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>>トピック目次
ILO駐日事務所メールマガジン・トピック解説(2007年2月28日付第57号) |
失業問題への取り組みと雇用目標の追求は、創立以来のILOの中核的な使命の一部です。働き方の変化については、昨年の総会に出された事務局長報告「仕事の世界におけるパターンの変化」の概要を2006年5月31日号本欄に掲載しましたので、今回は数的な面から最近の世界の雇用情勢を取り上げます(図表はすべて「Global employment trends brief 2007」より引用)。
★世界の雇用情勢
この5年余り続いている力強い世界的な経済成長は、失業者や、働いていても貧しい人々(ワーキング・プア)を大きく減らすには至っていません。ILOが1月に発表した雇用に関する年次報告書「Global employment trends brief 2007(世界の雇用情勢摘要2007年版・英語)」は、世界全体の力強い国内総生産(GDP)の成長を受け、2006年末時点で15歳以上の就業者数は世界全体で前年比1.6%増、10年前の16.6%増の29億人となったと推計しています。にもかかわらず、失業者数は世界全体で1億9,520万人(失業率6.3%)と、依然最高記録が更新され続けています(図1、表1参照)。この傾向は2007年にも続くものと予想され、現在出されている4.9%の経済成長率予測では失業者数が昨年と同水準で留まる可能性が高くなっています。高経済成長を無限に続けることは困難である以上、失業率の高止まり傾向が懸念されます。
| 図1:世界の雇用及び失業動向 |
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| 年 | 1996 | 2001 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 (暫定 推計値) |
| 合計 | 161.4 | 185.2 | 188.9 | 192.7 | 194.7 | 195.2 |
| 男性 | 94.7 | 108.3 | 110.2 | 112.5 | 113.2 | 113.4 |
| 女性 | 66.7 | 76.9 | 78.7 | 80.2 | 81.5 | 81.8 |
| 年 | 1996 | 2001 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 (暫定 推計値) |
| 合計 | 66.7 | 66.1 | 65.8 | 65.7 | 65.6 | 65.5 |
| 若者 | 58.2 | 55.7 | 54.7 | 54.5 | 54.3 | 54.2 |
| 25歳以上 | 69.7 | 69.6 | 69.5 | 69.5 | 69.4 | 69.3 |
総就業人口に占める「働く貧困層(ワーキング・プア)」の割合は過去10年間減少を続けているものの(1996年54.8%→2006年47.4%)、1日1人当たり2ドル相当額未満で暮らしている「働く貧困層」の絶対数は伸び続けており、2006年に世界全体で13.7億人に達しています(表4参照)。
この10年間に就業率は低下し、2006年に10年前より1.2ポイント減の61.4%となっています(図1、表3参照)。この低下は若い人の間で大きく、2006年に15〜24歳層の就業率は46.8%でした(1996年51%)。教育に留まる若者の割合の増加がこの傾向を部分的には説明すると思われますが、2006年に世界全体の失業者の44%(8,630万人)が若者であったことは、失業問題の影響を最も多く受けているのは若者であることを示しています。
男女間の就業格差は依然残り、2006年に男性の74.0%(1996年75.7%)が就業していたのに対し、女性は48.9%(1996年49.6%)でした。労働力率(生産年齢人口に占める働いているか、仕事を探している人々の割合)で見ると2006年に女性は10年前より0.6ポイント低い52.4%で、男性は1.7ポイント低い78.8%でした。女性の労働力率のこのわずかな変化は、働き盛りの女性の労働力化と若い女性の非労働力化の二つの相反する動きを反映したものになっています。
産業別就業者数では、2006年に世界の就業者全体の40%(前年比0.5ポイント増)がサービス部門に従事し、初めて農業(前年比1.0ポイント減の38.7%)を上回りました。工業部門は21.3%(前年比0.5ポイント増)でした(表5参照)。
このような労働市場の動きは経済成長動向に加え、社会経済の長期的な変化の結果でもあります。国際通貨基金(IMF)の最新の推計によれば、2006年に世界全体の生産高は5.2%の力強い伸びを示しています。労働者1人当たりの生産高として算出される労働生産性は2006年に世界全体で前年を上回る3.4%の成長を示しました。GDPの伸びは人々がより効率的に働いた場合、または働く人々の数が増えた場合に達成されますが、過去10年間の経済成長は、雇用増よりも生産性水準の上昇と関連しています。
◎地域情勢(表3、4参照)
地域的な傾向には、大きなばらつきが見られます。ほとんどの地域で、2005年から2006年にかけて、失業率はあまり変化しておらず、先進諸国・欧州連合(EU)諸国で0.6ポイント減の6.2%と最大の低下幅が示されています。失業率が最大なのは依然、中東・北アフリカ(12.2%)、これにサハラ以南アフリカ(9.8%)が続き、この地域では10人に8人が1日2ドル未満で暮らすといったように「働く貧困層」の割合も最も高いため、アフリカにおけるディーセント・ワーク不足への取り組みが世界の最優先課題となります。逆に失業率が最も低いのは依然として東アジア(3.6%)で、これに南アジア(5.2%)が続きます。東南アジア・太平洋は6.6%でした。
就業率は地域差が大きく、中東・北アフリカ(2006年に47.3%)で最も低く、東アジア(同71.6%)で最も高くなっていますが、東アジアの数字は過去10年間に3.5ポイント低下しています。中南米では1.8ポイント増の60.3%となっています。
1日1人当たり1ドル相当額未満で暮らす「働く貧困層」の数は2001年から2006年にかけて、1,400万人増えたサハラ以南アフリカとほとんど変わらなかった中南米及び中東・北アフリカを除くと、どの地域でも減ってきています。同じ期間に、1日2ドルの貧困線以下で暮らす人々の数は、非EU加盟の中・東欧及び独立国家共同体(CIS)諸国で低下し、東南アジア・太平洋、南アジア、中東・北アフリカで増加しました。最も大きく減少したのは東アジア(6,500万人減)で、逆に最も増加したのはサハラ以南アフリカ(2,600万人増)でした。
| 失業率の推移 (ポイント) |
失業率(%) | GDP成長率 | 就業率(%) | 年間労働力成長率 | 年GDP成長率(%) | ||||||
| 地域 | 2001〜 2006年 |
1996年 | 2005年 | 2006年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 1996年 | 2006年 | 1996〜 2006年 |
1996〜 2006年 |
| 世界 | -0.2 | 6.1 | 6.4 | 6.3 | 4.9 | 5.2 | 4.9 | 62.6 | 61.4 | 1.6 | 4.1 |
| 先進諸国及び欧州連合(EU)加盟国 | -0.4 | 7.8 | 6.8 | 6.2 | 2.5 | 3.0 | 2.6 | 55.9 | 56.7 | 0.7 | 2.6 |
| EU加盟国以外の中・東欧及び独立国家共同体(CIS)諸国 | -0.5 | 9.7 | 9.4 | 9.3 | 6.4 | 6.3 | 6.1 | 54.8 | 53.0 | 0.3 | 4.3 |
| 東アジア | -0.3 | 3.7 | 3.5 | 3.6 | 9.2 | 9.2 | 9.1 | 75.1 | 71.6 | 0.9 | 8.2 |
| 東南アジア・太平洋 | 0.7 | 3.7 | 6.6 | 6.6 | 5.8 | 5.4 | 5.7 | 67.5 | 66.1 | 2.2 | 4.1 |
| 南アジア | 0.2 | 4.4 | 5.2 | 5.2 | 8.2 | 7.9 | 7.2 | 58.4 | 56.5 | 2.1 | 6.1 |
| 中南米・カリブ | -0.5 | 7.9 | 8.1 | 8.0 | 4.3 | 4.7 | 4.2 | 58.5 | 60.3 | 2.4 | 3.0 |
| 中東・北アフリカ | -1.1 | 13.0 | 12.3 | 12.2 | 5.5 | 6.1 | 5.5 | 44.9 | 47.3 | 3.5 | 4.6 |
| サハラ以南アフリカ | -0.4 | 9.2 | 9.7 | 9.8 | 5.6 | 4.8 | 5.9 | 68.8 | 67.0 | 2.5 | 4.0 |
注)2006年は暫定推計値、2007年は予測
| 年 | 1996年 | 2001年 | 2006年 (暫定 推計値) |
1996年 | 2001年 | 2006年 (暫定 推計値) |
| (100万人) | (100万人) | (100万人) | 総就業者に 占める割合(%) |
総就業者に 占める割合(%) |
総就業者に 占める割合(%) |
|
| 1日1ドル未満の働く貧困層 | ||||||
| 世界 | 594.6 | 578.6 | 507.0 | 24.0 | 21.7 | 17.6 |
| EU加盟国以外の中・東欧及び独立国家共同体(CIS)諸国 | 12.4 | 10.3 | 3.5 | 7.5 | 6.2 | 2.1 |
| 東アジア | 145.0 | 147.0 | 95.0 | 20.3 | 19.6 | 12.1 |
| 東南アジア・太平洋 | 37.4 | 30.9 | 29.6 | 17.0 | 12.7 | 11.1 |
| 南アジア | 250.8 | 222.3 | 196.9 | 53.8 | 43.2 | 34.4 |
| 中南米・カリブ | 22.9 | 27.4 | 27.2 | 12.1 | 12.7 | 11.3 |
| 中東・北アフリカ | 2.6 | 3.4 | 3.5 | 3.0 | 3.3 | 2.8 |
| サハラ以南アフリカ | 123.5 | 137.3 | 151.3 | 57.3 | 56.9 | 55.4 |
| 1日2ドル未満の働く貧困層 | ||||||
| 世界 | 1,354.7 | 1,394.1 | 1,367.8 | 54.8 | 52.2 | 47.4 |
| EU加盟国以外の中・東欧及び独立国家共同体(CIS)諸国 | 54.5 | 51.4 | 18.0 | 33.0 | 31.0 | 10.5 |
| 東アジア | 442.9 | 412.6 | 347.2 | 61.9 | 55.0 | 44.2 |
| 東南アジア・太平洋 | 142.3 | 148.4 | 151.6 | 64.7 | 61.2 | 56.9 |
| 南アジア | 425.0 | 458.8 | 498.2 | 91.1 | 89.1 | 87.2 |
| 中南米・カリブ | 67.3 | 72.4 | 74.5 | 35.4 | 33.6 | 30.9 |
| 中東・北アフリカ | 35.8 | 40.5 | 42.8 | 41.3 | 39.5 | 34.7 |
| サハラ以南アフリカ | 186.3 | 209.5 | 235.5 | 86.5 | 86.8 | 86.3 |
◎先進国
先進国及びEU諸国では過去数年間プラスの傾向が続いています。失業者数も失業率も低下し、就業者数と就業率は上昇しています。しかし、イタリア、チェコなど一部欧州諸国では依然失業率が7.5%を超えるなど、国毎に際だった違いがあります。また、例えば、若者や長期失業者のように不利な集団は依然存在し、労働市場における男女平等もまだ達成されたとは言えません。
景気の点では、ほとんどの国がインフレを伴わない長期経済成長を享受してきましたが、アメリカでインフレ圧力と労働市場の緊張が高まる兆候が見られるなど、最近幾分この動きに乱れが生じています。しかし、世界経済の伸びが大きく低下するよりも、日米で景気が減速し、欧州が元気になるといった地域間再調整が予想されます。
短期的な見通しはかなり良いものの、この地域は近い将来、いくつか労働市場の問題に直面することが予想されます。高齢化の進展は、もっと多くの人々を有給雇用に向ける必要性を生じさせます。急速な技術進歩とグローバル化は、労働者がより熾烈な競争と変化に素早く適応する能力を構築することを重要にします。若者が失業する可能性がより年長の人々の2.4倍であるという事実は、社会が長くは負担できない潜在力の浪費であると言え、若者が正しい路線で職業生活を開始できるよう確保することが急務となっています。長期失業問題及び女性の高失業問題、それと結びついた女性の低労働力率にも取り組む必要があり、政府は効果的な再就職サービス、カウンセリング、訓練、金銭的イニシアティブの提供を通じて人々がまともな仕事を見つける機会を増す一方で、給付受給者が仕事を探し、就業能力を高める措置を講じることが必要です。
世界の雇用情勢は、2006年10月に若者編が出されていますが、今年3月8日の国際女性の日には女性編が出される予定です。
| 農業 | 総就業者に占める当該産業就業者の割合(%) | 当該産業全就業者に占める 女性の割合(%) |
|||
| 年 | 1996年 | 2004年 | 2005年 | 2006年 (暫定 推計値) |
2006年 (暫定推計値) |
| 世界 | 43.1 | 40.5 | 39.7 | 38.7 | 41.6 |
| 先進諸国及び欧州連合(EU)加盟国 | 5.2 | 3.5 | 3.3 | 3.2 | 35.1 |
| EU加盟国以外の中・東欧及び独立国家共同体(CIS)諸国 | 26.2 | 23.2 | 22.7 | 22.0 | 44.1 |
| 東アジア | 54.0 | 51.5 | 50.3 | 48.3 | 47.8 |
| 東南アジア・太平洋 | 51.0 | 48.1 | 48.1 | 47.0 | 42.3 |
| 南アジア | 59.3 | 54.1 | 52.8 | 51.7 | 36.3 |
| 中南米・カリブ | 23.2 | 19.3 | 19.3 | 18.8 | 21.0 |
| 中東・北アフリカ | 29.7 | 30.0 | 30.5 | 29.7 | 32.3 |
| サハラ以南アフリカ | 68.1 | 65.2 | 63.4 | 63.0 | 43.7 |
| 工業 | |||||
| 世界 | 21.4 | 20.6 | 20.8 | 21.3 | 32.1 |
| 先進諸国及び欧州連合(EU)加盟国 | 28.5 | 24.9 | 24.3 | 24.2 | 23.0 |
| EU加盟国以外の中・東欧及び独立国家共同体(CIS)諸国 | 27.9 | 27.3 | 27.5 | 27.7 | 31.9 |
| 東アジア | 25.2 | 24.0 | 24.6 | 25.8 | 42.3 |
| 東南アジア・太平洋 | 16.4 | 17.3 | 17.3 | 17.8 | 36.4 |
| 南アジア | 15.4 | 17.7 | 18.2 | 18.8 | 27.4 |
| 中南米・カリブ | 20.3 | 20.0 | 19.6 | 19.8 | 28.9 |
| 中東・北アフリカ | 21.7 | 22.4 | 22.5 | 22.9 | 12.6 |
| サハラ以南アフリカ | 9.0 | 8.6 | 8.7 | 8.8 | 26.7 |
| サービス業 | |||||
| 世界 | 35.5 | 38.9 | 39.5 | 40.0 | 42.2 |
| 先進諸国及び欧州連合(EU)加盟国 | 66.4 | 71.6 | 72.4 | 72.7 | 52.3 |
| EU加盟国以外の中・東欧及び独立国家共同体(CIS)諸国 | 45.8 | 49.5 | 49.8 | 50.3 | 52.5 |
| 東アジア | 20.7 | 24.5 | 25.1 | 25.8 | 40.0 |
| 東南アジア・太平洋 | 32.7 | 34.6 | 34.6 | 35.2 | 44.6 |
| 南アジア | 25.3 | 28.2 | 28.9 | 29.5 | 17.6 |
| 中南米・カリブ | 56.5 | 60.6 | 61.1 | 61.4 | 49.2 |
| 中東・北アフリカ | 48.6 | 47.6 | 47.0 | 47.4 | 25.5 |
| サハラ以南アフリカ | 22.9 | 26.2 | 27.9 | 28.2 | 46.1 |
★雇用に関する国際労働基準
ILO憲章の前文には、「世界の平和及び協調が危うくされるほど大きな社会不安を起こすような不正、困苦及び窮乏」に取り組むために緊急に改善が必要な状況の一つとして、失業の防止が挙げられています。1919年の第1回ILO総会で採択され、日本も批准する失業条約(第2号)は、加盟国に対して講じた失業対策を報告するよう求めています。現在憲章の附属書となっており、第二次世界大戦後のILOの目的を再確認したフィラデルフィア宣言でも、世界の諸国間においてILOが促進する厳粛な義務を有する計画が達成すべき目標の一つとして、「完全雇用及び生活水準の向上」が含まれています。これが直ちに反映されたのが1948年に採択され、日本も批准する職業安定組織条約(第88号)で、職業安定組織の本来の任務として、「完全雇用の達成及び維持並びに生産資源の開発及び利用のための国家的計画の不可分の一部として雇用市場を最もよく組織化すること」の確保が掲げられています。
◎雇用政策条約(第122号)
1960年代初めにILOは既に、経済成長が自動的に雇用成長及びすべての人々の生計水準の向上につながるという従来の考え方に疑問を投げかけ、1960年に経済開発における雇用目的に関する専門家会議を開催しました。翌年の総会に提出されたその報告書は、総会で採択された雇用政策に関する決議に引用され、この決議が1964年に採択された雇用政策条約(第122号)とそれを補足する同名の勧告(第122号)の基礎となりました。
日本も批准している第122号条約は、批准国に完全雇用、生産的な雇用及び職業の自由な選択を促進するための積極的な政策を、主要目標として宣言し、遂行することを求めています。この政策は、1)仕事に就くことができ、仕事を求めているすべての者のために仕事があること、2)そのような仕事ができる限り生産的なものであること、3)職業選択の自由があること並びに労働者が、人種、皮膚の色、性、宗教、政治的意見、国民的系統または社会的出身のいかんを問わず、自己に適する職業に必要な技能を習得し、その職業において自己の技能及び才能を活用するための可能な最大限度の機会を有することを確保すべきものとされています。この政策はさらに、雇用に関する目的と他の経済的及び社会的目的との間の相互の関係に妥当な考慮を払うものとされ、国内事情及び国内慣行に適する方法によって遂行すべきとされています。そして、雇用に関する目的を達成するためにとるべき措置については、調整された経済社会政策の枠組みの中において、影響を受ける者の代表者、特に、使用者の代表者及び労働者の代表者と協議の上、決定し定期的に見直すことが求められています。
◎雇用政策(補足規定)勧告(第169号)
その後、世界的な経済停滞に伴い、先進国、途上国双方で失業問題の深刻化など新たな状況が発生したため、第122号条約及び第122号勧告を補足するものとして1984年に採択された雇用政策(補足規定)勧告(第169号)は、一般原則として、第122号条約及び第122号勧告に規定される「完全雇用、生産的な雇用及び職業の自由な選択の促進」を、世界人権宣言や経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約に規定される「労働の権利」を実際に実現するための手段とすべきと宣言しています。また、青少年並びに不利な立場にある集団及び個人の雇用、技術政策、公共投資計画及び特別公共事業計画、国際経済協力と雇用、国際労働力移動と雇用といった項目について幅広い提案を行っています。
◎その他
雇用分野では、この他に、雇用と密接に関係付けられる職業指導及び職業訓練に関する包括的で調整された政策及び計画を採用し、発展させることを批准国に求める1975年の人的資源開発条約(第142号)、障害者のために適切な職業リハビリテーションの対策を講じ、雇用機会の増進に努めることを批准国に求める1983年の職業リハビリテーション及び雇用(障害者)条約(第159号)、雇用政策と失業からの保護制度の調整について規定する1988年の雇用の促進及び失業に対する保護条約(第168号)、とりわけ完全雇用、生産的な雇用及び職業の自由な選択の促進、所得獲得機会の増大、不利な立場にあり疎外された集団による経済参加の増大などに関し、中小企業の基本的な役割が認識されるよう規定する1998年の中小企業における雇用創出勧告(第189号)などがあります。日本はこのうち、第142号条約と第159号条約を批准しています。
★世界雇用戦略
ILOはすべての人々が適切で人間らしい仕事を意味するディーセント・ワークを確保できる世界の実現を提唱しています。ディーセント・ワークこそ貧困を削減できる唯一の持続可能な方法であるとの信念が今日では幅広く広まってきています。2006年7月に開かれた国連経済社会理事会ハイレベル会合で採択された閣僚宣言は、「男女が共に自由、平等、安全保障、尊厳が確保された条件下で生産的な雇用を得る機会は、飢餓と貧困の根絶、すべての人々の経済的・社会的満足度の向上、すべての国家の持続可能な経済成長および発展の達成、そして完全に包摂的で公平なグローバル化を確保する上で不可欠」であることを再確認し、「ILOのディーセント・ワーク目標」を「完全雇用、生産的な雇用、すべての人々へのディーセント・ワークの目的を達成するための貴重な手段」と認めています。閣僚宣言を受け、国連では、2015年までに極端な貧困と飢餓の解消を目指すミレニアム開発目標1の進展度合いを測るターゲットに完全雇用、生産的な雇用、すべての人へのディーセント・ワークの諸目標を新たに加えることが提案されています。
ILOは既に、1995年の国連社会開発サミットをフォローアップするものとして2000年に開かれた国連社会開発特別総会で、包括的な雇用戦略の枠組みを策定するよう求められていました。これに応えるものとして、2001年11月に開かれた世界雇用フォーラムや理事会での検討を経て、働く男女、とりわけ働く貧困層の生産性向上に重点を置いた「貧しい人々に優しい」開発政策の中心に生産的な雇用を据えることを目指し、各国が雇用政策を開発する際の枠組みになり、雇用創出に向けた国際環境を導くものとなるよう開発された世界雇用戦略(Global Employment Agenda)が2003年3月の理事会で承認されています(2002年12月9日付本欄参照)。
雇用機会の促進はディーセント・ワークの基本です。世界雇用戦略は、自由に選択された生産的な雇用を世界的に増大させるという数的目的と同時に、働く上での基本的な権利、労働から得られる十分な収入、社会的保護を通じた安全保障を構成要素とするディーセント・ワークを推進することによって雇用の質的側面の向上も図るものとなっています。
世界雇用戦略は、次の七つの基本原則に則ったものとなっています。
そして、雇用、経済発展、社会正義を同時に推進する中核的な要素として次の10項目を挙げています。
現在、加盟各国で実施されつつあるディーセント・ワーク国別計画の一環として、世界雇用戦略の実用化が進んでいます。2003年3月の理事会で採択されて以来、既に25カ国で包括的な雇用戦略開発の過程で世界雇用戦略が用いられたことが把握されています。こういった各国の経験に関する情報は、定期的に理事会に提出されています。後述の雇用総局内の世界雇用戦略に関するページには、理事会に提出された文書や審議模様、中核的要素に関連した好事例や各種報告書が掲載されています。
★雇用総局
ILO事務局内で雇用問題は雇用総局(Employment Sector)が担当しています。総局は、雇用・労働市場分析局(Employment and Labour Market Analysis Department)、雇用政策局(Employment Policy Department)、技能・就業能力局(Skills and Employability Department)、雇用創出・企業開発局(Job Creation and Enterprise Development Department)の四つの局で構成されています。横断的テーマである世界雇用戦略は総局全体で担当しています。
雇用・労働市場分析局は、雇用及び労働市場に関する調査研究を担当しており、「世界の雇用情勢」など幅広い報告書を発行しています。
雇用政策局は、各国の雇用政策に対する技術協力を中心業務とし、世界雇用戦略を基盤に雇用政策に関する助言や研究を行うほか、マイクロクレジットなど弱い立場の人々に対する小口金融の可能性を通じたディーセント・ワークの普及に向けて活動する社会的金融計画や労働集約型公共事業を通じた雇用創出を支援する雇用集約的投資計画(EIIP)、EIIP内で現地における助言支援、情報サービス、訓練を担当するASISTといった各種技術協力プログラムから構成されています。
技能・就業能力局は、訓練、技能開発、教育を通じて人々が就業能力を高めることを支援しています。訓練政策や訓練計画、職業安定機関、障害者、高齢者、若者といった特に不利な立場にある人々を対象とした活動など、能力開発に係わるあらゆる分野について調査研究、技術協力を実施しています。若者の雇用に関する情報ネットワークである若者雇用ネットワーク(YEN)の事務局も務めています。
雇用創出・企業開発局は、長く持続するディーセントな仕事を創出する企業の巨大な潜在力の解放に向けた活動に専念しています。小企業開発、経営・企業市民、協同組合、地域経済開発、多国籍企業といったあらゆる雇用創出源に関する調査研究や技術協力を行っています。インド洋津波やレバノンの戦災復興支援などといった危機に対応する危機対応・再建計画もこの局内に置かれています。多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言のフォローアップ活動や、企業の社会的責任などに関する情報を収集した企業・社会的イニシアチブ・データベース(BASI)の維持管理もこの局で取り扱われています。
事務局と別に、理事会にも雇用・社会政策委員会が置かれ、世界雇用戦略の実施状況に加え、若年雇用など雇用に関する各種の議題が審議されています。
雇用総局及び理事会のホームページでは訓練や経営事項も含み、雇用に関する幅広い資料が入手できます。
世界の雇用情勢(英語)----->
http://www.ilo.org/trends
世界雇用戦略(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/employment/empframe/practice/index.htm
雇用総局(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/employment/index.htm
理事会(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/gb/index.htm
条約・勧告日本語訳----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/list.htm
2006年5月31日付メールマガジントピック----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/feature/2006-05.htm
2002年12月9日付第7号メールマガジン----->
http://blog.mag2.com/m/log/0000085098/60900429.html?page=3