に際し、ソマビアILO事務局長は、現行のグローバル化モデルはアフリカのためになっていないとし、仕事を開発論議の中心に据えるよう国際政策を変更することを求めました。そして、アフリカの政府及び労使が、雇用及び企業の創出、労働における権利、基礎的な社会的保護、社会対話を基盤とするILOのディーセント・ワーク目標を、個人、家族、社会が感じている真の問題に対処する主たる手段と想定していることに関し、貧困問題に真剣に取り組もうとするならば、仕事、持続可能な生計手段、所得創出活動、質の高い自営業を求めて戦わなくてはならないと唱えました。
同じく挨拶に立ったメレス・エチオピア首相は、アフリカ連合(AU)による2004年5月の雇用と貧困緩和に関する特別サミット開催決定に言及し、これは雇用創出なしに貧困緩和は成功しないとの高いレベルにおける認識を表すものとし、ILOその他のパートナーに対し、この努力に対する支援を呼びかけました。
地域会議の議長には、エチオピアのハッセン・アブデラ労働・社会相が選出されました。
12月2〜5日の日程で、アフリカ地域のILO加盟国53カ国より政府、労働者、使用者の代表団が集い、アフリカにおけるILOの活動について話し合う地域会議がアディスアベバ(エチオピア)で開かれます。会議では、ILO事務局長の報告書「アフリカ開発のためのディーセント・ワーク(英文・Decent Work for Africa's Development)」などをもとに、地域の雇用促進や、社会的保護、社会対話の推進など、雇用、開発、社会面の諸問題に関する話し合いが行われます。また、アフリカ開発のための戦略計画の要素に関する検討も行われる予定ですが、これは◇アフリカの生産潜在力を抑制している障壁の除去、◇ILOの提唱する労働における基本的な権利と原則に基づく、労働市場統治のための健全な枠組みの創出に向けた投資の促進、◇農村地帯及びインフォーマル経済で働き、生活する人々とその家族が貧困から抜け出すための機会の創出といった三つの方向性を基礎とすることが提案されています。
11月6〜21日の日程で、ジュネーブで開かれていたILOの第288回理事会の主な成果は以下の通りです。
- □労働者の権利侵害
- ベラルーシ:今年のILO総会に出席した複数の労働者代表より、ILO憲章第26条に基づき、ベラルーシが結社の自由及び団体交渉権に関するILO第87号及び第98号条約に違反しているとの申し立てがなされたことに対し、理事会は申し立てを審議する審査委員会の設置を決定しました。
ミャンマー:強制労働の存在が問題となっているミャンマーに関し、同国の強制労働廃絶活動の現状が検討されましたが、大きな進展がないことを理事会は遺憾とし、ILOとミャンマーが共同で立案した強制労働廃絶に向けた行動計画の実施見込みを緊急に評価するようILOに要請しました。来年3月の次期理事会に評価報告書が提出され、今後の方向性が決定されることになります。- □サービス部門職場における暴力とその対策に関する実施規準
- 今年10月に、政府、使用者、労働者を代表する世界の専門家36名が出席し、ジュネーブで開かれた会議で採択された標記実施規準について、理事会はILOに対し、この存在を広く世に知らしめるよう要求し、実施規準を現実のものとするための社会対話を奨励しました。この実施規準は、職場における暴力に対する実際的な対応の開発、政府・使用者・労働者間の対話・協議・交渉の推進、国内法・政策・行動計画立案の際の一般的な指針として用いてもらうことを目的としています。
- □ハロネン・フィンランド大統領演説
- 会期中の11月17日に、ILOのグローバル化の社会的側面世界委員会の共同委員長であるフィンランドのハロネン大統領が、理事会のグローバル化の社会的側面作業部会で演説を行いました。国家元首が理事会で演説を行うのはこれが初めてです。ハロネン大統領は、グローバル化の現状は、倫理的でも政治的な将来性があるわけでもなく、利益を共有する人々が少なすぎ、グローバル化の設計に対する発言権のない人々やその進路に対する影響力を持たない人々が多すぎるとし、現在のグローバル化の方向は変える必要があると訴えました。そして、グローバル化が人々にプラスに働くには、それを司るルールが公平であることが重要と唱えました。グローバル化の社会的側面世界委員会は来年、グローバル化の正しいあり方に関する報告書を発表する予定です。
第288回ILO理事会の結社の自由委員会は、結社の自由の侵害についての申し立て28件、委員会の勧告実施状況43件について審議し、理事会に報告書を提出しました。ベラルーシ、キューバ、ジンバブエの案件に関し、理事会の注意が特に喚起されました。
□ベラルーシ:2000年6月以来7回にわたり、組合関係者の拘留など、自由で独立した労働組合運動を維持しようとの試みに対する度重なる深刻な攻撃についての申し立てが提起されてきたベラルーシについては、委員会の勧告を実施しようとの姿勢が政府に見られないことを委員会は深く憂慮し、労組指導者が表現の自由を完全に行使できるよう確保することを政府に求めました。
同国についてはさらに、今年のILO総会に出席した労働者代表14名が、ILO憲章第26条に基づき、政府及び使用者による労組運動侵害の苦情を申し立てたことに対し、労働組合の権利の侵害を調査する審査委員会の設置を決定しました。第26条規定に基づく審査委員会の設置はベラルーシの案件で11件目になります。
□キューバ:国と共産党にコントロールされている単一の中央労働組合しか認めていないことが長く問題になっており、設立が禁じられている独立労働組合の役員が15年以上の厳しい実刑判決を受けているキューバについては、委員会は労働者の団体設立の自由、団体自らの意思決定権の存在を強調した上で、関係者に直接接触するILO派遣団の受け入れを政府に求めました。
□ジンバブエ:逮捕を含み、組合指導者への脅迫、威嚇、暴行が問題とされているジンバブエについては、問題が繰り返し発生し、組合活動の正常な発展を損なう雰囲気を形成していることに委員会は特に懸念を示し、組合活動を行っている労組活動家の逮捕・拘留といった措置を今後は控えることなどを政府に要請しました。
この他に、労働組合の権利を行使した後に不当に解雇された、不法就労の移民労働者に対する失われた賃金の遡及払いが最高裁で認められなかったことが問題となった米国については、組合の権利を保護している労使関係法で得られる救済策は停止命令と不当行為の掲示だけとする政府の主張に対し、委員会はそのような救済策は制裁に当たらず、将来の行為の可能な抑止効果しかないとして、関係する労使と協議の上、組合に対する差別行為から全ての労働者を効果的に保護できるよう法改正を含むあらゆる可能な解決策を探求するよう政府に求めました。パートタイム労働取り決めのような事項を団体交渉の対象とすることを制限しようとのデンマークの試みが労使団体双方から反対されている件については、労使団体に幅広く合意のある仕組みを変更する場合には、その同意を取り付けるのが望ましいとし、委員会は、皆が合意できる解決策の達成に向けた全関係者との協議の再開を政府に求めました。同様に、年金制度改革の一環として、67歳未満の定年を定める労働協約を無効化する法が成立したスウェーデンについては、委員会は定年引き上げに関する政府の決定を検討する権限はないがとした上で、政府の行為は団体交渉原則に反するとし、締結済みの労働協約に定める定年が協約発効期間中は継続するような適切な救済措置を講じることを政府に求めました。
ILOは欧州、アジア、アフリカ、米州の地域毎に、毎年1回順番に、地域におけるILOの活動について話し合う地域会議を開催しています。今年は12月にアフリカ地域会議が開催されますが、2005年2月に予定される第7回欧州地域会議はブダペスト(ハンガリー)で開催されることが決定されました。
欧州地域会議には、西はアイルランドから東はキルギスタンまで、50カ国の域内ILO加盟国より政府、労働者、使用者の代表が出席して話し合いを行います。2005年前半に欧州連合(EU)議長国となるルクセンブルク政府は、地域会議をEUの議事の一部とする意向を示しました。
会議における討議のたたき台として、2004年秋頃を目途に、2冊の報告書が発行される予定です。1冊は欧州地域における2001〜2004年のILOの活動をまとめたものに、もう1冊は、欧州の人々が今後直面しなくてはならないであろう各種の「移行」、つまり、学校から仕事への移行、仕事から年金への移行、仕事から仕事への移行(転職)、国から国への移行(外国人労働)をテーマとしたものになる予定です。
12月2〜5日にアディスアベバ(エチオピア)で開かれるILOの第10回アフリカ地域会議には、アフリカ地域におけるILO加盟国53カ国の政府、労働者、使用者の代表が出席し、討議のたたき台として提出される「アフリカ開発のためのディーセント・ワーク(Decent Work for Africa's Development・英文)」、「仕事を通じた貧困からの脱出:アフリカの見解(Working Out of Poverty: Views From Africa・英文)」といった報告書をもとに、1999年の第9回会議開催以降にアフリカで行われたILOの貧困削減及び雇用創出活動を検討し、2004年にブルキナファソで開かれるアフリカ連合(AU)のアフリカ雇用・貧困緩和特別サミットを支援する枠組みの構築に向けた話し合いを行う予定です。アフリカの若者のためのディーセント・ワーク、アフリカ諸国が成長と発展に向けた独自の路線を選択できる能力の向上における社会対話と三者構成原則の役割などに関する話し合いも行われます。また、就労人口の9割が社会保障にカバーされていないアフリカにおける社会保障普及に向けたILO世界キャンペーンの開始が正式に宣言されます。コンパオレ・ブルキナファソ大統領、メレス・エチオピア首相、コナレAU委員長の出席も予定されています。
アフリカの人口の半数近く、3千万人以上が1日1ドル未満で生活しています。このような貧困を削減し、仕事を中心に据えた開発策を通じて、貧富の格差の縮小に努めるための戦略が、地域会議における話し合いの大きなテーマになると考えられます。
第288回ILO理事会は、11月6〜21日の日程で、ジュネーブのILO本部で開催されます。本理事会では、◇ベラルーシの結社の自由原則違反に関する苦情申し立て、◇ミャンマーの強制労働問題対策進展状況、◇サービス業における暴力に関する実施基準、◇対パレスチナ技術協力、◇2005、2006年のILO総会議題、◇ILO意思決定機関の機能改革案、◇世界社会基金やILOディーセント・ワーク事業計画の進展状況、◇ILOのエイズ計画の今後の方向性などに関する審議が行われます。「企業の社会的責任と国際労働基準」、「良い統治のための政策と社会協力」、「HIV/エイズとディーセント・ワーク」、「積極的労働市場政策」などの報告書が提出され、検討されます。
11月17日には、特別ゲストとして、ILOのグローバル化の社会的側面世界委員会共同議長であるハロネン・フィンランド大統領が演説を行います。世界委員会はグローバル化が疎外をもたらさず、その恩恵が広く共有されるための方策に関する提言を行うため、2002年に設立されたものです。提言を掲載した報告書は来年発表されることになっています。
10月27〜31日の日程で、ジュネーブにおいて、各国政府並びに化学産業の労働者代表及び使用者代表が参加して、化学産業の柔軟な労働体制における最善の慣行とそれが労働生活の質に与える影響について話し合う会議に提出される討議資料「Best practices in work-flexibility schemes and their impact on the quality of working life in the chemical industries(英文)」は、この20年間で化学産業の就業者数は、1980年に240万人だったものが1995年に610万人に増加した東アジアを除き、全体としては漸減していることを指摘します。減少が特に著しいのは中・東欧諸国で、例えば、アルバニアやブルガリアなどでは29〜50%の減少が見られます。原因としては、合併・買収、生産性増、設備過剰、民営化、技術変化などがあげられます。
欧州の化学産業は生産性を高め、より高利潤の特製品に生産を移行させることによって、従業員1人当たりの生産性と労働コストはこの10年間で約5割増加させながら、製品単位当たりの労働コストを比較的安定させることに成功しています。高度な訓練を要するため、化学産業労働者の賃金は他の産業よりも高く、移行経済諸国を除き、多くの労働者の実質賃金が近年上昇しています。産業の懸念事項の一つに労働者の高齢化があり、若い労働者への技術移転の困難を指摘している会社もあります。日本では50歳をこえる労働者の割合が、1984年には12.8%でしたが、10年後の1994年には21.7%に増加しています。また、化学産業では継続的な交替勤務が必須で、労働者の年間平均労働時間は2040.8時間になっています。
会議では、化学産業における雇用保障と仕事の柔軟性のバランス、女性労働力の増加、訓練と技能開発、ストレス、疲労といった事項を話し合い、政府、使用者・労働者団体に対する活動提案を含む結論を採択することが予定されています。
ILOは、10月7〜14日にバンコクで、船舶解体における安全衛生三者構成専門家会議を開き、世界で最も危険な職業の一つ、船舶解体業におけるより安全な労働条件確保を目指し、世界初の指針を採択しました。会議には、世界の主要な船舶解体国であるバングラデシュ、中国、インド、パキスタン、トルコの、政府、労働者、使用者各側の専門家に加え、国際金属労組連盟(IMF)、国際海事機関(IMO)、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約の事務局、さらにカナダ、ドイツ、ノルウェー、韓国、英国、米国からの参加もありました。
正確な数字は明らかではありませんが、老朽化した船舶による事故の発生や廃棄が求められる船齢の引き下げなどによって、解体またはリサイクルに回される船舶数は近年急増しています。その結果、1日1ドルほどで巨大な老朽船の解体を請け負っている数万人の労働者の安全衛生を改善することが急務になりました。
ガイドラインは法的拘束力はありませんが、船舶解体業者及び関係当局を始め、船舶解体作業における労働安全衛生に責任のある全ての人々が利用し得る実用的な勧告を含んでいます。ILOの関連する条約・勧告や実施基準の適用、労働安全衛生に関する社会対話の促進、国内法制の強化と労働安全衛生基準の執行、全国レベル及び企業レベルの包括的な技術協力プロジェクトの実施を通じた政府、労働者、使用者への支援を通じ、船舶解体に関する責任ある健全な国内枠組みの確立及び船舶解体における安全衛生の向上を支援しようとするものです。
「Women seafarers - Global employment policies and practices(女性船員に関する世界の雇用政策と慣行・英文・定価2,500円)」と題するこの貴重な出版物は、海事産業で働く女性の数は、近年増加傾向を示しているものの(例えば、世界海事大学で学ぶ女子学生の数は、1995年に全学生の8%であったものが、2001年には21%に増加)、女性船員は差別やセクシュアル・ハラスメントを含む非常に厳しい労働条件に直面しているとします。船員人口は世界全体で125万人に達しますが、女性はこのうち1〜2%に過ぎず、その大半が客船乗務員です。北欧では船員労働力の1割以上を女性が占める国もありますが、最大の船員供給国であるフィリピンでは、登録船員23万人中女性は225人に過ぎないなど、女性船員の割合は国によってかなりのばらつきがあります。男性船員の大半は極東の出身ですが(全体の29.1%)、巡航船で働く女性船員のかなりの割合がOECD諸国の出身です(全体の51.2%)。
男性船員の42%が職員(船長、航海士などの高級船員)、58%が部員(一般乗組員)であるのに対し、女性の場合は圧倒的多数(93%)が部員です。この数字は、女性の能力と特性に対する凝り固まった偏見の存在を反映するもので、実際に女性を雇用した経験のある船主や管理職は女性の勤務成績に非常にポジティブであるものの、女性は非常にしばしば性差別、不寛容、いじめやハラスメントを経験しています。
本書は、2001年1月に開かれた第29回海事合同委員会で採択された、海事産業においてもっと積極的に女性を取り込んでいくことを求める決議をフォローアップするものです。船主、労働組合、海事規制当局者、女性船員から幅広く生の声を集め、海事産業で働く女性を船員社会にとけ込ませるのに役立つ良い慣行を発掘し、さらなる提言を行っています。女性船員の雇用・労働条件に対する特別の措置の不在を指摘し、セクシュアル・ハラスメント、月経、妊娠、避妊、母性、性の健康、一般医療などに関する方針の必要性を挙げています。
ILOは8月19日に、東チモール民主共和国のマリ・ビン・アムデ・アルカティリ首相より、ILO憲章上の義務を受諾するとの書簡を受領しました。これにより、東チモール民主共和国は、同日付でILOの177番目の加盟国となりました。
東チモール民主共和国は、2002年9月27日に国連に加盟していますが、国連加盟国は、ILO憲章の義務の正式な受諾をILO事務局長に通知することによってILOの加盟国になることができます。
ILOは、雇用、失業、不完全就業、労働時間、労働生産性など、労働市場の20の主要な指標を取り上げた統計資料「主要労働市場指標(Key Indicators of the Labour Market・KILM)」を2年ごとに発行していますが、9月1日にその第3版が発行されました。
世界の労働市場の最近の動きとして、統計資料は、米国と他の世界諸国の生産性の格差がますます広がっていること、就業者当たりの生産性の伸びがアフリカと中南米を除き、全世界的に高まってきていること(90年代前半1.5%、後半1.9%)、欧州を中心に先進国では就業率(15歳以上全人口に占める就業者の割合)の上昇が見られることなどをあげています。
国際機関の刊行物としては唯一、経済全体の労働生産性推計を含む「主要労働市場指標」は、2002年に米国では就業者当たりの生産高が前年比2.8%増の60,728ドルとなり、過去7年間の平均成長率は欧州連合(1.2%)や日本(1.1%)の約2倍、2.2%に達することを示しています。1時間当たりの生産高では90年代半ば以降、ノルウェー(2002年に約38ドル)、フランス(同35ドル)、ベルギー(同34ドル)が米国(同32ドル)を上回っていることから、労働時間の違いが生産性格差の一因であるといえます。この他に、本書は、活動しやすい経済環境における情報通信技術の普及と生産、商業や情報通信技術に依存する金融証券といったサービス産業の成長を米国の高生産性の理由にあげています。
3年前に開始した国内総生産(GDP)の伸びの全世界的な鈍化は同時に、ほとんどの国で1人当たり年間労働時間の減少ももたらしました。米国でも生産性増に関わらず、2000年に1,834時間だった年間労働時間が2002年には1,825時間と、2000年以降労働時間は減少を続けています。かつては長時間労働で有名だった日本でも近年の労働時間は米国並みに下がっています。労働時間の減少が最も大きかったのは、ノルウェー(2000年1,380時間→2002年1,342時間)、スウェーデン(同1,625時間→1,581時間)、フランス(同1,587時間→1,545時間)などです。一方、韓国(2001年2,447時間)を初め、技術力と資本の欠如を長時間労働で補おうと試みているアジア途上国、第3次産業化、中央計画経済からの脱却が進められている、チェコ(2002年1,980時間)、スロバキア(同1,978時間)などの一部移行経済諸国では、米国を上回る長時間労働が記録されています。
日本とドイツを除き、1999〜2002年の期間に、大部分の先進国では生産高と名目雇用が増加し、欧州諸国では失業率の低下、就業率の上昇が見られました。米国では他のたいていの先進国とは逆に、若年者と長期失業者の失業率が増加しています。アジアの就業率は50〜70%と全体的に高いものの、2001年に1995年比2.8%減を示した韓国、12.6%減のタイなど、1995年以降、就業率は低下しつつあります。
全900ページ、約240カ国のデータを収録し、印刷物の他に、CD-ROM、インターネット版でも発行されている「主要労働市場指標」には今版から農業の生産性も含まれています。本書は、農業は多くの途上国で雇用・貧困軽減戦略の要であるものの、生産性の点では、先進国を依然遙かに下回り(例えば、米国の労働者1人当たりの生産高はベトナムの650倍以上)、生産性と雇用の増大が貧困減少の唯一の方策かもしれないとします。
ILO合同海事委員会小委員会は7月8日、現行465米ドルの船員最低賃金の有効期間を2004年12月31日まで延長し、2005年1月1日より500米ドルに引き上げることに合意しました。合同海事委員会ではこの他に、労働時間、残業、休暇資格、週休日、公休日を考慮した上で、この賃金を解釈する方法に関する手引きも提供しています。
このILO唯一の特定産業向け月額基本賃金の設定メカニズムは、ILOが1996年に採択した船員の賃金、労働時間及び船舶の定員勧告(第187号)で定められています。勧告は政府が立法を通じて法的効果を持たせない限り強制力はありませんが、船主や労働組合が賃金スケールを設定する際に広く用いられています。
客船上の飲食施設・ホテルの従業員なども含み、この改定は150万人を上回る世界の船員人口のかなりの割合に影響を与えるものと思われます。
7月10〜12日にモザンビークで開かれる第2回アフリカ連合サミットに先立ち開かれた理事会に出席したソマビアILO事務局長は、7月8日に演説を行い、世界の貧しい人々にディーセント・ワークの機会を与える新たな手段が開発されない限り、2015年までに世界の貧困人口を削減しようとのミレニアム開発目標はアフリカの多くの国で達成できないであろうと警告しました。事務局長は、今年のILO総会に提出した事務局長報告「貧困から抜け出す手段」の内容を紹介した上で、貧困を解消する最善の手段は仕事であると主張しました。そして、仕事の創出には社会の全ての要素が協力し合う長い複雑なプロセスが必要であるとし、政府、使用者、労働者から構成されるILOの独特の力を、協調的な貧困対策の世界的推進力とすることを訴えました。さらに、より持続可能でバランスのとれた国家経済成長、より良い生活水準を刺激する「ディーセント・ワークの配当」を生むような政策の採択が貧困の解決策になると唱えました。
90年代にサハラ以南アフリカでは弱い経済成長によって、貧困人口が25%増え5億人近くに達しました。この地域では5〜11歳の子どもの29%が働いており、法定社会保障にカバーされている人の割合は就労人口の1割と推定されます。
2000年の国連ミレニアム・サミットにおけるアナン国連事務総長の提案をもとに、国連、ILO及び世界銀行は若者の雇用問題に取り組むネットワーク(YEN)を形成しています。去る6月30日〜7月1日にジュネーブのILO本部で、このネットワークの若者雇用ハイレベルパネルが会合を開催しました。若者リーダーなどから構成されるパネルは、世界の若者(15〜26歳)の雇用可能性、機会平等、企業家精神、雇用創出を推進することによって、至る所の若者にまともで生産的な仕事を見つける真の機会を提供する戦略の開発と実施を任務とします。
今回の会合では、政策作業を国家レベルの活動に転化するためのロードマップ(行程表)の策定に向けた話し合いが行われました。ロードマップでは、YENが今後取るべき五つの段階として、2003年に出されたパネル提言の承認、策定された戦略の国家活動計画への転換、若者の雇用のための資金動員、学校と仕事の架け橋の構築、若者組織が国家活動計画の設計と実施で積極的な役割を果たすことの奨励といった内容が提案されています。
会合に出席したアナン国連事務総長は「今後10年で、10億人を超える若者が生産年齢人口に達する」とし、「これまでの素晴らしい政策作業から国家レベルの活動という新たな段階に移行するのが今後の課題」と述べ、今後の活動に期待を表明しました。
第287回ILO理事会は、2003/04年の理事会議長として、2002年より副議長を務めていた韓国のエイ・ヨンチュン大使を選出しました。労働者側副議長は、労働者側スポークスパーソンのロイ・トロットマン・バルバドス労働者連合書記長が新たに選出され、使用者側副議長は、ダニエル・フネス・デ・リオハ・アルゼンチン産業連合社会政策局長が再選されました。
理事会の結社の自由委員会は、結社の自由の侵害に関する28件の案件を審議し、労働組合選挙への政府干渉に関する申し立ての独立調査などを求める委員会の度重なる勧告を実施しようとしないベラルーシと、国内の暴力的な状況が治まらず、労働組合員の殺害、脅迫、誘拐などが続いているコロンビアの案件に特に注意を喚起しました。コロンビアについては、憲章に基づく審査委員会設置要求が投票で否決されました。ベラルーシについては、今年11月の理事会で審査委員会設置の有無が決定されることになっています。
公務員制度改革に関連して提起されている日本の案件も昨年11月に引き続き審議され、公務員の労働基本権制約維持の再検討など、前回と同様の勧告が出されました。結社の自由の重要な問題が協議過程で十分に取り上げられていないことを想起した上で、委員会は政府に対し、公務員の労使関係制度を改正する法の本文の提出などを求めました。現在フォローアップ段階にある国労組合員のJR不採用事件に関しては、建交労鉄道本部と日本政府の双方から四党合意破棄などの追加情報が寄せられたことについて、委員会は問題が結社の自由原則から見て非常に深刻であることを強調し、既に死亡したり、退職年齢に達した労働者もいるという事件の古さに鑑み、できるだけ多くの労働者が受け入れられるような公平な解決策を探す努力を追求するよう政府及び関係当事者に呼びかけました。
今年の総会の主な成果は以下の通りです。
- 事務局長報告 : 貧困問題をテーマとした事務局長報告をもとに、貧困に対する戦いの継続に向けた熱のこもった建設的な議論が行われました。貧困対策として提案された手段には、技能開発基金の設立、貧困減少に向けた世界的な動きの中でディーセント・ワークを推進していくこと、貧困と闘うための調査研究、広報、サービス手段の改善などが含まれます。
- 船員の身分証明 : テロ行為に対する効果的な安全保障手段を開発し、船員の移動の自由を確保するため、1958年の第108号条約を改正する新しい「船員の身分証明書改正条約」が採択されました。新条約は、指紋をもとにした生体認証テンプレートを用いた身分証明書(ID)の様式、適切な発行手続き、データベースの維持などについて規定します。条約に関連する決議で、ILOは「特に国際民間航空機関(ICAO)と協力し、国際的に運用できる生体認証基準」の開発に向けた措置を緊急に講じるよう要請されました。
- パレスチナの労働者 : イスラエル占領地の労働者の状況に関する特別討議が行われ、さらなる技術協力の必要性、提案される「ロードマップ(行程表)」が和平に向けた政治的努力を推進することへの期待などが表明され、ILOの「パレスチナ雇用・社会的保護基金」設立に向けたイニシアチブを支持する声が多く聞かれました。
- 労働安全衛生 : 毎年、世界全体で約200万人の人々が、業務に関連した原因で命を失っています。労働安全衛生に関する一般討議の結果、労働者の死傷事故や疾病の減少に向けた「焦点を絞った統一的な」国際活動を求める労働安全衛生世界戦略に関する合意が達成されました。戦略は、安全衛生予防文化の導入、政労使が世界戦略目標を実現するのを支援するILOの総合的な労働安全衛生「道具箱」の開発の二つを柱としています。
- 雇用関係 : 実際には雇用者に等しいにもかかわらず、雇用関係が偽装あるいは隠蔽されている結果、労働法に保護されていない従属労働者がいる現状に鑑み、雇用関係の範囲について一般討議を行った結果、このような労働者の保護に向け、雇用関係に関する新しい勧告の策定提案を含む結論が採択されました。
- 基準適用 : 基準適用委員会では、条約適用上の問題が指摘されている25カ国について審査が行われました。ミャンマーについては強制労働問題で特別討議が行われましたが、このほかに、ベラルーシ、カメルーン、ミャンマーの結社の自由と団結権の保護、リビアの社会保障の均等待遇、モーリタニアの強制労働、ジンバブエの団結権と団体交渉権の各条約適用状況について、特に深刻な問題が指摘されました。総合調査が行われた賃金保護の条約・勧告については、賃金不払いや破産時の労働者賃金債権の優先的取り扱いの廃止が幾つかの国で見られる現状に鑑み、この条約・勧告が依然妥当であることが確認されました。
- 人材開発 : 1975年に採択された人的資源開発勧告(第150号)に代わり、グローバル化の過程で登場してきた新たな学習・訓練形態を反映した新しい国際基準を来年採択することをめざして行われた第一次討議の結果、新しい勧告の内容案として、人材開発は生涯学習と雇用可能性を推進するために必要な対応の重要な要素であることを認識し、教育、訓練、生涯学習に向けた政府、民間部門、個人の新たなコミットメントと政労使の関与を求める結論が採択されました。
- その他 : 5億2,959万ドルの2004/05年度事業計画・予算案が採択されました。
また、雇用及び職業における差別の排除に関するグローバル・レポートの討議が行われ、差別と戦う土台としての法整備の重要性、職場における平等の地域社会、企業、その他の部門にとっての重要性が強調され、差別と貧困のつながりが指摘されました。
今年の議長はケニアのマイケル・クリストファー・ワマウワ副大統領兼労働大臣、副議長は、使用者側がオーストラリアのブライアン・ノークス氏、労働者側がポーランドのトマシュ・ヴォイチク氏、政府側がヨルダンのムザヒム・アル・ムハイシン労働大臣でした。南アフリカのムベキ大統領とヨルダンのアブドッラー二世国王が特別ゲストとして演説を行いました。
6月12日の児童労働反対世界デーのジュネーブにおけるイベントでは、ヨルダンのラニア王妃が演説されました。6月18日には、社会保障の適用をすべての人々に広げることを目指した世界キャンペーンの開始が発表されました。
2001年のILO総会では、社会保障に関する討議の中で、働く人々、特にインフォーマル経済で働く人々に社会保障の適用を広げ、社会保障が経済・社会開発において果たす役割について世界的に認識を高めていくことへの合意が達成されています。これに基づき、ILOは6月18日から「すべての人への社会保障適用世界キャンペーン」を開始しました。ILO社会保障政策開発部が中心になって進められるこのキャンペーンは、実験的過程と社会対話を通じて、各国が社会保障制度を開発し、拡張していくのを支援していきます。当面は、(1) 社会対話を通じた社会保障の拡大、(2) 社会保障に関するニーズ満足に向けた、小規模保険の活用を含む地域社会ベースの制度の強化、(3) 社会的排除の克服に向けたプロジェクト、(4) 保健医療の適用範囲拡張に向けたプロジェクト、(5) 社会的保護制度のキックスタートに向けた、先進国と途上国を結びつけた世界社会基金を通じた社会保障拡張プロジェクトの五つの活動を集中的に行います。
現在、社会保障の十分な保護を受けているのは世界人口の2割にすぎず、半数以上が全く保護されていません。先進国では人口のほぼ100%、中所得国でも2〜6割は社会保障が適用されていますが、後発開発途上国では労働人口の1割にも達しません。社会保障の拡張については、世界全体に通用する方法というものはなく、それぞれの国にあった解決策が求められます。社会保障の適用拡大に成功した国としては、1977年には2割であった保健医療の適用範囲を1989年には100%にまで引き上げた韓国、社会保険と公衆衛生サービスの無料利用を組み合わせて保健医療の適用範囲を全国民に広げたコスタリカ、税を財源とする社会年金の拡大によって数百万の世帯を貧困から抜け出させたブラジルなどが挙げられます。
「うまく設計された社会保障制度は国の経済情勢を改善し、従って、世界市場における比較優位の向上に寄与する」とソマビアILO事務局長は主張します。
ILOは6月12日を児童労働反対世界デーとしています。今年は子どもの人身売買(トラフィッキング)をテーマに、各地でさまざまな行事が行われました。ジュネーブのILO本部で開かれた催しで基調講演を行ったヨルダンのラニア王妃は、現代の奴隷制とも言うべきこの問題に世界が団結して取り組むよう訴えました。対策の第1として、それが人間の貧困から発生するとの事実が認識される必要があるとした上で、王妃は、あらゆるレベルにおけるより良い教育、法の執行に向けたより良い訓練、被害を受けた子どもたちが自宅に戻ってきた際のより良いリハビリ、各国政府による決然とした予防、保護、犯罪者起訴の確保、国際的な共同努力への合意の必要性を唱えました。
ILOでは、毎年約120万人の子どもたちがトラフィッキングの犠牲になっていると推計しています。
6月12日に特別ゲストとしてILO総会で演説したフセインのアブドッラー・ビン・フセイン国王は、機会と希望を必死で求めている若者たちが、自分たち自身そして社会の発達が、貧困、健康危機、非識字などで押さえつけられているのを目の当たりにするような社会が、過激派思想を募る素地となっても驚くべきことではないとし、世界の繁栄の中心にあるのは仕事と働く人々であるとの考えのもと、世界の暴力に油を注ぐ絶望と分裂を癒すには困窮に対する戦いに勝利する必要があると強調しました。そして、困窮の克服にはすべての人々が尊厳をもって暮らせるような持続的な社会経済の発展が必要とし、そのような発展はアラブ・イスラエル紛争及びパレスチナ問題の正しい解決策であると同時に、過激派に対する戦いにおける重要な手段であると唱え、重要な岐路に立っている中東の再建と安定化に向け、国際社会の共同努力を呼びかけました。
6月11日に特別ゲストとしてILO総会で演説した南アフリカのムベキ大統領は、欧州構造基金に言及し、欧州連合(EU)内で加盟諸国間の均等でバランスのとれた発展を確保するため資金移転が行われていることについて、裕福な先進国である英国に166億ユーロが割り当てられている一方で、サハラ以南アフリカからは債務返済のため、EUを含む北の裕福な国々に毎年145億ドルが流れている状況に触れ、世界的に貧困を撲滅するとの目的を達成するのに必要な資金は、世界経済及び社会の中に存在しているにもかかわらず、それがこの重要な目標達成に充てられないのはなぜかと問いかけ、貧困に対する戦いはグローバルな行動を必要とすると主張しました。そして、他の条件が同じであるならば、利益の最大化が資本主義経済に内在する特徴ではないかとし、その仮定が正しいとすれば、アフリカを初めとする途上国が直面するずっと大きな問題が、客観的に見て、自らの経済活動から最大限の利益を得るとの目標を追求する以外に選択肢を持たない人々に主として依存して解決していけるのだろうかと疑問を提起しました。
今年のILO総会では6月12日にパレスチナの労働事情に関する特別討議が行われます。討議資料となるILO事務局長報告「The situation of workers of the occupied Arab Territories(イスラエル占領地の労働者の状況)」は、占領地では2002年6月から2003年5月の期間で経済・社会危機がさらに深刻になり、失業率は31〜38%に達し、2002年の1人当たり累積所得は1999年の水準の半分以下に低下したとします。イスラエル経済にも深刻な影響があり、2002年も前年に続く景気後退が見られ、国内総生産(GDP)はマイナス成長を示し、イスラエル銀行は2002年のインティファーダ(パレスチナの住民蜂起)による経済コストをGDPの3〜3.8%と推計しています。
報告書は、現状は容認できないとしながらも、今年に入ってから、国境封鎖のわずかな緩和などにより、2000年9月のインティファーダ開始以前よりはるかに低水準ながら経済・社会状況は安定してきたかもしれないとします。また、政治的展開や国際社会によるロードマップの提案により、転換点を迎えている可能性を指摘し、パレスチナ独立国家創設の必要不可欠な要素として労働制度構築の重要性を強調します。ILOは既に、パレスチナ雇用・社会保護基金設立のため140万ドルを拠出しています。
ILOは昨年より6月12日を児童労働反対世界デーとして、児童労働の悲惨な現状に世界の注意を喚起する日としています。今年は、世界全体で毎年推計120万人の子どもが犠牲になっている人身売買(トラフィッキング)をテーマに、各地でさまざまな行事が開催されます。日本では当日、NGOの協力を得て、東京・渋谷区のUNハウス(国連大学本部ビル)で、25歳以下の若い人々が、この問題について理解を深め、自分たちで何ができるかを話し合ってもらうワークショップをILO駐日事務所主催で開催します。また、6月13日まで、同所で児童労働の写真展も開かれています。
ジュネーブのILO本部では、「世界の問題と地域の解決:地域社会による子どもの人身売買対策」と題し、ヨルダンのラニア王妃の基調講演に続き、世界4地域より、反人身売買活動をそれぞれの関係者が紹介します。港を経由した子どもの人身売買が見られるフィリピンからは、港湾当局を中心とした子どもの人身売買防止活動、ラテンアメリカからは、国境検査が緩く、武器、薬物、未成年者の商業的性的搾取を含む違法な商行為が広く見られるアルゼンチン、パラグアイ、ブラジルの国境地帯における子どもの人身売買撲滅に向けた3カ国協力活動、アフリカからは、農村の子どもが売られている西・中央アフリカの予防活動の一例として、トーゴにおいて人身売買の危険に関する啓発活動などを行っている地域監視委員会の活動、最近、日本政府及び国連の人間の安全保障基金より資金協力が行われることが決定されたメコン川流域からは、カンボジア、中国(雲南省)、ラオス、タイ、ベトナムの5カ国で実施されている児童及び女性の人身売買をなくすためのメコン・プロジェクトが紹介されます。
人身売買に関するILOの最新の報告書「人の心に耐え難い行為:子どもの人身売買をなくすための行動」は、売られた子どもたちは、商業的性的搾取、家事手伝い、レストラン・バーなどのサービス業、工場、農業、建設業、漁業といった危険な仕事、物乞い、武力紛争などに従事していると記しています。
6月7日に特別会合を開いた第91回ILO総会基準適用委員会は、ミャンマーによるILO強制労働条約(第29号)の適用状況を話し合い、現状に遺憾の意を表明しました。これを受け、6月9日に演説を行ったソマビアILO事務局長は、最近当局に拘束されているアウン・サン・スー・チー国民民主連盟(NLD)書記長及び支持者の即時解放、強制労働廃絶に向けたILOとの協力継続を同国に求めました。ILOとミャンマーは既に5月に、同国における強制労働廃絶に向けた行動計画の一環として、強制労働被害者が現行法制及びILO第29号条約に基づき得られる救済措置を求めることを支援する世話役の設置について合意に達しています。
第91回ILO総会に出席している欧州連合(EU)加盟候補13カ国の労働大臣が、6月10日、この機会を利用し、年金改革について話し合う会合を開きます。討議資料となるILOの報告書「Recent Trends in Pension Reform and Implementation in the EU Accession Countries(EU加盟候補国の年金改革とその実施における最近の動向)」は、これらの国々では、年金財源とリスク分担に関する官民の激しい論争が広く見られ、賦課方式の公的制度の規模を縮小し、平行して商業的な個人貯蓄制度を導入している国(ハンガリー、ポーランド、ブルガリア、ラトビア、エストニア)と、公的年金制度を調整し、新たに開発した補足的な任意退職年金制度と組み合わせている国(チェコ、スロベニア、トルコ、ルーマニア)の二つの動きがあるとします。
報告書は、社会保険制度の規模を縮小し、年金拠出金の一部を商業的な強制個人貯蓄預金に回すと、数十年間にわたり、年当たり国内総生産(GDP)の0.5〜2.5%に及ぶ財政負担がかかると警告し、適正な政策の組み合わせにはオープンな社会対話が必須とします。
現在、ジュネーブで開催されている第91回ILO総会には、「Working out of Poverty(貧困から抜け出す手段)」と題する事務局長報告が提出され、これを巡る話し合いが行われています。
今、世界には、1日2ドル未満で暮らしている人々が、30億人近くいます。そのうち約10億人、途上国人口の約23%が1日1ドル以下で生活しています。貧困から抜け出す最善の方法は仕事ですが、失業者数は現在、世界全体で約1億8,000万人に達し、この数はさらに膨らみつつあります。労働力人口は毎年約5,000万人ずつ増加していますが、この97%が途上国で発生しています。今後10年間で10億人を超える若者が生産年齢人口に達すると予測されますが、世界経済はその技能、エネルギー、野心の潜在力を活用できるほど組織されていません。所得格差はますます広がっており、世界でもっとも裕福な5分の1ともっとも貧しい5分の1の人々の所得格差は、1960年には30対1だったのが、1999年には74対1に拡大しました。
貧困は世界的な問題で、先進20カ国でも人口の1割超が所得中央値の50%という貧困線を下回る生活をしています。地域的な状況は多様で、中国その他東アジア諸国では90年代に非常に所得が低い人々の数は11億人から約9億人と大幅に低下しました。南アジアでは約11億人と貧しい人々の数は大体安定していますが、人口成長のためにその割合は徐々に縮小しています。貧困人口は90年代に、サハラ以南アフリカでは、低成長のために25%増え、5億人近くに達しています。中南米・カリブ諸国では1億2,100万人から1億3,200万人に増加し、人口の4分の1が生存にぎりぎりの1日2ドル以下の生活を送っています。中東・北アフリカではその数は5,000万人から7,000万人近くに増え、東欧・中央アジアでは、9,700万人と3倍になっています。
報告書は、貧困削減のための手だては、バランスのとれた、国にはより持続可能な成長を、人々にはより良い生活を推進するような「ディーセント・ワークの配当」を生じる政策の採択とし、そのために、@雇用創出、A仕事における権利の保障、B基礎的社会保護の提供、C対話と紛争解決の推進という、貧困撲滅に向けた四つの手段について話し合うよう、政府及び労使団体に呼びかけています。
現在、ジュネーブで開催されている第91回ILO総会では、船員の身分証明書に関する新しい条約の採択に向けた話し合いが行われています。6月1〜3日に開かれたG8エビアン・サミットは、その交通保安に関する声明の中で「ILOにおいて、安全で検証可能な船員の身分証明書を策定する」緊急の必要性に言及し、この動きを支持しています。
船員の身分証明書について、ILOは既に1958年に船員の身分証明書条約(第108号)を採択しています。しかし、9月11日の同時多発テロ事件以後、世界の海事産業をテロの脅威から保護する必要性が高まる中、身分証明書の不正と偽造を阻止する近代的な技術を考慮に入れ、迅速で信頼のおける身元検証、必要な詳細情報が提供される方法における統一性を確保し、第108号条約を新しくする必要性が生じました。そこで、総会では世界で120万人にのぼる海事労働者が、しばしば長期にわたる航海の後に外国領土に上陸する権利と自由を確保しながら、テロに対する効果的な保護を開発することをめざし、より厳格な新しい身分証明の仕組みの構築に向けた話し合いが行われています。
パスポートやビザについては、国際民間航空機関(ICAO)が仕様手引きを発行していますが、国際的な身分証明書に関する強制的な仕様は今のところ存在しません。条約案では、ICAOの仕様の採用、国際的に照会できる適正なデータベースの維持、身分証明書発行の適切な手続きの遵守などが検討されています。
ジュネーブで6月3日に開幕した第91回ILO総会では、ケニアのマイケル・クリストファー・ワマウワ副大統領兼労働大臣が議長に選ばれました。副議長は、使用者側がオーストラリアのブライアン・ノークス氏、労働者側がポーランドのトマシュ・ヴォイチク氏、政府側がヨルダンのムザヒム・アル・ムハイシン労働大臣が選出されました。
今年の総会は、6月19日まで開かれ、世界的に貧困に取り組む新しい計画、新たな労働形態、仕事における安全を改善する措置、強制労働の廃絶、職場における差別対策といった多様なテーマを巡って話し合いが行われます。
エビアンで開かれている主要国首脳会議出席後、ジュネーブのILO本部を訪れたルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シウバ・ブラジル大統領は、3日より始まるILO総会出席のため集まってきていた各国の政労使代表団を前に演説し、途上国の競争力がある産業が先進国の保護主義に阻まれていることや、途上国が数百万ドルに上る農業補助金を削減しようとしないことを言行不一致と非難し、飢餓と貧困に対する戦いへの注力を求めました。ルーラ大統領は、「連帯と経済協力、環境保護、正義の推進、平和構築の諸面における不足」が世界的に拡大してきていることを警告し、国連安全保障理事会の改革、経済社会理事会の権限強化を含む国際体制再生の必要性を唱えました。自らもかつて児童労働に従事し、労働組合の指導者でもあったルーラ大統領が就任後に国連機関で演説するのは今回が初めてです。
また、ILOとブラジルは雇用創出、小規模金融、若者の雇用、社会保障制度・三者構成主義・社会対話の改善、児童労働と児童の性的搾取、強制労働、職場における差別の撲滅に向けた「ディーセント・ワーク」推進協力計画の合意覚書に調印しました。
6月3〜19日の日程でジュネーブで開かれる第91回ILO総会の主な議題は以下の通りです。
- 事務局長報告:今年の事務局長報告は貧困問題を扱い、働く貧しい人々にディーセント・ワークを推進し、仕事から排除されている人々に新たな機会を作ることによって貧困を緩和しようとのILOの今後の戦略形成に向けたロードマップ(行程表)を記したものとなっています。
- 船員の身分証明:テロ行為に対する安全保障のニーズが高まっている中で、一時上陸または他国の領土における職務遂行を求める船員の身分証明の問題に関し、1958年に採択された船員の身分証明書条約(第108号)を改正し、身分証明書の安全保障面を今日の状況に合わせることをめざした話し合いが行われます。
- 労働安全衛生:毎年、世界全体で約200万人の命が仕事に関連した事故及び疾病で失われ、これによって世界経済が費やすコストは1兆2,500億ドルにのぼると推計されます。労働安全衛生に関する国際労働基準、実施基準のようなその他の文書、技術協力、知識管理、情報普及、機関間協力を含む包括的な行動計画の立案に向けた話し合いが行われます。
- 人材開発:1975年に採択された人的資源開発勧告(第150号)に代わり、グローバル化の過程で登場してきた新たな学習・訓練形態を反映した新しい国際基準を来年採択することをめざし、第一次討議が行われます。
- 雇用関係の範囲:現在ある労働者保護制度は一般に雇用関係を基盤としているため、雇用関係の枠外に置かれた従属労働者は各種の危険にさらされています。総会では、そのような労働者に対してどのような活動が国際的、国内的に可能かといった話し合いを行います。
- イスラエル占領地における労働者の状況:西岸、ガザ、ゴラン地区のアラブ人労働者とその家族の状況の悪化、イスラエル経済の深刻な不況を記した報告書をもとに、技術協力の可能性等をめぐり特別討議が行われます。
- その他:この他に、雇用及び職業における差別の排除に関するグローバル・レポート、ミャンマーの強制労働問題、2004/05年度事業計画・予算案に関する話し合いも行われます。ILOの事業計画は2暦年制になっており、提案されている次年度予算は実質ゼロ成長の、現行レート換算で4億4,802万730ドルになっています。
6月12日はILOでは児童労働反対世界デーとなっていますが、今年は児童の人身売買に焦点を当てたイベントが開催され、ヨルダンのラニア王妃の演説も予定されています。日本でも、東京都渋谷区のUNハウスで、6月2〜13日に写真展、12日にワークショップが開かれます。
今年の総会の特別ゲストは南アフリカのムベキ大統領(演説日6月11日)とヨルダンのアブドッラー国王(同6月12日)です。
強制労働の存在が指摘されているミャンマーに対し、ILO理事会は、今年6月の総会開催前までに強制労働をなくすための行動計画を立案するよう求めていましたが、5月14日に、ILO強制労働条約(第29号)の規定及び国内関連法制に基づき得られる救済策を用いて強制労働被害者の支援を行う世話役の設置について、ILOとミャンマー政府間で正式な合意がなされました。行動計画にはほかに、パイロット地区における道路建設事業、強制労働利用の代替策、周知広報活動などが含まれることが予定されています。
ソマビアILO事務局長は、ウ・ティン・ウィン・ミャンマー労働大臣に宛てた書簡の中で、世話役に関する合意の達成とミャンマー政府が合意文書の中で表明した強制労働廃絶に向けた公約を歓迎し、行動計画の早期立案の重要性に注意を喚起した上で、総会で具体的な実施内容について話し合うことへの期待を表明しました。
ILOは、今年1月にホテル・観光産業の雇用問題を扱った報告書を発表しましたが、この度、その後の状況変化を盛り込み、同書を改訂した新しい報告書「2003年旅行・観光業界の雇用に対する新たな脅威(英文・New Threats to Employment in the Travel and Tourism Industry - 2003)」を発表しました。
1月の報告書は、2001〜02年に旅行・観光業界では約650万人の雇用が失われたとしていましたが、新しい報告書は、現在進行中の景気低迷に新たに重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響も加わり、今年だけでも既に500万人の雇用が失われたと推計します。そして、世界全体で下請け業者や関連業界も含むと世界の国内総生産(GDP)の11%、総就業人口の8%に達する旅行・観光業界で、2001年の同時多発テロ事件以降の雇用喪失は総計1,150万人にのぼり、7人に1人が職を失った計算になるとします。
特に厳しいのは、SARSの影響を直接受けている香港、シンガポール、台湾、ベトナムで、旅行・観光業界の失業者数は同業界就業者総数の30%を超えると見込まれます。オーストラリア、フィジー、インドネシア、キリバス、ニュージーランド、フィリピン、そしてホテルのキャンセル率が5〜10%にのぼっているタイ、航空路線の予約率が40%、ホテル宿泊率が30%も下落したマレーシアなど、東南アジア・太平洋の近隣諸国の同業界失業者数は15%に達し、それ以外でも平均5%の雇用喪失のおそれがあると報告書は推計します。
報告書は、旅行・観光業界は最近の出来事にかなりの打撃を受け、回復の見通しは暗いとした上で、観光活動の長期的な低迷が雇用に与える徹底的な打撃を警告します。また、雇用主は高技能の中核的スタッフを維持しようとするため、パートタイム労働者、女性、移民労働者といった低技能の「社会的に弱い」スタッフが真っ先に解雇される可能性が高いものの、こういった労働者はかなりの程度まで成長が回復しない限り収入源を失い、他の仕事もなかなか探せない危険性が高いとします。
ILOは、より融通を利かせた作業方法、再訓練または残された従業員の技能拡充、より柔軟な労働時間編成、フロント係がチェックインも手伝うような多技能化といった新しい作業方法の導入が収益の低下を食い止める助けになるかもしれないとします。また、影響を受けた国が、生き残りをかけて一時的なコスト削減策を実施し、できるだけ多くの雇用を維持する努力を支援する上で、政府、使用者、労働者による三者の対話が不可欠と唱え、2001年の同時多発テロ事件直後に開かれた非公式会合で出された提言に基づき、三者が協力して問題の解決に取り組むことの重要性を指摘します。
ILOは、1998年に採択した労働における基本的原則及び権利に関する宣言のフォローアップとして、宣言が扱う基本的原則及び権利の四つの分野について、毎年一つずつ順番に、総合的な報告書を作成し、討議のため総会に提出しています。このグローバル・レポートの今年のテーマは、雇用及び職業における差別の排除です。
「Time for Equality at Work(仕事における平等の時)」と題する報告書は、明白な差別は少なくなってきたものの、依然多くが職場の日常に残っており、その上、新しい、より巧妙な形態をとる差別も現れ、ますます心配されるとしています。
報告書が指摘する主な事項としては、などがあげられます。
- 人種差別や、障害、HIV/エイズ、年齢、性的嗜好などに基づく新しい形態の差別など、差別は依然、職場の共通の問題であること、
- 50年前より女性の収入は良くなっている場合が多いものの、まだガラスの天井が昇進を阻み、女性は一般に男性より低賃金であるといったように、古くから認識されてきた仕事における女性差別のような差別でさえ、戦いは均等な進展状況を示していないこと、
- 被差別集団内の格差が拡大していること、
- 家事手伝いや家内労働のように、差別される人々はしばしばインフォーマル経済における低賃金の仕事に就かざるを得ないこと、
- 差別は強制労働や社会的排除を生み出し、貧困の継続を助けること、
- 公平な職場は労働者のモラールを、そして生産性、企業競争力を高めるといったように、個人も企業も社会全体も、仕事における差別がなくなればみんなが利益を得ること、
低賃金で失業率も高い女性、二世、三世にも影響する人種差別、採用拒否などのHIV/エイズ患者への差別、労働市場や教育訓練における機会が制限される障害者、同僚や上司による攻撃的態度のような信教に基づく差別、採用年齢制限などといった年齢差別など、差別の形態は様々ですが、先住民の女性のように、複数の差別要因を併せ持った人々も多いと報告書は指摘します。
報告書は、職場を差別に対する戦いの入り口と位置づけ、差別禁止法は不可欠であるものの、今まで不十分であったとし、誰もが責任をもって職場における差別をなくすよう呼びかけると共に、差別されている労働者や使用者の声を聞く重要性を強調します。
世界の労働組合運動は1996年から、4月28日を仕事に関連して命を失ったり、負傷したり、病気になった方々を悼む日としてきましたが、ILOはこの日を「仕事における安全と健康のための世界の日」とし、労働災害と職業病の予防と削減に、ILOを構成する政府、労働者、使用者の注意を喚起することにしました。今年は「職場における安全文化の推進」を総合テーマに、世界各地でさまざまな行事が行われます。
ジュネーブでは当日、「グローバル世界における健康安全文化の構築と推進」と題する円卓討議が行われ、ウェブ上でライブ中継されます。この他にリマ、ロンドン、バンコク、サンパウロなどで、シンポジウムや他団体との共同声明の発表など、各種の行事が行われる予定になっています。東京では、既に4月21日に「仕事における安全、健康、環境−国際協力が求められる諸課題」と題するフォーラムが開かれ、多数の参加を得ました。
世界の日に際して発表された小冊子「Safety in Numbers(数字で見る安全・英語)」は、労働災害及び業務上疾病による年間損失額は世界の国内総生産(GDP)の約4%、1兆2,500億ドルに相当するとします。毎年、業務上の事故と負傷で世界全体で約200万人の命が失われ、2億7,000万件近い労働災害が発生し、1億6,000万人が職業病になっています。障害による早期引退(労働生涯を平均約5年短縮)、欠勤(産業や仕事の種類によっても異なりますが、欠勤全体の2〜10%)、労働能力の損傷による失業(失業者全体の平均3分の1)、所得喪失による貧困の発生など、業務上の事故と疾病によって社会が担う負担にはさまざまなものがあります。小冊子はまた、安全衛生が不十分な場合に企業の収益に影響があることを強調し、職場の労働安全衛生を向上させる「安全文化」構築に向け労使がどのように協力していけるかに関する情報も掲載しています。
ソマビアILO事務局長は、「業務上の事故、負傷、死亡は予防できる」とし、「より安全で健全な職場を構築するため、適切な国内政策・計画に支援された新しい「安全文化」を推進する必要がある」とします。
ソマビアILO事務局長は、アフリカ連合の第26回労働・社会事項委員会出席のため、4月12日から4日間の日程で、モーリシャスを公式訪問しています。委員会は雇用創出、貧困緩和、児童労働問題、HIV/エイズ問題、グローバル化の社会的影響、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)計画の社会的側面など、ILOにも関わりのあるアフリカ大陸の諸問題について話し合いを行います。
ILOは既にアフリカで広範な技術協力活動を展開しており、これには効果的な社会対話と労使関係のための能力構築、雇用回復、労働・雇用法起草時の支援、社会・労働保護制度の推進、労働安全衛生の強化、貧しい人々の組織化、小企業振興と小規模融資、職場におけるHIV/エイズと児童労働への取り組みなどが含まれますが、ソマビア事務局長は出発に先立ち、「アフリカは開発の十字路にある」として、「貧困緩和、社会対話、危機後の復興、職場におけるHIV/エイズ予防、地域統合を支援する重要な改革に関し、アフリカの政労使に協力する用意がある」ことを発表しました。
事務局長は大統領、首相をはじめ、モーリシャスの要人各氏とも会談する予定です。
4月7〜9日に北京で開かれる予定になっていた中国雇用フォーラム準備のため、北京に出張していたペッカ・アロ技能開発局長が、4月6日早朝、重症急性呼吸器症候群(SARS)のため北京で亡くなりました。フォーラムの開催は延期されました。
ILO事務局長は、4月7日、アロ局長の死を悼み、要旨以下の声明を発表しました。
アロ局長はILO入局前、フィンランド国内及び国際労働組合運動で数々の枢要な地位を歴任してきました。入局後は中・東欧の雇用・労働問題に関する画期的な活動を行い、著名な雇用問題の専門家でした。
「ILOは今日、深い悲しみに沈んでいます。中国雇用フォーラム準備のため、3週間前にアジアに向けて出発したペッカ・アロ局長が4月6日早朝、急病のため、出張先の北京で亡くなりました。死因は最新の情報によれば、重症急性呼吸器症候群(SARS)とされています。この破壊的な新病についてはほとんど知られておらず、ワクチンも治療法も見付かっていません。私達にとってはまさに急所を突かれたようなものでした。
アロ局長は3月28日に胃腸炎の症状を訴え、4月2日に入院し、その後新型肺炎と診断されました。ILOは即座に中国当局に接触し、その後タスクフォースを組織し、北京の職員達と緊密に連携を取りながら、可能なあらゆる支援をジュネーブから提供し続けました。ILO医療サービスの医師とWHO北京事務所の医師が絶えず健康状態を監視し、最善の医療処置が取られることを確保するために努力しました。上司の雇用総局長が中心となってアロ局長の緊急帰国を手配する行動もとられていました。
私達は病状の急速な悪化を知り非常に懸念しながらも希望を捨てずにいましたが、最終的にあらゆる努力が無に帰してしまいました。この間、アロ局長をずっと見守ってきた北京のILO事務所の所長並びに職員は現在隔離されています。職員にとっても家族にとっても非常に難しいときだと思われます。
アロ局長にできる限りのことをしてくれた全ての人々に感謝の意を表明します。
今日、私は私達の同僚及び友人達と共に喪に服しています。アロ局長は骨身を惜しまず働き、人心把握力に優れ、常に優秀な結果を追求してきました。その忠節心、友情、献身、誠意は高く評価されます。時間を惜しまず、人々を助け、アドバイスを与えてきました。アロ局長の死は私達全員にとって大きなショックであり、ILOにとっては限りない損失です。私達はもう彼の不在を寂しく思い始めています。私達はご家族の皆様方と悲しみを共有するものであります。」
3月28日に第286回理事会で採択された結社の自由委員会の報告書(第1部・第2部)は、結社の自由原則と労働組合の権利侵害についての特に深刻なケースとして、組合選挙への政府介入、反組合的差別待遇等に関するベラルーシの案件、労働者代表の起訴・拘留を含む労働紛争事件への抑圧的な措置に関する中国の案件、1995年以来続いている労組活動家の殺害、誘拐等を含む深刻な組合迫害状況に関するコロンビアの案件、1996年に遡る教員組合活動家の殺害、逮捕、拘留を含む深刻な結社の自由侵害に関するエチオピアの案件、組合員の襲撃、脅迫、組合本部の強制捜査、物品押収等に関するグアテマラの案件、労使双方から結社の自由侵害に関するさまざまな申立が出されているベネズエラの案件に特に憂慮を示しました。
中国に対しては、ILOの直接接触ミッションの受け入れを、グアテマラに対しては、技術協力の受け入れを検討するよう呼びかけました。エチオピアに対しては、教員の団結権を保障する法改正等を、ベネズエラに対しては、国の選挙審議会に与えられている過度の介入の権利に関わる憲法改正等を求めました。
ILOのソマビア事務局長と理事会の議長及び副議長は連名で、イラク戦争の結果に関する声明を発行しました。声明では、社会正義と労働者保護に基礎を置くILOの創立原則は、戦争被災者のニーズに応えるものであるとし、雇用創出とできるだけ多くの人々への生計の確保に向けた努力を支援することを誓い、避難民労働者の保護、紛争後の雇用市場のニーズ評価、雇用創出と弱い人々への適切な社会的保護の確保に向けた複数の再建事業の策定といった面で、国連諸機関のイラク緊急ニーズ対応活動に協力していることを発表しました。また、紛争が雇用に与える影響に対する戦略的な対応に焦点を置きながら、労働者の権利が十分に認められ、尊重されるような投資、成長、民主主義を促進する環境の形成に対する寄与といった点で、国際社会の復興努力に大きな役割を果たしていく希望を表明しました。
3月6〜28日の日程でジュネーブで開かれた第286回ILO理事会の主な成果は以下の通りです。
- 事務局長再選:フアン・ソマビア現ILO事務局長の任期は来年3月までですが、3月25日にILO理事会で行われた選挙の結果、圧倒的多数の支持を受け、現事務局長は再選され、2期目5年間の任期を務めることとなりました。
- 2004/05年度事業計画・予算案:ILOの予算は2暦年制ですが、今年6月の総会に提案される総額4億4,802万730ドル(現行年度の為替レート:スイスフラン建てである最終的な額は総会で決定)規模の事業計画・予算案が決定されました。事業計画は成果ベースの現行システムを踏襲するものですが、特に地域及び各国レベルでの活動に重点が置かれています。
- ミャンマー:強制労働の存在が問題になっているミャンマーについては、昨年任命されたILO連絡員の報告書をもとに話し合いが行われ、「はるかに期待外れ」な同国の強制労働撲滅取り組み状況に対し、今年6月の総会を有意義な行動計画合意に向けた最終期限とする最後通牒が出されました。
- 中東:イスラエル占領地における技術協力計画進展状況についての話し合いが行われ、援助国会議の開催が検討されました。また、事務局長と理事会役員は連名で、イラク戦争に関する声明を発行し、紛争が雇用に与える影響に対する戦略的な対応を中心に、復興過程で大きな役割を担うことを誓約しました。
- グローバル化:グローバル化の社会的側面作業部会は、グローバル化の潜在的な利益を阻むのは悪い統治との仮定から「グローバル化と統治、社会的パートナーシップ」に関する話し合いを開始しました。3月24日に特別ゲストとして出席した南アフリカのマニュエル大蔵大臣は「グローバル化の特に悪質な側面は、社会目標と経済目標のバランスを取るのは国家であるべきとの考えの価値を低下させたこと」と主張しました。
- 労働基準:1998年に採択された労働の基本的原則・権利宣言のフォローアップとして、結社の自由と団体交渉権、強制・児童労働の廃止、雇用における差別撤廃といったILOの中核的条約未批准国の年次報告をめぐる話し合いが行われ、これらの条約未批准国の技術協力要請に応える予算外資金協力を国際社会に呼びかけることとなりました。
条約勧告適用専門家委員に新たに中央大学法学部の横田洋三教授が任命されました。横田教授は、1991年から委員を務めていた山口俊夫東京大学名誉教授に交替する形で、今年から3年間委員会の審議に参加することになります。- 結社の自由:ベラルーシ、中国、コロンビア、エチオピア、グアテマラ、ベネズエラの結社の自由と労働組合の権利侵害についての深刻な状況を特に憂慮する結社の自由委員会の報告書が採択されました。
フアン・ソマビア現ILO事務局長の任期は来年3月で満了しますが、3月25日にILO理事会で行われた選挙の結果、同事務局長は再選され、2期目5年間の任期を務めることとなりました。
1999年にILO初の南半球出身(チリ)の事務局長として就任したソマビア事務局長のもとで、ILOは、各国、地域、全地球レベルで労働者の権利、雇用、企業創出、社会的保護、社会対話を推進するというディーセント・ワークの達成を21世紀の目標に掲げて活動しています。事務局長はこのディーセント・ワークを、人々の生活向上の中心にあるものとし、世界中から貧困を撲滅するためのカギとしています。再選後の演説で、事務局長は「全ての人のためのディーセント・ワークを基盤とした新たな社会契約、そして取り残される人が誰もないグローバル化に向けて共に働く」ことを誓いました。
4月7〜11日にジュネーブで開かれる商業における合併と買収の雇用効果に関する政労使三者構成の会議には、同名の英文報告書「The employment effects of mergers and acquisitions in commerce」が提出されます。報告書は、ほかの産業と違い、商業における事業統合は必ずしも雇用削減に結びついていないとします。ただし、中小企業を市場から締め出す悪影響があることも指摘します。
1999年までに商業における合併件数は年間2万4千件、規模は総額2兆3千億ドルに達しました。しかし、世界的な景気後退と株価下落の影響を受け、2000年初頭から合併の規模も件数も減り、2002年11月には2000年の頂点から大きく後退し、1997年レベルになっています。
統合や集中に続く一時解雇はみられるものの、商業部門の成長及び雇用創出の潜在力はほかの多くの産業よりも依然高く、例えば米国では小売業界の雇用者数は1997年に約2,190万人であったものが2002年3月には2,330万人に増加したと推計されます。
このように商業は世界中で最も急速に成長している産業の一つであり、最大の雇用創出源の一つになっているにもかかわらず、ほとんど全く市場の力だけで動かされている世界規模の社会秩序の新たな登場に対する不安を主な要因として、これに見合った労働・生活条件の向上は、必ずしも達成されていません。女性従業員数の割合が高く、転職率も高く、フルタイムの正規従業員以外の雇用関係にある労働者の割合も高いのが、この産業の特徴です。
報告書は、合併・買収の過程でみられる重要な問題は、自分たちの雇用と労働条件に影響する根本的な変化に関する情報を与えられ、相談を受けるという労働者の権利に関わるとし、法でこの権利が保障されている場合でも守られない場合が多いことを指摘し、オランダや北欧諸国など、情報提供と協議が合併後の労使協力を導く組織環境を形成した成功例を挙げています。
3月8日の国際女性の日を記念し、ILO本部では3月7日に、紛争と戦争を報道する女性ジャーナリストによる「危険な任務:紛争を取材する女性たち」をテーマとするパネル・ディスカッションが行われました。
出席者は、の4名の女性ジャーナリストです。
- 湾岸戦争からボスニアまで数々の国際紛争を取材し、賞を受けたBBC主任海外特派員ケート・アディー
- 1995年のクーデター疑惑報道によって終身刑に処せられ、3年間を獄中で過ごし、数々の報道自由賞を受賞したナイジェリアのクリスティーヌ・アニャンウ
- アシャルク・アルアウサト紙ロンドン本社唯一の女性記者として、バグダッド取材を初め、アルジェリア各地の紛争の現場を取材し続けている海外部論説委員ナディア・メーディド
- 衛星中継で参加したバグダッド取材中のCNNのリム・ブラヒーミ
紛争報道における女性と男性の視点は異なるとして、アディー氏は「男の子はおもちゃが好きだけど、女性は社会がどのように紛争に対処し、再建を試みているかといったより幅広い問題」を探すとします。アニャンウ氏は、社会における女性の闘争に関する幅広い話を探す姿勢は平時にも求められるとし、女性の声を伝える場としてラジオ局を設立する計画があることを発表しました。メーディド氏も女性が伝える紛争記事はしばしば戦争そのものを越え、社会における女性の役割認識の衝突から情報戦争や女性に対する暴力など、幅広い題材が取り上げられているとします。紛争や危険な状況の報道でも日常の報道でも女性のレポーターはしばしば他の女性の権利のために活動しているとの点で出席者は合意しました。
バグダッドから参加したブラヒーミ氏は女性を中心に現地では緊張が高まっているとし、気落ちした女性たちが慰めの手段として宗教に向かっているとのレポートを行いました。
ソマビアILO事務局長は、ジャーナリズムにおける女性の進出の歴史に触れ、「女性は世界中で職場を変貌させ続けている」としながらも、このような「機会拡大にもかかわらず、依然ガラスの天井が残り、賃金格差が現実のものとなっている」と問題を指摘しました。
3月6〜28日の日程で、ジュネーブの本部で開かれている第286回ILO理事会の主な議題は以下の通りです。
- 事務局長選挙:フアン・ソマビア現事務局長の最初の5年間の任期満了(2004年3月)に先立ち、3月25日に選挙が行われます。既に立候補の届出は締め切られており、立候補者は現事務局長のみとなっています。
- 事業計画・予算:実質ゼロ成長の4億3,404万ドルの2004/05年度予算が審議されます。予算案は、「生産的で報われる雇用、適切な労働者保護及び社会的保護、仕事に関わる基本的な原則と権利の十分な尊重、開放経済の枠組みの中における真の社会対話の統一のとれた組み合わせ」を通じてディーセント・ワークを達成することをめざしたものとなっています。理事会での審議を経て、事業計画・予算案は今年6月に開かれる総会に提出されます。
- 労働の基本的原則・権利宣言:1998年に採択された労働の基本的原則・権利宣言に基づく基本条約未批准国の年次報告が提出され、検討されます。
- グローバル化の社会的側面作業部会:「統治、社会的パートナーシップ、グローバル化」の初の討議が行われ、11月の理事会に提出される報告書の内容が確定されます。また、特別ゲストとしてマヌエル南アフリカ財務大臣が出席し、3月24日に演説を行います。
- その他:労組活動家に対する暴力の広がりに関するコロンビアの報告、ILOヤンゴン連絡員によるミャンマーの強制労働撤廃努力に関する報告、パレスチナにおける技術協力計画の進展状況報告、輸出加工区における雇用・社会政策報告などが検討されます。
ILOは3月8日の国際女性の日を祝し、ジュネーブの本部で3月7日に、紛争と戦争を報道する女性ジャーナリストの話を伺う機会を設けます。
マスコミで働く女性は珍しくなくなりましたが、依然、女性であるがゆえの困難・差別に直面する場合も多いと言われています。ILO本部では3月7日に「危険な任務:紛争を取材する女性たち」と題し、紛争や戦争を取材して、数々の賞を受賞した4人の女性ジャーナリストを迎え、戦争や紛争がジャーナリストのみならず女性全般にもたらす特別の問題を語ってもらう機会を設けます。
出席者は、
- 20年以上にわたり紛争の現場を取材し、昨年「The Kindness of Strangers」を著した英国BBC放送主任海外特派員ケート・アディー
- 1995年のクーデター疑惑報道によって終身刑に処せられ、3年後に当時の大統領の死後釈放され、世界報道の自由賞を初め数々の報道自由賞を受賞したナイジェリアのクリスティーヌ・アニャンウ
- 1999年にカルギル戦争を前線で取材し、最優秀女性ジャーナリスト賞を初め、数々の賞を受賞したインドNDTVのシニア・エディターバルクナ・ダット
- 「アシャラク・アルアウサト」紙ロンドン本社唯一の女性記者として、バグダッド取材を初め、アルジェリア各地の紛争の現場を取材し続けている海外部論説委員ナディア・メーディドの各氏です。
ILOはマルタ政府と共催で、2月28日、3月1日の両日、同国バレッタにおいて欧州連合(EU)加盟候補国の社会対話と労働法制改革に関する政府、労使代表の三者構成によるハイレベル会合を開催しています。
2日間の会議には、EU加盟候補国であるブルガリア、チェコ、キプロス、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、トルコ13カ国の政府及び労使団体ハイレベル代表が参加し、拡大EU加盟に備え、経済的・社会的課題に対処する新たな方策の探求に向けて話し合いを行います。具体的には、全国レベルでの最新の社会対話の状況評価を行い、労働法制改革の分野を中心に、13候補国が直面している社会・経済面の課題対処に寄与する上での社会対話の潜在力をさらに探求するための新たな刺激の提供をめざしたものとなっています。
加盟候補国の経済・社会情勢は依然満足できるものとは言えませんが、最近、元気づけられる兆候も見られます。1995〜2000年の平均経済成長率は4.7%(EU平均2.7%)に達し、中・東欧10カ国では同期間の工業部門の労働生産性は年平均5.9%で成長し、実質賃金もEUレベルからはまだ非常に低いものの(2000年における製造業の平均実質賃金は1時間当たり約3ドルとドイツの水準の1割未満)、年3.9%の持続的な伸びを示しています。一方、失業率はブルガリア等6カ国では平均10%超と依然高く、1年を超える長期失業者の割合も中・東欧10カ国では失業者全体の48.3%に達しています(2000年)。
タバコ産業に従事する労働者の数は近年あまり変動せず、世界全体で約1億人となっています。ジュネーブのILO本部では2月24〜28日に、タバコ産業における雇用の将来をテーマに、政府、労使代表の三者構成による国際会議を開催します。今回初めて開かれるタバコの生産、製造、流通に従事する労働者の将来についての会議では、この安定または減少しつつある産業の雇用状況、貧しい女性や子どもを含む数百万人におよぶ未組織のインフォーマル・セクター労働者の不確実な未来に関する話し合いが行われます。さらに、タバコ産業における現在の展開が雇用水準や労働条件に与えるマイナスの影響を緩和するための措置、このような影響を阻止するためにILO、各国政府、労使団体が取り得る行動、社会対話の役割に関する検討も行われます。
討議資料として準備された報告書「Employment trends in the tobacco sector: Challenges and prospects(英文)」は、タバコの製造、栽培、加工、手巻きタバコ等の家内生産、流通、販売、宣伝、嫌煙団体などタバコに関わる産業に従事する約1億人の労働者のうち、約9割が途上国に生活するとし、生産国は総数約120カ国におよぶものの、年間約600万トンの生産量の約7割をブラジル、中国、インド、インドネシア、米国、ジンバブエの6カ国が占めるとします。最近5年間の雇用水準はおおむね不動ですが、先進国では30年前から次第に減少しており、例えば1998年の労働者数は1990年の75%減であるものの生産量は3%増加した英国のように、タバコ製造にたずさわる労働者数がほとんどなくなる新しい時代に向かっているとします。
報告書はまた、主として懸念されるのは少数民族、女性労働者、貧しい農民など、タバコ栽培にたずさわる弱い人々だとし、タバコ製造業の労働者は世界中どこでも高賃金の産業に数えられるものの、途上国及び一部移行経済諸国のタバコ栽培農民は製品の高付加価値からの恩恵を受けているとは言えず、未組織で、賃金や労働条件を交渉する手段も用いられないとします。
2001年11月のILO理事会の決定に基づき、2002年2月に設置されたグローバル化の社会的側面世界委員会は、貧困と不安を減らし、全ての人々のための機会が増すようなグローバル化モデルに関する合意の形成をめざし、幅広い情報収集、意見交換を通じ、グローバル化の社会的側面に関する詳細な分析、この分析がディーセント・ワーク(権利が保護され、十分な収入を生み、適切な社会的保護が与えられた、生産的で働きがいのある仕事)、貧困緩和、開発に対してもつ意味を盛り込んだ報告書を作成することになっています。
委員会は2月16〜18日の日程でジュネーブのILO本部で第4回の会合をもっていますが、今回の会合では、昨年各地で開かれた多数の地域対話、国内対話、地域ネットワークの成果を吟味し、今年末に発表される予定の最終報告の草案を検討することになっています。
委員会はフィンランドとタンザニアの大統領を共同委員長とし、委員にはマトビエンコ・ロシア副首相、ヘルフケンス・オランダ開発協力大臣、アマト前イタリア首相、スティグリッツ・ノーベル経済学者、サンギネッティ元ウルグアイ大統領、スウィーニー・アメリカ労働総同盟・産業別労働組合会議(AFL−CIO)会長、ペリゴ国際使用者連盟(IOE)会長、西室泰三東芝会長、ILO事務局長、理事会三役といった、政財界代表、学識者、労使代表、社会問題専門家などそうそうたるメンバーから構成されています。
ILOは児童労働レッドカード・キャンペーンという児童労働啓発キャンペーンを行っていますが、去る2月10日、国際サッカー連盟(FIFA)のジョゼフ・S・ブラッター会長はチューリッヒの本部で、FIFAがこのキャンペーンへ協力していくことを発表しました。今後、世界のサッカー界はILOとその加盟国政労使などと力を合わせ、児童労働に関する国際的な認識を高め、スポーツ用品製造その他の産業における児童労働問題に取り組んでいくことになります。
ILOとFIFAの具体的な協力内容には、次のようなものがあります。
ILOが1992年に開始した児童労働廃絶国際計画(IPEC)は、現在、26の国・組織の資金協力を得て、世界75カ国でさまざまな活動を展開しています。
- 協力組織のキャンペーン参加に向けた共通戦略の構築と実施
- スポーツ用品製造その他の産業における児童労働廃絶をめざした活動計画の調整と強化
- 世界各国のサッカー連盟、サッカーチームによるILOレッドカード・キャンペーン採用に向けた働きかけを通じたキャンペーンの影響力と認知度の向上
- スポーツ関連の製品またはサービスにおける児童労働利用の撲滅という総合目標を掲げる各種運動の影響評価の助けとなり、新たな運動に向けた共通の地歩を探求するため、あらゆる関係当事者の結束を図ること。
ILOは1月28日に、「ホテル・観光業に対する2001/02年危機の影響(英文・The impact of the 2001-2002 crisis on the hotel and tourism industry)」と題する新刊書をインターネット上で発表しました。
報告書は、政治不安、世界的景気低迷、旅行者の不安感の増大によって、観光関連業界では、2001年から2002年にかけて、世界全体で約660万人(当該産業就業者12人に1人)の人員削減が行われ、2005年以前に状況が回復する見込みはほとんどないとします。
2001年初めから既に全般的な景気後退の影響を受けていたホテル・観光業界ですが、9月11日のテロ事件の打撃で、2001年の産業成長率は−1〜−5%とマイナス領域に転じ、国際観光収入は5.1%、外国人観光客数は0.6%の減少を示しました。影響が最も激しかったのは中東及び北米で、特に米国への外国人観光客数は前年比平均30%超の大幅な減少が見られました。わずかに好調だったのは、近隣諸国からの観光客数が伸びた南欧諸国や中国などで、特に中国はかなりの伸びを示し、年間観光収入は最近、平均12.7%で伸びています。
ILOでは、今年5月にバンコクでアジア太平洋地域の観光業界における雇用問題を話し合う政労使三者構成の地域会議を開催する予定です。
ジュネーブのILO本部では1月27〜31日の日程で、警察、救急医療、消防といった救急・緊急公務部門の、環境変化の中における社会対話に関する合同会議が開催されています。この部門の雇用事情が検討されるのは、1990年の消防職員に関する会議以来ですが、会議に提出されている討議資料は、救急・緊急部門公務員の労働条件の悪化を警告します。
犯罪・事故発生率の上昇、偽の通報やテロ行為の影響で、救急・緊急部門公務員の負担は増加しており、報告書は例えば、ニュージーランドの消防隊の出動率は2年間で約30%増加したとします。長時間労働、人員減、スト権を含む労働基本権の欠如といった状況も見られます。例えば、米国の消防士の平均労働時間は週50時間以上、日本の消防士の労働時間は週40時間とされていますが、実際には休憩時間を含み60時間勤務しています。警察官の自殺率は高く、例えば米国では自殺が警察官の死亡原因の13.8%を占めています。
このような厳しい状況に直面している救急・緊急部門の公務員ですが、多くの国で労働基本権が制約されており、報告書は適正、中立かつ迅速な調停・仲裁手続きなど、このような労働者の利益を擁護するための許容可能な代替策を列挙します。
会議では、救急・緊急部門公務員の労働条件、安全衛生、人的資源計画、調整体制、社会対話の現状、労働に係わる権利の動向を吟味すると共に、これらの問題、特にこれらの労働者の健康、権利、利益を擁護する最善の慣行に関するガイドラインの策定に向けて話し合いが行われる予定です。
ILOは1月24日(金)に発表した新刊書「世界の雇用情勢(Global Employment Trends・英文)」で、2001年春のICT(情報通信技術)バブル崩壊後まもなく、失業率は上がり始め、2年間にわたる景気低迷を経て、雇用情勢は全世界的に悪化し、世界全体の失業者総数は2002年末に初めて1億8,000万人(2000年比2,000万人増)に達すると推計します。そして、経済回復の見通しが不確実な現状では、2003年になってもこの傾向は改善しそうもないとします。特に1日1ドル以下で生活している貧しい労働者の数は、一時減少の兆しを示していたものの5億5,000万人と1998年の水準に戻り、2015年までに極端な貧困人口を半減させるとの国連の目標を達成するには、少なくとも今後10年で10億人の新規雇用を創出する必要があるとします。また、失業者に計上されているのは、主に何らかの社会的保護の対象となっている無職の人々ですが、ここから外れているインフォーマル経済で働く人々の状況の悪化も一層懸念されるとILOのソマビア事務局長は憂慮します。
先進国の低成長は、衣料産業のような輸出志向型の労働集約産業を中心に、途上国の雇用喪失をもたらし、投資家マインドの冷え込みは、例えば2002年の失業率が20%を超え、近隣諸国へも波及したアルゼンチンのように、幾つかの国で金融面の弱さとそれに続く経済危機による多くの失業者を生み出しました。コロンビア、ネパール、イスラエル、パレスチナなど、武力紛争と暴力は失業者と貧困人口の増加をもたらしました。
地域的には、中南米・カリブ諸国の状況が最も悪く、新規労働力の減少にも係わらず失業率は10%近くに達し、特に若者の失業率は2001年に16%(1997年12%)となっています。先進国ではイタリアとニュージーランドを除き、雇用の伸びは低下し、失業率は2002年に6.9%(2000年6.1%)に上昇しました。北米の失業率は急速に上昇し、2002年にアメリカ5.6%(2001年4.8%)、カナダ7.6%(同7.2%)になると予測されます。アジアはICTバブル崩壊の影響が最も激しく、アジア金融危機から回復しかかっていた東南アジアの失業率は2002年に6.5%(2000年6%)になると予測されます。東アジアでも生産の伸びは鈍化し、失業率も2002年は4%(2000年3.2%)と見込まれます。中国都市部の公式失業率は3.6%ですが、最新の推計では7.5%になっています。南アジアは世界景気低迷の影響をあまり受けなかったものの治安上の問題、天候不順などで、2002年の失業率は3.4%(1995年2.9%)になると見込まれます。サハラ以南アフリカ諸国はかなり持続的な経済成長を示していますが、2002年の失業率は14.4%(2000年13.7%)、あるいは食糧危機の影響による更なる悪化が見込まれ、頭脳流出やHIV/エイズの影響による人材の損失が問題になっています。中東・北アフリカ諸国では、2000年に6%を超えたGDP成長率が2001年に1.5%と大幅な低下を示し、公共部門におけるリストラの増加は、幾つかの国で失業率を2桁台に押し上げました。移行経済諸国の失業率も一時低下した後、再び上昇を始め、2002年には13.5%と2000年のレベルに戻ることが見込まれます。
2010年までにアジアが世界の労働力人口の6割近くを占めることになり(中国だけで全体の4分の1)、先進国及び移行経済諸国が占める割合はおおよそ5分の1に低下します。従って、今後、アジアとサハラ以南アフリカで多くの雇用が創出される必要があります。
高失業率と貧困人口の増加は政府の予算目標を厳しく圧迫します。経済回復を確保・拡大し、成長率の伸びが確実に、まともな雇用の機会を最大限に増やし、失業・貧困人口を減らし、雇用成長を回復するような施策を講じる必要があります。それには、◇経済成長を活性化させ、雇用集約的な投資を刺激する財政その他の措置を含む「仕事対策」、◇途上国及び社会の最貧困層の外部ショックに対する抵抗力の増強に焦点を当てた政策、◇男女が自由、安心、人間的尊厳といった条件のもとで、生産的で人間的な仕事を確保するのを支援する「貧困対策」が必要と報告書は記します。
ソマビアILO事務局長は、去る10月2〜3日に開かれた日本労働組合総連合会(連合)の第8回定期大会に際し、ILOの児童労働活動への連合の支援に対する感謝などを内容とするメッセージを送りました。また、6月のILO総会で、笹森連合会長が、民主的な手段と三者による社会対話を通じ、違いを乗り越え、解決策を見いだすことの重要性について演説されたことを挙げ、連合と日本がこのプロセスのモデルとなることに期待を表明しました。メッセージの原文はこちらをご覧ください。
去る9月25日(木)、勤労青少年シンボルマーク後援会の青井恒助代表(写真右から二人目)より、勤労青少年シンボルマークの旗を寄贈いただきました。これは1972年に日本政府が一般公募を行って制定したマークであり、応募点数6,517点の中から選ばれた豊川市の八木幸男さんの作品です。work(働く)、word(話す)、world(世界)の頭文字であるWの文字をレタリングした形のブルーのマークは、丸くなった上端部分で人の頭を表すことによって連帯を示し、逆三角形の空間部分をしずくのようにデザインすることによって働く汗を表しているそうです。後援会は「誰にでも理解しやすいマークを通じて、国際交流、国際親善を広げることが世界平和につながる」として、このシンボルマークの普及を目指して設立されたものです。今回ILOには、国連を主軸とした対話の環境作りの一助にという趣旨で寄贈されました。
ILOは1999年の総会技術協力委員会の要請に応え、一貫性のある効率的な事業運営をめざし、地域機構の見直しに取り組んでいました。
この一環として、今年4月1日付で、世界各地の事務所が、(1)地域総局 - Regional offices(従来通り)、(2)従来の多角的専門家チーム(MDT)(地域事務所と合併したものもある)が、サブ地域事務所 - Subregional officesに、(3)従来の地域事務所、支局、連絡事務所が一括してILO国別事務所 - ILO officesへと、3形態の事務所網に再編成されました。東・中欧に置かれている通信員 - National correspondentsは従来通りです。詳細はこちら。
これに従い、ILO東京支局は国際労働機関(ILO)駐日事務所(英文名称ILO Office in Japan、略称:ILO-Tokyo)となりますので、ここにご案内申し上げます。新しい事務所の一覧はこちら。