◆上記の各費用・便益について
1.教育関連費用
学校新設費用、新たな教師の採用・訓練費用、教材の追加供給費用等がこれにあたる。当研究では、全ての子どもが教育を受けられるようにする費用及び、質の向上の観点から1クラスの人数を適正なものにするためにかかる費用を推定した。2015年までに全ての子どもに初等教育が提供され、2020年までに全ての子どもに中等教育が提供されることを目標としており、これは「2015年までに万人のための初等教育を」というミレニアム開発目標に沿ったものである。世界中で全ての子どもが小・中学校に実際に出席出来るようにする為にかかる費用は4930億ドルである。
2. 所得移転計画の運営費用
子どもの授業出席と連動させた、低所得世帯向け所得移転計画を運営するのにかかる費用であり、実際に移転される所得は含まれない。貧しい家庭に移転された所得の5%と推定している。
3. 直接介入費用
直接介入とは、最悪の形態の児童労働に関わっているか、社会的疎外が理由で働いている又は学校に通っていない子ども(ex.
低カースト層)を対象に行うものである。このような介入を必要としている子どもの数に、過去にこの分野で行われてきた事業でかかった単位費用(一人の子どもあたりの費用)を掛けることで計算している。
4. 機会費用
各家庭が、子どもが働いていた場合と比べ失う収入がこれにあたる。各家庭は収入を失う代わりに、貧しい場合は所得移転計画の恩恵を受けられる。ILOは、子どもの収入を大人の20%として試算している。子どもが働かないことで得られない収入の総計は移転により得られる収入の総計を上回るが、それは所得移転計画の対象になる程は貧しくないが子どもを働かせている家庭が多いからである。
5.教育による便益
教育を受けたことによる生産性・収入を得る能力の向上から得られる便益がこれにあたる。一年通学期間が延びるごとに将来の年収が11%増えるという一般に用いられている評価に基づいて試算している。ただし、これをより低く、例えば5%として見積もったとしても尚、便益は2.3兆ドルとなり費用を大幅に上回る。
6.健康面での便益
最悪の形態の児童労働撤廃による病気・怪我の減少から得られる便益がこれにあたる。健康面での経済的便益の計算は、危険な児童労働の撤廃から得られる健康面の便益と、他の健康上の危険をなくすことで得られる健康面の便益とを比較することで行った。指標としては、WHO(世界保健機関)のDALY(障害調整生存年数)を用いている。DALYは、早死による生命損失年数と障害による相当損失年数の和によって求められる。 |