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ILO駐日事務所メールマガジン・トピック解説(2009年11月30日付第90号) |
ILO事務局内で労働安全衛生事項を担当している労働安全衛生・環境計画(SafeWork)の中には情報業務を専門的に扱っている部署が置かれています。今年で創設50周年を迎えるこの国際労働安全衛生情報センター(仏語名の略称でCIS)は、1)労働安全衛生に関する信頼のおける有意義な新しい情報を世界中から集め、2)利用しやすいようにその索引・要約を作成し、3)最もアクセスしやすい形で配布することを任務としています。
★半世紀の歩み
CISは、ILO、国際社会保障協会(ISSA)、欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)、欧州11ヵ国の労働安全衛生機関の共同イニシアチブによって、労働安全衛生に関する情報の収集と配布を目的とする機関として1959年に設置されました。
設立に至ったきっかけは二つあります。ILOの労働安全衛生部には1956年までに約3万点に及ぶ膨大な文献が満足のいく分類システムもないままに所蔵されていたこと、そして労働安全衛生関連文献の整理分類が世界各地でばらばらに進められていたことが挙げられます。そこでILO内部では1958年までに、ILOが音頭を取って整理分類作業を国際的に進めることへの合意ができ、まず欧州内の複数の安全衛生機関に接触し、労働安全衛生情報を収集・配布する最善の方法に関するアイデアを募ると同時に各国の労働安全衛生情報施設の蔵書目録の提供を依頼しました。
1959年4月にこれらの機関とISSA、ILOの代表が出席し、構想される情報センターの構造と活動を決める話し合いが行われ、この提案を受けて1959年5月に開かれたILO理事会の特別会合においてCISの創設が正式に承認され、活動に着手する予算が配分されました。その後、ECSCの追加資金協力や世界保健機関(WHO)の関与も得て、1959年7月1日にCISは正式に業務を開始しました。CISの予算の一部は常に理事会の直接承認を必要としてきたため、今でもCISの活動報告は隔年で理事会に提出されています。
◆活発な情報提供活動
CISは、あらゆる有用なデータを体系的に収集、吟味し、抄録を作成し、この分析結果を、関心のあるすべての人々に適切な形で提供することによって、あらゆる経済活動分野の労働者の健康、安全、福祉の促進に寄与することを目的としています。文献情報は最初、ファイリング可能な図書カードセットの形式で世界中の購読者に郵送されていました。CISは1963年から、新たに追加されたカードの内容を掲載した定期刊行物『Occupational safety and health abstracts(労働安全衛生抄録)』の発行を開始しました。これは1987年に『Safety and health at work - ILO/CIS Bulletin(労働安全衛生ILO/CIS速報)』と改名され、隔月で発行されていましたが、印刷版は2003年で廃止され、現在はCISのウェブサイト内でオンラインで公開されています。
初期の頃にはカードに加え、情報シートも発行しました。情報シートの発行は1962年から開始して1970年まで続き、ベルトその他の運搬装置用の安全装置、産業騒音、アスベスト・セメント屋根など、扱われた項目は20に及びました。
CISの活動はもっぱら二次的な情報の生成ですが、初期の頃は特にシンポジウムの開催も積極的に行いました。1962年にパリで開かれた最初のシンポジウムは電気事故の医療・技術的側面を扱い、その後も1967年にはプラハで機械設計の人間工学、トリノで携帯用及び可動式電動工具・電気用品の安全性、1968年にはローマで人間工学と環境要因、ボローニャでプレハブ建築物組立における安全性の各テーマを扱ったシンポジウムが開かれました。
◆真っ先にコンピュータ化に着手
CISのカード・コレクションは1973年で約2万5,000点と、70年代初頭にもはや手で管理できるレベルを超えたため、CISは1973年に早くもコンピュータ化に乗り出し、その後、現在に至るまで英仏2カ国語で質の高いデータベースを維持しています。CISのコンピュータ・データベースCISDOCは1974年に運用が開始され、1983年までに2万1,000点の抄録が電子化されました。CISで採用された検索・索引・分類用キーワード集は『CIS thesaurus(CISシソーラス)』として発表され、世界各地の専門図書館で利用されているだけでなく、労働安全衛生用語集としても活用されています。
◆活動の幅の拡充
CISはまた、ILOの他の部局と協力し、1980年の国際化学物質安全性計画(IPCS)の創設にも関与しました。WHOと協力して運営されているこの事業計画は、これまでに約2,000枚の化学物質の安全性に関するカードを18カ国語で発表しています。CISはIPCSの年次会合に参加し、IPCSのカードの配布に用いられているコンピュータ基盤構造の開発と維持において主要な役割を演じてきました。
80年代にはまた、途上国のニーズを満足することがますます緊急の課題となり、アジア太平洋を中心にCISセンター(後述)の数が飛躍的に増大し、アフリカとアジア太平洋の二つの地域について、地域固有の問題に特化した広報紙の定期的な発行が始まりました。
1984年にはそれまで受けていた国内センターからの資金協力が途絶え、1986年にはCISDOCがILOで初めてCD−ROM化されたデータベースとなりました。
CISは1992年に開かれた国連環境開発会議に参加し、ここで採択された包括的な行動計画「アジェンダ21」は後に「化学品の分類および表示に関する世界調和システム(GPS)」の策定につながりましたが、CISはGPSにも積極的に参加しました。
1930年代に初版が発行され、その後4回にわたって改訂されてきた『ILO encyclopaedia of occupational health and safety(ILO産業安全保健エンサイクロペディア)』は、労働安全衛生分野の膨大な知識を集大成した参考図書ですが、CISは1992年からこの改訂作業を担当することとなり、1998年に第4版が刊行されました。エンサイクロペディアは2004年からインターネット上で無料で公開されており、CISでは現在、この一部改訂作業を進めています。
フィンランド政府の支援を受けて1980年代に始まったアフリカとアジアにおける労働安全衛生に関する情報管理能力向上に向けた技術協力プロジェクトは2004年に終了しました。同年、CISはILO労働条件部及び部門別活動局と協力し、日本の協力を得て東南アジアでILOが開発に成功した労働・生活条件改善法の世界的な適用の可能性を試す試みに加わりました。近隣開発における作業改善(WIND)と呼ばれるこの手法は、農村の人々が自宅や職場の危害要因や欠陥を自ら見つけ出し、適切な対策を講じる能力を育成するものです。
CISは2010/11年の予算案で、可能な限り無料でインターネットその他の電子的な手段を用いた情報配布活動を増やしつつ、労働安全衛生に関する情報提供における世界のリーダーとしての地位の強化を図っていくという目標を掲げています。
★世界各地の労働安全衛生情報機関を結ぶネットワーク
CISの活動は世界各地に所在する150以上の国内センター(National Centre)、地域センター(Regional Centre)、協力センター(Collaborating Center)の協力を得て進められています。これらのCISセンターはほとんどが労働事項を直接担当する政府機関ですが、労使団体や独立した研究所の場合もあります。センターはそれぞれの国で発行されている関連する文献を収集し、ILOに送付することによって情報の処理及び配布に寄与しているだけでなく、文書の抄録を作成したり、CISやILOの他の部局の出版物の宣伝広報、これらの出版物の翻訳、労働安全衛生の分野における多言語辞書の編纂協力も行い、労働安全衛生情報の普及における最新情報技術の活用に向けた共同の取り組みに参加しています。
通常、1国に一つの国内センターが置かれていますが、言語や地理、人口上の理由から、あるいは労働安全衛生の担当責任が広く分散している場合には一つまたは複数の協力センターが置かれています。地域センターとは、CISと目的を同じくする地域レベルの政府間機関です。
CISの創設につながった準備作業の過程で接触した機関の多くがそのまま最初の国内センターとなりました。1959年の創設時の国内センターは、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、スイス、英国の11ヵ国の労働監督局など労働安全衛生を担当する機関で構成されていました。1960年までにオーストラリア、インド、イスラエル、ポーランド、米国など4大陸23のセンターが設置されました。日本の国内センターは1960年から中央労働災害防止協会が務めています。1962年にコロンビアとウルグアイの参加により南米がネットワークに加わり、アフリカも1972年にエジプトの参加によって加わりました。
国内センターの数は1973年までに34に達し、その後も増加を続け、今では160に届かんとしています。
CISセンターは次第にそれぞれの国において、他の国の労働安全衛生関連情報のフォーカル・ポイントとして機能するようになり、ますます緊密なネットワーク体制が築かれています。CISセンターは毎年、情報交換や交流のための年次会合を開いています。3年おきに開かれる世界労働安全衛生会議もこの年次会合の場となっています。去る10月22〜23日にジュネーブのILO本部で開かれた今年の年次会合の際には、初めてWHOの労働安全協力センター・ネットワークとの合同会議が開かれたほか、50周年記念行事が催され、この半世紀の歩みを振り返りました。
★CISから提供されている情報
CISは常に技術革新の最先端を行き、1994年にはILO全体に先駆けてウェブページを設け、保有情報の公開を開始しました。現在、CISのウェブサイトでは以下のような情報が入手できます。
◆CISDOC
CISの文献データベースCISDOCには、労働災害や職業病、その予防について扱った文献情報約7万件が記録されています。収集されている文献の対象には、法規、化学物質安全性データシート、訓練教材、定期刊行物の記事、書籍、規格が含まれ、一つ一つの記録は詳細な文献情報、抄録、CISシソーラスに基づく索引記述子で構成されています。
英仏西3カ国語構成のCISシソーラスは約1万5,000のキーワードを含み、オンライン版のほかに印刷物(1999年)、CD−ROM版(2001年)でも提供されています。シソーラスを発展させた労働安全衛生用語集も有料印刷物として刊行されています。用語集は項目数こそ約2,600と少ないものの、英仏西語に加え、独露語も含む5カ国語構成となっています。
CISDOCは随時更新され、毎年約1,500件の記録が新たに追加されています。新しく追加された記録は原則隔月で出されるオンライン版の『ILO-CIS Bulletin』で確認できます。また、筋骨格障害、安全で健康的な職場、鳥インフルエンザからの労働者の保護、HIV(エイズウイルス)/エイズ、海事産業の労働安全衛生といった特定のテーマについて、関連する情報をまとめたページも作成されています。
CISDOCは英仏2カ国語版ですが、現在スペイン語への翻訳が進められており、既に2万1,000件以上が3カ国語版になっています。
CISではまた、2002年から受け入れ図書の一覧をウェブサイト上で公開し、オンライン版が得られる限り、その入手先をリンクで表示しています。
◆SafeWork Bookshelf(労働安全衛生・環境計画の本棚)
ILOがその全体または一部の作成に携わった労働安全衛生分野の主要文書の英仏2カ国語コレクション。CD−ROM版もあります。
SafeWork Bookshelfは以下の四つで構成されています。
1.ILO encyclopaedia of occupational health and safety(ILO産業安全保健エンサイクロペディア)
この初版は1930年から4年間かけて『Occupation and health: Encyclopaedia of hygiene, pathology and social welfare(職業と健康:衛生、病理学、社会福祉百科事典)』の題名で発行されました。その後、1971、83年と2回の改訂を経て、1998年に最新の第4版が65ヵ国2,000人近い専門家の協力を得て完成しました。収録事項は1,000件を超え、1,000点を超える図版が挿入され、数千点に及ぶ参考文献が列挙されています。ILOから出されている英語版とフランス語版のほかに、第4版は外部機関の協力を得てスペイン語版、中国語版、韓国語版、ロシア語版などが発行されています。日本語版も労働科学研究所監訳で労働調査会から出されています。
第4版は以下の4巻構成になっており、オンライン版もその構成に沿っています。
2.国際化学物質安全性カード(ICSC)
IPCSの事業である国際化学物質安全性カードは、化学物質について、その安全な利用を促進するために、健康と安全に係わる必要不可欠な情報を提供しています。特定の化学物質に内在する危害要因や救急・消火措置に関する情報、こぼした場合や、処分、保管、包装、ラベル表示、運搬を行う際の注意事項がまとめられています。カードは工場、農業、建設、その他の作業現場で実際に作業をする労働者や使用者に利用されることをめざして作成されています。各国のIPCS参加機関の科学者のグループが執筆し、相互に検閲しています。カードは法的効力があるものではなく、必ずしも各国の法制の詳細を反映していません。
ICSCは英語で書かれていますが、各国の機関の協力によって多数の言語に翻訳されています。日本語版は国立医薬品食品衛生研究所が作成しています。
3.労働安全衛生分野のILO条約・勧告
2006年の職業上の安全及び健康促進枠組条約(第187号)、1986年の石綿条約(第162号)など、この分野には現在、31の条約、三つの議定書、25の勧告(撤回1)があります。
4.ILO実務規程
政労使の専門家会合で策定されるILO実務規程(Codes of Practice)とは、法的拘束力がある文書ではなく、実務的なガイドラインとして用いてもらうことを意図したものです。HIV/エイズと働く世界、職場の環境要因、労働安全衛生マネジメントシステム、労働者個人情報の保護、建設業の安全衛生など20以上の実務規程がオンラインで提供されています。
◆労働安全衛生法律条文データベース(LEGOSH)
約140の国及び国際機関の3,500以上の労働安全衛生関連の法規及び国際法文書を集めた英文データベース。1973年以降のCISDOC内の法令情報が掲載され、インターネット上で得られる限り、本文へもリンクしています。
◆International hazard datasheets on occupations(国際職業別ハザードデータシート)
産業医や労働監督官などの専門家向けに特定の職業に関連した危害要因とその予防方法について、ICSCと同じように、標準化した形で情報を記した英文データシート。ILOが欧州連合(EU)及びCISセンター・ネットワークと協力して作成しています。現在、看護師、消防士、運転手など、70余りの職業について情報が集められています。
◆Chemical exposure limits(化学物質暴露限界)
米国の限界閾値(TLV)のように、多くの国でガスや蒸気、粒子といった空中浮遊物質に対する職業性暴露を制限する法規定や推奨値が存在します。CISはこのような暴露限界の設定・公表を担当する機関の情報をウェブサイトに掲載し、暴露限界値がインターネット上で公表されている場合はその情報へのリンクも設けています。
◆Chemical safety training modules(化学物質安全性トレーニング・モジュール)
CISも協力してIPCSが開発した化学物質の安全性に関するトレーニング・モジュール。職場で化学物質を取り扱う人など、化学物質の安全性に関する一般知識を広めたいと希望する方々向けに開発された訓練教材で、職場における化学物質の安全使用、化学物質安全性カードの利用方法、毒物学の基礎知識、広く利用されている危険有害物質に関する情報を含む八つのモジュールで構成されています。
◆その他
CISでは現在、統計情報の提供に向けた作業を進めています。CISのウェブサイトには、各地のCISセンターの連絡先や行事案内、活動を紹介するニュースレターなども掲載されています。また、労働安全衛生に関するCIS以外の情報も幅広く入手できます。ILO内外の労働安全衛生に関する様々な情報源へのリンクを始め、世界各地の労働安全衛生機関の連絡先や主な活動を記したリストも掲載されています。
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労働安全衛生はILOが提唱する「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)をすべての人へ」というディーセント・ワーク課題の重要な一要素です。10月に開かれた第47回CISセンター年次会合で挨拶したアサン・ディオップILO社会的保護総局長は、世界各地のCISセンターの協力によって達成されたこの50年間の業績を讃えると共に、労働災害や職業病によって毎年230万人にも及ぶ人々が命を落とす事実に注意を喚起し、その予防方法に関する情報を、必要とするすべての人々に提供することを道徳的な義務と位置づけました。
CIS(英語)----->
http://www.ilo.org/safework/about/lang--en/WCMS_DOC_SAF_ABO_CIS_EN/index.htm
日本のCISセンター−中央労働災害防止協会----->
http://www.jisha.or.jp/
国際化学物質安全性カード日本語版−国立医薬品食品衛生研究所ウェブサイト----->
http://www.nihs.go.jp/ICSC/