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ILO駐日事務所メールマガジン・トピック解説

(2006年2月28日付第45号)

◆ ◇ ジェンダー:男女平等 ◇ ◆
◆ ◇ (Gender: Equality between men and women) ◇ ◆

★ジェンダーとセックス

 近年、男女平等を表現する英語としてgender equalityが用いられるようになっています。セックスもジェンダーも共に性を意味する単語ですが、違いは前者が生物学的な性を指し、後者は社会的な性を意味することです。例えば、子供を産めるのは女性の特権で、これはセックスに基づく性差と言えます。一方、看護職や保育職に女性が多いのは、女性には育児や介護といった世話をする役割があるとの固定観念に根ざしている部分があり、これはジェンダーに基づく性差と言えます。すなわち、セックスに基づく性差は生まれながらのものですが、ジェンダーに基づく性差は後天的に獲得された性別役割に根ざした概念に過ぎず、国や文化によっても異なり、時間がたつと変わってくるものです。ジェンダーの単語を用いて語られる男女平等とは、この固定的なイメージを打破し、人間という共通の立場から男女が共に等しい権利、責任、機会を享受すべきことを目標としているのです。

★女性労働の現状

 現在、女性は世界の労働力の40%近くを占めています。女性の労働力率は先進国で7割近く、途上国でも6割に達しています。ILOの年次報告書「Global employment trends(世界の雇用情勢)」2006年版によると、2005年の女性の就業率は52.2%で、男性の就業率が前年比1.3ポイント減の80.8%となったため、その差は縮小しつつはあるものの依然大きく開いています。女性の教育水準は世界的に伸びています。より良い雇用機会は多くの女性の独立を補強し、家族や社会の中で女性は新しい役割や地位を占めるようになってきました。

 しかしながら、男女平等に関する相互に関連する3つの重要な指標、つまり「ガラスの天井(トップ・マネジメントにおける女性)」、男女賃金格差、そして「粘つく床(最も賃金が低い仕事に従事する女性)」においてはあまり芳しい進展は見られません。組織や企業で地位が上がれば上がるほど、男女格差はますます顕著になり、大企業の最高経営責任者レベルになると女性はわずか1〜3%に過ぎません。女性は男性の約2倍の時間を無償労働に費やしていると推計されますが、この重要な役割は認知されないままです。2003年に男性の失業率は6.1%、女性の失業率は6.4%でした。世界の労働者の約半数が、女性は秘書や看護師、スチュワーデスのようなステレオタイプの女性職、男性はエンジニアや運転手、建築労働者のようなステレオタイプの男性職に就いています。女性の収入は依然として、男性より2〜3割低く、女性はパートタイム労働者の3分の2近くを占めています。働いていながら1日1ドルを上回る暮らしができない極端な貧困状態にある人々は世界全体で5.5億人に達すると推計されますが、この6割の3.3億人が女性とされています。

★ILOの取り組み

 ILOは現在、「全ての男女にディーセント・ワーク」を達成することを21世紀の活動目標に掲げています。つまり、男女が共に、自由、平等、安全、人間としての尊厳といった条件が整った、まともで、生産的な仕事を得る機会を推進しています。ジェンダーは仕事の世界に係わるあらゆる事業計画、あらゆる活動を横断する問題であるとILOでは認識しています。そこで1999年に、仕事の世界における男女平等達成に向けた戦略として「ジェンダーの主流化(gender mainstreaming)」を用いることに決定し、現在、全ての活動はこれを軸にして展開されています。

★ジェンダーの主流化

 ジェンダー問題を社会の主流にしようという考えは、1995年に北京で開かれた第4回世界女性会議で採択された行動綱領で、男女平等推進に向けた世界的な戦略として明確に確立されました。行動綱領は、社会経済開発のあらゆる分野で男女平等を中心的な目標とすることを確保する必要性を強調しました。

 1997年7月に国連経済社会理事会はジェンダー主流化の概念を次のように定義しました。

 「ジェンダーの視点の主流化とは、法制、政策、事業計画を含む、あらゆる分野のあらゆるレベルにおける計画された全ての行動が男女それぞれにとってもつ意味を評価するプロセスのことを指す。これは政治、経済、社会のあらゆる側面における政策や事業計画の設計、実行、モニタリング、評価といった総合的なプロセスの中に、男性のみならず、女性の関心事や期待を組み込み、男女が平等に受益し、不平等が永続しないようにする戦略のことである。主流化の究極的な目標は男女平等の達成にある。」

 主流化の中には、男性または女性のどちらかが特に不利な立場にある場合の男女別活動やアファーマティブ・アクション(差別是正措置)も含まれます。男女別の介入活動の場合、女性だけを対象にする場合もあれば、男性だけの場合も、男女双方を対象にする場合もありますが、これは過去の差別の直接的・間接的結果を解消して、男女が共に開発努力に参加し、恩恵を得るために必要な暫定的な措置とされています。

 1999年にILO事務局が立案した男女平等とジェンダー主流化政策は、男女平等を推進する相互に補強的な活動は職員配置、実質活動そして体制整備の3つの分野で行われるべきとします。ILOではそのために2つの方法を用いています。1つは全ての政策、事業計画、活動が、女性の実務的及び戦略的な性に係わるニーズを含み、男女それぞれに特有の、そしてしばしば異なる懸念事項に体系的にそして正式に取り組むよう目指すことです。2つ目はこれらの懸念やニーズを考慮に入れた分析を基礎に、男女が平等に開発努力に参加し、そこから受益できることを、対象を定めた介入行動の目的とすることです。

 この政策を実行に移すために設定された男女平等とジェンダー主流化行動計画は5つの主な要素から構成されています。(1)組織内における取り決めの強化、(2)説明責任とモニタリングのメカニズムの導入、(3)ジェンダー主流化に対する適度な資源配備、(4)職員のジェンダー関連能力の強化・向上、(5)あらゆるレベルにおける職員間の男女バランスの改善。

 ジェンダー主流化の実行を確保する措置には、プログラム立案プロセスにジェンダーを制度的に組み込むことを含みます。2004/05年事業計画・予算には、加盟国政労使と共有する男女平等に関する運営目標が盛り込まれました。そして、仕事の世界における男女平等に向けた進展状況を評価する指標として、(1)平等に関するILOの主要条約の加盟国による批准と適用の程度、(2)仕事の世界における男女平等を大きく改善することを目指し、加盟国政労使が導入した政策、法制、事業計画、制度上の変化、(3)ILOの行事や統治機構への女性の参加率が挙げられています。2006/07事業年度においても活動の基本路線は変わっていません。

★ジェンダー監査

 ジェンダー主流化の実行を推進するもう1つの戦略として、ILOは国連機関内で初めて参加型のジェンダー監査を導入しました。2001〜02年に実施された監査は、ILO事務局の構造、政策、事業計画内でジェンダー主流化を効果的に実行する方法に関し、個人、作業チーム、部局レベルで、組織的な学習を推進することを目的に、参加型の自己評価アプローチを用いて進められました。参加型ワークショップや業務上の成果物(プロジェクト関連文書、データベース、出版物など)の検討といった監査を経て、ジェンダーに対する配慮の浸透度合いが評価され、2002年11月に監査報告書が理事会に提出されました。

 ILOのこの経験は加盟国の支援に生かされる予定です。既に2004年にはスリランカの政労使やジンバブエ駐在の国連機関においてジェンダー監査が行われました。

★男女平等に向けて−ILOの歩み

 ILO憲章の前文にはILOが達成すべき目的が掲げられていますが、その中には「同一価値の労働に対する同一報酬の原則」が盛り込まれています。第2次世界大戦後の1944年にはILOの目的を再確認し、後にILO憲章の附属書となったフィラデルフィア宣言が採択されましたが、ここでも「すべての人間は、人種、信条又は性にかかわりなく、自由及び尊厳並びに経済的保障及び機会均等の条件において、物質的福祉及び精神的発展を追求する権利をもつ」との原則が再確認されています。男女平等は創立以来のILOの目的の1つで、そのために多様な活動が展開されてきました。

 戦前の活動は主として基準設定に重点が置かれ、1919年に採択された母性保護条約(第3号)や夜業(婦人)条約(第4号)などのように、工業化からもたらされる危険に対する女性の健康や雇用の保護といった、母性保護や社会的保護に関する基準が設定されました。

 ILOの取り組みは、徐々に新しい考えを基礎とするようになっていきました。それは、妊娠や母性といった性に特有の部分に関しては女性の保護は必要であるものの、危険な職業や夜業への従事を女性だけに禁じるべきではなく、職業上の危険の削減は全ての労働者を対象としなくてはならないというものです。

 戦後は前述のフィラデルフィア宣言が基礎となり、賃金、収入、労働時間、その他の労働条件の点から男女が共に進歩の果実を正当に享受できるよう確保すること、児童福祉と母性保護を提供すること、教育や職業上の機会における平等を保障することが活動目標となりました。1926年に設置された調査研究課の中に女性と児童の問題を担当する女性専門家が配置されていましたが、この部署は戦後の事務局再編成の中で課に格上げされ、女性の課長が任命されました。40年代には各方面で女性に対する差別的な待遇の廃止が叫ばれ、より実際的な活動が行われるようになりました。基準はより実践的で具体的になり、女性労働に関する専門家委員会が設置され、女性の雇用に関する調査団がアジアや近東に送られました。戦後の再建に係わるILOの役割が討議された1941年の特別総会の議長には初めて女性(米国労働長官)が選ばれました。

 50年代〜70年代半ばのILOの社会進歩に向けた活動は世界雇用計画が中心となって進められましたが、この計画は女性の地位、役割、問題を特に重要視しました。1951年には同一報酬条約(第100号)、1958年には差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)といった重要な条約が採択されました。この時期、経済社会開発を達成する手段として女性労働力がますます重要視されるようになってきました。人的資源の効率的な活用の一要素として、女性労働力の十分な活用が目指され、男女の機会均等と同一報酬の達成が優先事項となりました。ILOも加盟国に労働法制や労働行政に係わる助言や技術支援を提供し、女性の雇用に関する問題を話し合う専門家等の会合も度々開かれ、家族的責任を有する働く女性や同一賃金、女性のパートタイム雇用に関する調査研究が行われました。

 70年代後半〜80年代前半に先進国では女性の労働力率が上昇し、途上国でも女性によって支えられている世帯がほぼ3分の1と言われるようになり、女性の経済的重要性が高まりました。国連は1975年を国際婦人年とし、同年メキシコで開かれた国際婦人年世界会議を皮切りに、1980年、85年と世界会議が開かれました。1976〜85年は国連婦人の10年に定められました。女性の10年とも称すべきこの間のILOの動きもこういった世界の動きに対応し、女性問題は経済と社会の未来という、より幅広い文脈の中で検討されるようになり、1975年の総会では女性労働者の機会均等・平等待遇に関する宣言とその推進を目指した行動計画が採択されました。1976年に就任した高橋展子ILO事務局長補のもと、女性労働者局が新設されました。

 1985年の第71回総会でも雇用における男女の機会均等・平等待遇の問題を検討する一般討議が行われ、75年に採択された宣言と行動計画の有効性を再確認すると共に、各国の行動やILOの行動についての提案を盛り込んだ決議が採択されました。決議は、雇用と訓練への平等なアクセスの推進、社会保障における同一給付と平等待遇の原則、労働条件の改善、母性保護を全ての活動分野の女性に広げること、家庭責任と職務責任の両立、意思決定における女性の完全な参加を提案しました。労働市場における性別職業分離をなくすための措置、農村労働者や移民労働者、難民や障害を有する女性、片親家庭や長期失業者の状況改善に向けた措置も提案されています。

 この時期にはさらに、開発過程に女性を完全に統合することに目標が置かれ、働く女性の問題は全ての労働者の状況改善に向けた世界的な努力の中に組み込まれました。平等原則の適用、労働市場における差別慣行の把握と排除、社会基盤の改善、国の開発政策の中への女性の雇用の組み込み、農村地域における女性に訓練を提供する新しい仕組みの開発、人的資源の活用における女性の参加の増大が提唱されました。総会議長、理事会議長を初め、各種のILOの会議に女性の役員が登場するようになるのもこの頃です。国連婦人の10年の枠内で、活動は多様化し、その数も増大しました。草の根団体や協同組合の支援を通じた女性に対する支援が新たに重要視され、女性の経済・社会状況に関する情報収集が世界規模で行われました。

 80年代後半〜90年代前半に先進国では経済危機や産業の再編成によって失業問題が悪化し、第三世界の構造調整や債務問題は女性の雇用や収入、生活条件を悪化させました。経済のグローバル化や自由化も進みました。こういった動向は女性の雇用、収入、労働条件に悪影響を与え、女性はますます失業、不安定な雇用、昇進見込みの縮小、質の低いインフォーマル活動への集中、社会的保護の低下、経済搾取といった問題にさらされるようになってきました。1985年にナイロビで開かれた国連婦人の10年世界会議で採択された戦略は、女性は受益者としても参加者としても開発過程に完全に統合される権利があると謳っています。ILOの活動もこれに沿って再定義され、真の男女平等の推進、女性の労働条件改善、意思決定における女性労働者の参加の拡大が目標となりました。そして、短期的な個々のプロジェクト・レベルではなく、経済開発のあらゆる分野に女性に対する配慮を組み込むことが提唱されました。1987年には政府、労使団体が平等を推進する政策を開発し、措置を実行することへのILOの支援を強化する目的で、雇用における男女の機会均等・平等待遇行動計画を作成し、活動はこれに従って再編成されました。女性労働者局は1988年に解体され、女性労働者問題特別顧問が任命されました。労働者向けの活動はプロジェクトの企画立案及び実行のあらゆるレベルに女性労働者問題を含むよう全体的に改訂されました。1991年に総会で採択された女性労働者に対するILOの活動に関する決議は、機会均等問題における活動の強化と採用、昇進、訓練における差別の除去を求めています。

 90年代後半から現在に至るILOの活動は1995年の第4回世界女性会議で採択された行動綱領が基礎になっています。1999年にILOはまともで人間的な仕事を意味する「ディーセント・ワーク」の達成を21世紀の活動目標に掲げ、その際、ジェンダーをあらゆる活動を貫く懸念事項と定めました。2000年3月に男女平等とジェンダー主流化に関する行動計画が理事会に提出され、2003年3月の理事会にはILO内部でジェンダー主流化に向けた機構がどの程度整い、運営されているかを評価したジェンダー監査報告書が提出されました。ジェンダー監査は2004、05年にILO加盟国政労使の間でも試験的に実施されています。2004/05年の事業計画・予算には男女平等に関する具体的な運営目標が含まれ、2006/07年の事業計画・予算で男女平等は主流化戦略になっています。2005年3月の理事会は事務局に対し、技術協力計画・プロジェクトにおいてジェンダーを主流化し、ドナーに働きかけてジェンダー主流化を保障・支援する規定が協定に含まれるよう確保し、加盟国政労使が仕事の世界における男女平等を実行する能力を向上させる特定の措置を講じるよう求めました。

 第4回世界女性会議後の10年、女性の地位は世界的に向上したと国連は言っていますが、同時に雇用における男女平等の達成は大きな障害に阻まれているとも記しています。2005年3月に開かれた第49回国連女性の地位委員会で採択された宣言は北京宣言と行動綱領を再確認し、加盟国に対する様々な呼びかけの中に、労働市場、雇用慣行、職場における女性に対する差別の撤廃を含みました。

 1998年には、雇用及び職業における差別の排除を含む、労働における基本的な原則と権利について、その尊重、促進、実現に向けた加盟国の公約を謳った宣言が総会で採択されました。これをもとに現在は平等分野に関する2つの重要な条約(男女同一価値労働同一報酬に関する第100号と雇用及び職業上の差別撤廃に関する第111号)の推進に向けて努力が払われています。宣言には4つの分野が含まれ、それぞれに関する報告書を順番に総会で検討して、その後4年間のILOの技術協力活動の優先事項を定めることになっていますが、差別に関する報告書は2003年の総会に提出されました。2004年の総会では、男女平等、衡平賃金、母性保護に関する決議が採択されました。決議は、雇用と職業における差別撤廃、機会均等、平等待遇は社会正義の基本原則であるとし、包含的な社会、女性のエンパワーメント、全ての人々にとっての経済成長に向けた手段であるとしています。

 ILOでは現在、自らの活動のみならず加盟国においてもジェンダー主流化をキーワードに男女平等を推進しています。2000年に行われた事務局再編成の中で、女性労働者問題特別顧問のポストは廃止され、事務局長が直接指揮する男女平等局(Bureau of Gender Equality)がこの問題を提唱し、ILOの男女平等とジェンダー主流化行動計画を調整する役割を担っています。同局は、各地域1、2名の上級ジェンダー専門家に加え、本部各総局の調整担当者、そしてジェンダー・フォーカル・ポイントで構成されるILOのジェンダー・ネットワークの連絡調整係も務めています。

★国際労働基準

 ILOの条約・勧告はほとんどが男女に平等に適用されるため、基本的人権、雇用・訓練、労働条件、労働安全衛生といった様々な分野で女性は男性と同じ権利を享受しています。ただし、ILOには女性だけに適用される基準も幾つかあります。

 女性労働者に関連した条約・勧告は、1919年の創立の当初から採択されています。こういった基準は最初、女性を職場における搾取から保護し、その健康、特に産前産後の健康を守ることを意図するものでした。1919年の第1回ILO総会では、このようなものとして、母性保護条約(第3号)、夜業(婦人)条約(第4号)、鉛中毒(婦人及児童)勧告(第4号)が採択されました。この他にも、地下作業や白鉛、ベンゼン、放射線などの危険物質からの保護といった女性労働者の健康保護を目的とした基準が採択されています。

 同時に、雇用における機会均等と平等待遇の確保にも重点が置かれ、1951年には男女同一価値労働同一賃金の原則を定める同一報酬条約(第100号)及び同勧告(第90号)が採択されました。翌年採択された母性保護条約(第103号)(改正)は有給の出産休暇、医療扶助、給付、哺育といった女性の権利を定め、解雇に対する保護規定も盛り込んでいます。この条約は2000年に母性保護条約(第183号)として改正され、さらに高い保護が示されています。

 1958年には雇用と職業における差別をなくし、平等待遇・機会均等を目指す差別待遇(雇用及び職業)条約(第111号)及び同勧告(第111号)が採択されました。

 1964年に採択された雇用政策条約(第122号)及び同勧告(第122号)は全ての人は完全雇用、生産的な雇用、職業の自由な選択を求める権利を有すると規定しました。そして、全ての労働者は差別、特に性に基づく差別を受けずに、自己に適する職業に必要な技能を習得し、自己の技能及び才能を活用するための可能な最大限の機会を有するべきと規定しています。

 女性が家族的責任によって雇用を否定され、仕事を辞めることを余儀なくされ、昇進をあきらめなくてはならないとしたら、雇用における機会均等に関する規定の多くが意味をなさないことが次第に明らかになってきました。そのような懸念から、1965年には雇用(家庭責任をもつ婦人)勧告(第123号)が採択されました。この勧告は、家庭責任のある女性が差別を受けずに家庭の外で働く権利を行使でき、仕事と家庭責任を調和できるようなサービスや施設を利用できるよう確保することを目指すものでした。

 その後、国際婦人年の1975年に総会は女性労働者の機会均等・平等待遇の推進に向けた行動計画を採択しました。この計画には全ての働く親に支援を提供し、家事と育児の責任の家庭内におけるより均等な分担を奨励することによって女性にとっての真の平等を推進する措置が含まれていました。その頃また、幾つかの国で、社会内における男女の伝統的な役割に対する姿勢の変化が広まってきました。完全な男女平等の達成には役割の変更が必要と感じる者も多く、この認識は男女間における家族の義務の分担の必要性に関する声明の形で他の国際文書でも示されるようになりました。女性労働者だけが家族的責任を有すると見なされることは女性に不利であることに気づいたILOは、1980年の総会で女性だけでなく全ての労働者の家族的責任について話し合うこととしました。総会では家族的責任を有する労働者に対する保護を強化し、家族的責任を有する労働者とそうでない労働者間における実効的な機会均等・平等待遇を創設する必要が認識され、その結果、翌1981年に家族的責任を有する労働者条約(第156号)が採択され、第123号勧告は同時に採択された家族的責任を有する労働者勧告(第165号)に置き換えられたのです。

 女性が多くを占める労働形態の底上げを目指し、1994年にはパートタイム労働者に比較可能なフルタイム労働者と同等の保護と便益を提供することを求めるパートタイム労働条約(第175号)及び同勧告(第182号)、1996年には家内労働者とその他の賃金労働者の平等待遇を推進する在宅形態の労働条約(第177号)及び同勧告(第184号)が採択されました。

 1998年に採択された労働における基本的原則及び権利に関する宣言は、雇用・職業上の差別排除を含む労働における基本的な原則と権利の尊重、促進、実現に向けた加盟国の努力を公約するものとなっています。

★技術協力

 1999年の総会で一般討議の議題として技術協力におけるILOの役割が検討され、そこで採択された結論は、男女平等の側面と機会均等の問題をILOのあらゆる技術協力計画において強調し、計画中に組み込むべきとしています。ジェンダーはまた、ILOが21世紀の目標とする「ディーセント・ワーク」を横断的に貫くキーワードでもあります。そこで、過去5年余りの間、ILOでは女性を対象とした多数の事業計画やプロジェクトをもって技術協力を通じた男女平等の推進に乗り出しています。これには例えば、女性に対するより多くのより良い雇用プログラム(MBJ)、ジェンダー・貧困・雇用プログラム(GPE)、日本政府の特別資金協力によってアジアで行われている女性の就業機会拡大プログラム(EEOW)、女性の起業家精神・男女平等プログラム(WEDGE)、中南米で実施された低所得女性向け職業訓練プログラム(FORMUJER)等が含まれます。同時に、ジェンダー主流化戦略に則り、労働における基本的原則及び権利の推進、児童労働撤廃国際計画(IPEC)、雇用促進、社会的保護、労使団体の強化、労使関係及び社会対話の強化といったディーセント・ワーク戦略目標に添った各種プロジェクトにも女性に対する配慮を組み込むよう努めてきました。

 男女平等の目的に寄与するプロジェクトや戦略の一例には次のようなものがあります。

◎能力構築計画・プロジェクト

 これには、政労使及びその他の政策策定に携わる人々や機関を対象とした、男女平等のアプローチやジェンダーに対する配慮がいかに貧困緩和や雇用創出に向けた国内政策・計画を向上させるかについての理解の促進や、組織拡大、特に女性労働者や女性事業家の参加増に向けた労使団体の能力構築といった活動が含まれます。

 中南米やアフリカ、アラブ等で実施されたGPEプログラムは貧しい女性に見られる女性特有の不利な点を示し、主要な政策事項を明らかにし、こういった問題への取り組み方についての手引きを提供するモジュール式の訓練パッケージを中心とした動的な能力構築ツールを用いています。この手法は複数の地域でILO政労使よりその効果が実証され、熱心な導入が進み、地域事情に合わせた適応や翻訳が行われています。多くの地域で受益者も費用を負担し、外部資金も提供されていることは活動の妥当性を証明するものと言えます。このツールは国際研修センターを通じてインターネット経由でも提供されています。

◎女性労働者の雇用機会、より良い労働条件に向けた計画・プロジェクト

 これには、収入創出の機会の改善、社会的保護や技能開発の提供、代表制の強化を通じ、女性の自立が進むよう支援することや、自営業の女性を含む女性労働者の労働条件や雇用機会の改善といった事業が含まれます。

 日本政府の特別資金協力によって中国で行われた雇用促進に向けた戦略的取り組みプロジェクト(PEP)は、女性を中心とする一時解雇された労働者や失業者を対象に、都市部において、持続的で複製可能な小企業・零細企業の育成及び雇用創出モデルを試行し、成功を収めました。インドネシアにおけるEEOWプロジェクトは企画担当省が性別に配慮した政策を設計するのに寄与し、全国的使用者団体向けのジェンダー研修マニュアルの開発、プロジェクト受益者の収入と貯蓄の増大、生計維持に向けた将来性のある手段としての協同組合の推進、経済力のついた女性の自信の強化といった成果を収めました。ネパールで実施されたEEOWプロジェクトの結果、16の貯蓄・信用団体が協同組合として登録され、ローン額は13倍になり、全ての地区で女性の収入増が報告されました。

◎政労使の三者構成主義、社会対話、労働における基本的な原則や権利を推進するプロジェクト

 これには、労働における基本的な原則や権利、特に差別撤廃と男女平等に焦点を当てた社会対話と社会対話機構の改善といった事業が含まれます。

 東アフリカで行われた労使関係強化プロジェクト(SLAREA)は労使関係における労使の役割強化、社会対話と三者構成主義、仲裁と調停、労働紛争の予防、グローバル化、労働法改革といった事項を扱うワークショップの中でジェンダーの問題を取り上げ、ジェンダー問題と差別撤廃の啓発に努めました。プロジェクトでは研修参加者の3分の1以上を女性にするとの目標を立て、それは達成されました。

◎児童労働並びに女性及び児童の搾取の撤廃

 これには技能開発、教育訓練、地域社会(特に女性団体、男性、父親)やILO加盟国政労使の支援の動員を通じた女性と少女の地位と自尊心の向上に向けた事業が含まれます。

 大メコン河流域で実施されている子どもと女性の人身取引をなくすための小地域プロジェクト(TICW)は、利害関係者にジェンダーに関する概況説明を行い、プロジェクト運営ガイドラインを作成し、ジェンダー研究を行いました。プロジェクトは国家及び地方政府や市民社会団体に好影響を与え、以前は焦点が当たっていなかった新たな問題が着目され、その問題に対処する計画の立案に結びつきました。プロジェクトでは今後、男性の肯定的な役割モデルや家族の生活及び地域社会の価値を維持する上での夫と父親の重要性を強化するキャンペーンを含み、価値の変更に向けた広報戦略を考えています。

 また、労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言の推進に向けたフォローアップ活動の一環として、2003年11月の理事会で雇用及び職業における差別排除の分野における今後4年間の技術協力行動計画の優先事項が定められました。2004〜07年の行動計画に含まれる重点事項の1つに男女同一賃金が取り上げられ、賃金における平等の達成に向けた一貫性のある総合的な戦略の開発を目指し、賃金設定の仕組み、賃金カテゴリーの決定、職務評価方法、団体交渉体制の見直しを通じた差別への取り組みが掲げられています。性別職業分離や地域社会及び企業レベルにおける家庭と仕事の両立に向けた政策の欠如のような賃金格差に寄与するそのほかの要因も取り上げられることになっています。同一賃金ツール・キットの開発と普及を目指し、2007年には男女労働者の同一賃金に関する専門家会議の開催も予定されています。

★調査研究

 男女平等に関し、ILOは幅広い調査研究、報告書、広報資料、研修マニュアルを発行しています。最近の書籍(英語)には次のようなものがあります。

 また、ILOの論文集「International Labour Review」最新号(2005年第4号)は女性の労働力化特集号であり、戦後日本の労働市場における女性の概況を報告した論文も掲載されています。

 この他にも、男女平等局のウェブページにはジェンダー監査報告書を初め多数の資料が掲載され、その多くを無料でご覧になることができます。また、雇用総局のウェブサイト内には男女の平等な雇用機会情報基地(e.quality@work)と題し、男女平等に関する国際労働基準、各国法制、政策、慣行、組合や民間企業などで導入されている実際の取り決め、統計など幅広い情報を収集したデータベースがあります。また、ジェンダー主流化戦略のもと、どの部局でもジェンダーに関わる活動が行われ、関連する資料が多数発行されています。

★国際女性の日

 3月8日の国際女性の日を祝し、ジュネーブ本部を初め各地のILO事務所で様々な行事が行われます。本部では今年、国際オリンピック委員会(IOC)の協力を得て、スポーツにおける女性に焦点を当てた円卓会議、国際映画祭、IOCの女性スポーツ賞授賞式、写真展が行われます(詳細は2006年2月28日付ILO駐日事務所メールマガジン「ILO新聞発表」欄をご参照下さい)。

 日本では、3月8日に「女性と意思決定〜実り多い社会をめざして〜」と題し、日本における国連機関の共同開催で第5回公開フォーラムが開催されます。佐藤ギン子(財)女性労働協会名誉会長の基調講演に続くパネル討議では、女性と市民社会、女性とビジネス、女性と学術界の3つの側面から今日の女性の地位を振り返り、その役割について検討が行われる予定です(詳細は2006年2月28日付ILO駐日事務所メールマガジン「ILO駐日事務所お知らせ」欄をご参照下さい)。


ILOとジェンダー(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/gender.htm
男女平等局(英語)----->
http://www.ilo.org/dyn/gender/gender.home
e.quality@work(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/employment/gems/index.htm
ジェンダー関連ILO有料出版物(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/support/publ/textww.htm
ILO駐日事務所を通じた書籍等購入方法----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/publ/index.htm
ILO条約・勧告主題別分類----->
http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/subject.htm
国際女性の日−ジュネーブ(英語)----->
http://www.ilo.org/public/english/bureau/inf/event/women/2006/index.htm
国際女性の日−日本行事録画映像(国連大学)----->
http://c3.unu.edu/unuvideo/index.cfm?fuseaction=event.home&EventID=82



最終更新日:2006年2月27日 作成者:EU 責任者:SH