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ILO駐日事務所メールマガジン・トピック解説

(2006年3月28日付第46号)

◆ ◇ ILOと国連人間の安全保障基金 ◇ ◆
◆ ◇ (United Nations Trust Fund for Human Security and the ILO) ◇ ◆

ILOアジア太平洋総局 木内恵里子

 日本政府および国連は、去る3月15日、ILOがタイとフィリピンの2カ国において実施する「帰還したトラフィッキング犠牲者の経済社会的能力強化事業」に対し、国連人間の安全保障基金(全額日本政府出資)を通じ、197万7,116ドル(約2億1,155万円)の支援を行うことを決定しました。このプロジェクトを加え、ILOで人間の安全保障基金の支援を受けているプロジェクトは計3件になりました。そのうち2件が東南アジアにおけるトラフィッキングを扱っています。

★国連人間の安全保障基金

 1998年12月、当時の小渕総理はハノイ(ベトナム)における政策演説の中で、国連に「人間の安全保障基金」を設立することを発表しました。これを受け、翌年3月に日本政府は約5億円を拠出し、国連に「人間の安全保障基金」が設置されました。その後日本は同基金に対し、2005年3月までに約290億円を拠出してきており、国連に設置された信託基金の中で最大規模のものとなっています。

 基金の目的は、現在の国際社会が直面する貧困・環境破壊・紛争・地雷・難民問題・麻薬・HIV/エイズを含む感染症など、多様な脅威に取り組む国連関係国際機関の活動の中に、「人間の安全保障」の考え方を反映させ、実際に人間の生存・生活・尊厳を確保していくことにあります。より具体的には、人間一人ひとりに焦点を当て、上記のような脅威から人々を保護するとともに、脅威に対処できるよう人々の能力強化を図るプロジェクトを支援していくことにあります。(外務省ホームページ「人間の安全保障基金」より)

★東南アジアにおけるトラフィッキングとILOの取り組み

 トラフィッキングは、国内問題に留まらず、国境や地域を越えて、世界的に深刻な問題となっています。世界全体では、250万人を超える人々がトラフィッキングの被害者になっており、そのうち半数以上の約130万人がアジアで見られると推定されています(ILOの2005年強制労働グローバル・レポートより)。

 性的搾取を目的としたトラフィッキングに世の中の注目が集まることが多いのですが、その搾取目的は、性的搾取以外にも、家事労働、農業・漁業などの季節労働、物乞いなど、さまざまなものがあり、トラフィッキングの被害者は女性と男性の両方を含みます。カンボジアやベトナムでは、特に児童と若い女性は、売買春や強制結婚などの性的搾取以外にも、家事労働、季節労働、搾取工場、物乞いといった危険にさらされています。

 ILOでは、労働問題という観点からトラフィッキング問題の廃絶に向けて取り組んでいます。東南アジアでは、児童労働撲滅国際計画(IPEC)を通して、メコン河流域の5カ国(タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、中国雲南省)を対象としたプロジェクトを2000年から実施しています。当プロジェクトでは、問題の「予防と防止」に焦点を当て、域内において、トラフィッキングがそもそも発生する場所と思われる地域(地元での就業機会が少なく、児童労働を含む出稼ぎ労働者を多く送り出している地域)、そして主な受け入れ地域(域内の主要都市部)を中心に活動を展開しています。活動内容は、政策提言、調査研究、雇用創出、職能訓練、収入向上プログラム、教育や啓蒙活動、コミュニティの自助能力強化等、幅広い内容になっています。

★国連人間の安全保障基金の支援を受けているILOのプロジェクト

◎カンボジア・ベトナムにおける「児童および女性の人身売買のコミュニティ・レベルでの防止」プロジェクト

 2003年に、日本政府および国連は、ILOがカンボジアとベトナムで実施する「児童および女性の人身売買のコミュニティ・レベルでの防止」プロジェクトに対し、人間の安全保障基金を通じ、121万4,464.76ドルの支援を行うことを決定しました。これはILOが初めて同基金から支援を受けたプロジェクトに当たります。

 このプロジェクトでは、メコン河流域におけるこれまでのILOの経験をもとに、カンボジアとベトナムの合計6州において、コミュニティぐるみのトラフィッキングに対する予防メカニズムを立ち上げ、持続させることで、コミュニティ全体の力を高めることを目指しています。プロジェクトの根幹を成すのは、食糧確保と収入向上を目指した職能訓練が極度の貧困にあえぐ人々に代替的な解決案を提供すること、教育・意識向上を通して人々の自己防衛能力を高めること、そしてコミュニティから州レベルまでのトラフィッキング防止のためのネットワークづくりの三つです。

◎タイ・フィリピンにおける「帰還したトラフィッキング犠牲者の経済社会的能力強化事業」プロジェクト

 今回新たに認可されましたタイとフィリピンをカバーするプロジェクトでは、国境を越えるトラフィッキングの被害者に焦点をあて、本国送還後の帰還者たちへの支援を通じて、帰還者の「再トラフィッキングの防止」を目指していきます。帰国した被害者の社会復帰までには、心身への損傷の回復、家族・コミュニティ・社会との関係再構築、経済的自立を可能とする能力の強化等、さまざまな支援が必要となります。

 ILOでは、特に経済、職業面における帰還者の人道的な社会復帰を支援していく計画です。特にタイにおきましては、現在実施中のメコン河流域のプロジェクトの、コミュニティにおけるトラフィッキングの予防、そして、人々の安全な移動を奨励する活動との連携を図りながら効果的な活動を組み立てていく予定です。

◎インドネシアのパプア州における「人間の安全保障の推進と先住民族の貧困削減」プロジェクト

 ILOでは、トラフィッキング以外にもう1件、昨年7月に認可された人間の安全保障基金によるプロジェクトをインドネシアのパプア州において実施しています。インドネシア・パプア州の先住民は、過去30年間にわたって就業の機会が与えられず、低い社会的地位に置かれています。158万1,142ドルの支援を受けているこのプロジェクトでは、多様なパプア先住民の文化を考慮しながら、技能・職能訓練、起業支援、特に女性と女児を対象とした教育活動、保健衛生等に関するサービスの拡充等を通じて、貧困削減と雇用における差別撤廃、そして紛争の防止を目指していきます。


人間の安全保障−外務省ホームページ----->
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hs/index.html
2006年3月15日付外務省新聞発表----->
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/18/rls_0315a.html
ILO/IPECメコン河流域トラフィッキング・プロジェクト(英語)----->
http://www.childtrafficking.net/
2005年強制労働グローバル・レポート(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/standards/relm/ilc/ilc93/pdf/rep-i-b.pdf



最終更新日:2006年3月24日 作成者:EU 責任者:SH