◆行動への呼びかけ
世界中で、非常に多くの子ども、特に少女が家事労働に従事しています。子どもの家事労働に関する問題は文化的に繊細で複雑な問題です。その根本原因、兆候、そして、子どもと家族、社会に対する影響について、同時に取り組む必要があります。従って、これを緊急問題として行動を起こし協力するよう国内・国際社会に呼びかけることが必須です。行動は以下の分野においてとられる必要があります。
・ 意識向上、予防、児童労働をやめさせること、社会復帰、リハビリ。
・ 特に少女について、教育と訓練の推進。
・ 子ども家事使用人の搾取及びその他の「最悪の形態の児童労働」に立ち向かうための、期限付き手段・プログラム・計画の策定、そして特定の目標・期限の設定。このイニシアチブと国家の開発努力−特に貧困削減戦略と良質の教育・技術訓練・仕事創出の供給―との連携。
・ 子ども家事使用人の搾取及びその他の「最悪の形態の児童労働」に立ち向かい、子どもの権利を国際アジェンダとし続けるための行動への国際的な支援を結集。
子ども家事使用人とILO
◆ILOの政策枠組み
ILOは、特に労働世界における基本的人権を提唱し監督することによって世界の平和の基礎としての社会正義を推進するために設立されました。ILOは労働基準関係の仕事において、負債を負わされた労働と奴隷に等しい慣行に関連して家事使用人の問題を扱ってきました。
ILOは長年、「ある者が処罰の脅威の下に強要され、したがって自分から任意に申し出たわけではない一切の労務」の廃止を目指す強制労働条約(第29号)を通して(子ども)家事使用人のいくつかの状況に取り組んできました。第138号条約(1973年)は就業が認められる最低年令を15才と定めています。しかし、子どもの家事労働(CDL)は最低年令を定めた国内法令の見地からも、容認できる例外と見なされがちです。1999年以来、最悪の形態の児童労働条約(第182号条約)は子どもの家事労働の条件をより明確にしました。
既に130ヶ国以上に批准されている第182号条約は、子どもの家事労働そのものをはっきりと「最悪の形態の児童労働」とは定めていないものの、子どもの家事労働に適用されるいくつもの重要な条項を含んでいます。しかし、奴隷のような慣行、人身売買、借金を負わされた労働、そしてその他の強制労働が子どもの家事労働に関係して起こると直ちに、それは当然に「最悪の形態の児童労働」となります。(第182号条約3条(a))加えて、「最悪の形態の児童労働」として緊急に取り組む必要がある危険な業務(第182号条約3条(d)、4条)を決定する際、政府は第190号勧告第3段落に列挙されている要素を考慮に入れなければいけません。当段落は、子どもの家事労働に関連するいくつかの要素を正確に指摘しています。すなわち、子どもを肉体的、精神的、性的虐待にさらす業務、長時間又は夜間の業務、雇い主の家の中に理由なく閉じ込められる業務などです。
第182号条約を批准した国はすべて、子どもの家事労働に関連して起こっている「最悪の形態の児童労働」を認識し、これらの子どもたちの権利が保護されるよう注意する責任があります。ILO第190号勧告第2段落(c)
(iii) は、少女を特に危険にさらす隠れた場所での業務にも特別な注意を喚起しています。さらに、タンザニア、ネパール、フィリピンなどの期限付きプログラムを始めた国を含むより多くの国家が子どもの家事労働を「最悪の形態の児童労働」に含め、これに反対する強硬な姿勢をとっています。
最悪の形態の児童労働条約(第182号、1999年)
第1条は「この条約を批准する加盟国は、緊急に処理を要する事項として、最悪の形態の児童労働禁止及び撤廃を確保するため即時のかつ効果的な措置をとる」と明記しています。
子どもの家事労働は、以下の条項に定められている最悪の形態の児童労働に特に関わりがあります。すなわち、第3条(a)「児童の売買及び取引、負債による奴隷及び農奴、強制労働などのあらゆる形態の奴隷制度又はこれに類する慣行」、第3条(d)「児童の健康、安全若しくは道徳を害するおそれのある性質を有する業務又はそのようなおそれのある状況下で行われる業務」です。
第4条1項は、「関係のある使用者団体及び労働者団体と協議した上で、関連の国際基準、特に1999年の最悪の形態の児童労働勧告3及び4の規定を考慮し」第3条(d)に規定する業務のうち後者の種類を決定すべき、と各国に通告することで行動を求めています。
子どもの家事労働、他分野の児童労働の両方において、第182号条約は加盟国に対し最悪の形態の児童労働の存在を発見した場合は「政府機関、使用者団体、労働者団体と協議した上で、適当な場合には他の関係の有る集団の意見を考慮に入れて」これを優先的に撤廃するための行動計画を作成し実施することを求めています。 |
◆技術協力
ILO内部で、子ども家事使用人の搾取的状況に取り組む計画が主に児童労働撤廃国際計画(IPEC)を通して1992年以来実施されています。児童の権利に関する国連条約及びILO第138・182条約に基づき、IPECは子どもの家事労働の根本原因に取り組むことでその防止・撤廃を効果的に行おうとしています。他の国際機関との協力の下、IPECは子どもの家事労働に関する行動リサーチを行い、子どもの家事労働の防止、この問題に関する意識向上、政策提言、搾取的/虐待的状況におかれた子どもの救出・リハビリ・社会復帰における政府・使用者団体・労働者団体・市民団体の努力を支援しています。IPECは子ども家事使用人がさらされるかもしれない危険と搾取についての人々の意識を向上し、そのような状況に反対するよう世論を動員しようと努力しています。これにより、子ども家事使用人の搾取に反対する活動を社会全体が支持し、続けるようにするためです。
問題状況
◆英語圏アフリカ(東アフリカ)
東アフリカでは、子ども家事使用人(主に少女)は、貧困、HIV/AIDS感染、家庭崩壊が蔓延している一定の農村地域(これらは獲得地域として知られています)から集められ、又は人身売買されてくることも多いのです。HIV/AIDSが蔓延しているので、きょうだいを養うため自発的に学校をやめ子ども家事使用人になる孤児が大勢います。誰にも支援されていないこれらの子どもたちは、例外なく搾取・虐待を非常に受けやすいのです。驚いたことに、子どもの家事労働はそれ自体で危険があるのみならず、他のタイプの最悪の形態の児童労働(WFCL)とも明らかな関連性があることがリサーチにより分かりました2
。例えば、タンザニアにおける子どもの商業的性的搾取に関する緊急報告によれば、当報告においてインタビューした少女売春婦の25%が、売春する前は家事労働において搾取されていました。家事労働における耐え難い条件により、又は雇い主から追い出されたことで、家事労働をしていた大勢の少女たちは売春せざるをえなくなったようです。
◆フランス語圏アフリカ
子どもの家事労働はこの地域において普通に見られる現象であり、従事しているのはほとんどが少女です。仕事が人目に付かないという性質(子どもたちは別の場所に散り散りになっており、雇用契約も正式ではありません)を考えれば、その状況を正確に理解するのは困難です。しかし、ILO-IPECとUNICEFが行った調査により、子どもの家事労働についての貴重なデータが少し入手出来ました。セネガルについて言えば、1993年には女性の家事使用人は33000人(内、12000人が15才未満)3、ベナンでは1994年に家事使用人又は売り売り子として雇い主の監督下におかれている子ども(内、85%が少女)4
は10万人以上と推定されています5。
ここ数年の間に、幼い少女たちが地方から都市へ移り住む傾向が報告されています。この傾向は、以下の二つの主要因により説明できます。まず、地方における社会的・経済的環境の悪化、その結果としての貧困の深刻化により親は子どもを働きにやるようになっています。次に、都市では女性が家庭外で経済活動に従事するようになったため家事労働の需要が増加しています。これらの女性雇い主たちは、従順で安い賃金で働く15才未満の少女を家事使用人として雇うのを好むのです。
◆中米
中米及びドミニカ共和国では、約170000人6の子どもが家事労働に従事していると推定されています。これらの子どものほとんどは都市周辺地域か地方の貧しい大家族の出です。その87%は少女であり、多くが搾取的な経済条件の下働いています。多くの場合、子ども家事使用人が行う業務は彼らの肉体的・精神的・道徳的自由を損なうものであり、債務を負った労働や奴隷と同じような条件で働かされている者もいます。この現象は文化慣習に深く根ざしたものであるため、人々はこれを受け入れています。”Ninas
de crianza”(里子の少女)、”Ninas de casa”(家の少女) 、”criadas”(女中)は全てこの小地域の子ども家事使用人を表現す呼び方です。これらの呼び名は彼らの仕事をいくぶんおとしめ、子どもの家事労働を本当の「仕事」というよりは「手伝い」として人々に認識させてきました。
◆南米
南米における子ども家事使用人の大半は16才未満の少女です7。雇い主が少女を好み、親も娘を子ども家事使用人として働かせたがる理由は、ジェンダーによって役割を決定する文化的・伝統的価値観にあります。子どもの家事労働は社会的に容認され、普通に行われているため、子どもの家事労働が債務奴隷に近い場合があることはしばしば見過ごされています。子どもは雇い主の思うままに働き、「おしおき」として言葉上・肉体的・時には性的な虐待にさらされることもよくあります。その上いくつかの国では、少女の家事使用人は少年よりも家の内部に閉じ込められ、孤立し孤独感を味わうことも多いのです。個人の家の中では、正式の雇用関係に適用されうる労働基準は当てはまりません。結果として、子ども家事使用人は法的には保護されないままなのです。
◆ハイチ
子どもの家事労働は、ハイチ社会の文化的・伝統的構造に広がり深く根付いた現象であり、地方と都会の住民の関係の重要な一要素です。土地の浸食、過耕作、不毛等の問題に人口の多さが加わることで地方がどんどん貧しくなっていっているため、貧しい家庭は子どもを家事使用人(ハイチクレオール語で”restaveks”)として働きにやることが、教育の機会と十分な食事を得られるより良い生活条件を彼らに与えてやる唯一の選択肢と考えるのです。しかし、子どもを待ち受けている現実は親が望んでいたのとは全く違うことがしばしばあります。通常、”restaveks”は家族と全然連絡を取れなくなり、権利を認められず、無給で、教育・ヘルスケアも受けられません。それどころか、これらの子どもたちは限度なく働くことを要求されます。多くの場合、子どもたちは精神的・肉体的、そして性的に虐待を受けています。よって、ハイチにおける子どもの家事労働は非常に搾取的であり「最悪の形態の児童労働」の一つと見なされます。引用される”restaveks”の数は大体250000人〜500000人の間であり、その75%が少女です。又これは児童の全人口の約10%にあたると推定されています。この数字は問題の重大さをはっきりと示すものです。
◆アジア
多くのアジア諸国では、子ども家事使用人は自らの家で暮らしていたとした場合よりもいい暮らしをしている、と主張されます。実際、多数の雇い主はわが子以外の子どもを家におくことは、貧しい家庭を助ける慈善と考えています。ネパール8・インドネシア9
においては、雇い主、一般市民の両方からよせられた意見は、ほとんどの人が、家事使用人として働く子どもの業務は危険とも搾取的とも思っていないことを示しています。しかし、子どもの家事労働一般及び個々のケースの詳細についてより綿密に検討した結果、これらの子どもの大半が耐え難い条件の下暮らし、働いていることがはっきりと指摘されました。カトマンズでの調査のみに基づけば、53%が一切賃金を受け取っておらず、44.7%が長時間働き、79%が夜間労働をしています10。子どもの家事労働には奴隷に近い実質上の特徴が多々あり、それらの特徴により子どもの家事労働は最悪の形態の児童労働の一つ11と見なされます。これらの特徴の一つである監禁は、子どもの健全な情緒的・社会的発達を遅らせ、多大な情緒的・肉体的ストレスを与えます。子ども家事使用人の雇い主には、自分が仕事に出る時子どもを家に閉じ込め、たとえ非常事態が起こっても逃げることも外部と連絡を取ることも出来ない状態で家又はアパートに一日中子どもを留め置いたままにする者もいます12。
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